Rの流儀/砕かれた仮面 ◆qp1M9UH9gw



【1】


 衛宮切嗣本人のイメージとは打って変わって、彼の住処――衛宮邸は純和風の屋敷である。
 気付いた頃には、フィリップはこの年季を感じさせる家の入口まで足を進めていた。
 そう言えば、切嗣は「何かあったら衛宮邸にまで来るように」と言っていたか。
 無意識の内に此処を目指していたのは、恐らく切嗣のその提案のせいなのだろう。

「馬鹿言わないでくれ……僕は…………」

 どうして今更になって、切嗣の指示に従っているのだ。
 今の自分は、彼の仲間を――セイバー達を襲った裏切り者だというのに。
 デイパックの中には、セイバーが武器として扱っていた剣が隠されている。
 愚かにも彼女を敵だと勘違いしていた際に、隙を突いて奪い取った物だ。
 言うなれば、この剣は自分が裏切り者であるという証である。
 これを所持している限り、フィリップという存在が赦される事はないのだろう。
 いや、仮にこの剣を返した所で、彼女らが自分を認めるかどうかは定かではない。
 "仮面ライダー"の名に泥を塗った者に、再び正義を語る資格など果たしてあるのか。

 衛宮邸の目の前に来ても、家の内部に入り込む勇気が出てこない。
 自分の様な人間が、切嗣の仲間として堂々と足を踏み入れていいのだろうか。
 それに、仮に衛宮邸を訪れたとして、そこから先どうするべきなのかが分からない。
 切嗣達が来るまで待って、土下座して許しを乞えればいいのか?
 それとも、必死になって自分の無実を説明すればいいのか?
 様々な考えが思い浮かぶが、どれもすぐさま否定したくなるものばかりである。
 そんな事したって、自分が赦される保証など何処にもありはしないというのに。

『今度はそうやって言い訳か?つくづくお前らしくねえな』
「違う!僕は……そんなんじゃ……」
『意地張るなよな、フィリップ。怖がってるって顔に書いてあるぜ』

 語り掛けてくる翔太郎の幻影が、フィリップの心に追い打ちをかけてくる。
 そうだ、もうとっくの昔に気付いているのだ――自分が切嗣達と出会うのを恐れている事くらい。
 彼らが赦す赦さないかなど言い訳でしかなく、結局は自分の感情が一番の原因になっているのである。
 次に切嗣達と出会ったら、彼らに何と責められるのか。それが恐怖となって足を竦ませている。
 そんな自分があまりにも無様で、思わず笑みさえ零れてしまう。

 そうやって途方に暮れていると、何かの音が近づいている事に気付く。
 後ろから聞こえてくるは、バイクのエンジン音だ。
 それも一台だけではなく、恐らくは二台は接近して来ている。
 もしその二人が殺し合いに乗った者だとすれば、フィリップは一巻の終わりだ。
 セルメダルが残っていない現状では、ドーパントに変化して逃走するという手段も使えない。
 そうなればもう、黙って自分の死を受け入れるしかないのである。

 バイクのエンジン音が鳴り止み、次に耳に入ってくるのは誰のものなのか。
 どうか真木の意に反する者であって欲しいと願いながら、フィリップは振り返る。
 彼の視線の先にいたのは、二人の男性であった。
 片方は赤いジャケットを身に着けているせいで、嫌でも目立ってしまう。

「待て。そいつは敵じゃない」

 赤いジャケットの男がそう言って、同行していたもう一人の男を静止させる。
 見ると、その男の片手には一丁の拳銃が握られているではないか。
 突き付けられかけた凶器に警戒しながらも、フィリップは赤いジャケットの男に改めて目を向ける。
 あのよく目立つ、著しい熱を帯びたエンジンの様な色をした服装は、彼が風都で幾度となく目にしているものだった。

「……照井、竜」

 フィリップの仲間であり、同時に風都を護るもう一人の"仮面ライダー"。
 照井竜――仮面ライダーアクセルが、フィリップの目の前に現れたのだ。



【2】


 衛宮邸の居間にて、情報交換は行われる事となった。
 フィリップがその際、随分とばつの悪い表情を浮かべていたが、その理由を照井と笹塚が知る由は無い。

 フィリップがこれまで歩んできた道のりは、まさに過酷の一言に尽きた。
 この世に唯一の相棒を喪ったばかりか、その後に幾度も敵の襲撃に遭ってきたのである。
 仮に彼の事を何一つ知らない者であったとしても、その経歴には同情せざるを得ないだろう。
 同じ風都の出身であり、フィリップの仲間であった照井の反応など、最早言うまでも無かった。

「それは、大変だったな」

 大切な人の命を奪われた彼に何を言った所で、その心を癒す事はできない。
 それが分かっていたからこそ、照井はただその一言しか返せなかった。
 笹塚も同意見なのか定かではないが、現在に至るまで無言を貫いている。

「左が死んだ気持ちは痛い程分かる。さぞ辛かっただろうな」
「……すまない照井竜。気遣わせてしまって」
「いや、構わない。俺も似た様なものだからな」

 不器用ながらも、照井は彼なりに慰めようとしているのだろう。
 しかし、フィリップがそれに対し感じたのは、感謝ではなく疑念であった。
 今言葉を交わしている照井からは、何か言い様も無い違和感を覚えるのである。
 姿形は何処も変わっていないと言うのに、どうしてこの様な感情を抱くのだろうか。

「しかし、ウェザーメモリが吸収されただと?奴は俺の目の前で変身していたぞ」
「それは恐らく……彼もこれを手に入れたんだと思う」

 フィリップはそう言って、T2サイクロンメモリを照井達の視界に映させた。
 照井はそれだけで事情を把握したのか、苦虫を噛み潰した様な表情になる。
 一方の笹塚は相変わらず無表情のままで、何を考えているのかさっぱり読めないままだった。

「T2ウェザーメモリ……奴も手にしていたのか……」

 T2ガイアメモリ――メモリ自らが適合者を選ぶ、言わば"運命のガイアメモリ"。
 この特殊なガイアメモリも、支給品という形で参加者達に配布されていた。
 そして、この地においても適合者を探し求め、相応しい者の手に渡っていったのだろう。
 丁度フィリップが、回収され損なったT2サイクロンメモリを偶然発見したように。

 T2ガイアメモリの中には、確か天候の記憶を内包したもの――T2ウェザーメモリもあった筈だ。 
 もしそれがこの地にも存在しているのだとしたら、井坂の手に渡っていても何らおかしな話ではない。
 ウェザーメモリを使い手であった彼が、参加者の中で最もT2ウェザーメモリが相応しい存在なるのは必然的と言えた。

「まさか、君は井坂に会ったのかい?」
「ああ。お陰でアクセルドライバーが使い物にならなくなった」
「アクセルドライバーを……!?なら君は、どうやって奴から生き延びたんだ?」
「お前と同じで、これを使ったんだ」

 その言葉と共に見せつけられたT2アクセルメモリを前に、フィリップは目を見開いた。
 彼もまた、フィリップと同様にメモリを引き寄せていたのである。
 "仮面ライダー"の証を破壊され、ドーパントの力に頼らざるを得なくなった。
 奇しくも、風都の仮面ライダー二人は同じ状況に立たされていたのである。

「俺は……これで良かったと思っている。仮面ライダーアクセルでは奴には勝てなかった。
 だがガイアメモリ……無限の進化の可能性を秘めたこれなら、井坂を倒す力を手に入れられるかもしれない」

 それが真実だと言わんばかりの顔で、照井はそう断言してみせた。
 一方のフィリップは、それに対しただ困惑する他無かった。
 同じくガイアメモリを使っている自分が言うのも難だが、T2とは言えガイアメモリの乱用は危険すぎる。
 それをさも当然の様に扱い、その力に絶対的な信頼を寄せているなど、それまでの――フィリップの知る照井からは考えられない事だ。
 しかし、フィリップが疑問を抱いたのはその点だけではない。
 今の照井には、そのガイアメモリの件以上に引っかかる部分が存在していたのだ。

「ちょっと待ってくれ。どうしてそこまで井坂に執着しているんだ?」

 ――何故彼は、ここまで井坂の打倒に固執しているのだろうか?

「確かに奴は倒すべき敵の一人だけど……他にもやるべき事があるじゃないか」

 正義の名の元に戦う"仮面ライダー"にとって最大の敵となるのは、主催者である真木とその配下であるグリード達だ。
 井坂も悪人のカテゴリーに分類されるべき人間ではあるが、彼はあくまでこのゲームの参加者の一人である。
 それだけではない――"仮面ライダー"ならば、この地に連れてこられた者達を護るという使命だってある筈だ。
 にも関わらず、今の照井は井坂の打倒という一つの目標しか目に入ってない様に感じられる。

「知った事ではないな。俺は井坂を"殺す"為だけに生きる……そう誓ったんだ」

 照井の口から出てきたのは、信じ難い言葉であった。
 彼は何の大義名分も翳そうともせずに、井坂を殺すと言ってのけたのだ。
 正義の為ではなく、ただ個人の欲求に従って殺人を犯すと宣言したのである。
 照井のその姿はまるで、井坂への復讐の炎がまだ燃えている頃に逆戻りしたかの様だった。

「なッ……何を言っているんだ!?井坂に復讐するだなんて、どうして――――ッ!」

 フィリップが最後まで言葉を紡げなかったのは、照井の瞳の奥にあるものを目にしたからだ。
 彼の瞳の内側に見えるのは、激しく燃え盛るドス黒い炎である。
 負の感情を糧にして勢いを増していくその炎は、かつて照井が宿していたもの。
 井坂への憎しみ――既に捨て去られた筈のそれが、何故か蘇っていたのだ。

「そんな……君は憎しみを捨てたんじゃなかったのか!?」
「憎しみを捨てただと?お前の方こそ、何を寝ぼけた事を言っている」

 フィリップが抱いていた違和感は、照井が宿す激情によるものだったのだ。
 これまで彼が認識していた"照井竜"とは、憎悪を振り切り"仮面ライダー"の正義に目覚めた男であった。
 しかし、今フィリップが対峙している"照井竜"は、正義などまるでお構い無しに、憎悪に突き動かされている獣の様ではないか。

「駄目だ照井竜!考え直すんだ……憎しみの力で井坂に勝てる訳が無い!」

 照井にとってはあずかり知らぬ事だが、フィリップは時間軸の関係上、照井が井坂を打倒する瞬間を目撃している。
 抱いた憎しみを振り切り、弱き者を護る正義の為に戦った照井の姿を、彼ははっきりと記憶しているのだ。
 瞳に憎悪ばかりを孕ませた今の照井では、例え何度井坂に挑んだところで、恐らく勝利を掴めはしないだろう。
 "悪"を打ち砕けるのはあくまで"正義"であり、決して憎しみではないのだから。

 照井を止めたい一心での発言だったのだろうが、その言葉は彼の怒りに燃料を注ぎ込むばかりであった。
 フィリップの説得に対する答えとして返ってきたのは、机に叩き付けられた照井の拳である。

「言わせておけばどこまでも勝手な事を……知ったような口を利くな……ッ!」

 わなわなと震える拳を目にして、フィリップは確信する。
 現在の照井が抱える憎悪は、これまでの比ではないという事を。
 彼の身の内で燃える業火は、最早ちょっとの事では消えない程激しさを増してしまったのだ。

「俺はお前と一緒に戦う事はできん。仲間を集めるなら他所を当たってくれ」
「そんな……待つんだ……待ってくれ!君は"仮面ライダー"だろ!?そんな自分の都合ばかりを考える男じゃなかった筈だ!」

 立ち上がり部屋を出ようとする照井を、フィリップはどうにか引き留めようと試みる。
 "仮面ライダー"の名を捨てるのなら、風都に一人残された鳴海亜希子の事はどうなるのだ。
 今も"仮面ライダー"達の帰還を待っているであろう彼女の意思さえも、彼は踏み躙るつもりなのか。

「仮面ライダーごっこは……もうお終いだ」

 照井から返ってきたのは、その一言だけだった。
 しかし、それだけでもフィリップの心を突き刺すのには十分すぎた。
 仲間と信じた男に突き放された彼は、ただ茫然としたまま照井を見つめるばかりだ。
 一方の照井は、そんなフィリップの様子など気にも留めていない様子である。

「行くぞ笹塚。此処にもう用は無い」
「いいのか?一応仲間だったんだろ、ソイツ」
「昔の話だ。今はもう邪魔にしかならん」
「……そーかい」

 笹塚もそれに従い立ち上がろうとするが、何かに気付いたのか、上がろうとしていた腰が途中で静止した。
 彼の視線は、茫然したままだと思われていたフィリップへと注がれている。
 今の彼の瞳からは、照井に言い返さんとする意思が感じ取れたのだ。

「……無理だ。今の君では井坂には勝てない」

 その瞬間、照井の抱えた怒気がさらに大きく膨れ上がった。
 彼はフィリップの胸倉を掴み上げ、無理やりに立ち上がらせる。
 わなわなと震える照井の腕を目にしても、フィリップが怖気づく様子は見られない。

「今なんと言った……!?俺が井坂に勝てんとはどういう事だ……ッ!」
「彼は……ウェザーの力は強大だ。君一人の力だけでは到底及ばない」

 思っていた事を、フィリップはそのまま照井にぶつける。
 その瞬間、彼の頬に強い衝撃が走り、勢い良く尻餅をついてしまう。
 怒りが頂点に達した照井の拳が、フィリップを殴り飛ばしたのだ。
 これには笹塚も見かねたのか、未だ全身をわなわなと震わせる照井を止めに入る。

「抑えろよ。こんな所で無駄な体力使う必要ないだろ」
「止めるな笹塚!こいつは俺を侮辱したも同然なんだぞ!」

 最早殺意と言っていい程の激情を瞳に秘めながら、照井が叫ぶ。
 フィリップ自身、こう言えば彼がここまで激怒する事は承知の上であった。
 だが、例え照井から殺意を向けられようと、その事実は伝えなければならない。

「聞いてくれ照井竜。君一人ではウェザーには敵わない。無駄死にするのが目に見えている」
「ならどうしろと……!?井坂の殺しを指を咥えて見ていろとでも言うのか……!」
「違う!僕が言いたいのはそういう事じゃないんだ!」

 フィリップが照井の無力を指摘したのには、当然理由がある。
 自身が本当に望んでいる事を達成する為には、照井の怒りに触れざるを得なかったのだ。

「今の戦力だけでウェザーを倒すなんて無理だ……だけど、更に戦力が加われば、希望は見えてくるかもしれない」

 今の照井を放っておけば、きっと自分はいつか後悔する。
 既に相棒を喪ったこの身に、これ以上悲しみを背負い込むなんて御免だ。
 だからこそフィリップは、この一言を復讐鬼達にぶつけたのだ。
 後悔を恐れる自分の為に――そして、仲間として戦ってきた"仮面ライダー"の為に。

「僕も君達と一緒に戦わせてくれないか?僕らが力を合わせれば、きっとウェザーに届く筈だ」


【3】


 結論から言えば、照井はフィリップの同行を許可した。
 一時は何をするか分からない程に激昂していたが、しばらくした後に冷静さを取り戻し、彼の要求を呑むに至ったのである。
 共闘のメリットをわざわざ投げ捨てる程、照井はまだ理性を暴走させてはいなかったという事だ。

 フィリップは、切嗣が言っていた"第二魔法"の事を思い出していた。
 自身がいた世界とは異なる"ifの世界"――言わばパラレルワールド。
 今自分の目の前で怒りに震えるのは、もしやその"ifの世界"から来た照井竜なのではないのだろうか。
 そうだとすれば、彼が井坂への憎しみを未だに募らせているのにも納得がいく。
 恐らく、照井は「まだ井坂が存命している世界」から連れて来られたのだろう。

(君は、"仮面ライダー"でなければならないんだ)

 井坂を倒したいという意思があるのなら、本当に必要となるのは正義の意思だ。
 憤怒や怨念といった負の感情を溜め込んでいては、その先に待っているのは破滅だけである。
 "仮面ライダー"の力こそが、照井竜という男に活路を見出す事が出来るのだ。

 例え仮面ライダーの仮面を砕いてしまったとしても、破片をパズルの様に組み合わせれば、きっとその仮面は元の形に戻る。
 本人はああ言っていたが、照井にはまだ、選べる運命など幾らでも存在するのだ。
 仮面――即ち"仮面ライダー"の正義の心とは、きっと何度でも作り直せるものなのだから。
 そしてそれは、フィリップにも同じ事が言える筈なのだ。
 例え泥を塗ったとしても、その泥を落とすチャンスはまだあるのだと信じたかった。

 皮肉な事ではあるが、照井に教えられたのだ――フィリップの体験など、心を折るに値しない事を。
 井坂に大敗を喫するという、心が折れそうな程の屈辱を味わったとしても、照井はまだ前進しようとしている。
 形は歪ではあるが、自身の信念を決して曲げずに、目的の為の活路を開こうとしているのだ。
 きっと翔太郎だって、何度魂が潰れようが再び立ち上がろうとしていただろう。
 "仮面ライダー"の意思と正義に従い、己を奮わせ戦おうとしていたに違いない。
 そんな翔太郎の相棒が、こんな簡単に絶望に身を堕としてしまっていい訳がないのだ。
 燃え尽きてしまうには早すぎる。たった一度の失敗で、諦めてしまうのは早計である。

『お前、まだ仮面ライダーに縋るのか?』

 翔太郎の幻影が、フィリップを背後から嘲笑する。
 しかし、当のフィリップはその皮肉に対し、振り向きもしなかった。
 今のフィリップからすれば、それはもう相棒を象った幻影に過ぎないのだ。

「僕はまだ、仮面ライダーでありたいんだ」

 未だに"仮面ライダー"を拠り所にしている今の自分の姿は、さぞ滑稽に映るだろう。
 一度は放り投げかけた物に、己の手で否定しかけた称号に、再び縋ろうとしているのだから。
 しかし、それで如何なる罵声や嘲笑が飛んでこようが。
 相棒と分かち合った"仮面ライダー"の名を、やはり忘れ去る訳にはいかなかった。

『覚悟を決めたってワケか。だけどよ、お前の未来、随分と暗く見えるぜ』

 嘲け笑う様なその言葉に反応し、思わず振り返ったその瞬間。
 一陣の熱風がフィリップの顔を叩き、思わず彼は面食らう。
 再び目を開いたその時には、既に視界に広がる世界は一変していた。

 漆黒を背景にして暴れるのは、全てを焼き尽くさんと燃え上がる紅蓮の炎。
 そして、その火炎の世界の中心に、一人の戦士が佇んでいた。
 人型のシルエットに、不気味に輝く青い複眼。
 その戦士から感じ取れるのは、身の毛も弥立つ程の――――。

「何をしている?」

 照井のその声で、フィリップは現実へと引き戻された。
 見ると、彼は訝しげな表情でこちらを見据えているではないか。
 何の変哲のない場所をじっと見つめている姿は、さぞ奇怪に感じられただろう。

「……すまない。何でも無いんだ」

 どれだけ不安を煽ろうが、所詮あれは幻覚の類。
 不確定なイメージなど、引き摺るには値しないのである。
 ともかく、今は井坂打倒の事を第一に考えて行動するべきなのだ。

 盗んでしまったエクスカリバーは、今後も自身の武器として扱う事にした。
 本来なら今すぐにでも持ち主に返却するべきなのだろうが、井坂に挑むにはこちらの装備はあまりにも心もとないのだ。
 セイバーには申し訳ないが、この聖剣を衛宮邸へ置いていく訳にはいかない。
 下らない誤解でこの剣を奪ったのには責任を感じているが、せめて井坂を打倒する瞬間までは、こちらで使わせて欲しかった。
 例えそれが裏切りの証であったとしても、使わざるを得ない状況に立たされているのである。

 せめて、置き手紙だけでも書いておこう。
 それで切嗣達がフィリップの行為を容認するとは思えないが、何の説明もしないよりかはマシだ。
 言うなれば、これはフィリップ自身のけじめであり――これから先に進む為の儀式である。



【一日目 夜中】
【B-5 衛宮邸】
※切嗣達に向けて書かれた手紙が置いてあります。

【フィリップ@仮面ライダーW】
【所属】無
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、精神疲労(極大)、幻覚症状、後悔
【首輪】0枚:0枚
【装備】{ダブルドライバー、サイクロンメモリ、ヒートメモリ、ルナメモリ、トリガーメモリ、メタルメモリ}@仮面ライダーW、
    T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW、約束された勝利の剣@Fate/zero
【道具】基本支給品一式、マリアのオルゴール@仮面ライダーW、トンプソンセンター・コンテンダー+起源弾×12@Fate/Zero
【思考・状況】
基本:殺し合いには乗らない。"仮面ライダー"でありたい。
 1.照井達と行動を共にする。
 2.復讐に燃える照井を放っておく訳にはいかない。
 3.あの少女(=カオス)は何とかして止めたいが……。
 4.バーサーカーと「火野という名の人物」を警戒。また、井坂のことが気掛かり。
 5.切嗣を救いたかったが、どの面下げて会いに行けというのか。
【備考】
※劇場版「AtoZ/運命のガイアメモリ」終了後からの参戦です。
※“地球の本棚”には制限が掛かっており、殺し合いの崩壊に関わる情報は発見できません
※T2サイクロンメモリはフィリップにとっての運命のガイアメモリです。副作用はありません。

【照井竜@仮面ライダーW】
【所属】白
【状態】激しい憎悪と憤怒、覚悟完了、ダメージ(大)、疲労(大)
【首輪】50枚(増加中):0枚
【装備】{T2アクセルメモリ、エンジンブレード+エンジンメモリ、ガイアメモリ強化アダプター}@仮面ライダーW
【道具】基本支給品一式、エクストリームメモリ@仮面ライダーW、ランダム支給品0~1
【思考・状況】
基本:全てを振り切ってでも井坂深紅郎に復讐する。
 1.フィリップ達と行動を共にする。
 2.何があっても井坂深紅郎をこの手で必ず殺す。でなければおさまりがつかん。
 3.井坂深紅郎の望み通り、T2アクセルを何処までも進化させてやる。
 4.他の参加者を探し、情報を集める。
 5.誰かの為ではなく自分の為だけに戦う。
【備考】
※参戦時期は第28話開始後です。
メズールの支給品は、グロック拳銃と水棲系コアメダル一枚だけだと思っています。
※T2アクセルメモリは照井竜にとっての運命のガイアメモリです。副作用はありません。
※笹塚、フィリップと情報交換しました。

笹塚衛士@魔人探偵脳噛ネウロ】
【所属】黄
【状態】健康、加頭順への強い警戒、照井への確信的な共感
【首輪】70枚(増加中):0枚
【コア】イマジン
【装備】44オートマグ@現実
【道具】基本支給品、44オートマグの予備弾丸@現実、ヴァイジャヤの猛毒入りカプセル(右腕)@魔人探偵脳噛ネウロ、煙草数種類
【思考・状況】
基本:シックスへの復讐の完遂。どんな手段を使ってでも生還する。
 1.照井と行動を共にする。
 2.目的の達成の邪魔になりそうな者は排除しておく。
 3.首輪の解除が不可能と判断した場合は、自陣営の優勝を目指す。
 4.元の世界との関係者とはできれば会いたくない(特に弥子)。
 5.最終的にはシックスを自分の手で殺す。
 6.もしも弥子が違う陣営に所属していたら……。
【備考】
※シックスの手がかりをネウロから聞き、消息を絶った後からの参戦。
※殺し合いの裏でシックスが動いていると判断しています。
※シックスへの復讐に繋がる行動を取った場合、メダルが増加します。
※照井を復讐に狂う獣だと認識しています。
※照井、フィリップと情報交換しました。

114:時差!! 時系列順 116:明かされる真実と欲望と裏の王
投下順
098:敗者の刑 フィリップ 129:被制約性のアイソレーション
088:傷だらけのH/二人の赤き鬼 照井竜
笹塚衛士


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最終更新:2015年01月06日 19:58