執着 ◆m4swjRCmWY
───空を舞う赤い影。
名を
園咲冴子、その姿はRナスカ・ドーパント。
エネルギー状の翼は空気を捉え風を斬り、飛翔する。
超高速こそ使っていないものの、逃走するには十分な速度だった。
(……せめて数十分でも何処かで休息を取るべきね)
自らの肉体を触り、確かめる。
行動不能となる様な致命的な外傷こそないものの、ダメージは小さくない。
何せメモリブレイクまでされてしまったのだ───身体に溜まった疲労とダメージも相当だ。
メダル全てを逃走に使うつもりもない。
メダル温存の為にも、何処かで地に降り身体を休めなければならない。
その点において、冴子が武器を拾ったのは幸運だった。
『魔皇剣ザンバットソード』と『サタンサーベル』。
何方も形状は剣。しかも相当の業物だ。
変身している相手にも隙を突けば容易にダメージを与えられるであろう代物。
そして一番の利点は『メダルを使用しないこと』。
この場ではメダルの数がモノを言うのだ。
消費を抑え、尚且つダメージを与えられる武器は当たりの部類であると言える。
これからはメモリを使わない、メダルを節約する戦闘方法も考えなくてはいけないかもしれない───そこ迄考えて、思考を切る。
未来の事より目先の生存を。
今襲われて死んでは意味がない、身体を休める場所へと向かうべきだ。
(……井坂先生)
そう、死んでは意味がないのだ。
彼に再び会いたい。
人間として惹かれたあのヒトに。
女性として惹かれたあのヒトに。
会いたい。
彼女の中に確かに存在している欲望は静かに増殖し、その思いを強くさせていく。
恐らく
井坂深紅郎と遭遇した時、彼女のメダルは大きく増えるだろう。
彼の貪欲さ求め、彼の能力を求め、彼自身を求める───愛とは、求める心。
立派な欲望の一つ。
彼女は今、この欲望の大戦争に相応しい参加者として『愛』に飢えていた。
「───?」
その時だった。
焔。熱。業火。
己の信じる正義の名の下に放たれた、断罪の蒼き炎。
愛に塗れたリベンジを誓う赤き怪人の瞳に、ソレが映ったのは。
▲ ▲ ▲
───断罪を。
罪を犯した者にはそれ相応の裁きを加えなければならない。
あの赤い怪物へと変貌した者にも裁きを下さねばならない。
このゲームの主催者、真木にも裁きを。
そしてその配下として動くグリードにも裁きを。
そのグリードと結託して、このようなゲームに乗った者にも裁きを。
悪を許す訳にはいかない。
当たり前だ。
悪い奴を見つけたら、見て見ぬ振りなどしてはいけないのだから。
「……罪人は、私の正義で裁く」
それは。
まるで、自らを縛り付けるように。
正義の体現者───ルナティックは、掌から噴射される蒼炎の推進力を利用し更に飛翔する。
己の少し先を飛ぶ赤い怪物を視界に入れる。
今
火野映司を殺される訳にはいかない───火野映司の正義は、まだ見定めていない。
無用な殺生は嫌う。
罪人が新たに罪を犯すというならば、その前に討つ。
(……この距離なら)
届く。
ボウガンに矢を番える。
発射台はこの身体。
矢として放つは蒼炎。
此処からならば、気付かれずに撃ち抜ける。
カチャリ、とその指が引金にかけられる。
しかし。
「───また、アンタか」
飛翔し狙いを定める蒼炎の先に。
ヒーローの中のヒーローであり、
ユーリ・ペトロフの父であるMr.レジェンドが、立っていた。
「どれだけ私を苦しめれば気が済むんだ……ッ!」
責めるでも悲しむでもなくただただ笑みを浮かべて、見つめている。
そしてゆっくりと口を開き、一つだけ問いかける。
『おまえが私にしたことは本当に正しいことだったのか』
「だからこそソレを証明するために、悪を裁いて……!!
今もこうして悪を───」
答えすら最後まで聞かず。
父の姿は笑みのまま、塵となって空気に消える。
ルナティックは、仮面の奥で奥歯を噛み締め。
「あ、ああッ!!」
雄叫びを上げながらまるで何かを振り払うように、その蒼炎を解き放った。
▲ ▲ ▲
気づくことが出来たのは、幸運だった。
冴子───Rナスカの右腕を、蒼炎の矢が掠ったのだ。
「!?」
可燃物など含まれていないはずのその右腕が掠っただけで燃え上がる。
ルナティックが放った蒼炎は寸分違わずRナスカの脳天を撃ち抜く筈だったのだが───父の幻想に手元が狂ったのか、それとも積み重なったダメージが照準にズレを生じさせたのか。
何方かはわからないが、ルナティックの手元がズレ直撃するはずの蒼炎はRナスカの右腕を掠るだけに止まったのだ。
そして、攻撃されたことを理解したRナスカは即座に旋回。
下手人を、視界に入れる。
(あのスーツはさっきの……追ってきたのね)
おそらく、Rナスカがこのまま停止していたとしてもあの青いスーツ───ルナティックのスピードならば、数十秒と経たずに接触する羽目になるだろう。
どうする。
超高速の移動を可能にするこのRナスカなら撒くことも可能だろう。
が、しかし。
近くにアレが徘徊していると考えれば、ゆっくりと休息を取ることなど不可能。
ならば、メダルの補充も兼ねて此処で殺しておいた方が得策ね───とRナスカは血に濡れたかのような、赤い刀身の剣を手にする。
名をサタンサーベル。
創世王の証とされる聖剣。
それを構え、Rナスカの正面近くで静止し、浮いているルナティックに突きつける。
「あら、まさか追ってくるとは思わなかったわ」
「私から逃れられるとでも?」
「私はまだ誰も殺してはいないけど?」
「刮目し己の全てを省みろ。
真木に屈しグリードに加担した、それだけで度し難い悪───今時は満ちた。
審判の時だ、罪人よ正義の裁きを受けるがいい」
「それは貴方もでしょう?正義正義と謳いつつ殺しを行う貴方も罪人でしょう」
「私は人を殺めた者、悪に屈した者に同等の裁きを与えているまで」
言葉が交差する。
上手く利用出来ないか、とRナスカは言葉を交わしてみたがやはり無理だったようだ。
言葉が通じない。
まるで狂信者と話しているような───そんな錯覚すら感じていた。
(どれだけの機動力を有しているかはわからない……なら様子見の後に本気で潰した方が良さそうね)
カチカチと、頭の中でパズルを組み立てる様に戦略を立てていく。
標的はルナティック。武器はボウガン。他所持武器は不明。蒼い炎を扱う。
おそらく超高速には対応不可。
だが、メダルのことも考慮するとそう連発はできない。
使うのならば必殺の瞬間のみ───避けられず一刀の内にその首を刈り奪ることのできる、その瞬間に。
「問答は終い……ならば残された時間は己の罪を懺悔するがいい。
私の名はルナティック。タナトスの声に従い、断罪する」
ボウガンに蒼炎の矢が灯る。
Rナスカとは違い、ルナティックが取る戦略は唯一つ。
超人的な身体能力も持たず、スーツにも並程度の耐久性しか持たないルナティックには一度のの被弾も許されない。
元より身体のダメージも蓄積しているし、バーナビー・ブルックスjr.との戦いで使用していた超高速能力とやらも確認している。
なればこそ、ルナティックが取る行動は全てを避け的確に炎を撃ち込むのみ。
「───」
「───」
そして、訪れたのは沈黙。
たっぷり十秒程互いを見つめた後───最初に動いたのは、Rナスカだった。
「は───ッ!」
背に生やした翼で急接近、右手のサタンサーベルを振るう。
空を切る赤い刀身は流星のようは美しい軌道を描き、標的の首を刈り奪わんと迫る。
並の、いや並以上の人間でも対処出来ないであろう程の速度、筋力で振るわれた聖剣は、
「その程度か?」
蒼炎を噴射することで得た推進力により飛翔したルナティックには掠りもしなかった。
接近は禁物。
剣相手に近寄ろうなどという愚策は取らず、回避に専念するのみ。
再度、翼を広げ接近するRナスカにボウガンの照準を定め───撃たずに更に距離を取る。
いや、撃てないというのが正しいか。
(距離が近過ぎる───この距離じゃ直撃したとしても突破される)
「鬼ごっこは趣味じゃないのだけど」
推進力で移動するルナティックをRナスカが追う。
直線的な移動ではすぐに追いつかれ斬り捨てられる。
だからこそルナティックは直線ではなく、曲線、急旋回を利用しRナスカを翻弄する。
速さでも力でも負けている───ならば此方には技しかないのだ。
しかし、それもその場凌ぎの時間稼ぎ。
ルナティックは、徐々にRナスカに追いつかれつつあった。
「あら、スピードが落ちているわよ」
「……ッ!」
肋骨が折れている。それに加えて視力、聴力もほんの一時的だが、落ちているのだ。
様々な要因がルナティックを追い詰める。
空を飛ぶ度、重圧で体内の折れた肋骨が肉を切る。
徐々に蓄積するそのダメージは、ルナティックの行動を少しずつ鈍らせ───そう遠くない内に、致命的な敗因を作り死亡へと導くだろう。
故に、長期戦は不利。
ならば今にでも決着をつけたいところなのだが、少しでも回避から意識を攻撃に裂けばこの首は胴体と泣き別れすることになる。
要するに。
ルナティックの勝機は、限りなく薄かった。
「───」
敗北すれば、死ぬ。
裁くべき悪人に殺される。
私を殺した後、その悪人はどうなる?
おそらくこの場から離脱した後、更に罪を重ね罪無き人々を殺害する。
自らの犯した罪の罰を受けることなく。
誰にも断罪されることなく、このゲームの中を進んでいく。
それは、許されていいことなのか。
(───ダメだ)
それは、ダメだ。
罪人には相応しい罰を。
強い男にならなければいけないんだ───あの時、己の行動が間違っていなかったと証明するためにも。
心の奥深くで、ルナティックの思考が洗練されていく。
このままでは負ける。
ならば、如何するか。
回避を緩めても死ぬ。
回避に専念していても何れは死ぬ。
ならば、如何するか。
カチャリ、とボウガンに蒼炎が宿る。
ルナティックは、覚悟を決めた。
「───タナトスの声を聴け」
チャンスはたった一回。
これを逃すことは、出来ない。
▲ ▲ ▲
(……このままじゃ埒があかないわね)
Rナスカに姿を変えた園咲冴子は、思案する。
隙を見つけ次第超高速でトドメを刺すつもりでいたが、ルナティックは回避に徹しているのだ。
これでは悪戯にメダルを消費するだけ───
(───勝負に出る必要があるわね)
ルナティックがメダル切れを狙っているのだとしたら、それこそ術中に嵌っていることになる。
ならば、此処で勝負に出るか。
超高速で一太刀浴びせ、怯んだ隙に心臓を狙う。
不確かではあるが、メダルを悪戯に消費するより遥かに良い───と、そう判断した瞬間。
Rナスカに、最大のチャンスが訪れた。
(今───ッ!!)
ルナティックが回避のため背を向けていた状態から、此方を向いたのだ。
タナトスの声を聴け───と、ボウガンに蒼炎を漲らせ。
つまり、回避から攻撃に移ったのだ。
そして。
この時を待っていたRナスカにとっては、最大の好機だった。
「───迂闊ね、正義の体現者さん」
カチリ、とRナスカのスイッチが切り替わる。
この世の全てより速く。
時間と空気すら置き去りにして、Rナスカは加速する。
───超高速。
彼のアクセルトライアルとすら渡り合い、上回り兼ねないほどの速度。
一介のNEXTであるルナティックには分かっていようとも避けることは不可能。
神速の如き素早さで迫り、今正にルナティックの心臓を貫かんとするサタンサーベル。
だが。
しかし。
「グゥ……ッ!!」
剣先が、僅かに逸れた。
否、ルナティックの身体が動いたのだ。
ボウガンで撃ち抜くと見せての、回避。
言わばフェイント。
完全に避けることには失敗したが、左の肩口を貫くだけに留まっている。
(外した───!)
Rナスカは、驚愕する。
だが既にサタンサーベルは肩口を貫いている。
振り下ろせば左腕の一本を貰っていくことも可能だったが。
「───捕まえたぞ、罪人よ」
「なっ」
それは、ルナティックの声により中断された。
左肩を貫いたサタンサーベルを持つRナスカの腕を、ルナティックが掴んでいる。
ボウガンは既に手の中にはない。───まさか。
ルナティックの瞳には、怪しい蒼炎が揺らめいている。
───この男は、この一瞬のためにサタンサーベルの一撃を誘ったというのか。
「まさか、貴方───!」
「さあ、根競べといこうじゃないか。無論、罪人の最期は決まっているがね」
───瞬間、業火が巻き起こる。
ルナティックが掴んだRナスカの右腕が蒼く燃え上がる。
既に蒼炎は全身に。
まるで油の中に火を投げ入れたかのようなその炎は、Rナスカを焼き尽くさんと火力を上げる。
「残念、ね───その前に、貴方が力尽きる方が速いわ」
グググ、と。
突き刺したサタンサーベルに力を込める。
焼かれている状態じゃあまり力は入らないが、それでも常人を遥かに超える筋力を持つ。
ブチブチ、ブチブチ、と。
筋肉繊維を断つ音と共にルナティックの傷口が、サタンサーベルによって拡げられる。
此れは、正に根競べ。
Rナスカが燃え尽きるのが速いか。
ルナティックの腕を斬りトドメを刺すのが速いか。
賭けの対象は命。
負けた方が、死ぬ。
蒼炎はRナスカを包み。
聖剣はルナティックを貫く。
これは、死までのチキンレース。
臆し引いた方が負け。
「あ、ああ、あああ───アァァァァッッッ!!!」
それは、何方の雄叫びだったか。
熱と斬撃。
蒼炎と聖剣。
二つの存在が入り混じり───何かが、起爆した。
▲ ▲ ▲
ドサリ、と大きな物が地面に落ちるような音がした。
───園咲冴子。
Rナスカのメモリを身体から排出した彼女は、柔らかい草野上に身を投げ出す様に座っていた。
傍には水辺がある。
そこの水で身体の傷の中でも特に酷い、右腕の火傷を冷やす。
周囲にルナティックの姿は、ない。
「ルナ、ティック……!」
その瞳に宿るのは憤怒か、憎悪か。
決めたと思った瞬間に、己の肉体を盾に此方を潰しにかかるとは思わなかった。
『肉を切らせて骨を断つ』───その言葉そのものだ。
サタンサーベルほどの剣を、人間の身体で受けるなぞ自殺行為。
常人ならば普通は避けようとするだろう。
……冴子が侮っていたのは、その点か。
サタンサーベルをその身に受けても尚此方を殺すという覚悟が、ルナティックにはあったということだろう。
「あのままやっていたら死んでいたのは私……でしょうね。
ゴールドメモリを使っておきながら、なんて醜態」
あの時。
このままでは己が死ぬ───そう判断した冴子は、新たに光球を産み出し、頭上で爆破させたのだ。
狙いを定める暇はなかったためその場で爆破させたが、密着しているルナティックを吹き飛ばすには充分だった。
爆煙が晴れた後、ルナティックにトドメを刺すかと考えたが───姿が見えず、断念した。
逃げたのかどうかはわからなかったが、追撃する程の余裕はなかったからだ。
そうして更に逃亡し───今、此処にいる。
しかし、収穫が何もなかった訳ではない。
光球の爆風を受けたのか、ルナティックの首輪から少量のセルメダルを奪うことができた。
ダメージに見合わない収穫だったが、何もないよりはマシだろう。
「ルナティック……。
もし生きているのなら───次は殺す。
園咲を舐めた借りは、必ず返すわ」
呟く言葉は、復讐の怒り。
逃した獲物は、次こそ殺す。
そう誓いながら───『禁忌』の女は、大地に身を投げ出した。
【一日目 真夜中】
【C-4・東 水辺周辺】
【園咲冴子@仮面ライダーW】
【所属】黄
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、ディケイドへの恐怖心、全身に軽い火傷、右腕に火傷(中)
【首輪】35枚:0枚
【装備】T2ナスカメモリ@仮面ライダーW
【道具】基本支給品一式、スパイダーメモリ+簡易型L.C.O.G@仮面ライダーW、メモリーメモリ@仮面ライダーW、IBN5100@Steins;Gate、夏海の特製クッキー@仮面ライダーディケイド、魔皇剣ザンバットソード@仮面ライダーディケイド、サタンサーベル@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本:リーダーとして自陣営を優勝させる。
0.今は休息を。
1.黄陣営のリーダーを見つけ出して殺害し、自分がリーダーに成り代わる。
2.しかし、そのためにはどうすれば良いのか……?
3.井坂と合流し、自分の陣営に所属させる。
4.
後藤慎太郎の前では弱者の皮を被り、上手く利用するべきではなかった。
5. 次にルナティックと出会った時は、必ず殺す。
【備考】
※本編第40話終了後からの参戦です。
※ナスカメモリはレベル3まで発動可能になっています。
※T2ナスカメモリは園咲冴子にとっての運命のガイアメモリです。副作用はありません。
ルナティック───ユーリ・ペトロフは、死んではいなかった。
光球の爆発の直前、死を予感した彼は蒼炎の推進力を利用し、全力で退避した。
その結果、爆炎こそ当たらなかったが、爆風に煽られその身は蒼炎の推進力も相まって吹き飛ばされた。
着地地点は神社の裏側の、少し離れた場所。
水辺も近く、身体を休めるには病院などの施設を除けば絶好の場所だろう。
だがしかし、ルナティックは横になったまま一向に動く気配はなかった。
積み重なるダメージと戦闘により、ついにルナティックは気を失ったのだ。
常人ならば肋骨を骨折した時点で更に眠りこけていてもおかしくはない───むしろ、此処まで耐え抜いたその精神力が異常なのだ。
よって、彼は今眠っている。
目覚めればまた正義の体現者として悪を裁きに行動を開始するだろう。
故に、暫しの休息。
生きている限り、罪人を裁くために動き続けるであろう彼の、僅かな休息。
ユーリ・ペトロフ───ルナティック。
彼は、深い眠りに落ちていた。
【一日目 真夜中】
【C-5・西 神社裏】
【ユーリ・ペトロフ@TIGER&BUNNY】
【所属】無(元・緑陣営)
【状態】ダメージ(極大)、肋骨数本骨折、疲労(大)、怒り、微かな寂しさ、一時的な視力聴力低下、左肩に刺し傷、気絶中
【首輪】10枚:0枚
【コア】チーター(放送まで使用不能)
【装備】ルナティックの装備一式@TIGER&BUNNY
【道具】基本支給品一式
【思考・状況】
基本:タナトスの声により、罪深き者に正義の裁きを下す。
(訳:人を殺めた者は殺す。最終的には真木も殺す)
0.──────。
1.罪人(冴子)を追い、相応しき裁きを下す。
2.火野映司の正義を見極める。チーターコアはその時まで保留。
3.だが彼はまどか達を守りきれなかった……?
3.人前で堂々とNEXT能力は使わない。既に正体を知られたことへの対応はまだ保留。
4.グリード達と仮面ライダーディケイド、
カオスは必ず裁く。
【備考】
※仮面ライダーオーズが暴走したのは、主催者達が何らかの仕掛けを紫のメダルに施したからと考えています。
※参戦時期は少なくともジェイク死亡後からです。
※
巴マミが生きていることを知りません。
※気絶していたため、キャッスルドランでの
イカロス襲来以後の出来事を把握していません。
※ナスカが自分達の防衛線を突破して、映司達の追撃に向かっていると考えています。
───ユーリ・ペトロフは、夢を見る。
『ユーリ。もし悪いやつを見つけたら、見て見ぬフリをしてはダメだぞ?
悪を懲らしめる強い男になるんだ』
───うん。
『それでこそ、パパの息子だ』
その日。パパは、優しく頭を撫でてくれた。
ぼくはパパみたいな、強い男になりたいと思った。
『何故……何故力が出ない!?』
『……貴方はもう充分街の為に尽くしてきたじゃない?』
『黙れッ!私には市民の期待がかかっているんだ……!!
このまま終わってたまるか……!』
その日から。パパは、少しずつ変わっていった。
優しいパパはいなくなって、暴力が増えた。
ぼくは、それがこわかった。
『おまえに私の苦しみの、何がわかる!?』
その日は、特に酷かった。
車のガレージでパパは、ママをずっと殴り続けていた。
『おまえも私を必要ないと思っているんだろう』と。
顔を紫に腫れ上がらせて、ママは涙目で顔を振るだけだった。
───見て見ぬフリをしちゃダメだ……!
───強い男になるんだ……!
だからぼくは、悪いことをしているパパを止めたかった。
その腕を止めて、強い男になりたかった。
───や、やめろよ、パパ!
それでもパパは止まらなかった。
ぼくを弾き飛ばして、ママを殴り続けた。
だから、ぼくは。
───やめろぉぉぉぉ!!
もう一回、パパに飛びかかった。
本当にパパを止めたいだけだった。
なのに。
『う、おおおおっ!?』
掴んだパパの腕が、蒼く燃え上がった。
炎はぼくの腕から出ていた。
ぼくが、やったのか。
ぼくが、この炎を?
『この、クソガキィィィッッッ!!』
それにパパは凄く怒って。
燃えている腕のまま、ぼくの顔を掴んだんだ。
熱い。熱い。熱い。
でも、ぼくは。
『ああ、あああ───!』
最後に見たのは、力尽きて炭になっていくパパと。
それに手を伸ばし続けるママ。
あの時のことは、まだ忘れられない。
ぼくを───この私を今になってもまだ苦しめる。
───おまえがやったことは本当に正しかったのか、と。
未だに私を責め続ける。
私は、それを証明するために悪人を今も裁いている。
じゃあ、もし。
もし、間違っていたとするならば。
私は、あの時、如何すれば良かったのだろうか───?
最終更新:2015年08月10日 00:04