喪失のP/軋む歯車◆z9JH9su20Q







「――桂木弥子
 笹塚衛士の手の中で、名簿に走らせていた鉛筆が折れたのは、その名前が呼ばれた次の瞬間のことだった。
 あの加頭順の名が呼ばれ、安堵を覚えた直後の転落が与えた衝撃は、復讐のために一切の執着を捨てたはずの笹塚をして、動揺を抑えることができないものだった。
「以上十四名」
 死者の羅列が終わったことを伝えられるまでに流れた名前のほとんどは、笹塚の記憶にロクに引っかからなかった。
 照井竜の毒吐く声が震えていたのが何が原因なのか、見当もつかないほどの前後不覚に陥っていたのだ。

(……弥子ちゃん)

 私情を優先し、警察官としての責務――一般人の保護を蔑ろにしていた時点で、この結末は予想していなかったわけではない。
 それでも、魔人と共にあれだけの修羅場を潜って来た彼女ならと――どこかで楽観していたのだろう。堕ちた己の姿を見せたくない、という忌避感もあった。
 そんな甘すぎた展望と、怠慢のツケが今、笹塚を強かに打ち据えていた。
 故に、続く内容のほとんども頭に入らなかった。

「現時点で君達に解禁された項目は、ずばり殺害数ランキングの閲覧。誰が誰に殺されたのかを、セルメダル50枚と引換に明らかにすることができるサービスだ」
 唯一――それ以外は。

「――!」
 思わず視線が、ビルの隅で眠る女に吸い寄せられる。
 桐生萌郁カザリ扮するFBの指示によって、笹塚の複製体を殺害した参加者。彼女が目を覚ました後の立ち回りを失敗すれば、照井達との共闘関係に確実なトラブルを招いてしまう。
 その対処法を考えていたが、カザリと連絡を取るための携帯電話も、戦力であるアビスのデッキも失ったこの女の利用価値は、笹塚のみならずカザリから見ても底が見えているはずだ。
 それなら……
(……落ち着け)
 脳裏を過ぎった考えを、笹塚は微かに首を振って否定する。
 今更忌避するはずもない、警察官としてあってはならない思考を止めたのは、断じて正義感の残滓などではない……はずだ。そんな資格はない。

 ランキングを閲覧できる者は、ランキングに載っている者のみ。
 これによって危険人物の――下手人の情報を把握することができるというメリットはあるが、同時に既に殺しを行っている者であると、同じくランキング閲覧権を持つ相手には露呈するリスクを負うことになる。
 例えば閲覧権欲しさに萌郁を殺せば、例え照井達に悟られない暗殺を成功させようとランキングには名前が載るのだろう。
 それでここに彼女を置いて行った、危険人物と聞き及んでいたあのディケイドとやらに笹塚が下手人と露見して、万が一にも命を狙われることになっては一溜まりもない。それ以前にエクストリームメモリやカンドロイドによる複数の監視の目を潜り抜けられるとも思えない。

 弥子の仇を知るなどという理由で、そんなリスクは冒せない。
 笹塚は既に――彼女達よりも、家族の復讐を選んだのだから。

 故に今更別の衝動に身を委ねるのではなく、犠牲すら恐れずに選んだはずの道を完遂するためにこそ知恵を巡らせると決めた笹塚は、そのための準備を始めることとした。







      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






 萌郁が目を覚ました時、最初に覚えたのは顎の痛みだった。
 既に度合いは大したことはないものの、鈍く残ったそちらに意識を奪われながら、徐々に意識を覚醒させた萌郁は――その痛みを忘れるほどの焦燥に焼かれた。
「……ない」
 いつも感じるあの心地良い重みが、ない。
 自分の身体を弄るも、あるべき異物がどこにもない。
「……ないっ!?」
 あの人との――FBとの、世界との繋がりが。
 携帯電話が、ない。

「ううぅぁあぁあぁあぁぁあああああああああああああああっ!!?」
 その事実を認識した際、萌郁の口からは大音量の絶叫が迸っていた。
 普段なら感じただろう、自分がこんなにも声を出せたのかと驚く余裕もない。必死に巡らせた視線に映るのは、半日前に萌郁も使った機械鳥やその類似品ばかりで、どこにも携帯電話らしき影はない。

「どこっ!? どこに……っ!」

 朦朧としていた意識が明瞭になるに連れて、混乱していた記憶が整理される。
「あいつ……っ!」
 思い出したのは、名も知らぬ赤紫の仮面の男。虐殺を繰り広げ、萌郁にまで襲い掛かって来たあの男。
 萌郁の記憶の中、最後に接触したのは間違いなく奴だ。
 なら、あいつのせいで失くしてしまったのだ、萌郁は。FBとの繋がりを、縋るべきたった一つの絆の象徴を。

「――どうした!?」

 直後。慌ただしい足音と共に、複数の気配が近づいて来る。
 奴か、と考えたところで――大切な絆を取り返さんと逸る萌郁の気持ちに冷水を掛けたのは、記憶の完全な覚醒と共に戻った、あの凶悪なモンスターへの恐怖心だった。

 携帯電話を――メールを無くしては、もうFBと話ができない。FBと会えない。世界において何より大切な彼女との繋がりを、断絶されてしまう。
 だけど、それは――携帯電話だけでなく、自らの命を失っても同じことだ。
 長引けば見捨てられる可能性があるとしても――携帯電話は、まだ取り返せるかもしれない。
 けれど、命は一度喪ったら、それっきり――

 そんな恐怖による鎮静のおかげか、萌郁がまたも叫び出すということはないまま。躓くように一歩、二歩と拙い足運びで、後退したところで彼らは現れた。

 幸か不幸か、奴はいなかった。現れた男達はいずれも仮面など付けずに素顔を晒していて、もしかすれば奴の正体である人物もいるのかもしれなかったが、そちらに思考を回す余裕は萌郁にはなかった。

 何故なら。

「なん……でぇ……っ!?」
 ――殺したはずの男が、そこに居たから。

 身を乗り出して萌郁を覗き込む少年と、赤いジャケットを来た鋭い目つきの青年の奥から最後に現れた――だらしなくスーツを着こなしているのは、萌郁が最初に接触した警察官、笹塚衛士の姿だった。

 わけがわからなかった。確かに彼は萌郁が、アビソドンに殺させたはず。刃の列のような歯でズタズタに引き裂かれ、無惨に命を落とした死者のはず。

 ならば自分も、あのモンスターの手にかかってもう死んでいるのだろうか――? そんな突拍子もない考えが頭を過ぎる。
 しかしそれよりも。彼の――笹塚衛士の昏い影の覗く表情に覚えた、恐怖の感情の方が萌郁の中で大きかった。

「あ……やぁ……っ!?」
 ――殺される。
 一度彼を殺した自分が、今度は彼に殺される。

 死んでいるのかと思ったばかりだというのに、そんな結末を想起して。拒むように目を背けんとした、その直前だった。



 ――――話を合わせろ。
 ――――指示に従えば、後でFBに会わせてやる。



 二人の男の注意が萌郁に向いたその隙に、笹塚が――FBから殺すように指示された男の提示したメモに書かれていた、そんな文章が目に入ったのは。






      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○      ○○○       ○○○






「……どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ、笹塚衛士」
 目を覚ました女性――桐生萌郁との情報交換の中で明かされた事実に、フィリップが苛立ちを抑えきれなかった末の発言がそれだった。
「ややこしくなると思ったからさ」
 対して、糾弾された張本人は悪びれた様子もなくそう答えた。

 曰く、目を覚ました萌郁があれだけの混乱を見せたのは――最初はディケイドのせいだが、三人が姿を見せたことで更に動揺したのは笹塚のことを彼女が知っていたからだという。
 それも、一度はその手で殺した相手として。

 これだけを聞くと萌郁が危険人物としか思えなかったが、他ならぬ「殺された」という笹塚が真相を明かしたことで誤解は晴れた。
 萌郁が言っているのは、笹塚の”偽物”に対する正当防衛であったのだと。

 何でも、笹塚の支給品にあった不思議なカードが、最初に触れた瞬間是非を問うことなく笹塚のクローンを作り出し――理性のないそのクローンは笹塚の制御を振りきって、行動を始めたらしい。
 結果、クローンが萌郁に襲い掛かるところを遠巻きに笹塚本人が目撃することとなり、突然襲われた彼女は恐怖のまま、支給品で使役する怪物にクローンを迎え撃たせ、殺害してしまった。
 その後、その怪物を警戒した笹塚は狂乱する萌郁に追いつくことができず、そうして互いに本人同士が接触し損ねたまま二度の放送を越え今に至る――

 言うなれば、互いの支給品だった猛獣同士の勝手な潰し合いによるすれ違いだった――ということらしいが、ならば何故もっと早く言ってくれなかったのか。

 何故ディケイドが彼女を連れているのを見た時、自分が傷つけてしまったことを知る顔にああも冷たく対応しようとしたのか。

 フィリップは不信を募らせた視線を向けるが、笹塚はやはり取り合うこともないまま、会話に集中していた。

 萌郁は人前で話すことがとにかく苦手なようで、会話は辿々しかった上、私物であるメタリックパープルの携帯電話を失くしたということを何度も訴えられた。
 一応は全員の持ち物検査を行い、やはりディケイド――門矢士が持ち去ったのだということを確認した後、彼の行方が杳として知れない以上は仕方ないと一旦その話を打ち切って、ようやく彼女から情報提供を受けることができるようになった。

 やがて、そもそも彼女とフィリップ達が合流するきっかけとなった、キャッスルドランでの出来事――その内容を詳しく聞いて行く中で、俄に照井が興味を示した。
「成程な……カオスというのか、そいつは」
 そして萌郁と幾つかのやり取りを交わした後、照井が吐き出したのがその感想だった。
 放送で名前を呼ばれた”鹿目まどか”なる少女を殺したのは、誰なのか――照井はそれを訊いていたのだ。
 厳密には萌郁も直接目撃したわけではなく、遠巻きに見守っていた対決の中で聞いた会話の中で出た名前だったそうだが……

「……待ってくれ。もしかしてその子は……」
 しかし怒りを燃やす照井とは対照的に、問い詰められた萌郁から伝わったその下手人の特徴に心当たりのあったフィリップは、思わず声を上げていた。
 突然声をかけられて、驚き怯えて固まったような萌郁の様子に罪悪感を覚えながらも、再びやり取りを繰り返したフィリップは――それを確信してしまう。
「……あの子だ」
 翔太郎と死別した直後に現れた、狂気に壊された少女。フィリップが責務を放棄して逃げ出してしまった、罪の象徴の一つ。
 そのカオスが、鹿目まどか達を、殺したのだという。

「……そいつは確か、小学生ぐらいの子供じゃなかったのか?」
 まどかを殺したカオスは十代後半の女だと聞いたばかりだった照井が訝しむのに、フィリップは小さく首を振る。
「いや……彼女は翔太郎達を取り込むことで成長していた。今なら僕と同じか、それより上の年頃になっていても不思議じゃない」
「成程な……ある意味では左の仇でもあるわけか」
 納得した様子で、静かながらも更なる怒気を孕んで照井の吐き出した言葉に、フィリップは弾かれたように顔を上げる。
「違う! 翔太郎の仇は……きっと、もう死んでる。奴は翔太郎が命を引き換えに……」
「なら、死んだ左を弄ばれたのはどうでも良いのか!?」
 翔太郎は、無駄死なんかしていないと――声を荒らげようとした瞬間の剣幕に、フィリップは思わず呑まれてしまう。

「……何を庇っている。街を泣かせる奴らを絶対に許さないのが、貴様らの流儀ではなかったのか」
「…………違う」
 まるで義憤に燃えるかのような照井に――しかしフィリップは否定の言葉を口にした。

 ――――似てるって思ったんだよ。タイガーの言う女の子が、風都の人達にな

「……何?」
「君には……今の君には、翔太郎の気持ちなんかわかるはずがない!」
「貴様……っ!」
 翔太郎の仲間として、共に風都のために戦った友だというのに――そんな事実がなかったかのような赫怒の視線が、フィリップと照井の間で交錯する。

「どっちでも良いだろ」
 そんな、暴発寸前の言い争いに割って入ったのは笹塚だった。
「別にフィリップが仇だと思っていないんなら、それで終わる話だ」
 会話の流れには心底興味なさそうに――しかしそんな会話自体に苛立ちを覚えていることを隠そうともせず、笹塚はフィリップの襟元を掴む照井に問う。
「それともあれか? まさかあんたが、井坂深紅郎だけじゃなく、左翔太郎の仇とやらも探し出して潰すつもりだったのか?」
 あんた”は”、ではなく、あんた”が”。
 それはいつから、とは笹塚は付け足さなかったが、言外に仄めかしているのはフィリップにもわかった。

「……それこそまさかだ。そんな余計な時間はない」
 どこかバツが悪そうにフィリップから手を離した照井は、しかしそこで押し黙ってしまうようなタマでもなかった。
「だが……邪魔者として目の前に現れた時には叩き潰させて貰う。そいつが無差別に人を襲うのなら……俺だけでなく、井坂をやらせるわけにもいかん」
「……成程ね。そういやそっちの連中も因縁あるんだったっけか」
 フィリップと合流した直後のやり取りを思い出したのか、笹塚は小さく頷いた。
「納得したよ。その気持ちは……俺にも理解できる」
 でなきゃあんたと組んでなんかいないと、そう付け足して笹塚は引き下がった。

 一方のフィリップは、やるせない気持ちを飲み込むのに必死だった。
 照井が鹿目まどかが誰に殺されたのかを追求したのは、異能の力を持つ彼女を殺害できるだけの戦力を持った危険人物なら警戒して置かなければならないと説明していたが、フィリップにはそれだけが理由には見えなかった。
 悪を憎み正義を愛する、自分の知る照井竜が戻ってくるかもしれない。そんな期待が俄に蘇っていたというのに、よりにもよってその憎しみをぶつけるべき対象が彼女だなんて……

「……で、それからどうなったんだ?」
 自責の念に囚われていたフィリップだったが、笹塚が萌郁に先を促したのを見て正気に返る。
 その時のキャッスルドランには、ワイルドタイガーや仮面ライダーオーズも居たという……照井は気づかなかったようだが、フィリップの姉である冴子=Rナスカ・ドーパントも。
 巴マミという少女を含めて、放送で彼らの名前を呼ばれなかったということは生き延びたのだろうが……どのような状態にあるのか、もう少しだけでも把握して置きたかった。

 結局、その大乱戦に参加した人物は立ち代わり入れ替わりして、その全容は途中からミラーワールドに避難していた萌郁もとても把握しきれていないらしい。
 それでも、冴子とルナティックがそれぞれ西へ向かったこと、カオスやオーズはワイルドタイガーに連れられて逃げ延びたこと、そして次々と参加者を撃破したディケイドが、天使の攻撃を逃れてミラーワールドにやって来たということは、何とかフィリップ達も把握できた。
 そんな話を聞き終えて、あのワイルドタイガーがもしもカオスを抑えられているのなら、敢えて戦いを挑む必要はないだろうと笹塚が照井に釘を差していたが……

『またやっちまったなぁ、フィリップ』
 同時にフィリップの背後には、また彼が姿を現していた。
『おまえがあの子を止められてたら、まどかって女の子は死なずに済んだんだ。その尻拭いをタイガーがすることもなかったし……そのせいで、今度はイカロスの方に手を回せないなんてこともなかっただろうな。
 おかげでまた大勢死んじまったし、ついさっきも人殺しに手を染めてたディケイドをまんまと逃して……ったく、後何人泣かせたら気が済むんだおまえは?』

 これは幻聴だ――そう理解している。
 自分ならともかく。あのハーフボイルドの翔太郎が、誰かのミスをこうも責めることなどあり得ない。
 それを、理解しているつもりでも――

『照井に随分偉そうに言ってたけどよ、そんなおまえに俺の気持ちをわかったようなツラされたくないぜ』
 その言葉が深々と突き刺さってしまうのを、フィリップは確かに認識していた。



「……で、どう動く?」
 そうして情報交換が終わった頃になって、笹塚が議題を進行させた。
「東に残っているとしたらせいぜい、イカロスとやらだけなんだろ? それで南の方に居るとしたら、戦力未知数の銀髪に、どういう状態になっているのかわからないカオスとオーズ、それから一応ワイルドタイガー……関わると面倒な連中ばかりだ」
「……最後に見た時、井坂は中心部に向かっていた」
「何時間前の話だよ。それに中心部は前の放送の時点で禁止エリアの指定もあったんだ。いつまでも居座ってはいないだろう」
 そして北部は来た道を戻るだけ……となると、残るルートは西となる。
 西に向かって移動する場合、遭遇する可能性が高いのは、おおよその戦力が判明しているルナティックとRナスカ。仮に交戦に陥っても、このチームの戦力で対応できる見込みがある相手だ。

「……そいつらに、桐生を預けられるとは考え難いがな」
「南に行ったって、ワイルドタイガーが受け入れられる状態にあるとは限らないだろ?」
 照井の疑念を、笹塚はそう切って捨てる。
 フィリップとしては、萌郁の安全を確保するためにも虎徹と合流したいところではあったが……幻影の言われたからではないが、これ以上彼の負担を増やしたくないという思いが勝った。
 イカロスを放置したくないという気持ちも、視線を向けられるだけで怯え縮こまる萌郁を連れて危険地帯に飛び込むべきではないという理性を言い負かせるほどのものではなかった。

 故に、フィリップとしては消極的ながら、笹塚の案を支持しても良いと考えていた。



 それこそ――萌郁という保護対象を利用することでフィリップの思考を誘導しようとする、笹塚の思惑通りに。



「一先ずはここから一番近く、かつ誰もまだ調査していない神社を目指すのが良いと思うが……不満か?」
 その時。
「あ、の……」
 照井との議論を続けていた笹塚に向けて、何かを言い出そうとした萌郁だったが、視線が交錯した次の瞬間に口を閉じる。
「何を言おうとしたんだ? 桐生萌郁」
「…………何でも、ない……です」
 手助けしようとするフィリップの問いかけにも、萌郁はやっとの思いといった様子で、そう弱々しく答えるだけだった。
 何でもないことはないと思うが、笹塚と萌郁の関係は複雑であり、元々人見知りしそうな性格の萌郁は彼に一種の負い目を感じているだけかもしれない。
 萌郁の挙動不審の理由を探して、そんな当り障りのない思考と同時に、しかしフィリップの中ではこれまでに感じた疑惑が再燃してもいた。

(……二人が真実を語っているとは限らない、のか?)
 萌郁の話と彼の話は合っているが、それが真実であるとは断定できない。
 例えば笹塚が萌郁の弱味を握っていて、口裏を合わせさせている可能性も充分に考えられるからだ。
(だとすれば、鍵を握るキーワードはやはり……『FB』)
 隙を見て、『地球の本棚』で検索してみるべきだろうか。
 しかし『地球の本棚』へのアクセスにも制限は掛けられている。検索にもメダルを消費する上、その閲覧範囲が限定されている現状では何も情報を得られないかもしれない。
 そもそも、たった一つのキーワードから真相に辿り着くなど容易なことではない。実行に移すとすればもっと後になってからだと、フィリップは微かな諦念と共に息を吐いた。






 シュテルンビルトの方角から眩い褪紅色の光の余波が届いたのはまさに、そう考えた直後のことであった。






【二日目 深夜】
【C-5 路上(キバの世界のエリア内)】


【フィリップ@仮面ライダーW】
【所属】緑陣営
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、精神疲労(極大)、幻覚症状、後悔
【首輪】5枚:0枚
【装備】{ダブルドライバー、サイクロンメモリ、ヒートメモリ、ルナメモリ、トリガーメモリ、メタルメモリ}@仮面ライダーW、 T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW、約束された勝利の剣@Fate/zero
【道具】基本支給品一式、マリアのオルゴール@仮面ライダーW、トンプソンセンター・コンテンダー+起源弾×12@Fate/Zero、デンオウベルト+ライダーパス+ケータロス@仮面ライダーディケイド
【思考・状況】
基本:殺し合いには乗らない。"仮面ライダー"でありたい。
 0.あの光は……
 1.照井達と行動を共にする。
 2.復讐に燃える照井を放っておく訳にはいかない。
 3.あの少女(=カオス)は何とかして止めたいが……。
 4.バーサーカーと「火野という名の人物」を警戒。また、井坂のことが気掛かり。
 5.デンオウベルトは自分以外の相応しい人物に使ってほしい。
 6.切嗣を救いたかったが、どの面下げて会いに行けというのか。
 7.ディケイドの目的は一体……?
【備考】
※劇場版「AtoZ/運命のガイアメモリ」終了後からの参戦です。
※“地球の本棚”には制限が掛かっており、殺し合いの崩壊に関わる情報は発見できません。
※T2サイクロンメモリはフィリップにとっての運命のガイアメモリです。副作用はありません。
※タロスズはベルトに、ジークはケータロスに憑依しています。


【照井竜@仮面ライダーW】
【所属】無(元・白陣営)
【状態】激しい憎悪と憤怒、覚悟完了、ダメージ(中)
【首輪】50枚:0枚
【装備】{T2アクセルメモリ、エンジンブレード+エンジンメモリ、ガイアメモリ強化アダプター}@仮面ライダーW
【道具】基本支給品一式、エクストリームメモリ@仮面ライダーW、ランダム支給品0~1
【思考・状況】
基本:全てを振り切ってでも井坂深紅郎に復讐する。
 1.フィリップ達と行動を共にする。
 2.何があっても井坂深紅郎をこの手で必ず殺す。でなければおさまりがつかん。
 3.井坂深紅郎の望み通り、T2アクセルを何処までも進化させてやる。
 4.他の参加者を探し、情報を集める。
 5.誰かの為ではなく自分の為だけに戦う。
 6.カオス、ディケイドを警戒する。
【備考】
※参戦時期は第28話開始後です。
※T2アクセルメモリは照井竜にとっての運命のガイアメモリです。副作用はありません。
※笹塚、フィリップ、萌郁と情報交換しました。


【笹塚衛士@魔人探偵脳噛ネウロ】
【所属】黄陣営
【状態】健康、加頭順への強い警戒、照井への確信的な共感
【首輪】60枚:0枚
【コア】イマジン
【装備】44オートマグ@現実
【道具】基本支給品、44オートマグの予備弾丸@現実、ヴァイジャヤの猛毒入りカプセル(右腕)@魔人探偵脳噛ネウロ、煙草数種類
【思考・状況】
基本:シックスへの復讐の完遂。どんな手段を使ってでも生還する。
 1.照井と行動を共にする。
 2.目的の達成の邪魔になりそうな者は排除しておく。
 3.首輪の解除が不可能と判断した場合は、自陣営の優勝を目指す。
 4.「FB」の名を使って萌郁を利用し、フィリップを誘導する。無理が出た時は……
 5.最終的にはシックスを自分の手で殺す。
 6.戦力、特に“仮面ライダー”への渇望。
 7.殺害数ランキング、ね……。
【備考】
※シックスの手がかりをネウロから聞き、消息を絶った後からの参戦。
※殺し合いの裏でシックスが動いていると判断しています。
※シックスへの復讐に繋がる行動を取った場合、メダルが増加します。
※照井を復讐に狂う獣だと認識しています。
※照井、フィリップ、萌郁と情報交換しました。 指示を出した張本人なので、萌郁が情報を隠していることを知っています。


【桐生萌郁@Steins;Gate】
【所属】青陣営
【状態】健康、携帯がなくなったことによる強い不安とストレス、フィリップ達に吐いた嘘がバレないかの心配、ディケイドへの怒りと恐怖
【首輪】50枚:0枚
【装備】無し
【道具】基本支給品、ランダム支給品0~1(確認済)
【思考・状況】
 基本:FBの命令に従う。
 1.FBに会うために今は笹塚の指示に従う。
 2.でも二人はどんな関係なの……?
 3.ディケイド(=門矢士)から携帯を取り戻したい。
 4.岡部倫太郎と会った場合は同行して貰う。
【備考】
※第8話 Dメール送信前からの参戦です。
※FBの命令を実行するとメダルが増えていきます。
※照井とフィリップ、笹塚と情報交換をしました。但し三人にはキャッスルドランの出来事を目撃したこと以外、一人で居たと嘘を言っています。
※第二回放送については聞き逃していましたが、フィリップの纏めたメモを読んで大凡を把握しました。



【全体備考】
※シュテルンビルトからの発光(イカロスの『HephaistosⅡ』)を目撃した彼らが今後どのように行動する(どの方角へ向かうのか、四人のままか別れる)かは後続の書き手さんにお任せします。







143:理解者はN/二人のケミストリー 時系列順 145:熱【ししん】
投下順
被制約性のアイソレーション フィリップ
照井竜
笹塚衛士
桐生萌郁


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最終更新:2015年08月30日 17:26