『フォーマルハウト侯爵から国王陛下への提言書』

(前略)

……現在、我らがロンデ王国は目覚ましい発展を遂げております。
これも来訪者の知識、工廠の努力、そして陛下の絶え間ない尽力あってこそでございます。
科学の発展、医学の進歩、新たな食文化、未知なる娯楽の数々、
我らがロンデ王国が伝説に聞くヴォルゲン神主国に並び立つ日も遠くはないでしょう。

しかしながら、昨今、その発展に伴う人口の増加により問題が発生しております。
まず、食料品の値段が高騰しつつあります。
広がる工業地帯に対し、農業地帯は減少しつつあります。
また、原因は不明ですが水産資源の減少も報告されております。
外からの食料品の買い付けに関しましても、あの憎き嵐の壁を越えることのできる商人には限りがあり、
現在、自力での買い出し船が行き来しておりますが、その回数と量にもまた限度があり、
なにより、その金額が馬鹿にはなりません。
(ついでとなりますが、先日報告いたしました、
 一部の貴族が胡椒等の私的な嗜好品の買い付けを優先させている問題が未だ解決されていない事を添えておきます)

また、蒸気機関の使用、研究、開発に用いる各種鉱石の使用量の増加に伴い、
鉱山の埋蔵量については問題ないと学者達から報告を得ていますが、
採掘量に限界が来つつあります。
現在、中流、下流階級においては薪の使用を推奨しておりましたが、
結果として先述の人口増加により、木材資源の需要が増大しております。
(惜しくも昨年亡くなられた)来訪者の伝えた『植林』の概念により、
王国の山がカノープス伯爵の頭皮のようになることは回避されてはいますが、
そのようになることも遠くはないでしょう。

このことについては再三進言しており、陛下が消極的であることも理解しております。
しかし、王国のさらなる発展のためには、もはや国内で完結することは不可能であり、
以前、来訪者の勧めていた『植民地』は必要不可欠であります。
現在、貴族の八割は私の話に理解を示しており、陛下のお声さえあれば、即座に戦の準備を……

(後略)


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最終更新:2020年05月19日 11:52