覇道丸の独り言の書き起こし(ブラックシープ商会)

拙者が戦を求める理由は、ひとえに『強くなるため』。
それ以上もそれ以下もない。
皇国の流儀も含め、あらゆる型を知り、取り込み、洗練していく為の手段にしか過ぎぬ。
だが今回ばかりは修行の為に戦うのではない。
邪な者共を放置する訳にはいかないが故に抜刀する。

近頃各国を騒がせる、黒羊なるならず者の集団。
実際のところ劾王之国を牛耳るヤクザ者のはみ出しものが集まった事で生まれた集団らしい。
話を聞けば、阿修羅国の荒くれ者や、更には魔族すら加わり凶悪な集団となっているという。
麦飯之国漁師の漁場で白昼堂々密漁を繰り返し、そればかりか麦飯之国の漁師団の長を襲い、凄惨な方法で殺めるというのも珍しくないと聞く。
更に近年では組織を麦飯之国以外にも広げ、得物を得る為に軍の陣地を襲う事すらあるという。
もはや奴らは単なるならず者の範疇を超えた、諸国共通の敵と言ってもいいのだ。

業を煮やした麦飯之国の呼びかけに、拙者も応じる事となった。
拙者の場合は報酬ではない。
あの様な者共を放っておいてはならぬ、それだけだ。
故に何を報酬として求めるかなどは考えてない、というのが本当のところである。

それにしても奇怪、けったいな連中が顔を揃えたものだ。
顧国将軍とその部下に始まり、初之国王子とその連れである怪力の森人
拙者と同じく皇国の出ながら様々な噂を持つ冒険者の一行…。

これだけ揃ってもまだ足りぬかもしれぬ。
故に拙者も幾つかの小道具を持参するのだ。
どうせ相手は道理の通らぬヤクザ共だ、卑劣な相手はさらに苛烈な手段で叩き潰さなければならない。
今回用意した赤煙玉だけでも、魔島※の唐辛子を材料に使っている。
その威力たるや、竜騎士の連れた飛竜が拙者に寄り付こうとすらしなくなる程だ。

しかし、何を用意しようが相手は筋の通らぬならず者であり、常に拙者らの最悪の想定を上回る…。
少なくともそれを念頭に置く事は必要かもしれぬ。
そしてそれは決して手加減は許さぬという事も含まれるのだ。

  • 覇道丸の独り言の書き起こしより


関連



最終更新:2022年10月26日 08:52