覇道丸の出陣準備(ブラックシープ商会)

拙者が戦を求める理由は、ひとえに『強くなるため』である。
相手の繰り出すあらゆる型を知り、それを自身の技として取り込み、洗練していく為の勝負である。
それ以上もそれ以下もない。

だが、今回ばかりは修行の為の戦いではない。
各地を放浪中に幾度も耳にした、黒羊なる集団。
奴らは麦飯之国の漁場で白昼堂々密漁を繰り返し、そればかりか麦飯之国の漁師を襲っては凄惨な方法で殺めるというのも珍しくないと聞く。
更に近年においては麦飯之国の外にも手を広げ、得物を得る為に冒険者や軍の陣地も襲う事すらあるという。

もはや奴らは単なるならず者の範疇を超えた外道であり、諸国共通の敵。
業を煮やした麦飯之国の呼びかけに、拙者も義により応じる事とあいなった。
何を報酬として求めるかなどは考えてない。あの様な者共を放っておいてはならぬ。それだけだ。

それにしても、よくもこれだけのけったいな連中が顔を揃えたものである。
聞いた限りでは初之国王子とその連れ。更に拙者と同じく皇国出身者である鏖金の明星まで参じているようだ。
その他の連中はよく判らぬが、恐らくそのいずれもが一騎当千に類する者達であろう。

だが、これだけ揃っていてもまだ足りぬかもしれぬ。
少なくとも最悪な状況を想定しておく事は必要である。
故に拙者も幾つかの小道具類を準備しようと考え、城の者に頼んで街で見かけた魔島産の唐辛子を用意してもらった。
コレを使って赤煙玉の一つや二つを作成しておくことにしよう。

さて、出陣までにはまだ幾らかの猶予はある。
それまでに様々な準備を済まし、共に戦に挑む者達の素性を調べておくのも悪くないであろう。


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最終更新:2025年07月28日 10:10