オリロワ2nd @ ウィキ

二人の天才

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二つの決意◆o7DW0ESrOc




―――都内三ツ星ホテル『スカイ・イカロス』。世界に誇る為に、日本政府が建築事業を行い作り上げたこのホテルの七階にある一角の宿泊部屋で、その推理劇は行われていた。
時代遅れのパイプをふかしながらたたずむブラウンのコートを羽織った初老の男が、その推理劇の主人公、屋良健作。
早稲田区警察署の殺人課に身を置いている。
今年47歳になるが、独身。現在の役職は、数ヶ月前に昇格してばかりの警部。
そして屋良は、今まで彼の力を借りなかったら解決出来なかった事件もある、といわれる程の名警部だ。
そう。今ここでもいつも通りにその劇は行われていた。

「さて、私は考えました。あの時、鈴置さんを殺せたのは一体誰なんだ、と…」

パイプをふかしたまま、コートに身を包んだ屋良は言葉を続ける。
これでいつもの流れに入った。
この後、犯人を指名し、その犯人を自供させるまで追い詰める。
これが彼のやり方だ。名警部と呼ばれる前からの、彼のポリシーだ。

「―――まず、速見さん。貴女は鈴置さんへの恨みがある。しかし、彼女には高柿さんと一緒に居たというアリバイがあります、よって…バツ」

屋良は両手の人差し指を胸元でバツを作り、ややオーバーに速見の方へ向け、彼女が犯人で無い事を示す。

「そして、そうなると高柿さんもバツです。高柿さんのアリバイが成立しなければ、速見さんのアリバイも成立しません」

と、して今度は高柿というロン毛の男にバツを向ける。
高柿は唖然としながら、少し安堵した様子で息をつく。

「…と、なると…残ったのは星さんと不二田さんだけですが…皆さん、覚えていますか?
鈴置さんが死んで、私が皆さんの話を聞いた時の事を」

そう言って、先程バツを向けられた速見へと尋ねる素振りと、指を差す。
速見はやや考えた後、口を開いた。

「確か星島さんあの時『俺は部屋で花火を見てた…って』」
「本当ですね?」
「はい」
「皆さんも覚えていますね!?」

今度は速見から全員に尋ねるのを切り替えた屋良は、ゆっくりと、島という男へと目を、顔を、体を向け、こう言った。

「結論で言いますと…星恭七郎さん、貴方が鈴置勝央さんを殺したんですね?」

――――――――

「いやぁ~!見事っすよ、先輩!」

ホテル・イカロスの三階にある喫茶店で、これでもかと盛られたフルーツパフェをほおばる部下らしき男―――幹本真一郎を尻目に、屋良はまた氷が半数を占めるオレンジジュースを喉奥に流し込んでいた。

「しっかし、あの星という男、中々白状しませんでしたね~。最後まで『俺はやってない!』って言ってましたし」

口にクリームと苺を入れたまま、幹本は喋る。
一方の屋良は黙ったままかと思ったら、少しまたジュースに口をつけて、返す。

「『俺じゃない…』そう言った奴は大体犯人だ、よく覚えておけ」
「か、格好良いっす!先輩!」

そう目を輝かせる幹本を無視して、屋良は部下に尋ねる。

「ところで俺の頼んだカキフライ遅いな…もう20分も経ってる」
「俺、呼びますよ!すいませーん!」

「あ、馬鹿」と屋良の制止を振り切り、幹本は近くに居た、派手なメッシュが目立つ店員を呼び寄せた。

「店員さん、この人が頼んだカキフライ、まだ来てないっすよ?」
「ほ、本当ですか!?申し訳ございません。すぐお持ち致します!」

やけに大きな、それでこそ耳に直に響く様な声で、そのメッシュの店員は屋良と幹本に向かって詫び、そして頭を深々と何度も下げた。

「べ、別に良いっすよ!気にしてませんから!だから、早く!」
「あああ!すいません!すいません!数分で持ってきますからっ!」

慌てた様子で厨房へと走っていたメッシュの店員を見て、幹本が溜め息をつく。

「いやぁ、懐かしいなぁ。俺にもあんな頃があったっすからね」
「今もあんなんだろ」
「今は違うっ!」

先程からやけに冷ややかにその場を見ていた屋良に、反論した後幹本は呟く。

「しかし、彼最近入ったんすかねぇ。研修生、て書いてたし」
「はーん。研修生ねぇ…」
「実は俺、名前も覚えてるんっす!」

屋良の「何故?」という疑問の声を無視して、幹本はやや自慢気にこう言った。

「確か、彼の名前は―――」

―――――――

では、改めて。
一森康。
それが、私の名前です。
この名簿というものに書いている私の字だけ見ると間違えられるのですが、決して『ひとつもりやすし』では無いですよ?
『いちもりこう』ですからね。
そこを間違ってもらっては、困ります。
…え?お前、いつ出てきたって?
やだなぁ。ちゃんと居ましたよ?喫茶店辺り。
私って、髪にメッシュがありますよね?
姿形がどうも平凡なもので、私を説明するにはこれが必要なんですよ。
まぁ、結論的に言うと、屋良に部下居たでしょ?幹本。
そいつのカキフライの要望を聞きに行ったのが私です。

しかしあの幹本という男、声はうるさいし、パフェはまだ口に残ってて、クリームが飛び散って私の制服に付いたり…一言で表わすならば…下品というのがピッタリですかね。

公共の場、しかも仮にも三ツ星ホテルでやるべき事じゃありません。
そのクセ、口は達者らしく、どうも刑事らしからぬ男です。
あんな奴等がこの国を支えていると思うと、反吐が出ませんか?
私は今にでも反吐を通り越して嘔吐したい程同意しますよ。
…ははっ、ジョークですよ。気にしないで。

話は変わりますが、私、実は副業で殺し屋やってるんですよね。
あぁ、そんなスナイパーもどきな事しませんよ。
まぁ、私のやり方は、他の方とは違いますが、ね。

少し関係無い話、させてくれませんか?
いいですか?ありがとうございます。
…貴方は、この世に完全犯罪が実在すると思いますか?
普通ならば、様々な科学、ひらめき、刑事達の執念によってそれは無くなると思うでしょう?
…残念ですけどね。実在するんですよ。完全犯罪をする事が出来る、『完全犯罪者』が。
誰だって?ふふふ。私、ですよ。私。
むぅ…信用してないですね?まぁ良いですよ。別に構いはしません。

しかし、色々と苦労しますよ。完全犯罪なんて。普通はやるもんじゃないです。
依頼されたらその相手を殺したり、犯人にしたり、重傷にさせたり。
わざとその犯人にする相手の癖を覚えて、それをトリックの隙にしたり、自殺させた事もあります。
ま、何が言いたいのかって言いますとね。
私、勝ったんですよ。
その屋良健作に。あっさりと、ね。
その鈴置を殺したのも、私。星を犯人にしたのも、私なんですから。
――――――――

「…成る程、ねぇ。お前の話は大体分かった」
「ふふっ、分かっていただけて何よりです。萩原さん」

C-4の神社の鳥居の前で、二人の男がそこに居た。
片方は黄色のメッシュが特に目立つ優男、一森康。
黒のダウンジャケットに身を纏い、鳥居に寄りかかる様に座っていた。
一方、その一森の丁度対角線上に居る白髪の男が、萩原伸行。
こちらも優男だが、一森とは違う雰囲気と、それなりの筋肉を併せ持つ人物であった。

殺し合いが始まった直後に出会った二人は、殺し合いだというのにまったく危機感を持っていなかった。
一森に支給されたのは小型小銃。
萩原に支給されたのは鉄パイプ。
差はあれど、相手に致命傷を与える武器である事は確かであった。

―――だが、二人は動かなかった。
妙に、相手との波長が合ったのだ。
この殺伐とした場で、狂った者同士、同じ「欲求を満たしたい」という感情を抱いていたのだ。
…そんな風に思っていた二人はまず、萩原から口を開いた。

「…何処かで座って話さないか?」

そう一森に話したら、一森は「ええ」と一言呟く様に同意したのだった。


そして、現在に至る。


「しかし、殺し屋ねぇ。お前、ライバルとか居ないのか?」
「ライバル…ふふ、この殺し合いにその候補は居ますがね…ま、誰とは言いませんが」
「はーん…大変なんだなぁ」
「えぇ、まぁ」

会話の内容は歪んでいようとも、その会話はやけにスムーズに進む。
まるで昔からの知り合いの様に、けれども二人とも互いに相手の会話の隙や、動作を確認する。
不審な点が無いか、目を常に光らせている。
天才博打狂と天才犯罪者。ここもよく似ているところなのだろう。

会話が一段落落ち着いたところで、一森が鳥居から立ち上がり、ディパックを手に取る。
そして少し屈伸をした後、萩原に向かって話しかける。

「ところで萩原さん、貴方はこの殺し合いをどのように考えておられますか?」
「…知らん」

小難しい単語を並べるかと思った一森にとって、予想もしない答えだ。
しかしその萩原に対して、一森は会話のセオリーに沿って、「何故?」と答える。


「俺は正直、世界が滅びようが、別に知らん」
「…実に珍しい意見ですね…続けてください」
「だがな、一森。俺は博打狂だ。食べる事より、寝る事より、歩く事より、こうやって話す事より。俺は、ギャンブルが好きだ」
「…そして、結論は?」
「お前と、出来れば勝負がしたいんだ。一森。どうせ死ぬなら大好きなギャンブルで、俺は死にたい」

一つの風が、鳥居の下で立つ二人の男の前を通り過ぎる。
少しの沈黙が、二人の間に訪れる。
そして提案された一森は、一考した後に溜め息混じりにこう返した。

「…萩原さん。私もその気持ちは分かります。貴方とはそのような形での決着を私も望みます…ですが」
「ですが?」
「今はその時では無い、と私は思います」

時期尚早。
しかし戦いたいという一森の言葉から伺えるのを見ると、萩原は疑問だった。
萩原はその疑問を、そのまま一森にぶつける。

「なんでだよ一森。殺し合いだし、怖いって訳でも無いだろ?」
「…私には、まだ会った事の無い方が大勢居ます。名前だけ知っているのは居ますよ?
しかし、親しい知り合いは一切居ません。だからこそ…」

そう言って一森は少し、改める様に息を吸った。
やけに落ち着いているまま。けれどもその目には、楽しみと狂気が見え隠れしている。

「私は、もう少し楽しんでみたいんです。私を倒せる人間が、ここに居るか」
「俺は不相応だって事か?」
「いいえ。貴方の様子から見るに、かなりの実力を併せ持つ方なのでしょう。
ですから…そうですね、貴方をメインディッシュとして、その前に前菜を食べに行くという事にしたいのです」
「一々言葉が長ったらしいな…でも良いぜ。お前がそう今望むんなら、その条件を受けてやる」

一森は「ありがとうございます」と小さく会釈すると、萩原に改まる様な素振りで萩原の方を向き直す。
それを見た萩原は、言葉を紙に書き綴るが如く、一森に口を開いた。

「今はこんな真夜中だ。昼過ぎ辺りに、またここで勝負ってのは?」
「…承諾致しました。では、萩原さん。貴方はこれからどうなさいますか?」

そう質問を返された萩原は、考える素振りを見せずに一森に返した。

「決まってる。人が居そうな東に行く」
「それはまたどうして?危険地帯に自ら赴く必要は…」
「分かってねぇなぁ、一森」

ピッ、と人差し指をわざとらしく一森へと向け、そして不適な笑みを浮かべながらも、当たり前の様に萩原は言うのだった。

「危険だからこそ燃えるんだろ?それがギャンブラーの性って奴さ」

――――――――

(楽しみですねぇ、楽しみですねぇ!まさか最初にこんな大物に会えるとは…!)

萩原との会話後に神社を後にした一森は、胸が踊っていた。
楽しみの感情が溢れ出て、今にも飛び出てしまう方だった。

(萩原伸行、天才博打狂…!あのレベルの人間があと何人来てる事か!)

その思いが抑えきれない程、一森は更に楽しくなる。
妙に足が弾む。死ぬ事の恐怖なんて、二の次だ。
今一森に必要なのは、萩原の様な、彼に相応しい相手。

(ありがとうございます、この殺し合いを考えた方…私を、こんな混沌の中に放り込んでくれて!
私は、今幸せですッ!)

天才犯罪者は、尚求め続ける。
自らの力に合った、最強の相手を―――


【一日目・深夜/C-4/神社】
【一森康】
【状態】高揚、健康
【装備】AK-47(30/30)
【所持品】基本支給品
【思考】
1、この殺し合いを最大限にまで楽しむ
2、様々な相手と接触する。特に探偵の面子。
3、萩原との約束を果たす

【萩原伸行】
【状態】高揚、健康
【装備】鉄パイプ
【所持品】基本支給品
【思考】
1、死ぬのならば、相手とのギャンブルで死ぬ。
2、伊澄?なんとかなるだろ。
3、一森との約束を果たす。
4、ギャンブルの道具を見つける。


14:よくわかる 地方自治のしくみ 時系列順 16:青春ヨーイドン!
14:よくわかる 地方自治のしくみ 投下順 16:青春ヨーイドン!
一森 康 :[[]]
萩原 伸行 :[[]]


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