廃棄品(クラッシュ)、失敗作(クラッシュ)。
人でなし(スクラップ)、ろくでなし(スクラップ)。
バベルの塔が雨後の竹林の如く大盤振る舞いとなった大都市圏の高層ビル。
天井の星を穿たんとばかりに延ばし続ける摩天楼。

開闢を超え、栄光の時代(ニューワールド)へと到達した人類の好奇心と悪意は留まることを知らず。
栄華を極め、薄汚れた金と権力、そんな欺瞞という名の鍍金に覆われた輝かしい表社会。
世界から爪弾きにされ、超力という暴力によって加速した混沌(パルプフィクション)。
弱肉強食の理変わらぬ裏社会。
ゴミ捨て場の掃き溜めに湧くウジ虫のように、残飯に縋る戦災孤児のように。
世界は誰が生きようと死のうと、変わっては変わることはない。

良くなると言うことには対価が必要である。
戦争なくして平和はない。逆を言えば平和なくして戦争はない。
神は世界を救わない。神は壊れないおもちゃが欲しいのではない。
永遠に遊ぶことが出来るおもちゃが欲しいのだから。

実験台のフラスコ、神々の砂場遊び。そんな袋小路に生まれた俺たちに明日はあるのか。
最初から明日だか何だか言っている暇があるなら、俺は明日の朝飯に何を食べるか考えたほうが良いと思うぜ。



廃棄品(クラッシュ)、失敗作(クラッシュ)。
人でなし(スクラップ)、ろくでなし(スクラップ)。
掃き溜めのガキが生きることで精一杯、俺の人生(いきざま)も似たようなもんだ。
生きるために依頼を受けて、仕事をこなし、端金でタバコを吸う。
闇市のタバコの味は、苦く渋い。俺の人生もそうだったはずだ。
タバコのように使い捨てられるが日常茶飯事な便利屋(ランナー)たちの、そんなろくでなし(スクラップ)の生き残り。


そんなスクラップの一体、仕事でヘマして奈落(アビス)送りになった。
そんだけの話で、終わるはずだったんだがな。
待っていたのは忘れても忘れてくれねぇ因縁と、適当な縁。


鉄屑と錆(クラッシュアンドスクラップ)。
纏わりつく蜃気楼(えにし)は何時まで経っても晴れやしない。


★★★


嵐が、"在る"
土砂の瓦礫が浮かび、雨粒の如く荒れ狂う。
夜闇に荒れる天候、大地すら引き裂かんとするその脅威。
まさしくそれは神の御業と幻視すべきか?
それとも運悪く起きた自然現象か?
否、否否否! これを引き起こしたるは一人の超力使い。

「ゲハハハハ! どうした銃頭(ガンヘッド)! 俺の超力(あらし)には手も足も出ねぇか!」

大笑するは、"大海賊"。
"全て奪え(テイクアンドテイク)"の擬人化、海上の悪魔(フォルネウス)、略奪王。
壊し、殺し、犯し、奪う。悪逆非道たる海賊の代名詞(カリカチュア)。
ドン・エルグランド。彼ほど新時代において海賊の名に相応しき男はいない。
隠す必要もなし、海賊の超力は吹き荒れる嵐がその象徴。
悪天候こそ船旅の誉れと言わんばかりに、彼の者は世界に雨と嵐を齎す。
嵐の夜(ワイルドハント)の再現と、己が世界の中心だと言わんとばかりに。

「お生憎、俺が出すのは手じゃなくて鉄屑だ」

嵐の中に立ち、海賊を睨むは鉄屑(くろがね)を纏う男。
『鉄の騎士(アイアン・デューク)』ジョニー・ハイドアウト。
硝煙と鉄の蜃気楼を日常とする便利屋。
並の人間では吹き飛ぶ大嵐の中、動くことが出来るのは彼が文字通りの鋼鉄(アイアン)であるからこそ。

鉄の腕、数年にも渡る自己改造の積み重ねから放たれる鉄の鞭。
無造作に振るうだけでも十分な威力。
だが眼の前にいるのは大海賊エルグランド。
この程度の雑技程度では何のその。

「フンッ!」

力を込める。鉄の鞭を、その手で受け止める。
海賊は、己が齎す嵐に飛ばされぬよう鍛錬を怠らなかった。
それはアビスの底に落ちた後も、一日も欠かさず。
嵐を操れど、その結果までは操ることは出来ぬ。
ならばその嵐を十全に活かすその身体作りこそが重要と。

「ぬぅ……?」

受け止めた直後、鉄の鞭が破裂する。
嵐にまみれて霧散するスクラップ。
嵐の勢いを利用し、後方へ大きく飛ぶ。
弾けた鉄。鉄の騎士の腕(かいな)から鉄の拳がむき出した。

「あんたに鉛玉は勿体ねぇ。せいぜい鉄屑程度がお似合いだろ?」
「抜かせ銃頭!」

嵐の勢いを再び活かし、今度は突貫。
地面から跳ねる時間を誤れば己が大きく飛ばされる。
だが、海賊に賭けは日常茶飯事。
この程度のちんけな賭けはいつも勝ち続けている。




海賊の拳が鉄塊を穿たんと振るう。
鉄の騎士もまた殴打にて対応す。
鉄屑で覆われている分、有利なのは鉄の騎士。

「……こいつ……!」

そのはずの海賊の拳は、鉄の騎士の内部へと確実に響いている。
思い。まるで彼そのものが嵐のように。
文字通り嵐の勢いで拳の速度を上げているのだろうが。
それれも、拳が重いのだ。

「おい、銃頭(ガンヘッド)」

ドン・エルグランドは知っている。
海というのはいつだって静かなままだということは、あり得ない。
止まない雨が存在しないように。
航海とは何時だって災難が付きまとう。
命知らずの同業者、獰猛な大鯨、そして大嵐。

「海の男ってのはな」

実力だけでは乗り越えられないものが来たならばどうすればいい?
試練の如き理不尽が立ち塞がったのならばどう抗えば良い?
答えは簡単、なんともシンプルで、答えですらならない単純なものだ。

「いつだって"乗り越える"もんだ」

その宣言と共に、嵐に紛れて飛んでくる物体が、一つ。
山岳より嵐に流れて転がり駆け抜ける大岩が。鉄の騎士に向かってくる。

「……いつからだ」
「いつからだって? んな大層な策なんぞ考えてねぇよ、ゲハハハッ!」

偶然? 必然? 航路に絶対の安全など存在しないように。
嵐というのはそういうものである。
一歩間違えば不運、機転を利かせれば幸運。

「幸運ってのも不運ってのも、嵐みてぇに勝手にやってくるもんだからなぁ!」

嵐の如く、雨の如く、幸運も不運も平等に。
不平等な世界という荒波の中、飲まれど飲まれど己を貫く。
鉄の騎士に己が矜持があるならば、この海賊は悪逆の矜持を貫かん。
豪放磊落、己の不運を幸運へと巧みに舵を切り乗りこなす。

「こいつ……!」

離脱しようとする鉄の騎士。それを逃さぬと鉄の腕を海賊が鷲掴む。
道連れ覚悟ではない、海賊は最初から全部分かっている。
鉄の騎士を盾にする。
狙ってやったわけではないのは先の海賊の発言通り。

「おおっと、手の内晒そうっていうんなら構わねぇぜ。怪我の一つ二つでてめぇを殺れりゃお釣りは来る」

ジョニーの切り札は、文字通り頭の銃口から放つ鉄の弾丸。
だがそんなもの彼と応対する者が誰であろうと最初から察せれる。
だからこその切り札、取り込んだ鉄屑を変換し生成することで打ち放つハートブレイクショット。
この状況では、狙い当ててもその後が問題。
狙いを定める、当てる、離脱する。
恐らくその工程では間に合わない。
何より反動が大きく、打った瞬間に時間切れが来るだろう。
相手としては時間切れまで待てれば、例え致命傷でも生き続けられれば勝ちとなる。
お互いの命をベットする状況下で、圧倒的に相手のほうが有利。
絶体絶命。命の危機はジョニー・ハイドアウトも何度も経験はしている。
だがこれは、流石に不味かった。
そのはずだったのだが。



「最も、今のてめぇにゃそれをする準備なんざ足りねぇ……あ?」

海賊の右足が、不自然に地面にめり込んだ。
まるで何かに引きずり込まれるように。

「おい、こりゃどういう……」

地面が都合よく泥濘んでいたのか、などという思考。
その海賊の1秒にも満たぬ困惑が命取り。
掴む手が緩み、鉄の騎士は再び動く。

「てめっーー!?」

沈んだ右足を引きずりあげて、すでに視界に鉄の騎士はいない。

「お代はこいつで返させてもらうぞ」

海賊の顔っ面に、右の鉄拳がめり込んだ。
殴り飛ばされると同時に、転がる大岩に巻き込まれ、遥か遠くへと転がり落ちる。
海賊がいなくなったことで、嵐も雨も蜃気楼のように消え去っていく。

「ったく。開幕からこれじゃヘビーにも程があるな」

静寂が戻った夜の下、鉄屑は尻餅をつく。
大海賊エルグランド。間違いなく強敵の一人。
この刑務とやらには間違いなく裏がある。
それに乗じて何かをおっぱじめようとする連中もまた。
この先、あの海賊と同等かそれ以上のバケモノがわんさかいるとなれば、流石に泣き言の一つも上げたくなる
アビスの中で調べ知った、ジョニー・ハイドアウト知る名前も参加しているのだろう。
少なくとも『神父』とは出来れば関わりたくない、心の内で独り言ちる。

「……そういうお前はこの刑務作業、どう思う?」

そして、もう一つの本題。
エルグランドに起きた不可解な現象の、その現況に向けて。
鉄の騎士は、"地面"へと声を掛ける。

「……どうなんだろ。と言っても、私は単純に気に入らないって所、かな」

地面から、人間が這い出した。
海を優雅に及ぶ人魚のように。
悠然と現れたのは、人間の少女。
世界を騒がせた、伝令神の名を関する『怪盗』である。




「延ばした手に、必ず意味がある」
それは、しつこい程に私に教えた叔父様の口癖。
人の善意が利用され、掃き捨てられるのが多くなった開闢後の時代(パルプフィクション)から、特に教え込まれることが多かった。

助けたところで意味はない、なんてことも良くあること。
善意が裏切られ、悪意に染まることなんてどこの国でも同じこと。
それでも助けを求める誰かに手を伸ばし、救うことの全てに意味がないなんて言わせない。
正義だとか、悪だとか、そういう二元論的な言い合いは好きじゃない。

そういう私も、まあ色々酷い目にあったことはある。
趣味の悪すぎるコレクターに身体いじくり回されたりしたこともあって、復帰するまで薬漬けなんてこともあった。
挫けそうな時もあるし、頭の中気持ち良いことだけ考えたほうが楽だなって諦めそうになったこともある。

そんな時に、泣いてる子どもを見ると、無性に諦めたく無いって思ってしまう。
滅茶苦茶でぐちゃぐちゃで、他人から見たら誰も寄り付かないぐらい酷い体になった私の顔を見て、必死に助けようとした底抜けのお人好しもいた。

救われない世界(アポカリプス)で、優しさを忘れないように。
誰かのために手を伸ばし、それで誰かが救われるのなら、それで良いんだと思う。

だから私は、伝え続けるの。
こんな世界でも、救いはあるのだと。
こんな地獄でも、光はあるのだと。
絶望の中でも、必ず希望はあるのだと。
強者の理論と掃き捨てられても、仕方がない。
強いも弱いも、光も闇も抱きしめて。
私は今でも、夢(きぼう)を見てる。


★★★



「大丈夫? おっぱい揉む?」
「こんな状況じゃなきゃ、美人のおっぱいは喜んで揉ませてもらいてぇがな、怪盗(チェシャキャット)」
「便利屋(ランナー)さん下心丸出し」

『ヘルメス』。世界各地に出没し、その超力と巧みな手腕で数々の『盗み』を成し遂げた女怪盗
世界にはまだ希望があると伝えることから『伝令神(ヘルメス)』と、彼女自身もそう名乗る。
希望の伝令者、弱者を救い悪を挫く義賊。貧困層から陰ながら人気を誇り、今なお支持者が世界各地に存在する。

「噂にゃ聞いていたが、まさかアビス送りになってたとはな。そういうヘマをするタマじゃないだろ」

ジョニー・ハイドアウトは、怪盗と面識があった。
見るからに成金な大企業のトップから金庫番(ガーディアン)を頼まれた時にか、噂の怪盗の仮面の奥の素顔をご観覧。
最も、彼女が盗み出そうとしたブツがどうにもきな臭かったのもあってか、依頼主に殺されそうになり彼女との教頭で逆に返り討ちにした。
仕事の方は依頼主が契約不履行をかましたので罰金代わりに鉛玉をお見舞いしてやったのはジョニーにとっても今でも覚えている。
彼女の手際の良さも、『いい性格』も。ジョニーは知っている。
そんな煙のように神出鬼没な彼女が、そう簡単にアビス送りになるとは思えない。

「本当なら目当てのお宝盗む程度で終わったはずなんだけれど。踏んだのは蛇の尾じゃなくての逆鱗だったわ」

そう語る怪盗の目は、軽快な口調とは裏腹に真剣そのもの。
鱈腹抱え込んでそうな汚職官僚の財宝を盗まんと、数多の警備やトラップを潜り抜け、金庫をこじ開け目の当たりにしたのは一枚の紙切れ。
触れてはならぬ場所に足を踏み入れたが為、女怪盗は世界の逆鱗に触れた。

「……何を見た」
「今はまだ答えられない。答えたら、多分あなたも巻き込まれる」

それは、怪盗ヘルメスの気遣いだろうか。
それとも本当(マジ)にヤバい案件(もの)なのか。
伝令神が見た世界の深淵は、それほどまでに深いと見る。
世界の裏側、世界の逆鱗、ジョニー・ハイドアウトにも覚えがないわけではない。
自分がアビス送りになったきっかけでもある、"あの大物"もまた。何かを知っている素振りをした。
その大物の隣にいた、あの女もまたーー。

「……どうしたの?」
「いや、アビス送りになる前のこと、思い出しただけだ」

もしかすれば、怪盗の掴んだ深淵と、自分が関わったあの一件は関わりがあるのかもしれないのかもしれない。
確証は持てない、何となくの"カン"でしかない。


政府は恐れている、開闢の主導者たちは恐れている。
この伝令者が抱える大きな爆弾を。
殺すべきではない、抱えた爆弾の大きさは、恐らく彼らでは抑えきれない程に。
彼女が手にした"情報"の価値は、余りにも大きすぎた。

「……依頼の受付、まだやってるかしら?」

考え込む鉄の騎士の素顔を覗き込むように、女怪盗が声を掛ける。
アビス送りになって便利屋稼業は事実上の休業中というわけだが、アビス内で特に依頼を受ける機会はなかった。

「……別に廃業したわけじゃないな」
「今のは、肯定の返事ってことでいい?」

そう受け取ってもらっても構わない、とその流れた静寂だけが答えである。
答えを受け取った、女怪盗はジョニーの身体に指文字を描く。
それは監視対策ということか?等と思いながらも。身体で隠された指文字で、鉄の騎士は怪盗の覚悟を知った。

「マジで言ってんのか、お前。分かってるのか、本当に」
「それで、世界がより悪い方向に進むかもしれない。でも、もしかしたらいい方向に進むかもしれない」

彼女がやろうとしているのは、ピトスの箱を空けるのと同義。
最後に残るものの在り処が絶望か希望か。
そんな曖昧なものの為に己の全てを掛けるつもりであるのか。

「でも、延ばした手を、意味のないものにすることだけは、絶対にしたくないの」

罵りも嘲りも、受け入れる覚悟はある。
だからこその覚悟、だからこその答え。
意味の有る無しではなく、ほんの少しだけでも良くなる明日のために。
怪盗ヘルメスは、その手を伸ばすのだ。
例えその身が取り返しのつかないことになろうとも。

「だからね、ボディーガードよろしく頼むわ、騎士さま?」
「……ったく」

屈託無い怪盗の笑みが、そこにあった。
嗚呼、こいつもそういう"諦めの悪いやつ"か、と。
己(ただしさ)を貫き続けることが出来てしまう"光"でもない
すべてを飲み込む邪悪な"闇"でもない。
ただ、ほんの少し、よりよい明日がみたいだけの、ただの。

「全部終わったら、お前おっぱい揉ませてもらうからな。あと金とタバコも忘れるなよ、怪盗(チェシャキャット)」

仕方がない、と。金切り音を響かせ頭を掻いて。
取り巻く蜃気楼は未だ晴れることはないと自嘲しながらも。
女のおっぱい一つで依頼を受けただなんて事実、知られたら恥の上塗りだ。
なので貰えるものは貰っておくと付け加えるように。
こういうのもまた、悪くない。
鉄屑と錆に縁のある人生だ、なるようになるだろう。

「返事は嬉しいけれど。……うぅ……まさか本当におっぱいのこと真に受けるなんて」
「お前の言ったことだろ、何今更恥ずかしがってんだ。お前が怪盗稼業やってた時のコスチューム見てそれ言うのか?」

何か気に障ったのか、ヘルメスが突然顔を赤らめる。
どうにも露出度の高い怪盗衣装を着ていただろ、とジョニーのツッコむ視線。
そう言えば、初めて会った時よりも、携えてる'モノ'が少しばかし大きくなったような。




「……出ちゃうの」
「………は?」
「……アビスぶち込まれる前に、人体改造の超力持ちの拷問官に、色々。ただでさえ、昔の後遺症あるのに」

今のは聞かなかったことにしよう。
ジョニーはその呟きを鉄屑の奥底にしまい込んだ。


【G-7/岩山近く/一日目・深夜】
【ジョニー・ハイドアウト】
[状態]:健康
[道具]:なし
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本.受けた依頼は必ず果たす
1.頼まれたからには、この女怪盗(チェシャキャット)に付き合う
2.今のは聞かなかったことにしよう


【ルメス=ヘインウェラード】
[状態]:健康、覚悟、恥じらい(小)
[道具]:なし
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本.私のやるべきことを。延ばした手を、意味のないものにしたくはない。
1.まずは生き残る。便利屋(ランナー)さんの事は信頼してるわ
2.自分で言ったこととはいえ、真に受けられるのは流石に恥ずかしい
※後遺症の度合いは後続の書き手にお任せします



◆◆◆

何処まで、転がったのか。
何処まで、飛ばされたのか。
大の字で地面に横たわる嵐の王。
頭から血を流すも、その上でまだ生きていた。
海の男はこんなことではくたばりはしない。

目を向ければ、廃墟が見えた。
嵐と大岩、その二つが合わさって遠くまで飛ばされたようだ。

「……ま、こういうこともあるか」

運命の女神は何処までも気まぐれだ。
海の機嫌のように、良くなることもあれば悪くなることもある。
幸運が続けばいつか不運が来る、不運が続けばいつか幸運がくる。
手違いで政府の船に殴り込んで返り討ちになった時から、あまりいい運が巡っていなかったのは事実だ。

横に目を向ければ、廃墟が見えた。
悪いことが続けば、次に来るのは良いことだ。
運否天賦。運だけが平等であるのだから。

「……次あったら容赦はしねぇ、銃頭(ガンヘッド)」

滾る怒りを抑えながら、大海賊の征く覇道は止まらない。
この刑務作業は彼にとっての幸運でもある。
殺して、奪って。そうすれば己に恩赦が与えられる。
自由が、手に入る。

「海賊は、全部奪ってなんぼだ」

命を奪い、自由(たから)を手に入れる。
海賊にはいつものこと。何も変わらない、殺して奪う日々の再開。
嵐を呼ぶ男、ドン・エルグランド。
悪という嵐は未だ止むことはない。

【D-6/平原/一日目・深夜】
【ドン・エルグランド】
[状態]:ダメージ(中)、頭部出血
[道具]:なし
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本.奪い、殺し、自由を取り戻す
1.銃頭(ガンヘッド)野郎には容赦しない


005.1536℃ 投下順で読む 007.真・地獄新生 PRISON JOURNEY
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PRISON WORK START ジョニー・ハイドアウト エンカウント・クレイジー・ティーパーティ
PRISON WORK START ルメス=ヘインヴェラート
PRISON WORK START ドン・エルグランド すばらしき世界の寄生虫

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最終更新:2025年02月23日 20:57