少女は駆ける。
悪鬼羅刹たるマフィアの帝王、ルーサー・キングとの戦闘から脱したりんかは
大きな傷を負い、気を失ったジャンヌを抱きかかえて草原を駆け抜け、森の中へと入っていった。

(急がないと……ジャンヌさんが……)

焦る気持ちを必死に抑えて迅速に行動するりんかの顔は険しい。
もし、ルーサーに追跡されていた場合、自分とジャンヌ、そして紗奈の命は一瞬にして奪われてしまう。
万が一でも追い付かれる訳にはいかない。
それに浮かない理由はもう一つある。

それはハヤトとセレナの行方である。
ルーサーとの問答以降、二人とは未だ一度も出会えていない。


既に二人だけでどこかへと移動しているのか。それとも……


不安と恐れがりんかの胸をきつく絞め上げてくる。
見ず知らずのりんかと紗奈の傷を手当してくれた、とても心優しい二人。
その恩をりんかはまだ返していない。何も報いてはいない。

(ハヤトさん……セレナさん……どうか、無事でいてください)

心の中で二人の生存を願いつつ、合流先へと急ぎ大地を蹴り出す。




「無事かな……りんか」

ルーサーへの妨害工作へと向かったりんかの身を案じる紗奈。
本当の所、りんかと離れ離れにはなりたくはなかったが
自分達の戦力の程を考えれば紗奈が待機するべきなのは明白であり
少しでも成功率を上げるためにはやむを得なかった。

(私は三人の中で最も弱い)

これは卑屈では無い事実である。
超力が変化し肉弾戦もある程度可能となった紗奈だが
鍛錬も実践経験も何もかもが足りない。

それに今のままでは私の超力はルーサーに発揮することは出来ない。
これまでシャイニング・コネクト・スタイルで戦った相手はジルドレイと漢女の二人。
紗奈はその二度の戦闘で己の超力の特性をある程度は理解することが出来た。

彼女の超力は紗奈へ加害性を向けた相手ほどリボンの拘束力が強化される。
ジルドレイは嗜虐性に満ちた表情で紗奈やりんかの命を奪おうとしていた。
その結果として彼は、束縛された右腕を切断して切り捨てなければならない程の強い拘束力となった。

(ルクレツィアが相手でもきっと効いたはず。超力を封じればあの化け物染みた再生力も使えなくなると思うから)

既に死んだ以上どうでもいい推測だと考え直し、次は漢女の戦闘を思い出す。

彼女は超力とは別に異常なる怪力でもって拘束は通じていなかったが
そもそもリボンの拘束力がジルドレイ戦の時よりも弱まっていたのを紗奈は感じ取った。
恐らく漢女は闘争そのものが目的としており、紗奈を傷付けること自体には関心が無かったせいだ。

(それが私の能力の弱点、敵意や殺意の薄い相手には効果が弱くなる……)

ルーサーは私を敵とすら認識していなかった。
りんかの劣化コピー、何の価値も無い出来損ない。
わざわざ相手してやる程でもない存在としか見られていなかった。
そんな状態でルーサーに挑んでも『本意ではないが向こうから襲ってきたから仕方なく排除する』程度の意識しか向けられない。
それでは紗奈の超力は発揮できない。
受け身では駄目なんだ。
本気で紗奈を殺してやりたいと殺意を向けられないと私は戦いで役に立つことが出来ない。
紗奈ではりんかを守ることが出来ない。

だから紗奈はジャンヌに託した。
ジャンヌはりんかや紗奈よりも遥かに強い。
それは実力だけでなく精神性も生き様も全てが。

だから紗奈は祈る。
大好きな人がどうか生きて帰ってくることを。

「紗奈ちゃん!!」

そんな彼女の祈りが通じたかの如きタイミングでりんかは戻ってきた。
その手には聖女ジャンヌを抱きかかえて。
意識は失っており、傷口からは血が滲み出ている。
ジャンヌが負傷し、りんかは慌てふためいていた

「ジャンヌさんが!!はやく手当しないと!!」
「落ち着いてりんか、首輪は回収出来た?」
「うん、それは上手く行った。ジャンヌさんのおかげで」
「それならポイントを使って……」

紗奈の指示で恩赦ポイントを使用し、そこから治療キットを選択し購入した。
それは以前にハヤトがりんかや紗奈の怪我を治すのに使ったのと同じ道具だった。
あの時の出来事を思い出しながら今度は治療する側として治療キットを開けた。

(またハヤトさん達に助けられちゃった……)

ハヤトが手当してくれたのと同じ要領でジャンヌの手当てを行うりんかと紗奈。
彼らとの出会いが無ければここまでスムーズに治療は出来なかっただろう。
改めてりんかは胸の内でハヤトとセレナの二人に感謝の気持ちを伝えた。

手当ての結果、ジャンヌの傷口は塞がり、呼吸も安定し落ち着くようになった。
未だ意識は戻らないがそれは怪我のせいというよりも疲労感が原因である。
それは時間でしか癒せない。
体力が戻るその時までりんかと紗奈も休息を取り、待機することになる。

「ねえ紗奈ちゃん、放送の内容聞いてもいいかな?」
「うん、進入禁止エリアとか誰が死んじゃったかの話しだよね」

峠を超えたことで安心したりんかは、紗奈に問い出す。
ジャンヌの治療を終えた今、その胸に別の不安が渦巻いている。
本当は聞くのが怖い、けど目を逸らすわけにはいかない。

「知ってる人達から話すね。ルクレツィアとソフィアが死んだよ」
「そんな、ルクレツィアさんとソフィアさんが……」

二人の死を聞いて悲しみ、涙が溢れるりんか。
もしかしたら一緒に力を合わせてアビスから生きて出られた未来があったかもしれない。
そう考えると悲しくて仕方なかった。

(あんな化け物女のことで悲しむ必要なんか無いのに……)

私とりんかを傷付けた酷い女。
アイツは私達を犯し、嬲り、奪い続けた大人たちと同じ穴の狢なんだ。
死んで当然の奴だった。
そんな悪人とつるんでいたソフィアも自業自得だ。
りんかが手を差し伸べてくれたのに、それを振り払ったんだ。
死んで気に病むことなんてない。

紗奈は放送の内容を正直に話すことに決めた。
それを聞けばりんかが悲しむのは分かっているし、涙を流す姿なんて見たくないけど。
もし戦闘中にその真実を知ればりんかは激しく動揺し、それが致命的な隙となる危険性だってある。
伝えるなら今、安全な内に全てを知って現実を受け止めてほしい。
それが紗奈の考えであった。

「ハヤトさんとセレナさんは……?二人はどうなったの?」

懇願するような瞳で紗奈を見つめるりんか。
ルーサーとの一見から今までずっと気がかりだった二人の行方。
どうか無事であって欲しい。
その願いを込めた眼差しを受けて紗奈は決心を固め、言葉を紡ぎ出した。

「ハヤトとセレナは……」

生きていると伝えたい。
りんかを悲しませたくない。
だけどそれは問題を先送りにしただけに過ぎない。
事実をはっきりと伝えなければ駄目なんだ。

「二人共死んじゃった……きっとあの時、ルーサーに……」
「そ……そんな!!嘘だよね!!?」
「りんか?」
「わ、私が……あの時、私が力になりたいなんて言ったから!!」
「りんか!しっかりして!」

「私が余計なことをしなかったら!!!」

錯乱し頭を抱えて悶え苦しむりんか。

幼少期に災害によって瓦礫の中、焼け死ぬ人々を見ていることしか出来なかった。
犯罪組織によって誘拐され、私を除く家族の皆が惨殺された。
兵士として利用され、罪も無い人々の命を奪い続けた。
友達の美火ちゃんはアビスで何者かに命を奪われた。
ハヤトさんとセレナさんはルーサーから私を庇うために歯向かったせいで殺された。

沢山の人が死んでいく。
私はいつも死を振りまいてる。
救われた分、命を救って償おうとしても更に犠牲者を増やしてしまう。

「りんか!!お願いだから話を聞いて!!」
「私が皆を不幸にするんだ!!」

泣き叫ぶりんか。
大切な人の死が耐えきれなくて、悲しくて辛くてどうしようもない。
助けて欲しかった時に助けてくれた人はもういない。

「ごめんなさい……本当に……ごめんなさい……」

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

りんかの啜り泣く声が紗奈の耳に入る。
まるで呪文のように謝罪の言葉を繰り返し呟いている。
何度も何度も何度も。

ハヤトとセレナの死が重く彼女の心を押しつぶしていく。
あの時、力になりたいと言ってしまった自分の浅はかさに絶望していた。

「私があんなことを言わなければ二人はルーサーに殺されること無かったのに……私のせいで……ごめんなさい……」
「違うよりんか。二人は遅かれ早かれもう既に手遅れだったんだよ」

もしハヤトとセレナの二人がりんか達と出会わなかったらこの刑務作業を生き残れたのか?
紗奈はそれを否と断じた。
何故なら彼らはルーサーと出会ってしまったのだから

「ルーサー・キングに目を付けられ、言いなりになった時からもう二人の運命は変わらなかったと思う。
 用済みとして処分されなくても、死ぬまで使い潰されるだけ。その違いでしかないよ」
「それでも!!二人が死んだのは私のせいなのに変わりないんだよ!!私のせいで二人は……」

りんかが涙を零しながら叫んだ。
彼女の目には悔恨の念が色濃く映っている。
自分がいなければ二人はもっと長く生きられたのではないかと思い詰めていた。

『希望は永遠に不滅(エターナル・ホープ)』はりんかの意志とは無関係に発動する超力。
りんかの影響を受けた善人はエターナル・ホープの加護を授かり、肉体や精神力を向上させる働きがある。
それは必ずしも良い結果を生むとは限らない。
悪に立ち向かう勇気を得た事によってむしろ悲劇を引き起こす。
その結果が今回の二人の死だ。

りんかの意志に関係なく勝手に力を与えて巻き込んでしまい、彼等は死亡したのだ。

「何で……こんな力があるのに私は何も出来ないの……」

エターナル・ホープが人を幸せにするどころか不幸にしてしまう。
この能力があればきっとアビスの参加者を守れると思っていたりんかにとってこれ以上の悲劇はない。
自分の無力さを痛感する

「聞いて、りんか」

紗奈はそう言ってから一呼吸置いて言葉を続ける。
真剣な眼差しをりんかへと向けながら彼女は力強く語りかけた。

「私はりんかの選択が間違えだとは思ってないし誰にも否定させない。
 りんかは誰かの力になりたいと行動した。
 それで私は救われたんだよ。私もりんかみたいなヒーローになりたいって思ったんだよ。
 この先、また助けられなかった人が出るかもしれない。
 それでも頑張って立ち上がろうよ……りんか」

「紗奈……ちゃん」

「それにハヤトとセレナだけじゃない。ルーサーが生きている限り犠牲はどんどん増えるよ。
 りんかと私とそしてジャンヌの力を借りて一緒に倒そうよ」

ルーサー・キング

一目で見ただけで紗奈でも分かる。
犯罪者達の中でもトップに君臨する帝王。
その力は強大で、漢女を殺害するほどの腕っぷしだけでなく
智謀や狡猾さ、カリスマ性、全てを兼ね揃えている怪物。

彼は間違いなくアビス最強の存在だ。
それほどの力を得るのにどれだけの子どもたちの命を吸ってきたのだろう。
その高みは、どれだけの屍を積み上げて築き上げたのだろう。
アイツが生きている限り、犠牲者は止まらない。

(私も大人達に利用され、奪われ続けてきた……)

容姿で気に入られた私は小さな子が好きな大人に売られた。
初潮すらまだ来ていない私の純血を無理やり奪い、辱められた。
力の無い子供は大人達に利用されるだけ。
用済みとして殺された子達も多く見てきた。
そんな悪い大人達を従わせてるような立場の男なんだ。ルーサー・キングという男は

そんな時だった。
ぱぁぁっと、りんかの身体が光に包まれる。
すると嘆きと悲しみで荒くなっていた呼吸が静まり。
ぽたぽたと流れていた左目の涙も止まり。
先ほどまで泣き叫んでいた状態がまるで嘘だったかのように、落ち着きを取り戻していた。
それだけでなく、あちこちに付けられていた傷もどんどん小さくなり、消えていった。

その光を紗奈は見たことがある。
流都の放った触手による猛毒を流し込まれ、一度心肺停止した時である。
りんかを蘇生させた時と同じ、エターナル・ホープによる輝きだった。
それが今のりんかの精神を安定させ、肉体を癒やしていた。

不安げに自分を見つめる紗奈に気づいたりんかは申し訳無さそうな表情をしながら

「励ましてくれてありがとう紗奈ちゃん……その、ごめんね。今は悲しんでる時じゃないのに、私はもう大丈夫だから」
「大丈夫じゃないよ!!全然大丈夫じゃない!!」

ぎゅっとりんかを抱きしめる。
愛しい人が壊れないように、離れないようにとしっかりと。

「さ、紗奈ちゃん!?」
「こんなに傷ついてるのに!!苦しんでるのに!!超力で無理やり治して、立ち上がり続けて……」

償いとして命を使い切るその時まで、心半ばで倒れないように続けられたエターナル・ホープによる延命処置。
確殺の猛毒を食らって生き延びれたのも、流都の手によって紗奈が殺害されないために。
ハヤトとセレナの死から立ち直らせたのも、贖罪を果たすのに前へ進むために。
りんかは無意識レベルで自らを鼓舞し、自身にエターナル・ホープを発動させてきた。

(りんかはそうやって生きてきたんだ。私よりもずっと苦しい環境で……)

義肢になっている両腕両足、一滴も涙が流れない右目は義眼。
小さな身体にはアンバランスな異様に大きいサイズの乳房。
りんかは私が受けてきた事よりもずっと残酷な行為を受けてきたんだろう。
そんな環境で生き延びるためにも必要な力だったのかもしれない。

「でもこんな使い方をしてたらいつか限界が来る!!りんかが壊れちゃうよぉ!!」
「ありがとう紗奈ちゃん。でも今はルーサーを止めないと」

二人が死んだと判明した以上、りんかの意志はより強固となる。
これ以上の犠牲者を出さないためにも、二人の分までりんかは戦わなければならない。

「分かったよりんか。一緒にルーサーを倒そう……最後まで一緒にいるからね」
「紗奈ちゃん……」

紗奈は再び強くりんかの身体を抱きしめる。
このままだとりんかは正義に殉じて死んじゃう。
私が全力でりんかを支えないと。
りんか一人では背負っている物の重さで潰れてしまう。
私も一緒に背負い続けるよ。

「ありがとう紗奈ちゃん。今はジャンヌさんもいますから次はきっと勝てる筈です」
「そうだね……」

アベンジャーズの一人であるジャンヌを見つめるりんかの視線は熱い。
今までTVでしか見たこと無い憧れの存在をその目で見て、りんか自身も希望が溢れてくる。
それとは正反対に紗奈はジャンヌを冷めた視線で見ていた。

(確かにジャンヌがいれば心強い。これからの戦いに彼女は必要不可欠……だけど)

今までの戦いは一重に運が良かったから生き残れただけに過ぎない。
これから先は二人だけで生存は非常に困難。
特に漢女を殺害したルーサーを倒すとなるとジャンヌ無くては万に一の可能性すらない。
だけどそれと同時にジャンヌの存在は不安な感情を呼び寄せる。

ジャンヌは天性の才能を持った英雄である。
その場でただ佇むだけで、まるで肖像画のように美しく人を惹きつけ。
彼女の発する声はどんな政治家よりも多く人々を鼓舞させ。
悪と対峙する彼女の生き様は世界中の人々を歓喜で奮い立たせる。

紗奈から見ても圧倒的なカリスマ性を秘めた英雄なのは疑いようもなく理解出来る。
それだけにりんかが心配だった。
ジャンヌほどの英雄ならば、りんかは喜んで命を捧げるんじゃないか。
命を使い切って生存させる相手としてジャンヌ程の適任はいない。
そんな未来を想像して紗奈は不安になる。

(ダメだよ。ジャンヌのために死ぬのはダメ)

ジャンヌは世界中の人々にとってのヒーローであっても
私にとってのヒーローはりんか、ただ一人なんだから。
もし、りんかがジャンヌのために命を落として、のうのうと一人で生き延びたとしたら

(その時は私はジャンヌを憎む。犠牲になんてさせないから)

ジャンヌの英雄譚の犠牲にはさせないと強く誓う。
例え、りんかがそれを望もうとも私は絶対に阻止してみせる。

「……それで、ルーサーとの戦いはどうだった?上手く行った?」
「うん、予定通りに出来たよ。ジャンヌさんのおかげで」

放送が始まったと同時にルーサーへ襲撃したこと。
ルーサーは放送の内容を聞くこともせず応戦に専念させられたことを。
ジャンヌの負傷はあった物の、ジルドレイの首輪を回収して撤退したことを。

事の経緯を細かく紗奈へと伝えた。
話を聞いた紗奈は、「頑張ったんだね」とりんかを労い。

「それじゃあ、次の行動方針だけど。一先ずはジャンヌが目覚めるまで休息を取ってからその後で考えようね」
「うん、ジャンヌさんを休ませないとね」

(休息が必要なのはりんかも、だよ)

エターナル・ホープで傷が癒えたとしてもそれは超力によるドーピングに過ぎない。
そんな歪な手段による回復では心や肉体にいずれガタが来てしまう。
休息による自然な回復も必要なはずである。

(放送を聞けなかったルーサーは誰かと接触するために動くはず)

紗奈は次の方針を考える。
ブラックペンタゴンが次の進入禁止エリアに選ばれた。
更に被験体:Oの出現により、内部による囚人への襲撃が始まっている。
もし私とりんかがブラックペンタゴンを目指していたらと思うとぞっとする。

運良くルーサーがブラックペンタゴンの進入禁止エリアに侵入し
ルール違反で死亡すれば楽に終わる、と考えない方がいいだろう。

ルーサー・キングがどれほどの組織力を持つ親玉なのかは
犯罪組織に詳しくない紗奈にはわからない。
ただ、彼のような強大な男がそんな呆気なく死ぬことは有り得ない。
間違いなく、この窮地を生き延びるほどの強さを、生命力を持っていることは一目見ただけで直感で理解した。

彼は犯罪者の中でも頂点に君臨する帝王。
多数の者を跪かせ、従わせる圧倒的カリスマ。
被験体:Oとの遭遇で死亡も期待しない方がいい。

そんな運頼み、神頼みの他力本願でルーサーが討たれると甘い見通しはしない。
私とりんかとジャンヌの命も全てチップに変えて賭けなければ勝利は絶対に掴めない。

(今まで大人達の食い物にされてきた弱者の私が、犯罪組織のボスの命を狙うなんて無謀もいいところだよね)

自虐気味な笑みを浮かべる紗奈
性奴隷として最下層の存在だった自分が、頂点に君臨する存在に挑むなんて跳ねっ返りも甚だしい。
そんなこと自身で理解している。
それがどれだけ難しいことか、万に一つも可能性が無いかもしれない。

だけど仕掛けるならこの時しかない。
周囲に手下達のいない、この刑務作業にいる間。
しかも貴重な情報を得られず、戦地へと飛び込まざるを得なくなったこの時が。
私とりんかが生き延びる最大のチャンスなんだ。

ルーサーを討てなければ、アビスから出られても確実に殺される。
ハヤトとセレナのように歯向かった人間をルーサーは絶対に許さない。
大人達は、特に立場が大きければ大きいほど面子に拘るのを紗奈は知っている。
面子のためなら命よりも優先するような連中なんだ。
ルーサーの面子を潰した私とりんかを殺さずにはいられないんだ。

(今なら私のリボンの拘束力も向上してる、それでも)

ルクレツィアとの時みたいな無策な戦いはしない。
自分の力を過信せずに、状況を冷静に見つめてチャンスを伺う。
運任せでもダメ、私とりんかとジャンヌの三人でぶつかるだけでもダメ。
あらゆる勝因が重ならなければ巨悪、ルーサーには勝てない。
それを試練と呼ぶにはあまりにも大きすぎる苦難。
愛する大切な人を生かすために紗奈の覚悟は既に完了している。

(りんかだけは死なせないよ……絶対に……)

大人達に辱められた私は苦しみを殺意へと変換し
情欲を向ける存在全てを復讐対象として殺傷する超力を得た。
他者を害する方向で私は生きてきた。

でもりんかは私なんかとは違う。
りんかは私以上に非道な目に遭わされてもなお、復讐のために超力を使わず
他者を救うために超力を進化させてきた。

これほど心優しい人物に出会ったのはりんかが初めてだ。
そんな彼女が死ななければいけない世の中で生きたいとも思わない。

(私だけが生きていても意味がない……りんかを守れないなら私も一緒に逝くからね、りんか……)


【C-4/平原/一日目・日中】
【葉月 りんか】
[状態]:食糧と水をもらい乾きを回復、疲労(小)、紗奈に対する信頼、システムAの手錠、治療キット
[道具]:なし
[恩赦P]:50pt (ジルドレイの首輪から取得、治療キット -50pt)
[方針]
基本.可能な限り受刑者を救う。その過程を経て、死にたい。
0.自分を救い、命を奪われたハヤトとセレナの分まで戦い抜く覚悟。
1.紗奈のような子や、救いを必要とする者を探したい。
2.この刑務の真相も見極めたい。
3.紗奈やジャンヌと協力してルーサーを討つ。
4.ルクレツィアさんやソフィアさんも救いたかった…
5.――――姉のように、救って、護って、死にたい。その為に、償い続ける。
※羽間美火と面識がありました。
※超力が進化し、新たな能力を得ました。
 現状確認出来る力は『身体能力強化』、『回復能力』、『毒への完全耐性』です。その他にも力を得たかもしれません。
※超力の効力により新たに『精神強化』が追加されました。
※ハヤト=ミナセが持ち込んでいた「システムAの手錠」を託されています。ハヤトと同様に使用できるかは不明です。

【交尾 紗奈】
[状態]:食糧と水で乾きを回復、気疲れ(中)、目が腫れている、強い決意、りんかへの依存、ヒーローへの迷い、ルクレツィアの死に対する歓喜及びハヤトとセレナの死に対する悲しみ
[道具]:手錠×2、手錠の鍵×2、
[方針]
基本.りんかを支える。りんかを信じたい。
0.りんかのために戦う。でも、それだけでよくなかった、何もかもが足りなかった。
1.新たに得た力でりんかを守りたい
2.りんかを生かすために何としてもルーサーを殺害する。
3.ジャンヌのためにりんかが犠牲にならないか警戒。

※手錠×2とその鍵を密かに持ち込んでいます。
※葉月りんかの超力、 『希望は永遠に不滅(エターナル・ホープ)』の効果で肉体面、精神面に大幅な強化を受けています。
※葉月りんかの過去を知りました。

※新たな超力『繋いで結ぶ希望の光(シャイニング・コネクト・スタイル)』を会得しました。
現在、紗奈の判明してる技は光のリボンを用いた拘束です。
紗奈へ向ける加害性が強いほど拘束力が増し、拘束された箇所は超力が封じられるデバフを受けます。
紗奈との距離が離れるほど拘束力は下がります。
変身時の肉体年齢は17歳で身長は167cmです。



ルーサー戦によって受けた負傷と、蓄積していった疲労の影響で未だジャンヌは目を覚まさない。
治療の甲斐もあって今は静かに呼吸している。
まだ変化に気づかない。
フレゼアの超力が少しずつジャンヌの身体に馴染んでいることを。
今まではジャンヌの炎の出力が増大するだけの強化だった。
此処から先はさらなる成長を起こすだろう。

このままでは終わらない。
ルーサーの圧倒的強さに敗北したままで終わる英雄ではない。

それはサナギがチョウへと成長するように……
それは神話における不死鳥のように……

英雄は再び復活しようとしていた。
その変化は未だジャンヌ自身でさえ気付かず、ただ静かに傷を癒やしていた。


【ジャンヌ・ストラスブール】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(中)、フレゼアの超力吸収 気絶中
[道具]:流れ星のアクセサリー
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本.正義を貫く。だが、その為に何をすべきか?
0.フレゼア……?
1.ルーサー・キングといずれ決着を付ける。
2.刑務の是非、受刑者達の意志と向き合いたい。
3.人の心を弄ぶルクレツィアは必ず討つ

※ジャンヌが対立していた『欧州一帯に根を張る巨大犯罪組織』の総元締めがルーサー・キングです。
※ジャンヌの刑罰は『終身刑』ですが、アビスでは『無期懲役』と同等の扱いです。

※流れ星のアクセサリーには他人の超力を吸収して保存する機能があるようです。
 吸収条件や吸収した後の用途は不明です。
※流れ星のアクセサリーに保存されていた『フレゼア・フランベルジェ』の超力を取り込みました。
 フレゼアの超力が上乗せされ、ジャンヌの超力が強化されています。
※フレゼアの超力が馴染みつつあります。
 完全に肉体に馴染んだ時、更なる進化を遂げる可能性があります。

122.パーフェクトブルー 投下順で読む 124.新世界
時系列順で読む
WHATCHA GONNA DO? ジャンヌ・ストラスブール [[]]
葉月 りんか
交尾 紗奈 [[]]

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最終更新:2025年09月21日 17:25