鉄塊が吹き荒ぶ。衝撃波が踊り狂う。平時は穏やかであろう草原は荒れ狂っていた。
それは、渦中にいる二人の刑務者からすると尚更だろう。
鉄塊と暴風は大地を削り取り、草は潰され、宙を舞って、更に微塵となっている。
もはや其処は死が蔓延る地獄の底。
此処は、此処こそが決戦の最果てであり、生きて勝つのは一人だけである。
互いに拳を握るのは、越える為。不倶戴天――帝王は二人も必要ない。
「俺の視界で鬱陶しいんだよ、どいつもこいつも!! 喚くな、視るな、囁くな、横切るな……!
穢れるんだよ、俺の、俺だけの世界が!」
「随分とご機嫌斜めじゃねぇか。よっぽど、エンダに痛めつけられたみてぇだな!」
ルーサー・キングとネイ・ローマン。
二人の激突は、それはこの刑務の中でも有数の大規模な殺し合いだった。
互いに到達者へと至っている“怪物”は世界を廻っても有数だ。
そもそも、到達者同士の戦いなど、表向きは一つも存在しない。
至る前に死ぬか、そもそも至る素養がないか。
因縁も含めて、希少価値のある闘いがどれほど待望されていたか。
研究者としての立場ならば、推して知るべし。
「安心しろや、すぐぶっ殺してやる。痛みなんて感じねぇ。そんな暇与えるのも、アンタには上等過ぎる!」
「ほざけや、野良犬が――!」
これは今後、長年に渡り研究に使用されるだろう孤島の実験記録。
そして、欧州の悪党における頂点を決める潰し合いである。
それを記録せずして、世界の行く末を見定められる訳がないだろう。
「ハッ、物量が足りねぇだろ! ンな程度で殺れると思ってんのか!?」
多方面で荒れている監獄情勢だが、この戦闘だけは逃さない。
そうして記録が始まった戦闘だが、アビスの監視官が予測していたものとは幾分か違っていた。
キングが劣勢である。先程のエンダとの戦闘は規格外――神と呼ばれる異物であるが故に納得もあった。
だが、古き帝王と若きギャングスターの対峙は条件が違う。
ローマンの成長は著しいものではあるが、ここまで肉薄するとは、と。
「こっちはアンタの領域まで駆け上がってきたんだ。失望させねぇでくれや、おい!」
キングの放つ鉄塊をローマンは衝撃で総て粉砕する。
ボルテージが上がっているのか、ローマンの超力に陰りはない。
怨敵の前でローマンの猛りは揺らがなかった。
そして、一方のキングはエンダとの連戦が祟っているのか、疲労が著しい。
加えて、精神的な疲弊が内面で強く渦巻いている。
表に出さないだけでも、鋼の精神力であると驚嘆させるものだが、それでも色濃く出ている疲弊はパフォーマンスに影響する。
超力を繰ることこそできても、精密な生成まではいかない。
「失望も糞もねぇよ。てめえが死んで、それで終わりだ」
改めて、キングは取り繕いこそしているが、やはり疲弊している。
逃げの一手を打ち、退却を狙う素振りを見せているが、逃げられず。
エンダとの一戦だけでも疲弊が著しかったのに、ローマンも踏まえた連戦など、老体に鞭を打つどころではない。
――野良犬風情とはいえ、厄介だ。今、始末しておきたいが、分が悪いな。
当初より始末をしておきたかった5人の内、3人が既にくたばっている。
そして、眼前には残りの1人がいる。
ここで優先するのはローマン討伐。キングもそれが最善だと理解はしているが、如何せん疲労が無視できない。
建前上、戦闘続行のポーズを取っているが、此処はどう考えても撤退が正答である。
自分にはまだ、この刑務後の先がある。刑期を終わらせる恩赦ptはもう十分に蓄えがある。
後先を考えると、無茶をする必要なんてない。
ジャンヌもローマンも、他の三人とは違い、直接戦闘による厄介さが際立つ手合である。
外に出た後、始末するという手段でも十分だ。青臭い若者二人だ、搦手によって追い詰め、始末することは容易いはずだ。
下らない情動だ。力競べをする齢でもねぇ。
生成した鉄塊は間髪入れずに撃ち放っているが、どれもローマンへと届くことはない。
どうやら監獄前から聞いていた情報よりも出力が段違いで高まっている。
キングの中では先程のエンダと遜色ない程に、彼の危険度は跳ね上がっていた。
喧しく喚く野良犬と思っていたが、この刑務中に自分と同じ域まで至ったのか。
もっとも、その内訳はどうだっていい。
鎧袖一触。取るに足らないと思っていた弱者が対等に向かい合おうとしている。
――気に入らねぇな。
それは帝王にとって不要な情動だ。どうやら、エンダとの戦いでらしくもない感情が浮き出ているらしい。
己を律し、最善を選ぶ機械になる。そして、所々に遊びを入れたら誰も己を理解できなくなる。
ただ冷徹に、己の利益と生存だけを考える機械となれ。
キングはぱちりと指を鳴らし、ローマンの立つ地面を生成した鉄で盛り上がらせる。
急激な高度の上昇に、ローマンは足元がふらついたものの、すぐに持ち直す。
だが、その間に再度ぱちり、と。瞬間盛り上がっていた鉄が掻き消える。
空中で足場が消えたらどうなるのか。自由落下のままに、地面へと堕ちていく。子供だってわかる帰結だ。
そんな状況で、鉄塊の放射が降りかかれば是即ち必殺となる。
必殺とならなくとも、足止めくらいにはなってくれるだろう。
「足りねえって聞こえなかったみてぇだ。補聴器付けた方がいいんじゃねぇの?」
だから、どうした。必殺など、知ったことじゃない。
目眩ましの鉄塊に必殺など籠ってる訳がない。そもそもの話、今のローマンに半端は逆効果だ。
「消えろ、鉄屑」
ローマンは衝撃を纏い、更に後方へも噴出させた。
即席で推進力を得たローマンは空を駆け、突き抜ける。
空中だろうが、衝撃の方向さえコントロールしてしまえばある程度の動きは効く。
放たれた鉄塊についても、衝撃を纏えばダメージを受けることはない。
随分とまあ、腑抜けた足止めだ、と。ローマンは嗤った。
「敵陣侵入」
勢いのままに地面へと着弾。
其処は既にキングのテリトリーであり、一足一拳の間合いだ。
「やる気のねぇ攻撃とは、つれねえなあ。漸く会えたんだ、ゆっくり語り合おうぜ?」
「生憎、ガキと話すことなんざねぇよ。第一、趣味合わねえだろうが!」
「気が合うな、オレもだよ!」
接敵と同時に拳の応酬が始まる。
互いに振るう一撃は重く、当たれば必殺。故に、一発を当てれば、天秤は己に傾くことになる。
踏み込んで穿つ。右ストレートを絡めていなす。乱雑に放たれた蹴撃を捌いて流す。そのまま、手首の返しで弾き飛ばす。
迸る拳閃、弾く鉄拳。虚空を裂きながら、拳の嵐が乱れ舞う。
ローマンが放つ拳打の嵐をキングは無言で捌き続ける。
それは普段のキングならありえぬ、防戦だった。
純粋に反応速度と付随する行動もズレが生じている。
「――――ッ!」
「どうした、いつもの余裕がねぇぞ!? 随分とエンダにいじめられたみてぇだ!
キングちゃんはご機嫌斜めだなァ!!!!」
「野良犬がよく吠える……! 耳元でごちゃごちゃと、がなるなァ!」
掠る拳は鉄の鎧を屑に変え、徐々に追い詰めていく。
キングの動きは精彩を欠いていた。
もっとも、それはローマンのような戦闘を得手としている者だからわかるものだ。
大抵ならば、鉄塊の掃射で肉塊に成り果てているはずだ。
「吹き飛べ、野良犬ゥ!」
防御をかいくぐり、振るった拳はローマンにぶち当たる。
キングらしからぬ、繊細さのない乱雑な攻撃だった。
「…………でかい山登ってるかと思ったら、全然だったな」
ローマンの身体は多少はよろめいたものの、ダメージはない。咄嗟に放出した衝撃で、全て掻き消した。
この拳で全てを打ち砕いてきた。だというのに、眼前の若造は意にも介さない。
鉄仮面で隠したキングの顔を真正面から睨み返してくる。
その眼光を、キングは覚えている。嗚呼、それはまるで――。
「くたばれや、時代遅れ。老人ホームもてめえみてえな耄碌したカスは受け入れねえよ」
お返しと言わんばかりに放たれた拳が、キングの身体を吹き飛ばす。
力強い、真っ直ぐに振り抜かれたものだった。
全身に付与した鋼鉄による減衰があるとはいえ、そのダメージは計り知れないだろう。
……俺は負ける。
拳を受け、視界と心が罅割れていく。
ルーサー・キングという帝王が壊れていく。
築き上げたモノが奪われる。落日を受け入れ、定まった末路を辿り切れ。
敗北という不治の傷を刻まれた帝王は何処にも行けやしない。
何かが込み上げていくようで、その実不動。
波紋は広がらない。結末は変わらない。もう、これ以上起き上がる理由などなかった。
ルーサー・キングは負けた。エンダ・Y・カクレヤマとネイ・ローマンに。
足掻いた所できっといい未来なんてものはないし、疲れてしまった身体に鞭を打ち、拳を握ることもない。
自然と漏れ出る自問自答についても、何処か他人事だ。
――お前は何だ。
うるせぇなあ。
――お前は何だ。
俺を誰だと思ってやがる。
そんな問を投げかけずとも、すぐに答えられる。
ルーサー・キング。キングス・デイの首領。絶望を与える黒き帝王。
男は多くの者から恨まれ、生を望まれていない。それが悪だ。それが、悪徳の頂点に立つということだ。
誰かの幸せを壊し、誰かのあるはずだった未来を奪い、己の糧にする。
多くの人々を歪めて、傷つけた男がどうして生を望まれようか。
そして、キングもそんなことは承知の上でこの道を選んでいる。
だから、その程度の自己開示はとっくに済んでいるのだ。
知っているさ、それくらい。皮肉げに浮かんだ笑みは、男が諦観と共に生み出したものだ。
――お前は何だ。
牧師。巨悪。怪物。帝王。最強。
どれを語れば、行き着く。いいや、どれを語っても行き着く先は同じだ。
「下らねぇ、人生だった。飽き飽きしていた」
ありふれた悲劇を前に、良き世界なんてものはとっくに諦めた。
そうして、世界を渡り歩く内に、歪んでどうしようもなくなった下衆野郎。
不条理な事情があったとて、到底許されることはない、加害者。
悪意を以て存在を確立し続けることしか知らないクソッタレ。
地位を得る為に悪を為した。名誉を轟かせる為に悪を束ねた。金を手に入れる為に悪を生んだ。
それらの代価が今、眼の前まで来ている。
己が生んだとも言える若きギャングスターが生命を取りに来ているのだから。
当然だ。やったらやり返される。
怯える必要なんてない。悪に相応しい結末だ。
こうしていざ死を前にすると、つらつらと走馬灯が流れるというのは本当だった。
思い出すのは幼少期から青年期に至るまで。
そうして浮かび上がるのは一つのレゾンデートルだ。
嗚呼、今生の際だ、白状するとも。
ずっと、思っていた。不平等で悪徳蔓延る世界が嫌いでたまらなかった。
世界の支配者を気取りながら、どうしようもなく、狂おしくなってしまうくらい、世界が嫌いだったのだ。
いつかこんな掃き溜めのような世界を否定できるくらい強くなろうと誓った。
自由。どうしても、と。キングが欲していたモノは何にも代え難い宝物だった。
それを得ることができたらお金だって稼げる。美味しい飯や酒だって食べ放題飲み放題だ。
何故、世界が嫌いだったのか。
自由を認めぬ不平等が其処にあったからだ。
何故、あの日見た警官に対して、怯えが迸ったのか。
自由を奪われるからだ。
何故、人々の目に恐怖を抱いたのか。
自由を認めぬ差別があったからだ。
自由、ああ、自由がない。強いられた抑制。
超力なんてなくても、平常通り――縛られて生きていく。
それが、人だ。それが、世界だ。
ジャンヌやりんか――正義の味方は人は救えても世界は救えないと信じている。
彼女達は人を正しく導けても、間違い続ける世界は正せない。そもそも、人が世界を正すなど、烏滸がましい。
誰もが救われる理想郷など所詮は物語の中でしか生きれない。
だから、受け入れた。弱くて浅ましい世界――間違い続けることこそが正しい、と。
人は世界を変えることはできない。ならば、変えるのは自分か、他人か。
変革と適応に身を委ねるしか道はない。
世界と共に人もまた、間違い続ける。そう在ることを、強いる。
ああ、不自由を強いて、自由を奪ったのは己か。それでいて、自由を奪われることを誰よりも怯えていた。
結局、エンダの言う通り、下衆野郎の言い訳だ。
この世界で生き抜くには圧倒的な力がいる。それを持ち合わせておきながら変革をしないのか。
その言葉は正しい。正し過ぎて、嫌になる。
故に、自分はあの若造達が嫌いだったのか。
ジャンヌ・ストラスブール。ネイ・ローマン。葉月りんか。
力があり、世界を変革させようとするモノ達。
勝てない勝負は挑まないし、そもそも盤上へと持ち込まない。ゲームで勝ち続ける為の鉄則だ。
それを、彼女達は己こそがゲームのルールである、と。
揺らがぬ、曲がらぬ確固とした信念を貫く方こそ是だ、と。
そんな憧れてしまうくらいに強くて真っ直ぐな決意――許せるはずがないだろう?
腐りきった嫉妬だな、嗤えてくる。世界を嫌いながらも、受容することを選んだ。
魂の強度からくる中身の強さが、キングにはなかった。
認めよう、己に帝王の器はない。
単純に嫌いな奴を殴りたい。見下してきた奴等を一人残らずわからせたい。
そんなプリミティブな欲求で生きてきた下衆野郎だ。
それがいつから、立場だの後先だの下らないものに固執するようになってしまった。
当初抱いていた自分勝手な欲望も忘れ、型にはまった生き方を選んでいたのか。
その理由は怖いからだ。帝王の立場を失うこともそうだが、奪われ続けたあの頃に戻ることが一番怖い。
奪われる側が嫌で、奪う側へと踏み越えたが、その為にどれだけ研鑽を重ねたと思っている。どれだけ耐え忍んだと思っている。
嫌悪に塗れた世界を受け入れざるを得なかった事実。それが、キングにとってどれだけ屈辱を覚えたと思っている。
全ては奪われない為に足掻いたことだ。奪って手に入れた地位も名誉も金も生命も――二度と奪われないように。
自分は失うことではなく、奪われることが何よりも怖いのだ。
キングの行動は奪うというよりも、奪われないようにするといった予防だ。
だから、彼は奪う為ではなく、いつの間にかに奪われない為に戦っていた。
帝王でいられるように。もうこれ以上、傷つくことがないように。
成功者の防衛本能は、キングの根幹に覆い被さり、厳重に封をした。
ジェイ・ハリックによる叫びがなければ。その根幹は光を浴びず。
夜上神一郎による試練がなければ。己の内に在った『弱さ』は気づくことなく。
エンダ・Y・カクレヤマとの激戦がなければ。その始まりはずっと隠れたまま。
幸か不幸か。この死線にて漸く思い出した、原初の想い。
半端な戦場では到底掘り出されることはない、それがルーサーキングの始まりだった。
もしも、この刑務に参加しなければ、このまま、己を知らずに死んでいただろう。
キングは己へと問い返す。
自分が本当に、望んでいるモノ。成し遂げたいモノ。
それらを振り返り、反芻しろ。その結果、残った選択肢こそが正解だ。
どうして、敗けられないのか。
敗者は根こそぎ奪われ、蔑まれ、地へと這い蹲るからだ。
自分はまだ、敗者になれない。否、なりたくない。
――お前は誰だ。
ああ、改めて答えてやるよ。俺はただの下衆野郎さ。
所詮どれだけ粋がろうと、己の根底は変わらない。
そんな下衆だからこそ、衝動的に生きて、死ねばいい。
だって、ムカつくだろう? 世界も、人も。
捻れて歪んだ心を満たすのは、その選択しかない。
後先も立場も考えず、眼前の見下している敵を殴る。
単純明快、そうやって生きたいとずっと願っていたじゃないか。
きっといい未来が待ってるよ。
ふざけるな、俺はそんな未来を生きたい訳じゃない。
この奥底に在る情動をひた隠しにして、迎える未来など、意味があるのか。
ならば、抱えているものなど全部投げ捨ててしまえ。
地位も金も未来も、総てを焚べて、最強の鉄を創り上げろ。
この憎悪を忘れぬよう、吐き出した言葉は総て刻もう。
長年構築した“キング牧師”ではない――ルーサーキングが叫んでいる。
御託はいいから立ち上がれよ、“スカーフェイス”。さっさと、“ドブ底の金貨”を拾い上げろ!
「OK。クソッタレな世界に愛《憎悪》を込めて」
これだから、己のどうしようもなさは始末がない。思わず、苦笑が漏れ出てしまった。
キングはゆっくりと起き上がり、眼前の“格上”に対して破顔する。
「悪いな、若造。無様を見せた」
「随分と物わかりがいいじゃねぇか。漸く、死ぬ準備が整ったのか?」
「そうだな。どいつもこいつも棺桶をわざわざ用意してくれやがって。
だが、まあ……これまでの俺は死ぬべきだった。あんな半端で生を長引かせちゃいけねぇよ」
この齢になって、この土壇場に至るまで。自分は何も視えちゃいなかった。
もし、この刑務作業がなければ、と思うと嗤ってしまう。
立場や後先を理由に、お前はお上品に生きていくつもりだったのか。
「耄碌も此処までこねぇと、わからねぇ。いや、俺は最初からわかってなかったか」
己の品行を心底恥じる。傲岸不遜を気取っておきながら、何を人の枠組みに囚われている。
それは、これまで上から見下ろしていた圧倒的な帝王の風格がない、ただ一人の老いた男だ。
死んだように生きていくことに意味はあるのか。その問いに今なら迷いなく返せる気がした。
「ネイ・ローマン」
彼だけじゃない。ジャンヌやりんか、征十郎にギャル、エネリット。
キングと刃を交えて尚、最終局面まで生き残っている全員と比較して、彼は劣っていた。
大層な願いもない、俗物。それが、ルーサー・キングだった。
「すまなかった」
「――――――あ?」
割れた鉄仮面から見えるその顔は、ローマンがこれまで抱いてきたキングとは程遠い誠実さが見え隠れしている。
本当に申し訳ないといった風で、これまでのビジネスライクなものでも、帝王を装った威圧でもない。
この言葉は本物だ。詭弁、詐術、駆け引き。そんなものは一片足りとも存在しない。
「お前は俺よりも上等な悪党だ。帝王を気取っていた俺よりも、ずっとな」
どんな思想を掲げようが、どんな世界を求めていようが関係ない。
キングはもう侮らないし、蔑まない。利用だなんて、そんな上から目線などできるはずがない。
深淵の奥底まで堕ちた下衆野郎として、過去に囚われたモノとして。
「だから、お前――――俺より“格上”だろう? 俺を見下げて、ああ………………苛つくなぁ。
立場がどうだとか、因縁とかじゃなくて、単純に、お前をぶん殴りてぇ。
飛ばせねえよ、笑わせねえよ」
立場など、理由など、拘っていたばかりに、ここまで追い詰められてしまった。
此処は深淵。生き残ったという事実だけが総てだ。
これより相対するモノは総て格上。高く飛び立てる強さを持っている。
故に、全員此処まで堕ちてしまえ。
皆、皆だ。何もかも、己を苛立たせるもの総て――――拳で黙らせる。
単純明快だ。俺が健やかに生きていく為に、お前らは邪魔だ、死ね。
ああ、大層な理由なんて必要ない。帝王の立場など関係ない。
全部、どうだっていい。この苛立ちが消化できるなら。
「――――取り繕いが過ぎたなァ、畜生ッ! 苛立つなら、殴れ! 目障りなら、潰せ!
簡単なことだ、俺はすっかり忘れちまってた! ハ、ハハッ、ハハハハッ!!!!!」
激情を抱えて生きていたあの頃のように、キングは自由を得る。
這い上がっていこう、もう一度。
帝王ではない、ルーサー・キングとして。あの時、世界の総てにムカついていた悪童として。
気に入らないから殴る。拳を握る理由なんてそれで十分だ。
口元を釣り上げて、嗤う。濁り切った欲望が詰まった悪党らしい笑みだ。
瞬間、ローマンは咄嗟に後ろへと下がる。
鉄塊が降り注ぐ。これまでとは違い、ローマンの体力を削りに来ている。
これまでとは違う、生命を取りに来ている殺意の結実。
逃げも交渉も欺瞞もない、ネイ・ローマンを殺す為だけの顔だ。
「……この土壇場で、アゲてくんのかよ」
今、ローマンが抱いている感情は畏怖だ。窮地で己の根源を認め、受け入れる。
変革というより、自覚なのだろう。
たったそれだけの簡単なことを、人間はできない。老若男女問わず、ましてや、長い年月を経たキングなら尚更のことだ。
立場も後先も全部捨てて、気に入らない奴をぶん殴る。
ただそれだけ。それ以外は全て不純と言わんばかりにギラつかせている。
「殺してやる」
「潰してやる――!」
それでも、ローマンからすると、キングのあれこれなど関係ない。
両親が、欲望に溺れ切った末路を見たその日から。
この怨敵を倒すまで止まらないと誓った重みがローマンを突き動かす。
もとより手加減するつもりはなかったが、相手が下衆なら何の憂いもなくぶっ飛ばせる。
もっとも、どんな事情があってもぶん殴れるタイプではあるが、今回ばかりはそれ以上に、ローマンも、“ムカついた”。
「ネイ・ローマン」
「ルーサー・キングゥッ!」
“ムカついた”。互いにその情動は己の超力を高ぶらせ、出力の限界を超えていく。
燃え上がった怒りのままに、ローマンは衝動を放つ。
抑えきれぬ激情を踏まえた、最低で最高の一撃だ。
先程ぶつけたものとは比較にならない赫黒のジャバウォック。
まさしく、魔獣の顎がキングを飲み込んでいく。
是なるは必殺の決定打。当然、受け止めることは死を意味する。
ならば、回避するのが妥当。例え、鋼鉄を身に纏おうが致命は確実である。
打開策は、打開策はあるのか。此処で躱したとて、持久戦にもつれ込む。
エンダのようにオーバーヒートを起こすのならまだしも、ローマンにその兆候は見られない。
神といった異聞なる存在ではなく、人のまま駆け上がった超人だ。
この一撃を凌いで、次が何になる。そもそも、次なんてものを投げ捨てたのが今の己であろう。
後先を考えた先に勝利はないことを知ったはずだ。
帝王はギャングスターに勝てない。
けれど、下衆が弱い理由など、只人が屈する順当が尊ばれるなど。ルーサー・キングがネイ・ローマンに勝てないと誰が決めた。
不可、と。勝利への道筋に浮かぶ二文字をぶち抜く冴えたプラン。
子供の喧嘩かよ、とくつくつと声に出して笑うとっておき。
四の五の足踏みをしてないで、真正面からぶち破れ!
赫黒の衝撃に対して、キングは真正面から受け止めた。
キングの全身を痛みと圧迫感が襲う。纏った鋼鉄は瞬で崩れ去る。常軌を超えた速度で再生成しているにも関わらずだ。
被検体でさえも吹き飛ばし、ダメージを与えた一撃を、只人が踏破できるはずがない。
確かに俺は下衆の只人だ。だが、それがどうした。
憎悪など、幼少期から慣れている。痛みなど、常に己の内外に渦巻いていた。
侮蔑、恐怖、悔恨。負の感情が己の始まりだった。
兄を殺された時から。次は自分なのかもしれないと疑心を抱いた時から。世界が己に優しくないと知った時から。
あァ、ずっと味わってきた敗北感。何の理由もなく奪われる理不尽さ!
忘れるな。己の始まりは、マイナスだっただろうが。
そして、そういった視線を向けてくるモノを残らずぶち殺す為に力を得たのだろうが。
馬鹿らしくなるくらいの再構成を重ねて、キングは突き進む。
正気じゃない。後先を考えるならば、絶対にやらない自殺行為。
けれど、まあ。一度きりの人生だ、大博打をかけるのも悪くはない。
「お前はまだ――――――――」
鉄を打つ音が聞こえてくる。己の始まりが鼓動を早くする。
ああ、この程度だ。だって、お前の憎悪は“理由”がある。
道筋の通った条理の在るフラストレーションだ。
理不尽など無い、“真っ当な憎悪”などに、屈してなるものか。
「俺に恐怖を刻むには、“正しすぎる”なァ!」
強がりも含んだ痩せ我慢。
されど、それはキングの原点でもある。
理由無き差別に、暴力に曝され、それでも生きてきた至上命題。
――俺を、誰だと思ってやがる。
只人のスカーフェイス――下衆野郎さ。
たったそれだけ。ローマンの憎悪が、濁っていない――腐り切ったモノでないという理由で。
その赫黒は後方の彼方へ。
帝王が堕ち、若き俊英が手に入れるはずだった未来を、世界が嘲笑う。
皆目せよ。悪は朽ちず、正当性が何処にもないたった一つの結末。
結果として、ルーサーキングは、ネイ・ローマンを踏み越えた。
「よう」
嵐を踏み越えてきたとは思えない、朝の挨拶のように気軽な声色だった。
全身ボロボロで、今にも死にそうな風体だというのに、溢れんばかりの生命力が感じられる。
思わず、乾いた笑い声がローマンの口から漏れ出した。
「――――――――イカれてんのか?」
「うるせぇ、自覚はある」
直後、キングの拳が突き刺さり、ローマンを大きく吹き飛ばした。
■
致命傷だ。まさか、あのキングが己の衝撃を突っ切って拳を振るいに来るとは思わなかった。
咄嗟に吐き出した衝撃でこそ緩和したが、致命は変わらない。
ローマンはエリアを跨ぐ程に、勢いよく吹き飛び、地面を転がり漸く止まった所だ。
ネイティブの頑強性を以てしても、避けられぬ死。
むしろ、まだ息をして、思考を取り纏められる時点で、相当の上澄みであろう。
事実、義手は粉々に砕け、内臓はぐちゃぐちゃだ。肋骨も折れて、足首の骨にもヒビが入っているだろう。
ここから刑務終了までまだ数時間。対して、己の寿命は後何分だ?
仮に、キングを倒せたとしても、その前に死んでしまう。
……ままならねぇな。
今持ち合わせている恩赦ptにエンダのものを加えたとして。
流石の治癒キットもボロボロになった内臓までは治してくれないだろう。
ローマン自身、こうなる結末も予測はできていた。
絶対に死なない。そんな過信を抱いた者達は漏れなく、無様に死んでいく。
「………………っ」
口元から吐き出した血反吐を拭い、ゆっくりと身体を起こす。
嗚呼、クソッタレ。恩赦ptを抱えたまま落ちるのも癪だ。
別に孤独に死ぬのもストリートの野良犬らしい最期だが、生憎と此処はストリートではない。
それに、今のローマンには相方もいる。その相方に別れもなしに死ぬのはゴメンだ。
故に、恩赦ptの使い道はそういうことに使うことに決めた。迷いはなかった。
恩赦pt使用。相手と自分の元へと通信機を転送させ、ローマンは声を出す。
応答はすぐに出た。向こうも生命の瀬戸際だったかもしれないが、此処は己のわがままを通させてもらう。
「よう。まさか数時間会わないだけで声も忘れたとか言わねぇだろ?」
最期に話さなきゃならない――もう未来を共に見れない君へ。
「悪い、オレもうすぐ死ぬわ」
通話の向こう側から困惑の声が聞こえてくる。
それはそうだ。突然通信機が転送されて来て、向こう側からは自分の死亡宣言が通達されるなど、混乱するのも仕方がない。
らしくもなく、声色も弱々しい。
誰か死んだのか。近しいので推測すると、北鈴安理辺りか。アレも中々奇特で頑固な奴だ。
メリリンを庇うことで己が望むきっといい未来を切り拓いたのだろう。
「ルーサー・キングと戦ってたんだが……あの老害、土壇場でやりやがった。
オレの超力に真っ向からぶつかって突破するとか、頭イカれてるぜ。あの被検体でもやらねぇだろうよ」
あの被検体でさえ再起に時間がかかるものに、正面からぶつかるなど、普通はやらない。
そんな合理的さの欠片もない、獣性剥き出しの判断など、人はやるものじゃないのだから。
「後始末含めて大変だろうが、任せた。この島を出てからは……ま、何とかなるだろ。
アイアンへの誘いは……適当に流しといてくれや。お前を縛りたくねぇし。
メルシニカを再興させるなり、フリーランスをやるなり、手段なんざどうでもいい。生きて、笑え。できんだろ、お前なら。
あ、でも、一つだけ注文な。ヤクだけはやるな。もしやったら、地獄から這い上がって殺すぞ」
返答は求めない。というよりもそんな余裕もない。
本来であれば、とっくに死んでいるはずなのだ。
それがまだ生を繋いでいるのは、ネイティブの生命力の強さと――愛と根性だ。
「こうしてお前と話すのも最期になると――未練だな。二人で、一緒に世界を見て回りたかった。飯食って酒飲んで馬鹿みてぇな話をしまくって。
どうも巡り合わせ――運が悪かった……いや、違うな。
オレがあの爺より弱かった。男の勝負だ、そこはごまかしちゃいけねぇよなあ」
突飛な一手を稀に打つキングだが、それは全て後先と打算を踏まえたものであった。
土壇場にて覚醒。情動ありきの戦闘スタイル。そして、後先も考えぬ妙手。彼の人生を長く追ってる者でも理解できぬ暴虐の情動。
今回のような破れかぶれとも言える行いは刑務官含めて、誰もが読めぬ行動であろう。
「深い傷は与えてやったから、ジャンヌ辺りをけしかけてぶつけな。逃げを打つなり、協力して戦うなり……お前なら賢く回れるだろ?」
刑務の時間も残り短い。最悪逃げ続けるという選択肢を取れば、生命だけは――、いや彼女がそんな選択を取るとは思えない。
死んだように生きていくなど、彼女の性格からして似合わない。そうだ、後は適当にエールを送って――。
「メリリン」
本来なら此処で言葉を断って通信を終わらせるべきだった。
どれだけ言葉を投げかけようが、自分は死ぬ。
彼女の重りになるような言葉など、投げかけない方がいい。
死人が生者を縛って足取りを重くするなんてゴメンだ。
――ンな弱い女じゃねぇんだよな、お前は。
けれど、彼女は全部背負ってやると叫んだのだ。
自分に向かって、腹を括った。“親友”も“家族”も置き去りになんてしないと啖呵を切ったのだから、今更己程度を背負えぬ女じゃあるまい。
だから、お構い無しに自分も投げたい言葉を彼女へと伝えていく。
自分のことを忘れて生きていけなんて、女々しいことは言わない。
背負えよ、勝手に。生きて、世界の行く末を見届けろ。
ネイ・ローマンが惚れた女がその程度の重りで歩みを止めるものかよ。
「約束、守れなくてすまねぇ」
だから、本当に悔しいのだ。
置いていくな、と。一緒に生きていこう、と。
キスまで添えて撃ち込まれた約束を果たせそうにない。
「そんで、まあ、なんだ……」
年相応の少年のように言い淀むのは、改めて気恥ずかしさがあるのかもしれない。
だが、そんな恥ずかしさなんてゴミ箱に捨ててしまえ。この言葉は、これだけは絶対に伝えないといけない。
女が腹を括って一世一代の告白をしたのだ、それに返答できずして何が男か。
思えば、自分は明確に彼女に対して伝えていなかったではないか。
似たような言葉や態度で想いは示してはいたが、それだけでは足りない。
末期の言葉だ、伝えぬまま後悔だけはしたくない。
――ああ、そうだな。
今から放つ言葉は彼女が張った喧嘩に対して、“Scrapper”が買った最期の一撃。
そして、ひとりの女が放った、“キルショット”に対しての返答。
「メリリン、愛している」
初恋だった。産まれて初めて、好きになった女だった。
絶対に離したくない、自分のモノにすると誓った最愛だった。
来世なんてものがあるとは思っていないし、神なんてクソ喰らえ。
それらの偶像染みたものは絶対に信じないと豪語するローマンだが、メリリンと出会えた運命にだけは感謝してやってもいい。
此処まで惚れ込んでしまったのは、自分でもわからないが、愛とはそういうものだろう?
「出会って喧嘩を売られた時からずっと、オレはお前に惚れていた」
クソッタレな人生だった。こんな刑務に巻き込まれなければ、何処かの路地裏で野垂れ死ぬであろう餓鬼だった。
明日が来る意味すらわからない、閉塞した世界だった。
それがまあ、惚れた女ができて、きっといい未来なんて馬鹿げたモノも多少は信じたくなったのだ。
「好きだ、メリリン。………………じゃあな」
ささやかな祈りを込めて。例え、未来が無くなってしまっても。
今、この瞬間、己が望む永遠/刹那は此処に在る。
「――――Lebe glücklich」
愛する人よ、幸福に生きよ。明日はきっと、いい日なんだから。
……本当に、愛していたのだ。
通信を切るのと同時に、ローマンは深くため息を付いた。
できることなら、この生命が終わるまで彼女の声を聞いていたかったが、そんな悠長な事も言ってられないみたいだ。
彼女に末期の声など聞かせたくないし、そもそも自分はまだ“勝つことを諦めていない”。
「おい、恩赦使用だ。荷物を全部、メリリンに送ってくれ。それで残ったポイントは適当に武器なり詰めといてくれや」
どうやら、相手は自分が死ぬまでの時間すら惜しいらしい。視界の端に映る黒はゆっくりと此方へと近づいてくる。
「わざわざ、とどめを刺しに来たのかよ。放置してても死ぬような奴に関わってんじゃねぇよ。大人しく次の獲物狙っとけや」
「んなつまらねぇことやるかよ。直接ぶん殴って殺したい。知るかよ、んな後先考えた行動」
「はっ、理性的な帝王サマはどこにいったんだか」
その様はボロボロで、傷のない所などなかった。鉄を纏う気力もないのか、今のキングはボロボロのスーツを纏った重傷の人間だ。
ローマン以外の誰かが遭遇したら勝てそうなくらい、消耗しているにも関わらず。
逆に、誰も勝てないのではないか――神でさえも殴り殺してしまえる程に、彼は強者として立っているのだ。
何が格下だ、笑わせる。その姿は生命力の強さを感じる程、真っ直ぐだった。
「全員殺す。半端に生かすなんざ、もうしねぇよ」
真っ直ぐに聳え立ち、濁り切った悪意。
ただ、ひたすらに他者を虐げる。誰かの傷になり、人を壊死させていく。
そんな下衆の快感を糧に拳を握るキングは間違いなく、軽い。
理性という蓋で徹底的に封じ込めていたが、開封したらとんだものだ。
悪童。彼もまた、ろくでなしである。勝つことでより多くの人が傷つき、失っていく。
「御大層に展望をペラ回してっけどよ。まだ、勝利宣言には早すぎるんじゃねぇか?」
自分もまた、同じだから。
気に入らないモノを殴り、生きてきた“Scrapper”として、勝利を安々と明け渡す訳にはいかない。
「何もしなくても死ぬ。だからといって、無料でくれてやる生命じゃあねぇよなあ!」
ローマンは肩で息をしながら立ち上がる。もうすぐ死ぬ身体だ、ふらりと足元は覚束なかった。
それでも、眼前の敵がいる限り、ローマンが倒れ伏したままなどありえない。
唇を歪め、悪童らしい、汚い笑み。血と泥と鉄屑に塗れたギャングスターの花道だ、退けよ運命、オレが通る。
力の入らない拳を無理やり握り締め、ローマンは大地を蹴り上げた。
「あアアあァぁぁあぁあアアあアァァァアあアあアアアア!!!!!」
知っている、この生命が数分もしない内に途切れることも。
だというのに、この死に尽くした身体は限界を超越して稼働している。
死ぬとわかっていても、ローマンの目はまだ死んでいない。
目標はキング、目線はしっかりとその先に。振るう相手はこの狭い世界でただ一人だけ。
キングの元へと走り切って、左ストレート。その為だけに立ち上がり、それが終わった時だけ、倒れこんでいい。
「ルウゥゥサァァァァァッッ!!! キィングウアァァァアッ!!!!!」
残った最期の道標。黒へと叩き込む赫黒の衝動。存在証明はこの一撃で須らく定まっている。
軋み、霞んでいく世界の中で、ローマンは走り、奔り、疾走り抜いて。
拳をおおきく振りかぶって――――――――――――――。
「――――――――あァ」
こつんと軽い金属音が鳴った。拳はもう、鉄を砕けない。
死に尽くしている。それは文字通り、彼の身体は動くことすら奇跡と呼べるくらいに終わっている。
もはや超力が発動しないくらい、ローマンの身体は死んでいた。
キングの元へと辿り着く為に。障害として地面から盛り上がった鉄壁をローマンの拳は壊せなかった。
疾走は途中で止まる。叫び声を上げる余力すら残っていない。
世界が黒く染まる。光の視えぬ暗黒へと堕ちていく。
「お前の憎悪が濁り切っていたら、結果は違ったかもしれねぇな」
愛を知ったからこそ、此処まで来れた。濁らぬ憎悪で手を伸ばしたから『到達者』になれた。
この闘いは間違いなく、ネイ・ローマンの全力だった。その上で、ルーサー・キングを踏破できなかった。
ただそれだけの、話だ。
「俺の勝ちだ、ギャングスター」
重力に逆らえず、膝から崩れ落ちる。
草の匂いはわからない。静かな勝利宣言は聞こえない。
やがて、闇は満ち、混沌が世界に幕を下ろす。嗚呼、未来は何処にある。
それは夢でも見ないような、くすんだ世界。
【ネイ・ローマン 死亡】
【C-4/草原/一日目・夜中】
【ルーサー・キング】
[状態]:疲労(極大)、全身ダメージ(極大)、肉体の各所に裂傷(中)、左手と顔左半分に火傷痕(処置済み)、左目失明(布を眼帯として巻いてる)
[道具]:漆黒のスーツ(新調)、私物の葉巻×1、タバコ(1箱)、応急処置キット(幾らか残量あり)
[恩赦P]:107pt
[方針]
基本.立場も後先もどうだっていい。全員殺す。
0.何もかもが気に入らない、殺す。
※彼の組織『キングス・デイ』はジャンヌが対立していた『欧州の巨大犯罪組織』の母体です。
多数の下部組織を擁することで欧州各地に根を張っています。
※ルメス=ヘインヴェラート、ネイ・ローマン、ジャンヌ・ストラスブール、エンダ・Y・カクレヤマは出来れば排除したいと考えています。
※超力の第二段階に至った『到達者(プレシード)』です。
全身に漆黒の鋼鉄を纏い、3m前後の体躯を持つ“黒鉄の魔人”と化す超力『Public Enemy』が使用可能です。
※アビス内でラバルダ・ドゥーハンと面会し、彼女からシエンシアについて聞き出していました。
最終更新:2026年03月26日 09:40