「この会場にいる40人が対等の条件で戦って最後の一人になれる可能性は約2%。ふっ、私もここまでのようですね」

名簿や支給品、バーチャル空間やアバターという特殊性から出多方秀才が導き出した結論である。



まずは名簿についてだが……この"名前"も厄介な代物となっている。。
例えば、秀才の親しい者である生徒会長の大日輪太陽が参加者として存在する。
太陽は熱血な性格をしていて人助けに労を惜しまない人物だ。
故に、彼と合流することができれば秀才の生存率は上昇するだろう。

……だが、名簿の"大日輪太陽"が本物とは限らない。
アバター設定時、アバターの名前と見た目を変更することが可能であることを秀才は確認している。
生徒会長である太陽の交友網はかなり広く、同じ学校の者なら彼に化けることは容易いだろう。
本物の彼が培ってきた信頼を使用して騙し討ち……太陽を知る者限定ではあるが、勝ち抜く戦法の一つとしては悪くない。

本物とは限らない……これは名簿に載っている自分以外の全参加者について言える話だ。
HSFのリーダー・鈴原涼子の中身は涼子の熱心なファンで、好きすぎるが故にアバターを再現した……とか。
ミュージシャン・神在竜牙の中身は竜牙の熱心なアンチで、彼の評判を地に落とすためにアバターを再現した……とか。
殺人鬼・桐本四郎の中身は犯罪者に憧れる中学生で、普段は喧嘩すら避けるような臆病者だった……とか。考え始めるとキリがない。

しかし、この"名前と本人が不一致"問題はある程度クリアできると踏んでいた。
なぜなら、秀才には今までに集めてきたデータがあるからだ。
周囲の人物やテレビに出るような有名人の様々なデータが秀才の脳には蓄積されている。
これらのデータとスキルの"冷静"の効果が合わされば、その人物のフリをしているかどうかを見破れる確率は高いはずだ。
むしろ相手の方針を見破る手がかりにすらなるだろう。


次に支給されたアイテムについて考えると、こちらもなかなか良いものが揃っている……ような気がした。
武器としては槍が支給されている。近接戦闘なら、槍のリーチの長さは有利に働く。
防具はVITを上昇させるものではないが、火や熱への抵抗力が上がる装飾品があった。
そして最後の一つは……20枚ほどの写真であった。

「……」

誕生日ケーキのど真ん中にモアイが鎮座している写真。モアイはいつもの無表情で祝う気が一切見当たらない。
学習机の引き出しの中で青いタヌキが漫画を読んでいる写真。オスっぽいタヌキなのに読んでいるのは少女漫画。
ギター+口紅=手足が生えたオカマ風のギター、な写真。どうやら同僚のベースのことが好きらしい。
その他、見るだけで微妙な気持ちにさせてくれる写真の詰め合わせである。
この写真について秀才は、相手を困惑させるのも立派な武器だろう……と強引に結論づけた。


最後に考えるべきは、バーチャル空間での殺し合いという点についてだ。
  • "殺し合い"なのだから、戦闘慣れしている者が有利である。
  • 親しい者が死んでも人を殺しても動じない、メンタルの強い者が有利である。
  • アバターのパラメータもスキルも自由度がかなり高いため、ゲーム慣れしている者が有利である。

どれも正解であり……秀才はどの要素も持っていなかった。
武術についてのデータはあれど身につけたことはなく喧嘩も弱い。
スキル"冷静"のおかげでメンタルだけは強く保てそうではあるが、優勝してスキルを失った後は人を殺したことに悩む日々が続くだろう。
そして最近はプレイヤー同士が戦うゲームが流行っているが、秀才はプレイしたことすらない。
対人においてどんなスキルや立ち回りが強いか……なんてデータも持っていない。
物理攻撃と精神攻撃の両方に対抗できるパラメータとスキルにしてはみたが、より強い設定がきっと存在する。

これらの要素を全て考慮した上での結論が約2%の生存率だ。
決して40人のうちの1人だから1÷40で約2%を導き出したわけではない。

さて、この約2%の確率をどのように高めていけば良いだろうか。
そのカギは支給アイテムである"焔のブレスレット"にあった。
このアイテムは、身につけていればマグマに落ちても3分間は生きられる程度の炎熱耐性を得る……らしい。
それなら、火山が定期的に噴火すると注意書きのある火山エリアを中心に動けばいい。
わざわざ危険な火山エリアに向かおうとする者は統計学的に考えて少ないはずなのだ。
……もしかしたら秀才の知らないゲームの定石があるのかも知れないが、今の秀才は自分の持つデータを頼りにするしかない。

方針は決定した。そして、今いるのは砂漠エリアだ。
幸いにも川……か海かは分からないが水辺が見えており、このまま水沿いに進めば火山エリアに繋がる橋へと行き着くはずである。

そうして歩くこと数分。秀才の耳は一つの歌声を捉えた。

「……でも…………ない……~♪」

遠くて聞こえにくいが、それは知己の声であった。
声の主は大日輪月乃……芸名はTSUKINO。生徒会長の妹で、ファンの多いアイドルである。
ファンが多いということは、誰かが化けている可能性も低くないということだ。
しかし、秀才には今まで月乃と交流してきたアドバンテージがあり、偽者なら見破れるという自信もある。
そして何より、こんな殺し合いというフィールドで歌っている知り合いを放っておくことは秀才にはできなかった。

声の元へと急いで向かう秀才。そこにいた月乃は制服ではなく、ライブで着るような華やかな衣装を着ていた。

「~♪ 月の下で出会った~♪」
「月乃君っ!」
「あら、出多方さん!良かったぁ……怖い人が来たらどうしようって……」

月乃は秀才の名を呼んだ。つまり、月乃の中身は"月乃と秀才の関係を知っている者"である。
この時点で月乃の中身はかなり限定されたと言っても良い。
第一候補は月乃本人。第二候補はTSUKINOの大ファンを公言している生徒会の書記か。
だが、秀才が今までに集めたデータが目の前の月乃は本人ではないことを告げていた。
自分の関係者であれば、"月乃が偽者であることを見破った"ことを突きつけた時の反応で、秀才ならその中身が絞り込める。

「見た目も声も月乃君そっくりだ。よく設定しましたね……」
「……出多方さん?」
「だが、キミは一つのミスを犯した……そのミスが、私にキミを偽者だと看破させたのですよ」
「な、何を言って……」

秀才は決定的な証拠である"アバターの設定ミス"を突きつけた。

「大日輪月乃の胸は!もっと小さいッ!!」



「……で、出多方さんのえっち!」

「……へ?」

両腕で胸を隠すような仕草を見せる月乃。秀才はその仕草に見覚えがあった。


そう、あれはいつの話だったか。秀才は人気の出るアイドルについて月乃に語っていた。
世間に向けたアピールの仕方からやがて話は性格・ルックスへと移り、その中で月乃のスタイルに言及する。
『世の中の男性の半分以上は胸が大きい方が好みだというデータがある』……そんなことを、月乃の胸を見ながら言ったのだ。
彼の名誉のために言っておくと、その時の秀才はセクハラしようとする意思など全く持ってはいなかった。
あくまでも"人気の出るアイドル"と"男性の好み"と"月乃のスタイル"をデータから見て語っていただけである。
その後、彼は月乃の兄である太陽に往復ビンタされたのだが……まあこれは余談である。

兎にも角にも、先ほど月乃が見せた仕草はその時と同じものだったのだ。
まさか貴重なポイントを使って胸を盛るなんて秀才は考えていなかった。
これはあまりにも月乃が天然すぎたが故に起きた勘違い。ただそれだけなのである。
偽者と見破られた動揺は全く見られない。動作や視線の動き、立ち方といったデータはリアルでの月乃と一致している。
流石に、月乃の性格を完璧にトレースしたファンという線は捨てて良いだろう。

「すまない。キミは本物です」
「……もう!ヒドイですよ、出多方さん!」

秀才は冷静だった。この環境下で人間関係がこじれたら致命傷になりかねないことも当然把握している。
故に、一瞬で謝罪した。




月乃と話してみると、やはりというべきか現状の認識がかなり甘かった。
これはゲームのようなもので実際に死ぬとは考えてなかったし、支給アイテムや地図、メールの確認もしていないという。
歌っていたのも、「知り合いが見つけてくれると思った」「夜の砂漠で歌うアイドルは神秘的だと思った」からだとか。
秀才は月乃に現在の状況を正しく教え、ルール等を一緒に確認していく。知り合いが偽者の可能性があることも伝えた。
秀才には何だかんだで困っている人を見捨てられないところがあり、そこが生徒からの人気を集めている部分であった。

一通りの確認を終えた後、二人は今後の方針を決めることにした。
せっかく出会えた月乃を見捨てるわけにもいかない秀才は、一人で火山エリアに隠れる計画を捨てた。

「わたしはアイドルです。わたしの歌で、殺し合いを止められるはずです!」
「"歌唱"のスキル効果ですか……果たして、どこまで信用できるのか」

月乃が取得している"歌唱"スキルは、相手の戦意を削ぐ効果があるようだ。
しかし、秀才は参加者の中には殺人を好む者が何人も紛れていると考えている。
Sランクならともかく、Aランクではそんな相手に対して効果が薄いのではないか……と懸念しているのだ。

月乃の方針に乗るとしても、どこで歌えば効果的なのか。
塔の一つを支配し、GP狙いでやってきた危険人物に歌を聴かせるか。
コロシアムで決戦を行いに来た人々に歌を聴かせてコロシアムの利用を思いとどまらせるか。
市街地でライブ会場のような音量を増加させられる施設を探し、広範囲に歌を響かせるか。
……やはりどこで歌っても目立つのは確実。よからぬ者に襲撃されて死ぬ未来しか秀才には思い浮かばなかった。

そんな時だった。月乃と話しながらも周囲を警戒していた秀才が、一人の男を見つけた。
男の方も秀才達に気付いたようで、歩いて近づいてくる。月明かりに照らされて男の姿がはっきりと見えた。
金髪に派手なシャツ……見るからに不良系なその姿は、秀才的にはお近づきになりたくないタイプだった。
だが向こうから近づいてきたからにはそうも言っていられない。秀才は月乃を守るように一歩前に出た。

「よぉ……最近、アイドル増えすぎだと思わねぇか?メガネの兄ちゃん」


その問いかけは秀才にとっては予想外のものであった。
秀才はこのような環境では「あなたは殺し合いに乗り気ですか」といった会話が第一声になると思っていたからだ。
問いかけの意図は不明だが、話し合う予知はあるということ。秀才は慎重に言葉を選んだ。

「確かに……アイドルは増えすぎている。そう言っても過言ではありません。
 誰が言い出したか、『アイドル戦国時代』。この言葉が去年の流行語大賞となったように、アイドルの増加は世間も認めるところです。
 アイドル増加指数も上昇の傾向にありますし、先月行われたアンケートでは中学生女子のなりたい職業ランキング1位がアイドルという結果が」
「うるせえ!誰がアイドルについて語れっつったよ!?コラァ!」
「……すみません」

データを披露するという悪癖が出てしまい、秀才は反省する。
しかし相手の意見には肯定的な立場を示している。印象は悪くないはずだ。

……その考えは、金髪の男が筒のようなものを装備した時点で覆された。

「増えすぎたアイドルは俺がブッ殺してやるよぉ!死ね、TSUKINO!アイドルは消毒だァ、ヒャッハッハッハ!」
「危ない、月乃君!づぅっ……!」
「出多方さんっ!」

それは火炎放射器だった。
武器の形状が弾丸の類を発射するには大きすぎると分析した秀才は自ら月乃の盾になった。
月乃を守れるのは今は自分しかいないという思いが半分と、火炎放射器なら焔のブレスレットによる炎耐性が期待できるという打算が半分だ。
事実、秀才は高いVITと炎耐性によって火炎に耐えることができていた。リアルなら死んでいてもおかしくない火力だった。

「チッ、人ってそんなに燃えねぇもんかよ。すぐ炎上させてくる癖によぉ!」
「月乃君……石……だ……!」
「仕方ねぇ、最大火力だオラァ!」
「い、石……これですね!」

燃やされながらも秀才は冷静だ。この火力では反撃に移ることは困難である。
故に、ここは逃走一択。先ほど月乃にショートカットの使い方を教えており、すぐに支給品は取り出せる。
そして月乃は火炎に耐える秀才に支給品の石を押しつけた。

「ワープ!」

「……あ?」

月乃の支給品、ワープストーンの効果によって秀才と月乃はワープした。
砂漠には、金髪の男……エンジ君のみが残されたのである。




二人がワープした先は、何の変哲もない寝室だった。どうやら、市街地にある民家にワープしたようだ。

「火傷で手がまともに動かせません……とうとう私もここまでのようです」
「ごめんなさい、出多方さん……」


炎耐性があったとはいえ、最大火力を数秒受けてしまった秀才は酷い火傷を負っていた。
顔は両腕でガードしていたが、最もダメージを受けているのはその両腕だった。
手は握った状態のまま開くこともできず、腕は空気に触れるだけで痛みが走る。
服もズタボロで半裸になるしかない。だが、そんな状況だろうと"冷静"のスキルは効果を発揮する。

「まずは、この家に誰もいないことを確認しましょう。私の傷の手当てより、そっちが優先です」
「……せめて出多方さんは動かないでください。わたしが見に行きます!」
「駄目です。危険人物がいた場合、複数人で対応した方が生存率は上がります。
 それに、出会った人物が迷いを抱いているなら私が殺し合わないことの正当性を……」
「……それでも、です!」

秀才は、月乃の視線が怒りの感情も伝えてきていることに気付いた。
どうやら自分の意見を譲る気は無いようだ。
ここで言い合いになった場合、それこそ危険人物の思うつぼである。秀才は折れることにした。

「せめて、この槍を持っていってください。今の私では扱えませんからね。頼みましたよ、月乃君」
「は、はいっ!」

結局、二人がワープした民家は誰もいなかったようで、月乃は氷水とタオルを持って寝室に帰ってきた。
火傷の対処方法は秀才のデータの中に存在している。この身体はアバターらしいが気休めにはなるだろう。

「……わたし、ダメダメですね。歌で殺し合いを止めるなんて言っても、あの人を前に何もできなかった」
「そんなことはないですよ。今、私が生きているのはキミのおかげですから」
「あの人は……すごく、憎んでる表情をしてました。わたしの歌は、あんな人を癒すためにあるものなのに……」
「世の中には、私やキミの想像も及ばないような酷い人もいるんです。そんなに気にすることはありません」
「……でも、わたしは癒してあげたいって思うんです」
「そうですか、その思いは否定しませんよ」

月乃は普段はマイペースで天然な性格だが、意外と負けず嫌いな一面も持つ。
先ほどの一件では、エンジ君の抱く憎悪と自分自身が抱いた恐怖に負けてしまったと彼女は感じていた。
……次は、負けない。月乃は決意したのだった。

「助けてくれてありがとうございました、出多方さん。お礼に歌を贈ります」
「歌ですか……いいですね、聞かせてください」
「~♪ そう、きっとわたし達なら~♪」
(さすがはプロのアイドル、声量は家の外に聞こえない程度に抑えてある)

歌を聴いて安らぎながらも、スキルの効果で秀才は冷静だった。
冷静な状態の彼でも、月乃の歌には何かしらの神秘を……可能性を感じざるを得なかった。
月乃の歌唱力が優れているのか、"歌唱"のスキル効果によるものなのかはわからないが……。

(……この歌なら、本当に殺し合いを止められるかも知れませんね)

火傷によって握った状態にしかできなかった秀才の手は、いつの間にか開いていた。

[D-3/市街地の民家/1日目・深夜]
[出多方 秀才]
[パラメータ]:STR:E VIT:B AGI:B DEX:B LUK:B
[ステータス]:火傷(大)(月乃の歌唱で回復中)、半裸
[アイテム]:焔のブレスレット(E)、おもしろ写真セット
[GP]0→10pt(キャンペーンで+10pt)
[プロセス]
基本行動方針:人は殺したくない。
1.動けるようになったら月乃と共に行動する。
2.月乃の歌の活かし方を考える。

[大日輪 月乃]
[パラメータ]:STR:E VIT:B AGI:D DEX:D LUK:A
[ステータス]:健康
[アイテム]:海神の槍、ワープストーン(2/3)、不明支給品×2(確認済)
[GP]0→10pt(キャンペーンで+10pt)
[プロセス]
基本行動方針:歌で殺し合いを止める。
1.出多方さんを癒やす。
2.金髪の人(エンジ君)には、次に会ったら負けない。

【海神の槍】
魔王城にまつられていた槍。水辺で戦う際にパラメータが上昇する。
勇者ツキタ・キザスがパクって持って帰り、愛人が欲しがったので振るう機会もないままにプレゼント。
その後、ミルティア家の家宝となった。

【焔のブレスレット】
イコン教団が保有する装飾品の一つ。
炎耐性・熱耐性を上昇させ、マグマに落ちても3分間は生きられる。

【おもしろ写真セット】
ソフィア・ステパネン・モロボシが滝川利江に送った写真のセット。
見た者に状態異常「困惑」を付与する。

【ワープストーン】
「ワープ」と叫ぶと触れている者を隣接する別のエリアにワープさせる石。
使用者のLUK値によっては空中や水の上、エリア外に飛ばされることも。
3回まで使用可能。使用回数はGPを消費することで回復する。



「クソッ、役に立たねぇな~この武器もよォ!」

アイドルを逃してしまい思わず砂に火炎放射器を叩きつけるエンジ君。
しかしすぐに拾い直す。この殺し合いで優勝するためには武器を捨てるわけにはいかない。

「役に立たねぇ、か……チッ、嫌なこと思い出しちまった」

役に立たない、それはエンジ君……否、津辺縁児が社会人時代に先輩から言われた一言だった。
縁児にだって真っ当な社会人として生きようとしていた時代はあった。
だが短気でイキりがちな性格をしている縁児にとって、あまりにも会社というものは合わなかった。
上司や先輩に反発し、後輩は暴力で従わせ、取引先にはパワハラする。
クビになるのも当然な言動なのだが、縁児には不当な解雇であるとしか思えなかった。

その後に始めたのが動画配信だった。
思ったことをそのまま言うだけの動画だったが、内容が過激だったからかだんだん注目され始めた。
動画にはやがて批判コメントが付き始める。批判に暴言で対抗するともっと批判コメントが付く。
それを繰り返した結果……動画収入で生きていけるぐらいの再生数が稼げるようになっていった。

――これでオレをバカにしやがった社会の奴らを見返せる。そう思っていたのに。

きっかけは「最近、アイドル増えすぎだよなぁ?」といった感じの、何気ない一言だった。
エンジ君にはアンチも多い。すぐに「アイドルが増えて何かあなたに迷惑がかかるんですか?」という言いがかりコメントが付いた。
縁児とコメント欄が激しいバトルを繰り広げ、エンジ君の発言内容もどんどん過激になっていく。
コメントは一般ユーザーで、エンジ君は動画配信を生業とする者。発言が注目されてしまうのはエンジ君の方である。
『【炎上】動画配信者のエンジ君、今度はアイドル業界に喧嘩を売る!?』
とあるブログにこんな見出しで紹介されたエンジ君の動画には大量のアイドルファン達が集まっていった。

そして動画は今までに見たことの無い再生数とコメント数を記録し。
リアルまで特定されそうになった縁児は動画配信を辞めざるを得なくなってしまったのだった。

「クソアイドル共め!絶対に、全員殺してやるぜェ!!」

アイドルへの憎悪は、殺し合いに参加しているかどうかもわからないアイドルに対するスキルを取得させるほどだった。
その向こう見ずな選択は大当たり。なんとこの殺し合いにはHSFの5人やTSUKINOが参加していた。
他にも縁児の知らないアイドルや偽名で参加しているアイドルがいるかも知れない。

「オレの復活記念動画は、アイドルの処刑動画だって決めてんだよ……!」

この殺し合いで優勝したら、何ちゃら管理システムの何ちゃらがもらえるらしい。
正しい名称は縁児には覚えられなかったが、そのシステムを使えばアイドルやアイドルのファンに対する復讐ができる。
まずは全ての電子媒体をハッキングし、全てのアイドルをエンジ君が処刑する動画を生放送で流す。
これだけでアイドルのファン共は阿鼻叫喚だ。
その上で、エンジ君を炎上させた奴らの個人情報や秘密を全てネットに暴露してやる。
アイドルのファン共は敢えて殺してやらない。生きがいのなくなった世界で苦しみながら生きるがいい。


――オレの唯一の生きがいだった動画配信を奪った連中だ。オレも奴らの生きがいを奪ってやるよ!!

[D-2/中央付近/1日目・深夜]
[津辺 縁児(エンジ君)]
[パラメータ]:STR:B VIT:B AGI:C DEX:E LUK:C
[ステータス]:健康
[アイテム]:火炎放射器(燃料85%)(E)、不明支給品×2(確認済)
[GP]0→10pt(キャンペーンで+10pt)
[プロセス]
基本行動方針:優勝してアイドルとファンに復讐する。
1.アイドルやファンは優先して殺す。
2.TSUKINOとそのファンのメガネ野郎(出多方秀才)は次に会ったら殺す。

【火炎放射器】
火炎を放射する武器。火力調節が可能で、火力が高いほど燃料の消費も激しい。
燃料はガソリンや灯油など、それっぽいものを詰めれば動くようになっている。
GPを燃料とすることも可能。

012.太陽への贈り物 投下順で読む 014.糸を辿る
時系列順で読む
GAME START 出多方 秀才 検証:影の反対には太陽があるのか?
GAME START 大日輪 月乃
GAME START 津辺 縁児 敵か味方か!?『New World』にあらわれた最凶の男

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最終更新:2020年10月13日 00:41