『――ったく。証拠潰しのためとは言え、ちとやりすぎたか』
ノイズが走る記憶の残響の中唯一鮮明に聞こえるもの。
気怠そうに吐き捨てる、そんな男の声。
『生き残りか。目撃者は一人も生かすつもりはなかったが……』
それは、どのような人物だったのか。
黒い髪なのか、金色の髪なのか不明瞭な髪の色。その瞳は昏く、そして赤く燃えるように輝いて。
特徴的なのはその右足。義足なのだろうか。『鏡のような鉱石』で構築された、まるで――
『このまま代わり映えの無い未来はつまらん、せっかくだ。"保険"は掛けておくか。』
黒い煙が、僕の口の中に入り込む。
苦くて、それでいて懐かしいような。
力が、抜けていく。意識が曖昧に、微睡む暗闇へと落ちてゆく。
ドクン、と大きく心臓が鼓動を鳴らす。
『"マルタ実験"。この言葉を刻んでおけ。最も、当分お前はそれを思い出すことはないがな。』
その言葉の意味を、当時の僕は何も知らない。
『ついでに流し込んでおくこの知識は特別サービスだ。"思い出した時"に、交渉の道具として役立つだろう。』
だけど、その男の人は何故か微笑んでいた。
何か期待しているように思えた。
炎の向こうから、豹の顔をした兵隊さんみたいなのが数人、やってきた。
『※※※※!※※※※※※※※!』
『おっと、どうやら余計なアオハル女が追っかけてきやがった。』
豹顔の兵隊さんから何か報告を受けたのか、男の人は僕に手を降って、兵隊さんと一緒にその姿が黒い煙になって消えていく。
『もし生きていたら、答え合わせはしてやるさ。じゃあな。――その生に幸あらん事を。』
僕はこの記憶を忘れるだろう、思い出さないだろう。
だけれど、確かなことだけは一つ。
『■■■■■』という真名を名乗ったあの男は、人間ではなく―――
その答えにたどり着くことなく。そして僕は、記憶を失った。
●
ほんの少しの小休止。割れたガラスが散らばった店の中で私は項垂れている。
あいつに話しかけるのも億劫になっている自分自身が情けない。
感情の行き場をなくして、あの有様なのは、私の悪癖なのだろう。
「……ばかだなぁ、わたし。」
心地よいはずの朝日の暖かさが、気持ち悪くへばり付いてくる。
本当は、こんな事している暇なんて無いのに。
早く、先生と助けに行きたいはずなのに。
――※※※※※※※※※※※※※
ノイズが。耳鳴りが。私の思考の邪魔をする。
頭の中がかき回されるような気持ち悪い感覚。
頭に血が回らないのか、クラクラと視界が定まらない。
――※※※※※※※※※※※※※
スヴィア先生が攫われた。私は何も出来なかった。
結局余計に混乱させただけ。
あいつのせい。もっと良い作戦あったのに、信じた私がバカだった。
違う、私のせいでもあるのに、彼一人だけに責任を押し付けて。
――※※※※※※※※※※※※※
……あれ。そういえば、私。何で女王感染者を探そうとしてたんだっけ。
そういえばだった。私は後悔したくないなんて思いで来たのに。
結局私は後悔し続けてばかりの人生で。
――※※※※※※※※※※※※※
――※※※※※※※※※※※※※
思考が、定まらない。
私は、一体。何を、したかったの。
そうだ、先生。先生を、助けないと。
あいつには、頼らない。私、一人で。
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――※※※※※※※※※※※※※
急がないと、行けないのに。足が、動かない。
あれ、私。何で、倒れて。
力が、抜けて。なんだか、眠たい。
こんな所で、立ち止まっちゃ。だめ、なのに―――。
「せん、せい。いか、ない、で……。と、わ、いかない、で………。」
――※※※※※※※※※※※※※
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● ● ●
「………あれ?」
目を開けると、私は教室の机で眠りこけていた。
眼の前の風景はたくさん並ぶ椅子と机、そして大きな黒板。窓から差し込む陽光。吹き抜ける心地よい風。
間違いない、ここは私の過去の風景。かつて通っていた学校の教室の中。
「……これは、夢?」
どう考えてもおかしい光景。まるで用意された舞台に出演した役者のような違和感。
明晰夢、というものを昔聞いたことがある。夢であると自覚できている夢の事らしい。
つまりこれはそういうものなのだろう、けれど太陽の暖かさや風の感触は余りにも鮮明。
夢なら早く覚めて欲しいと心底うんざりしそうになった途端に、かつての思い出がフラッシュバック。
叶和が居たから私の人生は色づいた。
全てがモノクロだった景色に始めての色彩をくれた。
あの子との思い出。始まりから、終わりまで。何もかもが。
リフレインして、まるで映画のように流れる光景が、懐かしくて、苦しくて。
「……あ。」
涙が、流れている。懐かしさで、思い出が瞳から溢れ出して。
ああ、そうなんだ。私はそうだったはずなのに。
後悔したくないからと、突き進んで突き進んで。
私は、強くないはずなのに。
我慢、しすぎたんだ。
本当なら、こんなはずじゃなかったんだ。
叶和に謝って。許してもらえても許してもらわなくても。
それで、終わったはずなのに。
なんで、こんなことになったのかな。
わたし、もう。楽になっても。
「――ようやく話せるね、雪菜。」
「……え?」
ヒューッっと風が吹いて、カーテンが靡いて。背後で響いた声に振り向けば。
私の大切な友達の姿が、そこにあった。
「なん、で……。」
嗚咽が止まらない。涙がとめどなく溢れ出てくる。
だって、ありえないはずだ。私はあの娘に何をしてしまったのか。それを理解っている。
これが夢だと分かっていても、泣き出したくなる。
だって。
だって。
だって。
「……って言っても、雪菜にとっては数時間ぶりだと思うけど。」
あの時の姿で、私に殺される前の姿。病気でやせ細ってしまう前の。
大切な、親友の姿。
「……と、わ。」
「……ふふっ。」
小悪魔っぽく舌を出して微かに笑う彼女の姿。
そう、これは夢だ。夢の世界なんだ。だからあの彼女は私の妄想でしかないはず。
妄想のはずだと、思いたかった。
だって、あの娘は、愛原叶和は私が殺してしまったはずで。あの娘は私を恨んでいるはずで。
あの時の言葉だって、本当は私の思い込みかもしれなくて―――。
「ほんっと、雪菜は変わらないよね。」
そんな私のぐちゃぐちゃな思いは、叶和にはお見通しだ。
だって、これでも数年の付き合い、私のことなんて嫌というほど分かってる。
分からないはずがないのだ。
「役に嵌るとそれっきり。懐いたらそのまま依存しちゃいそうな危ない子。思い込んだら一直線の突拍子。『そういうところだよあなた』なんてまあ陰口叩かれても仕方ないというか。青春デビューと一歩踏み出したら盛大にすっ転んだけど結果的に成功した子とかそんな。」
「あぅ……。」
……なんか途中から辛辣になってない?。
でも私って面倒くさいって思われてだろうし。仕方ないのかな本当に。
「……あははっ。雪菜、顔赤いよ?」
「えっ、あっ、これは、そのっ……あはは……っ」
指摘されて、始めて自分が気恥ずかしい表情だということを自覚したのは数十秒後。
真正面から指摘されるのは恥ずかしくて、もじもじしながらもぎこちなく。
「やっと……笑ってくれた。」
「……あ。」
叶和に言われて。そういえばと気づいた。久方ぶりに笑えた。
本当に大したことのない事なのに。笑うことが出来た。
先生の時でも笑顔なんて見せなかったのに。
そして叶和は、何故か気が緩んだのか、こんな事を喋りだしていた。
「……雪菜に話すのは気恥ずかしいんだけどさ。……ずっと見てたよ。自棄になって女王感染者を探そうとしてたこと、雪菜そっくりな抱え込みがちな大人にシンパシー感じてたこととか。」
ずっと見ていた。ずっと見ていたのだと、言われて。こっちのほうが気恥ずかしくなる。
つまり、私が叶和を殺して、自暴自棄になっていたのをずっと見られていたというのだから。
ええとつまり、それは要するに先生に会って気を許した所とか特殊部隊の人相手に啖呵切ったりした所も。
「叶和。それって世間一般だとストーカーって言われても仕方のないことだよね。」
「……真っ当に何も言えません。幽霊になって調子乗ってました。あと雪菜がやらかしそうなの見て思わず声出してしまいました。」
指摘された直後に親友は平謝りした。とどのつまり、あの幻聴だと思っていた叶和の声もそういうことなのだろう。というかさらっと幽霊って単語出てきたということは一部始終見られてたじゃないですか幾ら友人相手だとは言え恥ずかしすぎる。
でもね、叶和。そう思ってくれたことが私にとって一番嬉しいことなんだよ。
「……友だちの多い世渡り上手、青春大好きお節介焼きの叶和だったら、仕方のないことだよね。そんなあなただから、私は一度救われたんだよ。」
そういう貴女だから。私は、哀野雪菜という一人ぼっちの少女は生きても良いと思えたから。
「……雪菜ったら。ほんっと。ほんとにね…………。」
叶和の声が、震えている。これから告げる事を、怖がっている。
うん、そうだよね。それは私も同じだから。だから、吐き出しても、良いんだよ。
言わなくても、分かってくれるとは思ってる。
「ごめん、なさい……。雪菜の気持ちを知らないで。嫌なこと言って、突き放したりして、ごめん……っ!!!」
泣いている。私にだけは、泣き顔なんて見せなかったあの娘が。
私にだけは、こんな顔見せなかったのに。
あの時だって、涙一つも流さなかったはずの、愛原叶和が。
「怖かったの……! 雪菜に嫌われたままだったのが……! 忘れたかった、思い出も何もかも封じ込めて全て……! そうしたら、雪菜をこれ以上嫌いにならなくてすむから……!」
結局のところ、私と同じく臆病だったのだろうか。
思い出に残る輝いていた彼女の姿はなく、さっきまでの私のように、自分の犯した罪を許されたくて懺悔するしかなかった、ただの普通の女の子だった。
「……だから、これ以上、あたしを嫌いにならないで……ごめんなさいっ……ごめんなさいっ………!」
同じだったんだ。私も、叶和も。仲直りしたかったんだ。
だけど、それはウイルス騒ぎなんて言う対岸の火事に巻き込まれて、こんな事になってしまった。
私の罪が叶和を殺してしまったことなら、叶和の罪は私を突き放したこと。
泣きじゃくる叶和の姿は、私の心まで締め付けてる。私のせいでもあって、あの娘の責任でもあって。
『……もし、後悔したくなんて無いって、失いたくないものがあるって思うのなら。』
だったら。私がするべきことは。
「………さない」
「雪菜?」
押し倒すように、私は叶和の身体を抱きしめた。
夕日のあたる床板の感触が心地よい暖かさだった。
叶和の身体は、熱かった。
心臓の鼓動が、はっきりと聞こえる。
「貴女を一生、許(はな)さない。」
「―――――ッ。」
愛原叶和。かつて私を光に導いてくれたプリマステラ。
そして、私に絶望を押し付けた流れ星。
でも、私にとって大切な過去は色褪せない。
全てがモノクロ景色だったとしても、その色彩だけは誰にも奪わせなかった。
「……いいの?」
「うん。」
「また、友達だと思ってくれるの?」
「まだ、友達のままだよ。……ずっと、ずっと。」
「……本当に?」
「本当。この言葉は決して、演技じゃない。」
叶和。私はね。貴女を友達じゃないなんて、一度も思ったこと無いよ。
ずっと、貴女という友達を、貴女というエトワールを。
だから私は、愛原叶和を永久に許(はな)さない。
赦(はな)したく、なかった。
「じゃあさ雪菜、目を瞑ってくれる?」
「……はい?」
「いいから、お願い。」
叶和に言われるがまま、私は目を瞑って。
口元に、仄かに感じた甘い感触。
身体が、舌が交わる感触。
熱く灯す身体、電気が流れるような感覚。
……女の子同士でこんな事。
ああ、でも。この世界は私の心の中で。
ここは、胡蝶の夢だから。
あの時に、気づいていれば何かが変わったのかな。
この愛(おもい)に、この気持ち。
でも、いいよね。
今は、この夢の中で、繋がろう。
だって。私は――愛原叶和のことが、大好きだったらしいから。
■
「……お別れの時間、だね。」
交わる中で、叶和のか細い声が聞こえる。
分かっていたはずだ、これは一度きりの奇跡。
罪と罰が紡いだ、小さな呪い。友達が託してくれた福音。
叶和の身体が透けている。別離の時間は無慈悲に訪れる。
「助けたい人が、私のように信じられる人が出来たんだよね?」
そう。やらないといけないこと。
私と同じ、私のように、過去の後悔に苛まれ、その呪われた罪悪に縛られ続けるあの人を。
あの人が、本当に間違いを犯してしまう前に。
鏡写しなお人好し、スヴィア先生を。
「じゃあ、救ってあげて。後悔とか責任とかじゃなくて。雪菜自身がやりたい事の為に。」
先生を救う。
「私の力、貸してあげるから。」
救って見せる。
「行ってらっしゃい。私の主人公(ともだち)」
今度こそ、"私達"が。
■ ■ ■
ウイルス感染者に共通する点として、誰もがウイルスによって脳及び神経組織に異常が起きているという点だ。だが、起こる異常というのはウイルス毎によって変化する。
正しくはウイルスが人体に侵入した時点で個人ごとに変化し、正常感染者の適応度によって発現する異能は変化するのだ。
適応できなかった異常感染者はそのまま生きた屍となるのだが、それは別に異能を発現しなかったというわけではない。ただ「使えない」のだ。
だが逆に、異常感染者の血液を何らかの手段で"適応"出来たのなら、その血液ドナーの異能を使うことが出来るかも知れない。ただし、それにはその血液への適応もまた必要となる、そんな可能性。
ここで思い出してみよう。哀野雪菜は能力自覚前にゾンビと化した愛原叶和に右腕を噛まれた。
この際、混ざったのだ。愛原叶和の血が。
だが、その時はまだ哀野雪菜に自覚はなく、罪と後悔に押し潰された行動にひた走っていた。
ここで別の話題を挟むが。この山折村と呼ばれる場所は、霊が見えやすい。
そして霊や魂という存在が、溜まりやすい土地をしている。
もっともその由来としてかつて『夜摩の檻』と呼ばれたこの土地の特性や、"ある実験"の目標の一つにも関わってくるのだが、閑話休題。
結論だけ言ってしまえば、哀野雪菜は適応した。
それは、雪菜を放っておけなかった愛原叶和が過度な干渉を行ってしまったことで。
それは哀野雪菜に混じっていた愛原叶和の血に誘われた結果であり。
ただし、少量の血では本来不可能なはずを、胡蝶の夢において愛原叶和の霊魂が哀野雪菜と混ざって消滅したことで。
哀野雪菜は、感染者で初の二重能力者(クロスブリード)となったのだ。
それは、ある科学者が幼少の頃に夢見、そして脳科学という形を以って成そうとした。
『人と人との心を繋ぐ』という思い描いた世界平和の理想への第一歩だった。
余談であるが、愛原叶和が本来宿るはずだった異能の名は『線香花火(せんこうはなび)』
使用者の寿命を代価に、対象の肉体を活性化させる強化系能力である。
■ ■ ■
「哀野、さん?」
天原創が目の当たりにしたのは、見るからに雰囲気が変化したであろう哀野雪菜の姿だった。
別に外見が180度変化したとか、そういう事ではない。
いや、変化はあった。まるで、もう一つ魂が混ざったかのように。その瞳の宝玉の如き鮮やかな深紅色へと変貌していた。
それ以上に何かが、間違いなく彼女の中で何かが変わったのだ。
ほとぼりが冷めた、という訳ではない。
あのミスは間違いなく己の責任であり、彼女に責め立てられるには十分な理由だと抱え込んでしまったが故に。
だから、「これ以上あなたは頼りにならない」と三行半を叩きつけられる可能性も考慮していただけで。
その場合最悪
スヴィア・リーデンベルグを見捨てるという選択肢もあったわけで。
だが、その万が一の選択は選ばれることはないだろう。
「……さっきは感情的になって、ごめん。」
彼女から謝罪の言葉が出た。最悪の想定をしていた天原創にとってはそれは面食らう出来事。
そこには自分を真摯に見つめる視線があった。自棄っぱちと依存に塗れた彼女はもう居なかった。
「今度は、一緒に考えよう。一緒に、先生を助けよう。」
「……何故なんですか。」
だから、問わずには居られなかった。
自分の繰り返した失態を知ってなお、それを告げる意味を。
喪失から始まった人生、これ以上失わないためにと。
その為に、ただ完璧であろうと―――。
「どんなに輝く星だって陰りはあるものだって私は知っているから。それでも良いって思ってるから。」
彼女がプリマステラは、一度陰ればすぐに壊れる儚いものだった。
それでも彼女はその星の変わらぬ部分を好きになった。
好きになったからこそ、彼女は最後まで変わらなかった。
「一番星でなくても良い。完璧超人でなくても良い。……傷ついて、背負って、その重荷を支え合って。」
彼女は数多の後悔の果て、答えを得た。
彼女は彼女の中にある「決して捨てられない思い」の為に。
「でもね。そんな大した理由じゃないかな。……これ以上、大切な人を失いたくないって思っただけ。それだけで十分だから。」
その「捨てられない思い」というのが。自分を導いてくれた愛原叶和(プリマステラ)の事でもあり。
そして、自分を再び間違った道から拾い上げてくれたスヴィア先生でもあるから。
「……だから。手伝ってくれない? 私一人じゃ、頭が足りないから。」
彼女の言葉に、天原創は何を思ったか。
彼の原点(オリジン)は喪失からの奪還だ。誰もかもを守れる力が欲しかった。
だがその結果がこのザマだと叩きつけられ、彼の心は少なからず傷ついた。
彼女もまた、傷ついたというのに。
『一人で何でもかんでも背負い込みすぎるの、ほんっとキミの悪い癖だよね』
苦笑交じりに、"彼女"が言っていた言葉が今頃になって天原創は思い出す。
特に覚えておく理由もないはずのただの戯言を、どうしてこんな時に限ってと。
でも、彼女一人で任せても奪還はほぼ確実に失敗に終わりそうなのは何となく。
「彼女は重要な情報を握っている証人でもある。あのまま特殊部隊に連れ去られるのはまずい。」
「……!」
その予想を告げただけの言葉は、肯定の意。
哀野雪菜の顔が、ほんの少しだけ微笑んだ。
「……哀野さんからも、何かアイデアがあるなら、よろしくお願いします。」
完璧であろうとして、挫け、それでもなお全てを背負おうとしたエージェントは。
何度かの挫折を得て、漸く自らを包む卵の殻にヒビを入れて――――。
『夜摩檻村』
『マルタ実験』
『8月6日』
『聖剣』
『死者蘇生実験』
『神降ろし』
『第二実験棟の事故』
『異界を繋ぐ門』
『亜紀彦(あきひこ)軍曹』
『魔王』
『依代』
『■■■■■』
「―――――は?」
そして、天原創は思い出した。『■■■■■』によって刻まれ、一度は忘却させられた記憶を。
「……カラ、トマリ。そうだ。あいつの名前は、カラトマリ。」
【E-5/商店街・モックとドラッグストアの間/一日目・午前】
【
天原 創】
[状態]:異能理解済、疲労(小)、記憶復活(一部?)
[道具]:???、デザートイーグル.41マグナム(3/8)
[方針]
基本.パンデミックと、山折村の厄災を止める
1.もうこれ以上の無様は晒せない……
2.女王感染者を殺せばバイオハザードは終わる、だが……?
3.スヴィア先生、あなたは、どうして……
4.……カラ、トマリ。そうだ。あいつの名前は、カラトマリ。
※上月みかげは記憶操作の類の異能を持っているという考察を得ています
※過去の消された記憶を取り戻しました。
【
哀野 雪菜】
[状態]:強い決意、肩と腹部に銃創(異能で強引に止血)、右腕に噛み跡(異能で強引に止血)、全身にガラス片による傷(異能で強引に止血)、スカート破損、二重能力者化
[道具]:ガラス片
[方針]
基本.女王感染者を探す、そして止める。
1.絶対にスヴィア先生を取り戻す、絶対に死なせない。絶対に。
2.止めなきゃ。絶対に。
3.ありがとう、そしてさよなら、叶和。
4.天原、さん……?
5.この人(スヴィア)、すごく不器用なのかも。
[備考]
※通常は異能によって自身が悪影響を受けることはありませんが、異能の出力をセーブしながら意識的に“熱傷”を傷口に与えることで強引に止血をしています。
無論荒療治であるため、繰り返すことで今後身体に悪影響を与える危険性があります。
※叶和の魂との対話の結果、噛まれた際に流し込まれていた愛原叶和の血液と適合し、本来愛原叶和の異能となるはずだった『線香花火(せんこうはなび)』を取得しました。
「漸くだ、漸く面白くなってきた。」
『ともかく、私の娘はちゃんと生き残れるのやら。」
『最も、"オレ"には関係ないことだがな。ハハッ!』
最終更新:2023年09月01日 22:13