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ルナサ1
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orz1414
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■ルナサ1
「これを……受け取ってくれないかな」
俺はルナサに持っていたケースを渡す。
恐る恐るといった感じでルナサは受け取って、ケースの留め金をはずした。
「わあ…………」
静かにあがる感嘆の声。その声が聞けて心底ほっとした。
「幻想郷中を探し回ったよ。まさか外の世界のそれが、ここに残っていたなんてね」
ケースに収められたのは、長い長い年月を経てきたような、あめ色に輝くヴァイオリン。
「1730年作のグァルネリ・デル・ジェス。名器中の名器だ。外の世界なら、きっと億単位の値がつけられるだろうね」
ルナサの震える手がヴァイオリンのネックをつかみ、そして弓を握る。目がスクロールからペグ、そしてブリッジへとすばやく移動した。
どれもルナサにあわせて調整してある。
「こんなすごいのを……私のために……?」
どこか怖がっているかのような声に、俺は安心させるように笑ってみせる。
「約束しただろう。俺と君とで。君は最高の舞台で、最高の演奏を聞かせるって。そして俺は最高の舞台で、最高の演奏を聞くってね。だから、君に是非受け取ってほしい」
はっきりと、目を見て言ってみる。
しばらくして、ゆっくりとルナサはヴァイオリンを取り上げた。
静かに、演奏の姿勢をとる。
「いいよ、聞かせてあげる」
照れたように微笑んで。
「二人だけの演奏会、始めましょう」
プロポーズの言葉というより指輪代わりのヴァイオリン。
しかし実際買うとなったら全財産つぎ込んでも無理でしょうな。香霖堂の奥に埃をかぶっていたのを見つけだすしかないか。
1スレ目 >>61
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俺達は言葉を交わさぬまま、ただ肩を並べて座っていた。
俺は静かに手元を見つめ、彼女…ルナサは空に浮かぶ半月を見上げている。
傍では、空中に浮かんだヴァイオリンが静かな音楽を奏でていた。
「……あの、さ」
「うん?」
振り返るルナサ。いつもの何処を見ているのかも分からない、糸のような眼。
けど、それなりに一緒にいて…こんな俺でも少しは、その奥に見える感情も見える気がした。
きっと…言うチャンスは、今しかない。
「俺…さ。ルナサの事…好きなんだ」
「……………ん」
ルナサはふいと前を向いて、立ち上がった。
そして、漂っていたヴァイオリンを手に取り…ゆっくりと、演奏を始めた。
その音楽は、俺が聞いたこともない…言葉ではとても表せない曲だった。
時に激しくうねり、時に優しく包みこみ…一時として同じ感覚を抱かせなかった。
ルナサは瞳を閉じ、一心不乱にその曲を演奏し続けている。
…それは、触れる事すらためらわれるほどに、眩しく輝いて見えた。
「……ふぅっ」
一体どれ位の時間がたったのか。一時間にも、一瞬にも思えた。
ルナサはバイオリンを下ろす。息は切らしていないものの、少し高揚しているようにも見える。
「どうだった?」
「どうって…凄かったよ」
今でも体中が震えていた。魂を振るわせる演奏とは、あの曲のことなのだろう。
「あれはね…たった今、体の中で聞こえてきた音楽そのままよ」
「…聞こえてきた、音楽?」
「あなたの思いを伝えられて…私の心が奏でた音。それを可能な限り…演奏したわ」
ルナサは、俺の瞳をじっとみつめて、そっとこう言った。
少し照れくさそうな…それでいて自信に満ちた笑顔を浮かべながら。
「私は不器用だから…音に乗せて思いを伝えてみたの。これが、私の気持ち。私の答え。
あなたの心に、私の心の音色は…伝わった?」
俺の答えは…誰に聞かれるまでも、無かった。
ルナサ姉さんはこんな風だといいな。
1スレ目 >>147
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>>164>>167見たいなノリでこれからもヘタレドリーム振りまいてもいいよね?
前みたいな一行告白とかあっさりふられたりとかそんなのもありだよね?
最近良作が多くてこんな風にビビってる俺はルナサ愛してるルナサ
あなたの張りつめた心のA線にそっと手を当てて優しく豊かに震わせたい
ルナサ「その嫌らしい手つきをやめなさい」
orz
1スレ目 >>814
備考:>>>164>>167~
164 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/08/20(土) 03:27:17 [ clq7w9ZI ]
文才?設定?だから何?
思いの丈をぶつけるだけさ!!
167 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/08/20(土) 04:21:30 [ g9DzQSUs ]
SSスレじゃないんだから、読み手のことなんてあんま気にせず気軽に妄想垂れ流していいんじゃまいか
つまりそういうことだ!
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・・・ヤバイ、道に迷った。
見渡す限り森、森、森。俺は呆れかえった。
神社の巫女に頼まれて普通の魔法使い、魔理沙の家の近くにある店に行ったのだが、これじゃあ今日中には神社に帰れそうに無いな。
それよりも、今日生きられるか考えないとな、下手すれば死ぬし。 そ ー な の か ー
何か聞こえたような気がするが、とりあえずは・・・ダッシュ!
「ハァ、ハァ、ハァ。走った、俺が、馬鹿だったぁ・・・」
走ったところで景色は変わらず、相変わらず木に囲まれた薄暗い森の中。
周りが少しずつ暗くなっていって、少し視界が狭まれる。
「このまま死ぬんだろうか・・・。あぁ、死ぬ前に外に帰りたかったなぁ・・・」
ここで死んだら誰か見つけるだろうか?・・・まぁ、いいか。
近くにあった切り株に腰かかり、・・・と、そこで遠くからバイオリンらしき音が聞こえた。
「これは・・・幻聴か?それでも、試してみる価値はあるかもな!」
そのかすかなバイオリンの音がする方向に向かって、もう一度走る。
走って少しして、突然視界が開けた。
そこに居るのは、黒い服に金色の髪、そして今バイオリンを演奏している少女だった。
(無我夢中で走っていたから気付かなかったが、良い曲だな)
俺は邪魔しないように、近くの切り株に腰かかり、目を閉じてその演奏を聴いた。
・・・と、バイオリンの演奏が急に止まり、少女がこちらを軽く見たあと。
「あなた、誰?演奏の邪魔なんだけど」
「ん?ああ、俺は・・・遭難者でいいのか?」
「私に、聞かれても困る」
彼女は間髪いれずに答えてきた。めげずに聞く。
「えっと、いきなりで悪いんだが、ここから何処に行けば神社にいけるかわかるか?」
「・・・とりあえずは、わかる」
「帰らないといけないんだ、教えてくれ」
こんな森の中で野垂れ死にはゴメンだ。すると、彼女はこちらを向いて。
「直線で行くには、あっち。今から走ったら、日が沈む前にいけるはず」
そう言って指差した方向を見る。俺が進んだ道の・・・・・逆、方、向。
「ありがとう。えっと、名前は?」
「名前を尋ねるときは、自分から名乗りなさい」
叱られてしまった。この年でしかられるとは、母親以来だ。
「あ、そうか。俺は、○○ってんだ」
「私は、ルナサ。ルナサ・プリズムリバー」
「ルナサ、か。ルナサはいつもここで演奏してるのか?」
「まぁ、そう」
ルナサが曖昧に答える。そして後ろを向いて歩きながら。
「早く帰ったら?急がないと、沈む前に帰れない」
「マジか!?それじゃ、ありがとう!」
急がないと、妖怪にに食われてしまう。
俺は不思議な少女、ルナサ・プリズムリバーの事を忘れて、生きるか死ぬかを考えながら走って帰った。
とりあえずは沈むギリギリに神社に戻れた。その代償として足が棒のようになったが。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・し、死ぬ。えーりんえーりん、助けてえーりん・・・」
前に元気になる呪文を教えてもらったので言ってみるが・・・、効果なし。くそっ、あの白兎め・・・。
「まったく、どうやったら昼に出かけて、日が沈む頃に帰ってくるのかしら?」
そう呆れ半分、疑問半分で言ってきたのが、この神社、博麗神社の巫女博麗霊夢だ。
それよりも、少し気になる事があって霊夢にたずねた。
「そうだ、少し気になったんだが・・・」
「なに?」
「霊夢のスリーサイz」
―――ゴスッ!
鈍い音とともに俺の後頭部に激痛が走った。霊夢の手元を見るといつの間にか、お払い棒が。
「変なこと聞かない、次聞いたら地獄見るわよ」
「うぅ・・・冗談なのに」
「冗談に聞こえなかったわ」
俺の反撃もあっさりかわして、霊夢が答える。
「まぁ、それよりもだが」
気を取り直して俺は、今日の昼から起こった出来事を話した。
里に行ってから帰り際に道に迷った事。そこで金髪のバイオリンを演奏するルナサと言う少女にあったことなど。
一通り話した後。
「あんたね、行く前に地図渡したでしょ?」
「コレは、魔理沙が見ても解らん」
そう言って胸元のポケットにあった紙を見せる。適当に書かれた神社と、その上辺りにある店。・・・それだけ。
「それに、東西南北ぐらい書いてくれ」
「書いたところで解らないでしょ」
多少呆れながら霊夢が反撃をする。残念ながら対応策はある。
「解るぞ、このコンパスがあればな!」
そう言ってポケットからコンパスを取り出す。さながら外の世界で昔見ていたドラ○もんのような感じで。
「その、コンパスとやらをよく見てみなさい」
そう言われたので、よく見てみると・・・あっちらこっちらクルクル回転している。
「幻想郷では、東西南北なんて無いわ。あるのは上下左右と前後だけ」
霊夢から聞いた、この事で俺は呆然とした。
「そー、なの、かー」
かろうじて言った言葉がコレである。一気に形勢逆転、俺は崖っぷちに立たされた。
「解った?だから地図に東西南北かいても意味が無いの。・・・ってことで、あんたが晩御飯作ってよね」
そう霊夢からちっこい閻魔様の説教以上に厳しいお言葉を言われて、さらに地獄いきとも言われた。
俺が呆然としていると、目の前で霊夢がお払い棒を振りかぶっていた。
「さっさと・・・・動けぇ!!」
天秤打法奥義円月殺法を頭部にもろに食らった俺は、静かに昏倒する。
「だぁからチルノは、アホなのだぁ!!」
薄れ行く意識の中で、取り付かれたんじゃないかと思う程ノリノリの霊夢の声が聞こえた気がした。
チルノはアホじゃない!バカだ!
「そうそう、帰れる時期が決まったわよ」
何とか覚醒した後、霊夢がいきなり切り出した。
「そ、そうか!で、いつ頃だ?」
元々外から来た俺は、この幻想郷には慣れにくい。と、いう事で帰れるかと頼んだのだ。
「そう焦らないの。だいたい・・・一週間前後ね」
「一週間か・・・」
そう聞くと長そうで短いと考えられる。まぁゆっくり過ごせばすぐだろう。
「まぁ、ほとんどは紫の気まぐれだけど。二週間とかにはならないと思うわ」
霊夢がめんどくさそうに言ったその後。
「で、晩御飯は誰が作るんだっけ?」
殺気と有無を言わさぬ威厳をあわせて聞いてきた。ああ、怖い怖い。
「俺だよ・・・。今作るから待ってろって」
そういいながら台所に逃げ出すように向かう。
――――翌日
俺は懲りずに森の中に入っていた。理由は、もう一度あの演奏を聴きたいがために。
今度は迷わずに・・・は行けなかった。その代わり耳を澄ましているとかすかに音が聞こえる。
俺はその方向にゆっくりと行っていた。気付いたら走っていたけど。
前と同じ場所に、いた。空からあふれる光に照らされて、そこだけ別の空間のように。そこに彼女はいた。
今度も同じ場所に座り、前回と同じように演奏に耳を傾ける。
~~~♪ ~~~♪ ~~~♪
ゆったりと流れる曲、聴いていると悲しい気持ちになるかもしれない曲。
・・・と、演奏が終わったのか。ルナサが演奏をとめた。
「また来たの?・・・それとも、また迷ったの?」
こちらを見ずに聞いてくる。
「迷ったわけじゃなくて。ちゃんと来たんだよ。・・・途中迷ったけど」
俺の答えに、ルナサが少し笑ったように見えた。しかし、すぐに元の表情に戻った。
「アナタも懲りないわね。下手したら死ぬのに」
「死んだら死んだでいいさ」
自分が言ったのになぜか違和感がある。きっと鬱になったんだろう。
少しの沈黙の後。
「・・・ねぇ、・・・少し話・・・しない?」
多少赤みが差した頬と一緒に遠慮がちな声が聞こえた。
「ん、まぁいいけど」
俺はそっけなく答える。ルナサが少し安心したような表情をした後、近くの切り株に座って、自分のことを話し始めた。
自分は四姉妹なこと。自分が長女で、次女は白い服のトランペッター、メルランと言って毎回廃テンションな事。
三女は赤い服のキーボード担当のリリカで、毎回悩まされているなど。
中でも一番驚いたのが、ルナサが騒霊だということ。
「騒霊・・・?幽霊か」
「幽霊とは違うと思うけど、大体は同じ。私たちは演奏をするの。ポルターガイストも、騒霊なのよ」
そのほかにも色々と話してくれた。話しているときはルナサはうれしそうに話していた。
俺はその話をしっかりと聞く。
「・・・・だいたいこんなものかな?じゃあ次はあなたのこと」
いきなり話を振られたので、何を話して言いか戸惑う。
「お、俺も話すのか?」
「当たり前。私のことを話したのだからあなたも話すべきよ」
そう言われたので渋々話すことにした。
外の世界に住んでいたこと。一人で住んでいたことなど。あまり話すことがないのですぐに終わった。
「ふぅん・・・大変ね」
全部聞いた後、ルナサがそう感想を漏らした。
「まぁ、あと少しの辛抱だけど」
「どうして?」
少し興味を持ったのか、聞いてきた。一瞬言葉に詰まる。
「・・・・・・慣れるのは時間の問題だろうし」
本当のことを喋ろうとしたのだが、なぜか後ろめたい気持ちがあったので、つい嘘をついてしまった。
それきり話すことがなくなったので。お互い森の中の音を聞くことにした。
「姉さん!やっぱりここにいた」
声がしたほうを向くと、肩で息をしている赤い服の少女がいた。たしか、リリカと言ったか。
「どうしたの?リリカ」
ルナサが驚いて聞く。驚いてるようには見えないが。
「どうしたのじゃないわよ・・・、コンサートのリハーサルの時間がそろそろ始まるってのに・・・。
ん?姉さん、その人・・・誰?」
リリカがこちらに気付いて、訝しげに見た。
「ただの観客よ」
ルナサが素っ気無く答える。
「ふぅん・・・まぁいいや。姉さん早く!」
リリカがルナサを急かす。どうやら急ぎの用らしい。
「んじゃ、帰るとしますかな」
「私も急がないといけないから・・・」
「ん、じゃ」
そう言ってヒラヒラと手を振って帰る。・・・さて、神社に帰って霊夢の手伝いでもしてるか。
その翌日も、翌々日もいつもの場所に行ってルナサと話をしていた。
少しした後、帰って、神社の手伝いをする日々が続いた。
そのことを知ってか知らずか、霊夢が言った。
「どこで何しているかは私は知らないけど。あんまり仲良くしすぎると帰るとき辛くなるわよ」
それでも、今日もルナサのところに行く。
――――そして、残りの日が一日になった。
朝起きて居間に出ると、いつもは俺よりも遅く起きる霊夢が何故か居る。そして霊夢はこちらを睨むと。
「今日が幻想郷に居られる最後の日。・・・友人には別れを言っておきなさい。たとえ、どんな結果になろうとも」
いつもと違う雰囲気に俺は押された。それからいつもの口調で。
「今日の朝食はあなたがやるんでしょ?早くして」
そう言われて俺は慌てて台所に向かった。
昼になり、俺はいつものように森へ向かったが・・・足取りが重い。
(あんまり仲良くしすぎると帰るとき辛くなるわよ)(別れを言っておきなさい。たとえ、どんな結果になろうとも)
霊夢の言った事が頭をよぎる。
「どうするか・・・」
今になって、仲良くしすぎた事に後悔した。このまま、伝えていいのだろうか。
ここに残る・・・そんな事も考えるが、それでは霊夢達が困るだろう。
いっそ死んでしまえば・・・、そう考えた後に考えを振りほどく。
「ふ・・・。自暴自棄の趣味なんて無いのにな」
思わず苦笑がもれる。行って、別れを言って、帰ればいいだけ。たったそれだけの事なのに、足取りが重い。
それでも、一歩一歩ルナサとの場所へ向かう。
・・・と、バイオリンの演奏がしっかりと聞こえてきたところで、足が止まった。
―――行っては、彼女を傷つけるだけだ。
もう目の前に、ルナサの姿が見える。
―――彼女の悲しむ姿は見たくは無い
今すぐここを立ち去りたい感情が全身を支配する。
―――伝えたら、彼女が悲しむ。そんな姿は見たくは、無い。
気付いたら俺は、その場から全速力で逃げ出していた。胸が痛む。刃物で刺されたときとは違う、別の痛み。
だが、それもすぐに収まった。
その後俺は、適当にブラブラして。夕方頃に神社に帰った。
(今日が幻想郷に居られる、最後の日・・・か)
神社に帰るときも、何故か後ろめたい気持ちがあった。
「遅かったわね、いつもならもう少し早いのに」
いつもどうりの霊夢の口調に、胸が痛んだ。
「・・・ああ」
「・・・・・・別れは、言えた?」
確信をつくその一言に、俺は悪寒を覚えた。おもわず表情に出る。
「・・・まぁいいわ、あなたが、それでいいのなら」
霊夢も少し声のトーンを落として喋った。
「今日は、私が作るわ。あなたは、待ってなさい」
そう言って神社の中へ向かう。その後に続いて俺も、向かう。何故か、霊夢の背中が悲しみであふれているように見えた。
―――そして、幻想郷から帰る日
俺と霊夢と紫とその式が博麗神社から東、じゃない左の所に居た。そこに、博麗大結界があるらしい。
あるといわれても、目には見えない。しかし、感覚でなんとなくわかる。
「最後に一回だけ、聞くわ。あなたは、外の世界、元の世界に帰りたい?」
紫が、そう聞いてきた。もう答えは揺らがない。
「・・・ああ」
「・・・じゃあ、いくわよ」
そう言って霊夢は構える。
「あ、ちょっと待って」
紫が止める。その後こちらに来て。
「この手紙、元の世界に返って寂しくなったら開くといいわ。きっと、元気になるから」
そう言われて渡された手紙を、ポケットに入れる。
「いいわ、じゃあ始めましょう」
霊夢は力を込めて、結界の封印に備える。
そして、結界に穴が開いた、感じがした。あとは歩くだけ。それだけで、元の生活に戻れる。
「待って!」
聞き覚えのある声に、反射的に振り向いてしまった。そこにいるのは、ルナサ・プリズムリバー。
「昨日、来なかったから、不安だった。それで、もしかしてと思って・・・」
そう言ってこちらに走り出してくる。
「愛の力は凄いわね。・・・けど」
紫が感想を漏らしたあと式に命令した。
「藍、止めなさい」
有無を言わさない命令に、式神は一瞬戸惑う。
「え?しかし・・・」
「いいから、止めなさい」
「・・・はい」
そう言われ、走ってくるルナサの体を、止める。
「っ!・・・放して!」
「駄目だ・・・紫様の、命令だ」
式が苦虫を潰したように答える。そして紫がこちらを振り向いて。
「さあ、行きなさい。もう少し時間はあるけど、あなたは決めたはずよ?」
―――そうだ、元の世界に返らないと
自然に足が外の世界へと進む。霊夢は後ろを向いていた。
「行かないで!お願い・・・私は、あなたが居ないと駄目なのよ!!」
ルナサが必死に泣いて叫ぶ。俺は一瞬足を止めそうになった。
「・・・私は、あなたのことが・・・好き」
何かを喋ったような気がしたが、・・・聞かなかったことにした。
そして、霊夢が大結界を塞ぐ。
これで、終わった。あの人間は、外の世界へと行った。一霊の、悲しみを残して。
「うぅ・・・。どうして」
この前冥界の結界に居た、金髪の娘が泣きそうな言葉で言った。
「大丈夫、彼は帰って来るわ。・・・絶対」
紫が慰めにも似た真実を喋ったような気がする。実際、私も帰って来ると思う。
そうだ、帰って来たら引っ叩いてやろうか。そう思いながら、私は帰った。
元の世界に帰ってきた俺だが。どうせ親戚は誰も居ない、誰にも幻想郷のことを話さずに暮らしていた。
―――そして、数日後
どうしてもこの平凡な毎日が馴染めない。幻想郷に居た頃は毎日が平凡じゃなかったからな。
もともと友人も少なかった俺に、幻想郷の人とか妖怪とかは普通に接してくれた。
・・・ふと、紫から渡された手紙を思い出し。開けてみることにした。
『 ○○へ
幻想郷に帰りたければ、あなたが迷った森で、私の名前を呼びなさい。
気が向けば、返してあげない事もないわ。
ただし、もう一度幻想郷に戻ったら。もう帰れないわよ。
by プリンセス☆マジカル☆ゆかりん 』
「・・・ずいぶん変わった手紙だな。・・・・・・俺が最初に迷った森、か」
戻ったら帰れない。それは俺には決められない決断だった。
ここでの平凡な生活も、悪くは無いのかもしれない。それでも、幻想郷に帰りたいと思った。
「・・・なんで戻りたいんだ?」
俺が戻りたい理由・・・。考えてもいなかった、今考えるか。
(スリルがあるから・・・じゃないな、別の理由があるのかもしれない)
頭の中での幻想郷の記憶を探してみると。ふと、思いつくのが一つあった。
「・・・ルナサ」
さまざまなルナサの表情や、話などが鮮明に出てくる。
(・・・・よし!)
気付いたら俺は外に出ていた。
俺が迷った森、それはそう遠くないところだった。
「紫ーーーー!!」
叫んでみる、返事が無い。・・・・もしや嘘つかれた?今度は別の名前で呼んでみる。
「プリンセスマジカルゆかりんーーー!!」
やはり返事なし。・・・少し違うのか?
その後も色々試してみたものの、一つも当たらない。・・・やはり、これか。
「プリンセス☆マジカル☆ゆかりんーーーーー!!」
「はーい。プリンセス☆マジカル☆ゆかりんちゃん可憐に登場!」
・・・正直、冷めた。
「なによ、折角来てあげたのに・・・帰りたくないの?」
紫が膨れっ面で聞いてきた。
「いや、帰りたいさ。この数日で、自分の気持ちに決心がついた」
「そう?帰らせてあげてもいいけど・・・その前に問題」
まさか、蓬莱の弾の枝とか言わないよな?
「蓬莱の弾の枝を取ってk」「無茶言うな」
「最後まで言わせてよ・・・。蓬莱の弾の枝は取ってこなくていいわ」
当たり前だ、そんなこと言ったら幻想郷に行く必要があるじゃないか。
「そのかわり、あなたが幻想郷で一番大切に思う人、それを教えて」
「なっ・・・」
予想外の質問だった。まだ本人にも伝えてないのに、それを紫に教えるとは・・・。じ、自殺行為だ。
「さぁ、幻想郷に帰る?それとも帰らない?」
こうなったら覚悟を決めるしかないみたいだ。俺は一息おいて、深呼吸したあとに。
「ゴニョゴニョ」
耳元で喋った。しかも小声で。
「えぇ!?あのムグッ」
「言うな言うな~!」
慌てて口を押さえる。あーあ、経路から言うとこの後に新聞として配られるだろうに。
「解ったわよ・・・。じゃ、その本人の前まで送ってあげるわ」
「本当か!?」
「当たり前よ、マジカルゆかりんは嘘はつかないわ」
ついてます、それはもうついてますって。
「んじゃ、このスキマに入って」
そう言って出したスキマ。・・・うわぁ、怖いよ。
「さっさと入れー!」「うわっ!」
俺が躊躇っている所に、紫が蹴りを一発。そのせいで隙間の中に入ってしまった。
「頑張ってねー」
去り際にそんな事を言ってきた。あのスキマめ・・・。
案の定あの男は戻ってきた。コレでよかったのだろうか?
・・・自分がよければ、いいのかもしれない。
「まぁ、とりあえず。祝い事は皆で楽しまないと。」
気付いたら館の目の前に居た。結構大きい。
「ここが、ルナサ達の家・・・?」
結構大きめな家にすんでるとは言っていたが、ここまで大きいとは。
中に入ろうとして、館に歩を進めていると。
「あ、あんたは!あの時の!」
声をかけられた方を向いてみると、リリカが駆け寄ってきた。その後、突然胸倉を掴んで。
「あんた!姉さんに何やったのよ!姉さん、数日前から元気が無くて。元々元気ないのにさらに・・・」
少しずつ声の音量が減っていって泣き顔になる。俺も不安になってきた。
「リリカ、ルナサはどこにいる?」
「あんたなんかに教えるか!絶対に!」
リリカは泣きながら反論した。
「姉さんなら、・・・いつものところよ」
後ろから声をかけられたの振り返ると、白い服の・・・たしか、メルランが居た。
「姉さん!なんでこんなやつに教えるの!」
「探し物が知っているなら、答えるのが普通でしょ?」
「でもっ・・・!」
「いいから、行かせてあげなさい」
そう言われてリリカは渋々と手を放す。
「・・・ありがとう」
「お礼を言ってる暇があったら、行ってあげて。姉さんも待ってるわ」
俺はいつもの場所に向かって走り出す。
「本当に、これでよかったの?」
リリカが聞く
「姉さんが幸せになればいいんじゃない?」
そう言って、男が居なくなった場所でメルランは静かに微笑む。
いつもの場所。森の中に太陽の光が降り注ぎ、そこだけが違う場所と思われる場所。そこに、ルナサはいた。
「ルナサ!」
ルナサに駆け寄る。ルナサは呆然としていた。
「・・・○○?何でここに?」
ゆっくりと振り向き、喋った。
「ルナサを探しに・・・来たんだ」
「どうして・・・?」
決まっている、そのためにスキマ妖怪にまで話したんだ。
「好きだから」
「・・・え?」
「俺はあの時、ルナサを見て胸が痛かった。何でかって外の世界に戻ってから考えたんだけど・・・少し前に解ったんだ。
俺はルナサが好きだってな」
ルナサは状況が飲み込めないようで、目が点になっている。
「つ、つまりあなたが、私のことを」
「何度も言わせるな、好きなんだよ」
流石に三度も言うと恥ずかしい。顔が真っ赤になってしまった。
ルナサの方を見ると、やっぱり真っ赤になっている。
「ルナサ。えっと・・・その、き、キスしても・・・いいか?」
「・・・いいわ」
二人は見つめあい、口付けを交わす。
「うわっ!」
突然後ろから声がかかったので思わず振り返ると。・・・魔理沙の姿が。
「ま、ままま魔理沙、どうしてここに?」
「あちゃー・・・ばれないと思ったんだが。お前達が押すからだぜ?」
魔理沙が見た方向を見るとスキマが。さらに中には幻想郷の面々が。
「魔理沙が出なければもう少しのびたかもしれないのに」
「私の力で永遠にすればよかったかしら?」
「久々にいいものがみれたな」
「いつ見てもいいわね。どう、私たちもやらない妖夢?」
「や、やめてください。幽々子様・・・」
「コレはスクープです!・・・でも、皆知ってますね」
「映姫様、サボっちゃっていいんですか?」
「いいわけないでしょう。でも、コレが見れたから良しとします」
「していいのかしら?」
「皆さん!私は中国ではありません!紅美鈴です!ホンメイリンです!」
・・・などなど、勝手に喋っている。
「まぁ何はともあれ」
『おめでとう!!』
それもうれしいのだが、それよりも・・・。
「紫ぃ・・・。あんた喋ったな」
「喋ってないわよ?連れてきただけ」
「同じだって・・・」
反省0の言葉に怒る気も無くなる。まぁこれはこれでいいか。
「めるぽMERUPOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」
『!?』
全員が驚いてプリズムリバーの館の方を見ると、メルランの姿が。ああ、そういえば暴走するって言ってたっけか。
「これ、どうやって止めるんだっけ?ルナサ」
「ガッするのよ」
「ああ、そうだっけ。じゃあやるか」
「メルラン死ななければいいけど・・・」
そう言って二人は構える。
そして
「ガッ!!!!!」
―――――END――――――
どうも、ずいぶんと長くなってしまいました。
っていうかまじめに書くとひどいことになりますね、はい。
すこしシリアスになってしまったのかも。そう思わないのかも。
ああ、萌えなくてすいません。でもこう書くしかないのです。
こんな作品でも萌えてくれれば光栄です。
1スレ目 >>969
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朝。
ここ幻想郷では普通の人間達が起き始め、夜行性の妖怪達と食べてもいい人類が眠りにつく時間帯。
俺は最高に善良でこの世界の人間じゃマシな分類に入る人間なので、まだ布団の中で包まっていた。
「…………眠い。……寝てようかなぁ」
起きて第一声がそれかとか言わないこと、眠いんだから仕方ないのだ。
そんな事は兎も角、別にやることが無いので寝ていても良いが、そうも言っていられない。
ドンドンドンドン!!
「こんにちわー、新聞とどけに参りましたー。
起きてますかー? 起きてないなら勝手に入りますよー?」
噂をすればなんとやら、ドアを叩く喧しい音と共にモーニングコールの来襲。
モーニングコールと言うか、新聞配達コールというか。
その辺において置けば良いものを、いちいち手渡しで渡してくるのだ。
前に『新聞用郵便入れ』を作ってみたが、なにものかの攻撃にあって見るも無残な姿に変えられてしまった。
無視すればいいと思われるが、コイツ相手ではそれは通用しない。
マジで勝手に入ってくるからだ。
寝坊したときなどに、勝手に入ってネタの物色をしているらしい。
前に一回、俺の記事を書かれた事があったが、内容は見たくも無いものだった。
この経験があるために、朝は早く起きなければという危機感が今を作っているのである。
俺は布団に名残を惜しみながらも起きあがってドアの向こう側、つまりは外に声をかけた。
「どうせ勝手に入ってくるんだろ?」
「まあそうですけど」
そう言って入ってきたのはある種の天敵、天狗の『射命丸 文』だ。
見た目俺よりも下に見えるが、たぶん云千年くらい生きているので、知識とか力とか酒の強さとかは俺以上である。
まぁ俺は人間、彼女は妖怪だからでもあるが。
人を見かけで判断しちゃいかんよ。最近の若者はそれがわからんのです。
天狗は人じゃないけどそこらへんは触れちゃいけない。
「たしかに」
「勝手に人の心読むな」
「じゃあ許可貰います」
「却下」
「早っ! 次からは教えてあげますから」
「俺の心ぐらい自分でわかるわ」
「じゃあやっぱり読ませてもらうしか……」
「いやいやいや、何でそうなるんだよ」
「面白そうだからです」
「……天狗には自制心というのは無いのかね」
「ありません!!」
「きっぱり言うな! それも自信たっぷりに!」
そう言い合いながら新聞を貰う。
文に新聞を届けてもらっているのはちゃんと理由がある。
妖怪を倒す方法がない俺にとって、新聞は情報を集めるのにうってつけだ。
情報を集めて妖怪を倒すとまではいかないが、せめて生き残ろうと考えて新聞を取ったのである。
と、最初は考えていたのだが。
当然と言えば当然か、妖怪の弱点なんて新聞には載っていなかった。
あるのは嘘か真実か良くわからない記事のみ。
只、内容はどちらにしても面白いものなので、今もこうやって取っているわけだ。
人生何事も前向きが肝心。ここの住人は前向き過ぎるが。
「せめて、どこからどこまでが嘘なのか書いてあればいいんだがな……」
「実は私もですね、書いているうちにどこからどこまでが嘘かわからなくなったんですよ」
「嘘を書く自体新聞記者として駄目だと思うんだが」
「いやー、それほどでも」
「誉めてない誉めてない」
俺は今後の新聞情勢と日本経済の危機を考えながらも貰った新聞に目を通す。
なになに……。
俺が見た記事はこんな見出しから始まっていた。
『魔女ついに逆襲!?』
多少興味があったので、下のほうを見てみると、こんな内容が書かれていた。
+先日昼頃、魔女のP・K氏が魔法使いK氏に危害を加えたもよう。
P・K氏は、日ごろからK氏から本の盗難に合っていたらしく、
先日も本人の前で堂々と盗もうとしたところを見て、ついに堪忍袋の尾が切れてしまったらしい。
それについてK氏に詳細を尋ねてみたところ「まさか本気で来るとは思わなかった」とのこと。
さらにK氏は「あいつはなんかいつもと違っていた」と続けて答えていた。
実際にP・K氏のところに行ってみると、いつもは紫色だが今回は赤い服に仮面と角らしきものをつけていた。
さらに三日月の髪飾りと思われる物が、なぜか筒状の物に変わっていた事までわかった。
もう少し情報を得るために助手をしている悪魔に聞いてみたが、何かを拒むようにただ首を振るだけだった。
唯一喋った事が「本当に早くなるとは思わなかったんです……」だけだった。
P・K氏は何かの実験の最中に誤作動があり、あのような格好になってしまったと思われるが、真偽は不明である。
なお、当前の事だが図書館では本を盗んで良いというわけではない。
その事に気をつけて、図書館を利用してほしい+
……相変わらず嘘か本当かわからない記事だな。
特に、魔女はなんてありえそうでありえないな。いや、まさか服装まで変わるとは。
「あ、そうだ」
と突然、文が思い出したように言ってきた。
「御届物があったんですよ。たしかここに……」
「おや、新聞のほかに郵便の仕事でも始めたのか?」
「違いますよ、頼まれたんです。 ……あ、あった。これです」
俺の皮肉を軽く流した文はあるものを差し出してきた。
差し出されたのを受け取って見てみると、適当に二つに折畳んである紙の表面に『○○へ』と書かれてあった。
誰からと思いつつ裏を見てみるも、何も書いておらず届元は解らなかった。
「誰からだ?」
「中を見ればすぐわかりますよ」
「……中、見たのか?」
「安心してください、中は見てませんよ」
「見てたら文の人間性を問うところだが」
「私は人間じゃないですから」
「じゃあハイエナか」
「天狗です」
「そういえば今年は狗年だな」
「なんで突然そんな話が出てくるんですか」
「漢字で書くと天狗は天の狗だからな。天の狗っていうと、神の下僕か」
「家、吹き飛ばされたいんですか?」
「吹き飛ばしたら閻魔に裁かれるぞ」
「その程度の事、無問題です。それより、むしろそっちの人間性を聞いたらどうですか?」
「閻魔も人間じゃないからな。人間性なんて求めちゃイカンよ」
「じゃあ何なんですか」
「神だろ。いわゆるゴッド」
「あれは神じゃないでしょう。神なんて魔界の神だけでいいです」
「あんな神じゃ不充分だ。もう少し居てもいいと思うぞ」
なんて会話をしてながらも開いてみると、中にはこんなのが書かれていた。
『
今日の夜、神社で宴会やることになったが、
勿論お前も来るよな? 否、来い。
わかっているだろうとは思うが、
もし来なかったら明日、家が無くなるぜ?
霧雨 魔理沙より』
「また宴会か……」
これで何回目だろう?
俺がこの幻想郷に来てから、もう二桁を超すと思うのだが……。
それよりも、気になる事が一つある。
「なんで、いつもいつも突然なんだ?」
そう言いながら文のほうを向くと、なぜかお茶を飲んでいた。
当たり前……ではないが、俺の。
「……何やってんだ?」
「いや、こんな朝の寒い中配達してきたんですから、これぐらいはと思いまして」
「せめて許可取れ、許可を」
「いいじゃないですか宴会。楽しいですし」
「話しを逸らすな」
「○○さんは宴会嫌いなんですか?」
どうやらどう言っても無駄らしい、毎度毎度の事だがムカツク。
俺は怒りをため息と共に吐き出して文の質問に答えた。
「……そういう訳じゃないけどさ、今日の夜に宴会で、その朝に届くって突然過ぎないか?
普通は一週間とか。悪くても三日前に届くだろ?」
「私は五日前に届きましたよ」
そこで一旦会話が止まり、しばらくの間御茶の啜る音だけが聞こえた。
時折、外から鳥の囀りが聞こえて、なんとも趣のある感じだった。
しかしその間、俺の脳内は疑問と疑問がぶつかり合い混沌と破滅の境界線を……。
いやいやいやいや、なんでそんなおぞましい空間を作る必要がある。
普通の自問自答だ。
しかし結局わからないままなので、文に聞く事にした。
「……なんで俺は当日なんだ?」
「当日でも別に良かったからなんじゃないですか?」
この天狗、即答しやがった。
確かに毎回当日に呼ばれて来ているが、それは脅しが入ってるためなのだが……。
魔理沙はやる時は本当にやる。
一回宴会を休んだだけで家が無くなっちゃ堪らないから、仕方なく来ているのだ。
……っていうわけでもないが、少なくとも拒否権は無い。
なんだ結局当日でもいいじゃないか。魔理沙の選択は間違っておりませんでした。
それでも早く教えてくれる事に超した事は無いが。
そう思い、未だにお茶を飲んでいやがる天狗に向かって話しかけた。
「文。お前今日魔理沙と会う可能性はあるか?」
「夜の宴会なら必ず会いますよ」
「それじゃ意味無い。……まぁ、宴会前に会ったのなら伝えてくれ。
せめて三日前に手紙を届けろ、ってな」
「面倒なので会わないようにしておきますね」
「……新聞を取らなくても良いんだぞ」
「今ここで家とあなたを吹き飛ばしてもいいんですよ?」
「むぅ…………」
文とは毎回こう言うやり取りをよくする。
そして毎回このように負けるが。
幻想郷に来てからの仲なので、ある程度相手のほうを知っているつもりだ。
そう、今回のように
「して、文よ」
「なんですか?」
「それで記録更新か?」
「そうですよ」
人の家で平然と十四杯もお茶を飲むことなど、当たり前。
良い子も悪い子も少年も青年もその他の年代の人も真似しちゃいかん。
@ @ @ @ @ @ @ @
昼。
まだ居ようとした文を場外にホームランし、俺は一足早く神社に向かっていた。
妖怪に襲われないためが主な理由だが、神社の手伝いも要求されていたためである。
別に断る理由も無いため、毎回やっているのだ。断る理由がほしい。
俺は、あの長い長い石段をゆっくりと歩いていき神社に着いた。
そこでは、神社の巫女『博麗 霊夢』がのんびりとお茶を飲んでいた。
それを見た俺は毎回の事だが呆れた。
「おいおい……、掃除くらいしてろって。夜から宴会なんだろ……」
「良いじゃない別に。○○さんが掃除してくれるんだろうし」
「……まぁ、そうなんだけどさ」
そう言いながら近くにあった箒を手に取る。
そして手馴れた手つきで掃除をしていく。
毎回毎回やっているので神社の掃除はお手のものだ。
何故か巫女さんよりも上手いが、何故かは聞いちゃ駄目だ。死人が出るぞ。
「そうだ、いっその事神社に住んだら? 衣住は保証するわよ」
後ろから見ていた霊夢がそう声をかけてきたので、俺はとりあえず掃除をしながら答えることにした。
神社に住む、かぁ……妖怪からはとりあえず安全そうだが。
「食は?」
「時の運、ね。まぁ無かったら霖之助さんの所とかに行けばいいだけだけど」
「俺は犯罪をしてまで生きたくないんだが」
「犯罪って考えるからいけないのよ。生きるためって考えれば」
「それを聞くと自分で犯罪行為を認知済みのように聞こえるのだが」
「対策を取らない霖之助さんがいけないのよ」
「……本当に巫女なのk」
「ん? 何か言った?」
そう言って霊夢は見た感じ普通の表情で聞いてきた(気配がした)。
しかしながら、その気は殺気に満ち溢れそうになっていた。……拙い。
「いえなんでも別にははははは」
危うく禁忌に触れそうになった。触れたら夢想封印だけじゃ済まないとおもう。
そこが会話が途切れ、二人とも黙った。
静寂。
神社では、箒の掃く音と時折お茶を飲む音と鳥が鳴く声がなるだけ。
そんな空間も、この神社なら簡単に崩れる事を俺は知っている。
「どけぇぇぇ! 今の私を止めるものは何も無いぜっ!!」
物凄いスピードでこちらに向かってくる、箒に乗った自称普通の魔法使い『霧雨 魔理沙』だ。
しかし、こちらから見ればどうみてもトラブルメーカーです。本当にありがとうございました。
それはともかく、その魔理沙が俺に向かって突撃してくるのだ。
勿論このような事は始めてだが、何度も似たものを経験した俺は素直に退く筈も無い。
普通は退くかもしれないが、退いたら男じゃないので阻止することにした。
俺は箒の持ち手を下にして上に上げ、足を肩幅開いて肩越しに向かってくる魔理沙を見た。
「さぁバッターは前の打席で文を場外にホームランを放った○○!
この弾丸のような魔理沙も地平線の彼方へと飛ばすのか!?」
「甘い、甘すぎる! 茶柱を立てようとして前もって茶葉を入れておくぐらい甘いぜ!
そのような箒、廃棄処理行きだっ!」
そう言うと魔理沙はさらにスピードを上げて迫ってきた。
それに合わせて俺も魔理沙側の方の足を軽く上げる。
昔見た一本足打法だ。これ、最強。
その後、意識を魔理沙へと集中させる。
…………今だ!!
「もらったぁぁぁぁぁ!!」
俺の全身全霊をかけた振りに魔理沙も避ける事ほどの反応は出来なかった。
元から避ける気なんて無かったのかもしれないが、それはそれで。
「っ……!」
かろうじて跨っている箒を縦にして、直撃は避けようとした。
さらに魔理沙はその箒に魔力を流しこみ、箒の強度を極限まで上げた。
うーん、用意周到。
このままでは、俺の振った箒は魔理沙の魔力を流して硬くなった箒と衝突して文字通り廃棄処理行きに。
しかもこれは霊夢のなので俺もついでに廃棄処理逝き。
確かにこのままでは俺と箒は閻魔に裁かれ火に焼かれることだろう。
だが、俺はその程度の事は予測済みだった。
「奥義―――」
箒が魔理沙の箒に迫る。
その衝突の瞬間。
「―――『イリュージョン ~hand power~』」
ガキンッ!!
乾いた衝突音。
その真っ只中の俺と魔理沙は、寸分違わぬ場所で睨み合っていた。
目の前に魔理沙の若干驚いた顔が見える。
勿論箒と箒はそのまま真ん中でぶつかったまま。
「……お前、何時の間に」
「この前藍さんに教えてもらったものを、中国人らしき人の行動をヒントに改良したんだよ。そして……」
そこで一旦区切る。すると魔理沙は驚きの声が疑問の声に変わった。
「そして……だと?」
「今の状況で魔理沙が勝てる可能性は、ゼロッ!!」
「!」
その声と共に渾身の力で箒を振りきろうとする。
そう、この状況は一人の男とか弱い(?)少女と同じ。
つまり、
魔理沙は押し返せない。
「これが気の極みだ!!」
ホームランは無理だろう、そう思った俺は俺は箒の打つ方向を水平にかえ、そのまま振り切った。
なかなかの速度だったので、そのまま後ろへと結構なスピードで吹き飛ばされる魔理沙。
「ちいっ!」
だが、彼女が日ごろの弾幕ごっこで鍛えた反射力でさっと体制を整えた。
流石黒白魔法使い、動きの速さなら誰にも負けないぜ。
「……まさか、この私が負けるとはな」
「俺はこの程度で勝ったとは思ってないが?」
「当たり前だぜ……戦いはこれからだ」
しばらくの睨み合い。
その睨み合いを止めたのは、俺。
ではなく、魔理沙。
でもなくて、一人の腋が卑怯な巫女だった。
「あんたら神社を壊す気かー!!!」
「はぁ、なんで幹事の私が神社の掃除なんかを……」
「幹事なら宴会場の掃除ぐらいしとけ」
「私は宴会場の事なんて知らないぜ」
「鬼だな」
「人間だぜ」
結局霊夢に怒られた俺と魔理沙は、衝突時に出来た衝撃波で色々とボロボロになった神社の庭を掃除していた。
ちなみに、あの勝負は乱入による引き分け。
もとい勝者霊夢。やっぱり巫女は強かった。
「そういえば魔理沙はなんで来たんだ?」
「いや、なんとなく神社に一番乗りしたかった気分だったんだ」
なんともくだらない理由である。
そのせいで俺の仕事が増えてしまった。
まぁ、あそこで退かなかった俺のせいでもあるが。
「そういえば霊夢はどこ行った?」
「奥からいつものテーブル持って来るらしい」
いつものテーブルとは、Uの字で向かい合った奴と何時喧嘩が起きてもおかしくないテーブルのこと。
「ああ、家にそんなのがあるぜ」
「本当か? ってそれより、人の心を読むんじゃない」
ではなくて、普通のちょっと足が長い卓袱台のようなものや、やや縦に長い机のことである。
まぁ霊夢は腋でも出してなさいってこった。
なんてわけのわからない事を考えながら箒を動かしていると、奥から霊夢の声がした。
「○○さーん。ちょっと手伝ってー」
「やっぱりか……」
案の定、霊夢一人にはきつかった。
何時もなら魔理沙か誰かと一緒に運ぶか俺に運ばせているかであったため、一人じゃ無理だろうと思っていた。
俺は、やっぱりここの人達は変だな。と思いながら魔理沙を一人残して霊夢のほうへと向かっていった。
霊夢からテーブル運びを頼まれ、逆に俺は霊夢に箒を渡した。
そして全部運び終えた頃にはもう夕日が沈みかけている頃で、一足先に着いた従者達は料理室で大忙しの状態。
別にやることが無いので俺は縁側でのんびりと空を見ていた。
「はぁ……」
「何ため息なんかついてるんだ? 幸せが逃げるぜ」
後ろから声がしたので振り向いてみると、魔理沙がいた。
まぁ口調でわかるが、念のため。
「勝手に出るもんだよ。で魔理沙、またお前はつまみ食いをしようとしたな?」
「うーん……、なんで解るんだ?」
そりゃ誰でもわかる。魔理沙の服から微かに料理の匂いがしたからだ。
それよりも、魔理沙の服が若干破けていたりしているのが一番の理由だ。
「まぁ、軽く食べようとしたんだよ。それでメイド長がナイフ投げてきたり、剣士が切ってきたり。
狐がクナイ弾飛ばしてきたりしてきてな」
「誰だってそうだよ」
「そうとも限らないぜ」
そう言うと魔理沙は俺の隣に腰掛けた。
魔理沙の白い部分の服は夕日の光に反射して普段より白さを増して見えた。
反対に、黒い部分はより一層濃くなって、いつもよりも色分かれした黒白になっていた。
「……なぁ魔理沙」
「ん?」
「なんで俺も呼んでるんだ?」
この際、聞く事は聞いておこうと思った。
だが、俺の予想に反して魔理沙は即答してきた。
「呼ぶのに理由が必要か?」
「……いや」
「呼びたいから呼んだ、別に理由はないぜ。
……しいて上げるなら、楽しみは一人で取っておいてもいいが皆で楽しんでもいいから……だな」
なんとも魔理沙らしい理由だ。
「…………迷惑か?」
と今度は、魔理沙は不安そうに聞いてきた。
「いや、結構楽しいぞ?」
「な、ならいいんだがな」
そう言うと同時に魔理沙はそっぽを向いてしまった。
不思議に思って顔を見ようとしても、どうしてか逸らされてしまう。
「○○さーん、手伝ってー」
またまた奥から霊夢の声が聞こえた。
毎回毎回こうなのだが、やっぱり大変だな。
「じゃ、手伝ってくる」
そうそっぽを向く魔理沙に声をかけて俺は奥に向かった。
立った時にちょっとだけ魔理沙の顔が見えた気がするが、夕日の赤い色で良くわからなかった。
向かった先にあった料理の数は、山が出来るぐらい多いものだった。
一体誰が食べるのかと聞くと、全員口をそろえて。
「「「「幽々子」」様」だな」
と、言う事で処理は幽々子さんに任せっきり。
なんとも無責任だが、なぜか反論が出来ない。なぜだろう。
とりあえず俺は全部の料理を頑張って運ぶ事にした。
運びながら、幽霊はどうやって消化するというのを考えてみたが、やっぱりわからない。
……当たり前か。
最終的に、亡霊と幽霊は格が違う。という微妙な結論で終わった。
@ @ @ @ @ @ @ @
全て運び終えた頃にはもう宴会が始まりそうだった。
な、なんだってー!!(AA略
あちらこちらでどんちゃん騒ぎの前兆。
これは拙いと誰かと呑もうとしても、人間2人からは、
「レミリアがこっち来いって五月蝿いのよ。○○さん、一回襲われかけたんでしょ?」
「あー、悪い。パチュリーとアリスから呼ばれていて……な?
お前からの誘いは嬉しいが…………え、いや、な、なにも言ってないぜ?」
して残りの1.5人からは、
「お誘いは嬉しいのですが……、前も言ったように幽々子様が人間を食べてみたいと言ってまして、
危険性が伴うのでご一緒は無理です。それに……、あ、いや、なんでもないです。すみません」
「私を誘うという時点で、お嬢様に吸われる危険性があるわよ。
もう一度言うけど、お嬢様のお気に召しても召さなくても餌か死ぬかどっちかになるの。
しかも処理するのは私。只の人間を殺す事に抵抗が無いわけじゃないのよ」
と言う感じで主人がヤバイので近づけない状況。
かと言って他の妖怪とも呑めないので、仕方なく余った机で一人淋しく飲んでいた。
「そういえば、毎回誰かに誘われて呑んでたからなぁ……。これじゃあ宴会とも言えないのかも」
それにしても、いつもは毎回誘ってくれた人間の方々から無理と言われたのは始めてだった。
まぁそりゃ事情はあるものだし、強制なんて出来るもんじゃないがなんか変だった気がする。
結局一人なのだが。
宴会で一人自棄酒もあれかと思い、ゆっくりペースで周りの情景を眺めながら飲んでいた。
そうそう、ある一部に特別Uの字テーブルを置いてみたところ。
ものの見事に図書館に住んでいる魔女と、森の中の人形遣いが向かい合った。
ああ、ありゃ喧嘩が起こるな。
そう言えば魔女は赤くないな。やっぱりガセだったか。
向こう側では鬼と天狗がどれだけ飲めるか勝負している。
……良く飲めるな。
ある部分ではレミリアが霊夢に襲いかかってるし。
……あ、夢想封印された。
まるで向こう側とこちら側では全く別の空間のようだ。
独りぼっちの人間を外から見たらきっとこのような感じだろう。
……所詮、俺は外の人間だと言うことだろうか。
やっぱりここに混じってはいけないのだろうか、そう思えてきた。
……縁側でお茶でも飲んでよう。
そう思い、立ちあがろうとしたとき、
「あ、姉さん。ここ空いてるよ」
現れたのは赤い服を着た人と白い服を着た人、そして黒い服を着た人。
三人とも別々の楽器を持っていた。
赤い人はキーボード。白い人はトランペット。黒い人はバイオリン。
たしか、この三人はプリズムリバー三姉妹だった気がする。
っていうか三人で似た服着たら三姉妹っぽいし、幻想郷に三姉妹は一組しか居ないし。
それはともかく、どうやら三人は座る場所を探していたようだ。
「でも、先客がいるみたいだけど?」
「あ、別に使ってもらって良いよ。別の場所に行くし……」
そう言って立ちあがろうとしたが、赤い服の人に止められた。
「まぁまぁ、別に動かなくてもいいじゃん? 四人分席があるし」
「それはそうだが……」
「宴会だしいいじゃん。たまには違う人と飲んでみようよ?」
そう言われたら動けない。とりあえず座ることにした。
三人は前に白い人、右に黒い人、左に赤い人が座った。
その後、全員でとりあえず自己紹介をしておいた。
言われてから思い出したが、この三姉妹は俗に言うちんどん屋だった。
赤い人は三女の『リリカ・プリズムリバー』
白い人は次女の『メルラン・プリズムリバー』
最後に黒い人は、長女の『ルナサ・プリズムリバー』
別に黒い人だから黒幕とかいうわけではない。黒幕は冬の妖怪だ。
俺も元々三姉妹については良く知らなかったので、この情報は重要……でもない。
最初は俺以外の三人がのんびり喋っていたが、その後俺も交えて喋る事になった。
ちなみに、さん付けはくすぐったいので止めろとのこと。
「そういえば、○○さんはどこに住んでるの?」
「人里よりちょっと離れた場所……かな」
「へぇ~」
「で、なんでメルランは枝豆を食べずに豆だけ一箇所に集めてるんだ?」
「楽しいからよー」
「メルランはそういうの好きだから……」
「この前なんかプチプチ君を一つずつ潰してたし」
「そうなのか……。それで、これは食べていいのか?」
「駄目」
「いや、それじゃあ食べられないじゃないか」
「全部やったらいいけど」
と、言うわけで俺は全部豆だけになるまで食べるのはお預けになってしまった。
仕方が無いので健康に良いらしいスルメを食べていた。
@ @ @ @ @ @ @ @
宴会も中盤~終盤に差し掛かったと思われる頃。
「う~ん……」
「あらあら、リリカがダウンしちゃったわね」
飲みすぎたのだろうかリリカが眠そうに机に突っ伏した。
やっぱり三女はお酒に弱いのだろうか?
しかしながら俺はリリカが酒を飲んでいるところは見ていないのだが……。
こっそり飲んでいたのか?
「じゃあ私はリリカと先に帰るわ」
そう言うとメルランは立ちあがった。
ちなみに枝豆はもうすでに豆だけになった。
「それじゃあ私も……」
「いいわよ、たまには姉さんにも休憩は必要だし。ね?」
つられてルナサも立ちあがろうとしたが、メルランに止められて渋々(?)座った。
「それじゃ姉さん、頑張って」
そう言ってメルランはトランペット吹き鳴らして行った。
いや、トランペット鳴らしながら行ってどうするんだ。
背中には寝ているリリカがいると言うのに。
嫌がらせか? 仕返しか?
「…………え~っと」
二人が居なくなったこの状況、俺とルナサは一瞬だけ顔を見合わせた。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
沈黙。
元々喋っていたのはリリカとメルランであって、俺とルナサはそれに合わせて喋っていたのだ。
話題を探そうとしても無く、黙るしかなかった。
つまり今の状況、電源無しでテレビをつけようと言うようなもの。
二人とも黙って豆だけの枝豆を食べていた。
「………………えっと」
やがて、沈黙に耐えられなくなったのかはわからないがルナサが口をあけた。
「私達の、k「○○さ~ん、飲んでますか~?」「なっ! あ、文!?」
突如見事に酔っ払った文が、後ろから抱き着いてきた。
突然の事に前のルナサは膠着している。たぶん俺も。
いや、感触がどうとかは別にいいわけで、よくないけど。
そんなことはともかく、この酔っ払いはどうすればいいのか?
そのまま一緒に騒いでも良いが、彼女は酒の強さが半端無いので下手すれば死んでしまう。
諸刃の剣。素人にはお勧めできない。
ちなみにこの文は宴会で(俺のところに)乱入率は、ダントツ1である。
と、いきなり後ろからの気配と感触が消えた。
これまた驚いて後ろを見るも、何も無くただ普通のどんちゃん騒ぎしか見えなかった。
しいていつもと違う部分を言うと、酔いつぶれた人が誰もいないと言う事か。
視線をルナサの方に向けると、やっぱり同様に驚いていた。
そして、
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
またまた沈黙。
何か言おうとしたような気がしたが、向こうが言わなければわからないわけで。
やっぱり二人とも豆だけの枝豆を食べていた。
「……………………えっと」
やがて、タイミングを計れたのか沈黙耐えられなくなったのかルナサが口をあけた。
「わたs「二人とも~飲んでるか~」「ま、また!?」
またまた突如見事に酔っ払った鬼、もとい『萃香』が俺とルナサの間になぜか芋焼酎を持って現れた。
「なんだ~? 二人とも元気無いz」
ドガッ!!!
凄まじい打撃音と共に俺の視界から萃香が消滅した。
驚いて反射的にルナサの方を見てみると、丁度居合切り後の形で手にはバイオリンを持っていた。
つまり、たぶん、おそらく、もしかしたら、可能性としては、ルナサが吹っ飛ばしたんだろう。バイオリンで。
次に、吹っ飛んだ方向だと思われる方を見た。
直線的に木々がなぎ倒されていた。
萃香の吹き飛んだ痕だろう。
まあそうだろう、俺は剣筋というかバイオリン筋なんて全然見えなかったのだから。
それよりも俺には気になる事があった。
「……そのバイオリン。折れないのか?」
あの速度でバイオリンを振れば普通に考えたら折れる。
見た感じ木だし。
そう思って、体制を戻していたルナサに聞いてみたところ、
「えっ?」
彼女は素っ頓狂な声を出した。
彼女はバイオリンのことになると良く話した。
バイオリンは何年前から云々、そもそも弦楽器は云々。
わかりやすく説明してくれるので、俺も聞いてきて楽しかった。
それ以前に沈黙から解き放たれて嬉しかったと言えばそうだ。
っていうかそちらメイン。
「それでね、…………ん?」
「? どうした?」
「なにかが……なんだろう?」
そう言ってルナサは立ちあがった。
そしてルナサから見て正面、俺から見て真後ろへと歩こうとして、
「きゃっ!」
こけた。盛大にこけた。それはもう芸能人が負けを認めるほど見事なこけっぷり。
ここで注意すべきはルナサの進行方向。
進行方向は俺の後ろなので、倒れてくる方向はつまり、
「うおっ!」
俺の方向です。
突然の事なので受身すら取れずにそのまま倒れましたよ。
勿論の事ながら、ルナサも一緒に。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
本日三回目の沈黙。
すぐ目の前には驚いていると言うか突然の事に訳のわからない状況と思われるルナサの顔が。
偶然とはいえ、この形は『ルナサが俺を押し倒した』になる。
上から下がっている金色の髪からは、微かにシャンプーかと思われるいい匂いがした。
そのまま数秒か数十分か数時間かわからないが、二人とも硬直したままだった。
「…………え、あ、……ご、ごめん」
やっとのことで我に返ったルナサは、真っ赤になって上からどいた。
「い、いやいいいいいよべ別に」
とりあえず起きあがった俺だが。
もしかしかしたら赤くなってるのかもしれない。
なってるな、言葉カミカミだったし。
誰も見ていないかなとちょっと辺りを見たところ、やっぱりどんちゃん騒いでいた。
やっぱり、この時間帯は終盤なのに誰も酔いつぶれていない。
皆、なにかあったのか?
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
あの事もあってか、また沈黙。多分四回目。
今度は何も食べる物が無いので、二人とも何もせずに下を向いて黙っていた。
両者とも顔が真っ赤だと推測しておこう。
そういえば、毎回宴会では酔いつぶれていたので、帰るときはどうするのだろう?
やっぱりメルランのように勝手に居なくなっていいのだろうか?
まあ、ここの住人は勝手気侭(←大変失礼)だしいいのだろう。
沈黙続きで酔いが冷めてしまった。それ以外もあることにはあるが……。
それに、元々あまり飲んでいなかったのもある。
「え、えーっと……。じゃあ俺、先に帰る……が?」
「えっ?」
そういう声を出して『もう?』って顔でこっち見ないでくれ、とっても帰りづらいから。
と言っても、俺はそろそろ帰りたいのである。
「そーだな、……一人じゃ不安だし途中まで一緒だと嬉しい、のだが」
「……そ、それなら私も一緒に行く、けど……」
ビバ我が機転!
まあ酔いが冷めたと言っても妖怪が怖くなくなるって言われるとそうでもないので、一人じゃ不安だった。
あの破壊力なら大丈夫だろう。きっと。
@ @ @ @ @ @ @ @
月の明かりがあっても夜の森は大層怖い。
魔法の森ほどじゃないにしても、根っこが縦横無尽に広がっていて足場は悪い。
その上妖怪が良く出る。
それでもこの道を通らなければならないわけ、いつもは昼に通っているのだが今回は夜だ。
まさにレッスン先は黄泉である。
「……一寸先は闇?」
「そうそれ」
そう言って俺は黙った。
心を読まれたのはキニシナイけど、これが仕来りってもんですよ。
「毎回この道を通ってるの?」
と、ルナサが周りを警戒しながらも聞いてきた。
「まあ。それでも毎回昼に通ってるからな。とりあえずは安全だ」
「…………大変?」
「そりゃ大変だな。……なんでそんなところに家構えたんだ俺は?」
疑問に思っても仕方が無いので、時折来る冷たい風に体を震わせながらも歩いていた。
ルナサの方を見てみると、寒そうにせずに普通に歩いていた。
「寒くないのか?」
「まあ、私達は騒霊だし……」
「騒霊?」
騒霊なんて聞いた事は無い。半人半霊とか、全部亡霊とかしか。
「簡単に言うと、ポルターガイスト……かしら」
「ええっ! あの同じ姿をしていて、それを見た人は死んでしまうって言う……」
「それはドッペルゲンガー。お皿とか物が勝手に浮くのがポルターガイスト」
呆れたのかはわからないが、微かに呆れたようだ。
「あ、そうか。どっちでもいいけど」
「驚かないの?」
ルナサが驚きと不思議の半々の声で聞いてきた。
「慣れたからな。天狗とか、普通の魔法使いとか、吸血鬼とか亡霊とか毎日とは言わずも見てるから」
俺はどこを見ても木か闇なので、月の明かりで微かに見えるルナサの方を見て言った。
「……そう」
それっきり俺とルナサは黙って、木の葉の間から微かに見える月を眺めていた。
途中までと言ったものの、そのまま成り行きで俺の家のまん前まで送ってもらった。
「あ、ここまででいいぞ。って言っても、家の目の前だけどな」
「…………ん」
しかしなぜか、ルナサは去ろうとしなかった。
良く見るとなにかを喋ろうとしているが、上手く言い出せないようだ。
俺も今の状況で悩んでいた。
確かに、これでプリズムリバー三姉妹とは知り合いと言う仲になったが、なんかこのままでは惜しい気がした。
知り合いと言っても宴会の仲でしかないため、実際に会うのは少ないだろう。
「えーっと、その、なんだ」
あーもう、ここでなぜ俺の機転が活躍しない!
良く見ると、ルナサは俺の言葉は耳を貸さずにどうしようかなと考えているようだった。
この状況のまままた数刻ばかり。
もういい加減言ってしまおう。断られても良いか。
でーもなぁ、断られると厳しくなるだろうな色々と。
でも、ここで言わなくては……。
よし言う。当たって砕けてバラバラになれ、だ。
そう思うと俺は覚悟を決めた。
「えっとだな」 「えっと、その」
何かが聞こえた気がしたがもうどうでも良い。気持ちを伝えなければ気分が悪い。
「バイオリンの事もっと教えてくれないかな~って……」「バイオリンの事もっと教えてあげようって……」
見事に同じ内容で同じタイミング。どうやら彼女も同じことを考えていたようだ。
そこで俺も彼女も一瞬硬直した。
両者共々内容が理解できたところで、
「「よろこんで」」
またまた同じタイミングで答えた。
@ @ @ @ @ @ @ @ @
「それで、その後どうなったんですか?」
「その後か? 両者共々普通に帰ったよ。以上終わり」
「なんだ……つまんないですねぇ」
ここはプリズムリバー邸。見た感じ古ぼけた洋館の家である。
見た感じじゃなくても古いのだが、なぜか崩れない不思議の館である。
まあ見た目以上に広かったり、何時の間にか真っ直ぐ飛んでいなかったりする廊下とかよりはましだと思うぞ?
そこのリビングだと思う部分で俺と文は話していた。
内容はというと、俺とルナサの始めての出会いについてだった。
「それより文。お前、そのとき宴会に居て、さらに乱入してきたよな。覚えてないのか?」
「いやー、それがですね。スピリタスを一気飲みしてから記憶が吹き飛んでまして……」
「人間だったら死ぬぞ……、それ」
「私は人間じゃありませんから」
「じゃあハイエナか」
「天狗です」
「そう言えば今年は狗年だな」
「なんで前と同じ事を言ってるんですか」
「いやなに、なんとなくだ」
そのまま続けても良かったが、なんとなく止めた。
「で、話しを変えますが。何時も人前に出るときはお二人ともいつも通りにしてますが、
やっぱり家ではラブラブですか?」
「さぁ、どうだろうな」
「なんで答えないんですか」
文はちょっとした憤りと興味の合わせ技の音量で聞いてきた。
「新聞記者はプライバシーの中まで突っ込んで良いのか?」
「……わかりましたよ」
おお、前よりも利口になったじゃないか。
「では次です。告白したのはどっちですか? また、どのような場面でどのように?」
「告白したのはルナサの方からだが……それ以上は言わん」
「またですかぁ?」
今度は呆れが入っていた。
「ルナサに聞いてみればどうだ?」
正直、俺は答えたくなかった。
理由は簡単。場面と状況がやばすぎたからである。
ルナサは何を間違えたのか、バレンタインの日は好きな人を殴り殺す日と勘違いし、
俺に対して『好きです』と言った直後、鬼神の如くバイオリンで殴りかかってきたのである。
正直、死ぬかと思った。
あの速度のバイオリンを避けたのは奇跡としか思わない。
その後必死でルナサの間違いを修正し、なんとか今まで生きていけたのである。
代償として森一つ程度、その付近の店他。
「……そうですね、あなたじゃ情報は少ししか得られそうになさそうですし……」
そう言うと文は標的をルナサへと変更し、去っていった。
「ふぅ……、文の記者魂も相変わらずだな」
それにしても時間の進み具合が半端じゃない。
まるで出会った頃が昨日のようである。
楽しい時間はあっという間に進んでいくものだ、こうしていても一秒一秒が着々と進んでいく。
俺はのんびり紅茶を飲んでいた。
ここに来るまで紅茶なんて飲んだことがなかったが、ここに来てから紅茶以外は殆ど飲まなくなってしまった。
「で、○○さんと家の中ではやっぱりラブラブなんですか?」
「……えっ?」
「ラブラブだよー。よほどの事が無いと離れないもんね。ルナ姉と○○」
遠くから文の質問の声と、ルナサの驚きの声。そしてリリカの声が聞こえた。
ちなみに、俺はリリカが居る事を知っていて無視をしていた。
「ちょ、ちょっとなんで勝手に言うの! それ以前になんで知ってるの!?」
「ほうほう二人っきりでやっとラブラブなんですね……」
「そうそう、入るに入れないって状況が何度あったか」
「本当、良い彼氏持ったわね姉さん」
「羨ましい限りだねー」
「い、いや……それほどでも……」
「それで、告白の場面と状況はどうなんですか!?」
やれやれ、二人がからかって一人が質問か。
あの様子じゃ多分真っ赤だろうな。
影で見てても面白いと思うが、後で何言われるかわからないので助けることにした。
そう思うと、俺は立ちあがって四人が居るところへと向かった。
俺は楽しい日々は短いと思わない。
思い出が俺の心に残るから。
後日談だが、俺達の話が一面を飾って大量に売たらしい。
見出しは『バカップル誕生』でこの件に対しリリカとメルランにからかられたのは言うまでも無い。
新聞と同時に、マスタースパーク注意報が出たらしいがくわしくはわからない。
~~~END~~~
~バイオリンの裏~
反省点、ルナサがルナサっぽくないってことですかね。
花映と妖々じゃ口調も性格もちょっと違うように見えるので、難しいものです。
実はこれ、バレンタイン直前まで忘れていて、あわてて最後にバレンタインネタを組み込んで完成しました。
本当の所
ル ナ サ に 押 し 倒 さ れ た か っ た 。
これがメインです、これがやりたかった。
それでは、最後に改造三つ下に書いて終わりにしたいと思います。
では、また投稿する日まで~。
~ヴァイオリンの裏~
改造、1
「…………眠い。……寝てようかなぁ」
別にやることが無いので寝ていても良いが、そうも言っていられない。
ガシャーン! ドサッ!!
「ちわーす!! 三河屋でーす!」
「そこ、ガラス割って中に入るな! それに三河屋はそうやって入らん!」
「えー、前なんかでこういうのやってましたけど……」
「それは絶対に三河屋じゃない! サブちゃんはそんなことしない!」
「じゃあ主人のほうで……」
「若本!? ってそっちもやるわけない!!」
改造、2
中にはこんなのが書かれていた。
『
明日、家が無くなるぜ?
霧雨 魔理沙より』
いや、流石に横暴すぎ。
改造、3
中にはこんなのが書かれていた。
『
宴
宴宴宴宴宴宴宴宴宴宴宴
宴 宴 宴 宴
宴宴宴宴宴
宴 宴
宴宴宴宴宴
宴
宴宴宴宴宴宴宴宴宴宴宴
宴 宴
宴宴宴宴
宴宴 宴
霧雨 魔理沙より』
絶対普通の魔法使いじゃないって……。
>>521
───────────────────────────────────────────────────────────
「ルナサぁぁぁ!君の体を俺と言う奏者によって弾かせてくれぇぇぇ!!」
「………」
バゴォッ!
「ぐはっ!まだだ、まだ終わらんよ!」
ゴスッ、メキッ
「くぅっ、やるな!だが俺の最終奥義を前にしても…」
─ ストラディバリカウンター ─
ぐちゃっ
どうみても拒絶されてます。本当に(ry
3スレ目 >>471
───────────────────────────────────────────────────────────
プリズムリバーの館で、僕はルナサさんの演奏を聞いていた。
窓から差し込む夕日が彼女が金色の髪を別の色に染める。
そんな姿に見惚れていると直に演奏は終わり、僕はそれに拍手を送った。
「どうだったかな?」
「上手だったよ、すごく」
「ありがとう。君にそう言ってもらえると、嬉しい」
ルナサさんは僕のちっぽけな言葉を、大切に受け取ってくれる。
そして小さいけれど綺麗な花がほころぶ様に、笑った。
その顔に胸が大きく跳ねる。
「ごめんね。気の利いたこと、言えなくて」
バイオリンを片付け終わって、同じソファの隣に座っているルナサさんにぽつりと呟く。
「どうして謝るの?」
僕は口下手だ。音楽にも詳しくない。
ルナサさんの演奏はとても心に響くのに、それをうまく形にできないのが歯がゆかった。
彼女にありきたりな賛辞しか送れない自分がとても嫌いでもある。
「本当は、もっとたくさん言葉を送りたいんだ。ルナサさんが喜んだり嬉しくなるような事をたくさん。
でも何か上手にまとめられなくて……」
こうして話している今もいっぱいいっぱいで、自分で言っている事がよく分からない。
そうしてしばらくの間、沈黙が場を支配した。
夕日はもう半分以上顔を隠していて、空には気の早い星達が数個昇っている。
重い空気に耐え切れず、今日はもう帰ろうと思い僕は立ち上がろうとした。
その時――
「いいの」
と、ルナサさんは言った。
「あなたが聞いてくれるだけで、私はいいの」
彼女の右手が僕の左手に重なる。
「だって私、あなたのこと好きだから」
そしてもう一度微笑む。今度は全て包み込むような笑顔。
「ルナサさん……」
「実はね、演奏してる時はあなたの顔を見てるの。とっても面白いのよ。
一楽章ごとに、ころころ顔が変わるんだもん。かわいい顔したり、難しい顔したり」
まさか自分がそんな百面相をしていたとは。気づいていなかったので恥ずかしい。
「だからね、言葉にしてくれなくても私には伝わってる」
ぽふ、っと肩に軽い感触。ルナサさんが寄りかかってきたからだ。僕もそれに頭を寄せる。
「ありがとう」
あぁ、本当に僕は馬鹿に違いない。こんなに短いお礼の言葉を返すのが限界だ。
「私、あなたの事を想ってる気持ちを込めていつも演奏してるの」
ルナサさんはサラリと物を言う。しかも驚くほどストレートに。
「ちゃんと伝わったかしら?」
僕はそんな彼女の言動にどぎまぎしっぱなしだし、そんな時は余計言葉が出てこなくなる。
だから、重ねたままの手をそのまま自分の胸に当てた。
普段の何倍も早い鼓動。ひょっとしたら体の外にまで聞こえてるんじゃないか、と思うぐらいうるさい鼓動。
それを感じたのか、ルサナさんは僕のほうを向いて言った。
「すごい、ドキドキしてる」
「うん」
「こんなに早いと寿命縮んでしまうかもしれないよ」
「それは困るかなぁ」
「どうして?」
僕と彼女の視線がすっと絡まる。
『ルナサさんと一緒にいることができる時間が短くなっちゃうから』
そんな事を思ったけど、口下手な僕はもちろん言う事ができなくて。
誤魔化すように曖昧に笑って、彼女にキスをするのが精一杯だった。
『僕』はルナサより年下なので、さん付けで呼んでいるということにしてくださいorz
これはただ単に年上好きな私の趣味です 文句あるかちくしょー
しかもこれって素直クールじゃないよね…… ごめんなさい
4スレ目 >>300
「これを……受け取ってくれないかな」
俺はルナサに持っていたケースを渡す。
恐る恐るといった感じでルナサは受け取って、ケースの留め金をはずした。
「わあ…………」
静かにあがる感嘆の声。その声が聞けて心底ほっとした。
「幻想郷中を探し回ったよ。まさか外の世界のそれが、ここに残っていたなんてね」
ケースに収められたのは、長い長い年月を経てきたような、あめ色に輝くヴァイオリン。
「1730年作のグァルネリ・デル・ジェス。名器中の名器だ。外の世界なら、きっと億単位の値がつけられるだろうね」
ルナサの震える手がヴァイオリンのネックをつかみ、そして弓を握る。目がスクロールからペグ、そしてブリッジへとすばやく移動した。
どれもルナサにあわせて調整してある。
「こんなすごいのを……私のために……?」
どこか怖がっているかのような声に、俺は安心させるように笑ってみせる。
「約束しただろう。俺と君とで。君は最高の舞台で、最高の演奏を聞かせるって。そして俺は最高の舞台で、最高の演奏を聞くってね。だから、君に是非受け取ってほしい」
はっきりと、目を見て言ってみる。
しばらくして、ゆっくりとルナサはヴァイオリンを取り上げた。
静かに、演奏の姿勢をとる。
「いいよ、聞かせてあげる」
照れたように微笑んで。
「二人だけの演奏会、始めましょう」
プロポーズの言葉というより指輪代わりのヴァイオリン。
しかし実際買うとなったら全財産つぎ込んでも無理でしょうな。香霖堂の奥に埃をかぶっていたのを見つけだすしかないか。
1スレ目 >>61
───────────────────────────────────────────────────────────
俺達は言葉を交わさぬまま、ただ肩を並べて座っていた。
俺は静かに手元を見つめ、彼女…ルナサは空に浮かぶ半月を見上げている。
傍では、空中に浮かんだヴァイオリンが静かな音楽を奏でていた。
「……あの、さ」
「うん?」
振り返るルナサ。いつもの何処を見ているのかも分からない、糸のような眼。
けど、それなりに一緒にいて…こんな俺でも少しは、その奥に見える感情も見える気がした。
きっと…言うチャンスは、今しかない。
「俺…さ。ルナサの事…好きなんだ」
「……………ん」
ルナサはふいと前を向いて、立ち上がった。
そして、漂っていたヴァイオリンを手に取り…ゆっくりと、演奏を始めた。
その音楽は、俺が聞いたこともない…言葉ではとても表せない曲だった。
時に激しくうねり、時に優しく包みこみ…一時として同じ感覚を抱かせなかった。
ルナサは瞳を閉じ、一心不乱にその曲を演奏し続けている。
…それは、触れる事すらためらわれるほどに、眩しく輝いて見えた。
「……ふぅっ」
一体どれ位の時間がたったのか。一時間にも、一瞬にも思えた。
ルナサはバイオリンを下ろす。息は切らしていないものの、少し高揚しているようにも見える。
「どうだった?」
「どうって…凄かったよ」
今でも体中が震えていた。魂を振るわせる演奏とは、あの曲のことなのだろう。
「あれはね…たった今、体の中で聞こえてきた音楽そのままよ」
「…聞こえてきた、音楽?」
「あなたの思いを伝えられて…私の心が奏でた音。それを可能な限り…演奏したわ」
ルナサは、俺の瞳をじっとみつめて、そっとこう言った。
少し照れくさそうな…それでいて自信に満ちた笑顔を浮かべながら。
「私は不器用だから…音に乗せて思いを伝えてみたの。これが、私の気持ち。私の答え。
あなたの心に、私の心の音色は…伝わった?」
俺の答えは…誰に聞かれるまでも、無かった。
ルナサ姉さんはこんな風だといいな。
1スレ目 >>147
───────────────────────────────────────────────────────────
>>164>>167見たいなノリでこれからもヘタレドリーム振りまいてもいいよね?
前みたいな一行告白とかあっさりふられたりとかそんなのもありだよね?
最近良作が多くてこんな風にビビってる俺はルナサ愛してるルナサ
あなたの張りつめた心のA線にそっと手を当てて優しく豊かに震わせたい
ルナサ「その嫌らしい手つきをやめなさい」
orz
1スレ目 >>814
備考:>>>164>>167~
164 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/08/20(土) 03:27:17 [ clq7w9ZI ]
文才?設定?だから何?
思いの丈をぶつけるだけさ!!
167 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/08/20(土) 04:21:30 [ g9DzQSUs ]
SSスレじゃないんだから、読み手のことなんてあんま気にせず気軽に妄想垂れ流していいんじゃまいか
つまりそういうことだ!
───────────────────────────────────────────────────────────
・・・ヤバイ、道に迷った。
見渡す限り森、森、森。俺は呆れかえった。
神社の巫女に頼まれて普通の魔法使い、魔理沙の家の近くにある店に行ったのだが、これじゃあ今日中には神社に帰れそうに無いな。
それよりも、今日生きられるか考えないとな、下手すれば死ぬし。 そ ー な の か ー
何か聞こえたような気がするが、とりあえずは・・・ダッシュ!
「ハァ、ハァ、ハァ。走った、俺が、馬鹿だったぁ・・・」
走ったところで景色は変わらず、相変わらず木に囲まれた薄暗い森の中。
周りが少しずつ暗くなっていって、少し視界が狭まれる。
「このまま死ぬんだろうか・・・。あぁ、死ぬ前に外に帰りたかったなぁ・・・」
ここで死んだら誰か見つけるだろうか?・・・まぁ、いいか。
近くにあった切り株に腰かかり、・・・と、そこで遠くからバイオリンらしき音が聞こえた。
「これは・・・幻聴か?それでも、試してみる価値はあるかもな!」
そのかすかなバイオリンの音がする方向に向かって、もう一度走る。
走って少しして、突然視界が開けた。
そこに居るのは、黒い服に金色の髪、そして今バイオリンを演奏している少女だった。
(無我夢中で走っていたから気付かなかったが、良い曲だな)
俺は邪魔しないように、近くの切り株に腰かかり、目を閉じてその演奏を聴いた。
・・・と、バイオリンの演奏が急に止まり、少女がこちらを軽く見たあと。
「あなた、誰?演奏の邪魔なんだけど」
「ん?ああ、俺は・・・遭難者でいいのか?」
「私に、聞かれても困る」
彼女は間髪いれずに答えてきた。めげずに聞く。
「えっと、いきなりで悪いんだが、ここから何処に行けば神社にいけるかわかるか?」
「・・・とりあえずは、わかる」
「帰らないといけないんだ、教えてくれ」
こんな森の中で野垂れ死にはゴメンだ。すると、彼女はこちらを向いて。
「直線で行くには、あっち。今から走ったら、日が沈む前にいけるはず」
そう言って指差した方向を見る。俺が進んだ道の・・・・・逆、方、向。
「ありがとう。えっと、名前は?」
「名前を尋ねるときは、自分から名乗りなさい」
叱られてしまった。この年でしかられるとは、母親以来だ。
「あ、そうか。俺は、○○ってんだ」
「私は、ルナサ。ルナサ・プリズムリバー」
「ルナサ、か。ルナサはいつもここで演奏してるのか?」
「まぁ、そう」
ルナサが曖昧に答える。そして後ろを向いて歩きながら。
「早く帰ったら?急がないと、沈む前に帰れない」
「マジか!?それじゃ、ありがとう!」
急がないと、妖怪にに食われてしまう。
俺は不思議な少女、ルナサ・プリズムリバーの事を忘れて、生きるか死ぬかを考えながら走って帰った。
とりあえずは沈むギリギリに神社に戻れた。その代償として足が棒のようになったが。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・し、死ぬ。えーりんえーりん、助けてえーりん・・・」
前に元気になる呪文を教えてもらったので言ってみるが・・・、効果なし。くそっ、あの白兎め・・・。
「まったく、どうやったら昼に出かけて、日が沈む頃に帰ってくるのかしら?」
そう呆れ半分、疑問半分で言ってきたのが、この神社、博麗神社の巫女博麗霊夢だ。
それよりも、少し気になる事があって霊夢にたずねた。
「そうだ、少し気になったんだが・・・」
「なに?」
「霊夢のスリーサイz」
―――ゴスッ!
鈍い音とともに俺の後頭部に激痛が走った。霊夢の手元を見るといつの間にか、お払い棒が。
「変なこと聞かない、次聞いたら地獄見るわよ」
「うぅ・・・冗談なのに」
「冗談に聞こえなかったわ」
俺の反撃もあっさりかわして、霊夢が答える。
「まぁ、それよりもだが」
気を取り直して俺は、今日の昼から起こった出来事を話した。
里に行ってから帰り際に道に迷った事。そこで金髪のバイオリンを演奏するルナサと言う少女にあったことなど。
一通り話した後。
「あんたね、行く前に地図渡したでしょ?」
「コレは、魔理沙が見ても解らん」
そう言って胸元のポケットにあった紙を見せる。適当に書かれた神社と、その上辺りにある店。・・・それだけ。
「それに、東西南北ぐらい書いてくれ」
「書いたところで解らないでしょ」
多少呆れながら霊夢が反撃をする。残念ながら対応策はある。
「解るぞ、このコンパスがあればな!」
そう言ってポケットからコンパスを取り出す。さながら外の世界で昔見ていたドラ○もんのような感じで。
「その、コンパスとやらをよく見てみなさい」
そう言われたので、よく見てみると・・・あっちらこっちらクルクル回転している。
「幻想郷では、東西南北なんて無いわ。あるのは上下左右と前後だけ」
霊夢から聞いた、この事で俺は呆然とした。
「そー、なの、かー」
かろうじて言った言葉がコレである。一気に形勢逆転、俺は崖っぷちに立たされた。
「解った?だから地図に東西南北かいても意味が無いの。・・・ってことで、あんたが晩御飯作ってよね」
そう霊夢からちっこい閻魔様の説教以上に厳しいお言葉を言われて、さらに地獄いきとも言われた。
俺が呆然としていると、目の前で霊夢がお払い棒を振りかぶっていた。
「さっさと・・・・動けぇ!!」
天秤打法奥義円月殺法を頭部にもろに食らった俺は、静かに昏倒する。
「だぁからチルノは、アホなのだぁ!!」
薄れ行く意識の中で、取り付かれたんじゃないかと思う程ノリノリの霊夢の声が聞こえた気がした。
チルノはアホじゃない!バカだ!
「そうそう、帰れる時期が決まったわよ」
何とか覚醒した後、霊夢がいきなり切り出した。
「そ、そうか!で、いつ頃だ?」
元々外から来た俺は、この幻想郷には慣れにくい。と、いう事で帰れるかと頼んだのだ。
「そう焦らないの。だいたい・・・一週間前後ね」
「一週間か・・・」
そう聞くと長そうで短いと考えられる。まぁゆっくり過ごせばすぐだろう。
「まぁ、ほとんどは紫の気まぐれだけど。二週間とかにはならないと思うわ」
霊夢がめんどくさそうに言ったその後。
「で、晩御飯は誰が作るんだっけ?」
殺気と有無を言わさぬ威厳をあわせて聞いてきた。ああ、怖い怖い。
「俺だよ・・・。今作るから待ってろって」
そういいながら台所に逃げ出すように向かう。
――――翌日
俺は懲りずに森の中に入っていた。理由は、もう一度あの演奏を聴きたいがために。
今度は迷わずに・・・は行けなかった。その代わり耳を澄ましているとかすかに音が聞こえる。
俺はその方向にゆっくりと行っていた。気付いたら走っていたけど。
前と同じ場所に、いた。空からあふれる光に照らされて、そこだけ別の空間のように。そこに彼女はいた。
今度も同じ場所に座り、前回と同じように演奏に耳を傾ける。
~~~♪ ~~~♪ ~~~♪
ゆったりと流れる曲、聴いていると悲しい気持ちになるかもしれない曲。
・・・と、演奏が終わったのか。ルナサが演奏をとめた。
「また来たの?・・・それとも、また迷ったの?」
こちらを見ずに聞いてくる。
「迷ったわけじゃなくて。ちゃんと来たんだよ。・・・途中迷ったけど」
俺の答えに、ルナサが少し笑ったように見えた。しかし、すぐに元の表情に戻った。
「アナタも懲りないわね。下手したら死ぬのに」
「死んだら死んだでいいさ」
自分が言ったのになぜか違和感がある。きっと鬱になったんだろう。
少しの沈黙の後。
「・・・ねぇ、・・・少し話・・・しない?」
多少赤みが差した頬と一緒に遠慮がちな声が聞こえた。
「ん、まぁいいけど」
俺はそっけなく答える。ルナサが少し安心したような表情をした後、近くの切り株に座って、自分のことを話し始めた。
自分は四姉妹なこと。自分が長女で、次女は白い服のトランペッター、メルランと言って毎回廃テンションな事。
三女は赤い服のキーボード担当のリリカで、毎回悩まされているなど。
中でも一番驚いたのが、ルナサが騒霊だということ。
「騒霊・・・?幽霊か」
「幽霊とは違うと思うけど、大体は同じ。私たちは演奏をするの。ポルターガイストも、騒霊なのよ」
そのほかにも色々と話してくれた。話しているときはルナサはうれしそうに話していた。
俺はその話をしっかりと聞く。
「・・・・だいたいこんなものかな?じゃあ次はあなたのこと」
いきなり話を振られたので、何を話して言いか戸惑う。
「お、俺も話すのか?」
「当たり前。私のことを話したのだからあなたも話すべきよ」
そう言われたので渋々話すことにした。
外の世界に住んでいたこと。一人で住んでいたことなど。あまり話すことがないのですぐに終わった。
「ふぅん・・・大変ね」
全部聞いた後、ルナサがそう感想を漏らした。
「まぁ、あと少しの辛抱だけど」
「どうして?」
少し興味を持ったのか、聞いてきた。一瞬言葉に詰まる。
「・・・・・・慣れるのは時間の問題だろうし」
本当のことを喋ろうとしたのだが、なぜか後ろめたい気持ちがあったので、つい嘘をついてしまった。
それきり話すことがなくなったので。お互い森の中の音を聞くことにした。
「姉さん!やっぱりここにいた」
声がしたほうを向くと、肩で息をしている赤い服の少女がいた。たしか、リリカと言ったか。
「どうしたの?リリカ」
ルナサが驚いて聞く。驚いてるようには見えないが。
「どうしたのじゃないわよ・・・、コンサートのリハーサルの時間がそろそろ始まるってのに・・・。
ん?姉さん、その人・・・誰?」
リリカがこちらに気付いて、訝しげに見た。
「ただの観客よ」
ルナサが素っ気無く答える。
「ふぅん・・・まぁいいや。姉さん早く!」
リリカがルナサを急かす。どうやら急ぎの用らしい。
「んじゃ、帰るとしますかな」
「私も急がないといけないから・・・」
「ん、じゃ」
そう言ってヒラヒラと手を振って帰る。・・・さて、神社に帰って霊夢の手伝いでもしてるか。
その翌日も、翌々日もいつもの場所に行ってルナサと話をしていた。
少しした後、帰って、神社の手伝いをする日々が続いた。
そのことを知ってか知らずか、霊夢が言った。
「どこで何しているかは私は知らないけど。あんまり仲良くしすぎると帰るとき辛くなるわよ」
それでも、今日もルナサのところに行く。
――――そして、残りの日が一日になった。
朝起きて居間に出ると、いつもは俺よりも遅く起きる霊夢が何故か居る。そして霊夢はこちらを睨むと。
「今日が幻想郷に居られる最後の日。・・・友人には別れを言っておきなさい。たとえ、どんな結果になろうとも」
いつもと違う雰囲気に俺は押された。それからいつもの口調で。
「今日の朝食はあなたがやるんでしょ?早くして」
そう言われて俺は慌てて台所に向かった。
昼になり、俺はいつものように森へ向かったが・・・足取りが重い。
(あんまり仲良くしすぎると帰るとき辛くなるわよ)(別れを言っておきなさい。たとえ、どんな結果になろうとも)
霊夢の言った事が頭をよぎる。
「どうするか・・・」
今になって、仲良くしすぎた事に後悔した。このまま、伝えていいのだろうか。
ここに残る・・・そんな事も考えるが、それでは霊夢達が困るだろう。
いっそ死んでしまえば・・・、そう考えた後に考えを振りほどく。
「ふ・・・。自暴自棄の趣味なんて無いのにな」
思わず苦笑がもれる。行って、別れを言って、帰ればいいだけ。たったそれだけの事なのに、足取りが重い。
それでも、一歩一歩ルナサとの場所へ向かう。
・・・と、バイオリンの演奏がしっかりと聞こえてきたところで、足が止まった。
―――行っては、彼女を傷つけるだけだ。
もう目の前に、ルナサの姿が見える。
―――彼女の悲しむ姿は見たくは無い
今すぐここを立ち去りたい感情が全身を支配する。
―――伝えたら、彼女が悲しむ。そんな姿は見たくは、無い。
気付いたら俺は、その場から全速力で逃げ出していた。胸が痛む。刃物で刺されたときとは違う、別の痛み。
だが、それもすぐに収まった。
その後俺は、適当にブラブラして。夕方頃に神社に帰った。
(今日が幻想郷に居られる、最後の日・・・か)
神社に帰るときも、何故か後ろめたい気持ちがあった。
「遅かったわね、いつもならもう少し早いのに」
いつもどうりの霊夢の口調に、胸が痛んだ。
「・・・ああ」
「・・・・・・別れは、言えた?」
確信をつくその一言に、俺は悪寒を覚えた。おもわず表情に出る。
「・・・まぁいいわ、あなたが、それでいいのなら」
霊夢も少し声のトーンを落として喋った。
「今日は、私が作るわ。あなたは、待ってなさい」
そう言って神社の中へ向かう。その後に続いて俺も、向かう。何故か、霊夢の背中が悲しみであふれているように見えた。
―――そして、幻想郷から帰る日
俺と霊夢と紫とその式が博麗神社から東、じゃない左の所に居た。そこに、博麗大結界があるらしい。
あるといわれても、目には見えない。しかし、感覚でなんとなくわかる。
「最後に一回だけ、聞くわ。あなたは、外の世界、元の世界に帰りたい?」
紫が、そう聞いてきた。もう答えは揺らがない。
「・・・ああ」
「・・・じゃあ、いくわよ」
そう言って霊夢は構える。
「あ、ちょっと待って」
紫が止める。その後こちらに来て。
「この手紙、元の世界に返って寂しくなったら開くといいわ。きっと、元気になるから」
そう言われて渡された手紙を、ポケットに入れる。
「いいわ、じゃあ始めましょう」
霊夢は力を込めて、結界の封印に備える。
そして、結界に穴が開いた、感じがした。あとは歩くだけ。それだけで、元の生活に戻れる。
「待って!」
聞き覚えのある声に、反射的に振り向いてしまった。そこにいるのは、ルナサ・プリズムリバー。
「昨日、来なかったから、不安だった。それで、もしかしてと思って・・・」
そう言ってこちらに走り出してくる。
「愛の力は凄いわね。・・・けど」
紫が感想を漏らしたあと式に命令した。
「藍、止めなさい」
有無を言わさない命令に、式神は一瞬戸惑う。
「え?しかし・・・」
「いいから、止めなさい」
「・・・はい」
そう言われ、走ってくるルナサの体を、止める。
「っ!・・・放して!」
「駄目だ・・・紫様の、命令だ」
式が苦虫を潰したように答える。そして紫がこちらを振り向いて。
「さあ、行きなさい。もう少し時間はあるけど、あなたは決めたはずよ?」
―――そうだ、元の世界に返らないと
自然に足が外の世界へと進む。霊夢は後ろを向いていた。
「行かないで!お願い・・・私は、あなたが居ないと駄目なのよ!!」
ルナサが必死に泣いて叫ぶ。俺は一瞬足を止めそうになった。
「・・・私は、あなたのことが・・・好き」
何かを喋ったような気がしたが、・・・聞かなかったことにした。
そして、霊夢が大結界を塞ぐ。
これで、終わった。あの人間は、外の世界へと行った。一霊の、悲しみを残して。
「うぅ・・・。どうして」
この前冥界の結界に居た、金髪の娘が泣きそうな言葉で言った。
「大丈夫、彼は帰って来るわ。・・・絶対」
紫が慰めにも似た真実を喋ったような気がする。実際、私も帰って来ると思う。
そうだ、帰って来たら引っ叩いてやろうか。そう思いながら、私は帰った。
元の世界に帰ってきた俺だが。どうせ親戚は誰も居ない、誰にも幻想郷のことを話さずに暮らしていた。
―――そして、数日後
どうしてもこの平凡な毎日が馴染めない。幻想郷に居た頃は毎日が平凡じゃなかったからな。
もともと友人も少なかった俺に、幻想郷の人とか妖怪とかは普通に接してくれた。
・・・ふと、紫から渡された手紙を思い出し。開けてみることにした。
『 ○○へ
幻想郷に帰りたければ、あなたが迷った森で、私の名前を呼びなさい。
気が向けば、返してあげない事もないわ。
ただし、もう一度幻想郷に戻ったら。もう帰れないわよ。
by プリンセス☆マジカル☆ゆかりん 』
「・・・ずいぶん変わった手紙だな。・・・・・・俺が最初に迷った森、か」
戻ったら帰れない。それは俺には決められない決断だった。
ここでの平凡な生活も、悪くは無いのかもしれない。それでも、幻想郷に帰りたいと思った。
「・・・なんで戻りたいんだ?」
俺が戻りたい理由・・・。考えてもいなかった、今考えるか。
(スリルがあるから・・・じゃないな、別の理由があるのかもしれない)
頭の中での幻想郷の記憶を探してみると。ふと、思いつくのが一つあった。
「・・・ルナサ」
さまざまなルナサの表情や、話などが鮮明に出てくる。
(・・・・よし!)
気付いたら俺は外に出ていた。
俺が迷った森、それはそう遠くないところだった。
「紫ーーーー!!」
叫んでみる、返事が無い。・・・・もしや嘘つかれた?今度は別の名前で呼んでみる。
「プリンセスマジカルゆかりんーーー!!」
やはり返事なし。・・・少し違うのか?
その後も色々試してみたものの、一つも当たらない。・・・やはり、これか。
「プリンセス☆マジカル☆ゆかりんーーーーー!!」
「はーい。プリンセス☆マジカル☆ゆかりんちゃん可憐に登場!」
・・・正直、冷めた。
「なによ、折角来てあげたのに・・・帰りたくないの?」
紫が膨れっ面で聞いてきた。
「いや、帰りたいさ。この数日で、自分の気持ちに決心がついた」
「そう?帰らせてあげてもいいけど・・・その前に問題」
まさか、蓬莱の弾の枝とか言わないよな?
「蓬莱の弾の枝を取ってk」「無茶言うな」
「最後まで言わせてよ・・・。蓬莱の弾の枝は取ってこなくていいわ」
当たり前だ、そんなこと言ったら幻想郷に行く必要があるじゃないか。
「そのかわり、あなたが幻想郷で一番大切に思う人、それを教えて」
「なっ・・・」
予想外の質問だった。まだ本人にも伝えてないのに、それを紫に教えるとは・・・。じ、自殺行為だ。
「さぁ、幻想郷に帰る?それとも帰らない?」
こうなったら覚悟を決めるしかないみたいだ。俺は一息おいて、深呼吸したあとに。
「ゴニョゴニョ」
耳元で喋った。しかも小声で。
「えぇ!?あのムグッ」
「言うな言うな~!」
慌てて口を押さえる。あーあ、経路から言うとこの後に新聞として配られるだろうに。
「解ったわよ・・・。じゃ、その本人の前まで送ってあげるわ」
「本当か!?」
「当たり前よ、マジカルゆかりんは嘘はつかないわ」
ついてます、それはもうついてますって。
「んじゃ、このスキマに入って」
そう言って出したスキマ。・・・うわぁ、怖いよ。
「さっさと入れー!」「うわっ!」
俺が躊躇っている所に、紫が蹴りを一発。そのせいで隙間の中に入ってしまった。
「頑張ってねー」
去り際にそんな事を言ってきた。あのスキマめ・・・。
案の定あの男は戻ってきた。コレでよかったのだろうか?
・・・自分がよければ、いいのかもしれない。
「まぁ、とりあえず。祝い事は皆で楽しまないと。」
気付いたら館の目の前に居た。結構大きい。
「ここが、ルナサ達の家・・・?」
結構大きめな家にすんでるとは言っていたが、ここまで大きいとは。
中に入ろうとして、館に歩を進めていると。
「あ、あんたは!あの時の!」
声をかけられた方を向いてみると、リリカが駆け寄ってきた。その後、突然胸倉を掴んで。
「あんた!姉さんに何やったのよ!姉さん、数日前から元気が無くて。元々元気ないのにさらに・・・」
少しずつ声の音量が減っていって泣き顔になる。俺も不安になってきた。
「リリカ、ルナサはどこにいる?」
「あんたなんかに教えるか!絶対に!」
リリカは泣きながら反論した。
「姉さんなら、・・・いつものところよ」
後ろから声をかけられたの振り返ると、白い服の・・・たしか、メルランが居た。
「姉さん!なんでこんなやつに教えるの!」
「探し物が知っているなら、答えるのが普通でしょ?」
「でもっ・・・!」
「いいから、行かせてあげなさい」
そう言われてリリカは渋々と手を放す。
「・・・ありがとう」
「お礼を言ってる暇があったら、行ってあげて。姉さんも待ってるわ」
俺はいつもの場所に向かって走り出す。
「本当に、これでよかったの?」
リリカが聞く
「姉さんが幸せになればいいんじゃない?」
そう言って、男が居なくなった場所でメルランは静かに微笑む。
いつもの場所。森の中に太陽の光が降り注ぎ、そこだけが違う場所と思われる場所。そこに、ルナサはいた。
「ルナサ!」
ルナサに駆け寄る。ルナサは呆然としていた。
「・・・○○?何でここに?」
ゆっくりと振り向き、喋った。
「ルナサを探しに・・・来たんだ」
「どうして・・・?」
決まっている、そのためにスキマ妖怪にまで話したんだ。
「好きだから」
「・・・え?」
「俺はあの時、ルナサを見て胸が痛かった。何でかって外の世界に戻ってから考えたんだけど・・・少し前に解ったんだ。
俺はルナサが好きだってな」
ルナサは状況が飲み込めないようで、目が点になっている。
「つ、つまりあなたが、私のことを」
「何度も言わせるな、好きなんだよ」
流石に三度も言うと恥ずかしい。顔が真っ赤になってしまった。
ルナサの方を見ると、やっぱり真っ赤になっている。
「ルナサ。えっと・・・その、き、キスしても・・・いいか?」
「・・・いいわ」
二人は見つめあい、口付けを交わす。
「うわっ!」
突然後ろから声がかかったので思わず振り返ると。・・・魔理沙の姿が。
「ま、ままま魔理沙、どうしてここに?」
「あちゃー・・・ばれないと思ったんだが。お前達が押すからだぜ?」
魔理沙が見た方向を見るとスキマが。さらに中には幻想郷の面々が。
「魔理沙が出なければもう少しのびたかもしれないのに」
「私の力で永遠にすればよかったかしら?」
「久々にいいものがみれたな」
「いつ見てもいいわね。どう、私たちもやらない妖夢?」
「や、やめてください。幽々子様・・・」
「コレはスクープです!・・・でも、皆知ってますね」
「映姫様、サボっちゃっていいんですか?」
「いいわけないでしょう。でも、コレが見れたから良しとします」
「していいのかしら?」
「皆さん!私は中国ではありません!紅美鈴です!ホンメイリンです!」
・・・などなど、勝手に喋っている。
「まぁ何はともあれ」
『おめでとう!!』
それもうれしいのだが、それよりも・・・。
「紫ぃ・・・。あんた喋ったな」
「喋ってないわよ?連れてきただけ」
「同じだって・・・」
反省0の言葉に怒る気も無くなる。まぁこれはこれでいいか。
「めるぽMERUPOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」
『!?』
全員が驚いてプリズムリバーの館の方を見ると、メルランの姿が。ああ、そういえば暴走するって言ってたっけか。
「これ、どうやって止めるんだっけ?ルナサ」
「ガッするのよ」
「ああ、そうだっけ。じゃあやるか」
「メルラン死ななければいいけど・・・」
そう言って二人は構える。
そして
「ガッ!!!!!」
―――――END――――――
どうも、ずいぶんと長くなってしまいました。
っていうかまじめに書くとひどいことになりますね、はい。
すこしシリアスになってしまったのかも。そう思わないのかも。
ああ、萌えなくてすいません。でもこう書くしかないのです。
こんな作品でも萌えてくれれば光栄です。
1スレ目 >>969
───────────────────────────────────────────────────────────
朝。
ここ幻想郷では普通の人間達が起き始め、夜行性の妖怪達と食べてもいい人類が眠りにつく時間帯。
俺は最高に善良でこの世界の人間じゃマシな分類に入る人間なので、まだ布団の中で包まっていた。
「…………眠い。……寝てようかなぁ」
起きて第一声がそれかとか言わないこと、眠いんだから仕方ないのだ。
そんな事は兎も角、別にやることが無いので寝ていても良いが、そうも言っていられない。
ドンドンドンドン!!
「こんにちわー、新聞とどけに参りましたー。
起きてますかー? 起きてないなら勝手に入りますよー?」
噂をすればなんとやら、ドアを叩く喧しい音と共にモーニングコールの来襲。
モーニングコールと言うか、新聞配達コールというか。
その辺において置けば良いものを、いちいち手渡しで渡してくるのだ。
前に『新聞用郵便入れ』を作ってみたが、なにものかの攻撃にあって見るも無残な姿に変えられてしまった。
無視すればいいと思われるが、コイツ相手ではそれは通用しない。
マジで勝手に入ってくるからだ。
寝坊したときなどに、勝手に入ってネタの物色をしているらしい。
前に一回、俺の記事を書かれた事があったが、内容は見たくも無いものだった。
この経験があるために、朝は早く起きなければという危機感が今を作っているのである。
俺は布団に名残を惜しみながらも起きあがってドアの向こう側、つまりは外に声をかけた。
「どうせ勝手に入ってくるんだろ?」
「まあそうですけど」
そう言って入ってきたのはある種の天敵、天狗の『射命丸 文』だ。
見た目俺よりも下に見えるが、たぶん云千年くらい生きているので、知識とか力とか酒の強さとかは俺以上である。
まぁ俺は人間、彼女は妖怪だからでもあるが。
人を見かけで判断しちゃいかんよ。最近の若者はそれがわからんのです。
天狗は人じゃないけどそこらへんは触れちゃいけない。
「たしかに」
「勝手に人の心読むな」
「じゃあ許可貰います」
「却下」
「早っ! 次からは教えてあげますから」
「俺の心ぐらい自分でわかるわ」
「じゃあやっぱり読ませてもらうしか……」
「いやいやいや、何でそうなるんだよ」
「面白そうだからです」
「……天狗には自制心というのは無いのかね」
「ありません!!」
「きっぱり言うな! それも自信たっぷりに!」
そう言い合いながら新聞を貰う。
文に新聞を届けてもらっているのはちゃんと理由がある。
妖怪を倒す方法がない俺にとって、新聞は情報を集めるのにうってつけだ。
情報を集めて妖怪を倒すとまではいかないが、せめて生き残ろうと考えて新聞を取ったのである。
と、最初は考えていたのだが。
当然と言えば当然か、妖怪の弱点なんて新聞には載っていなかった。
あるのは嘘か真実か良くわからない記事のみ。
只、内容はどちらにしても面白いものなので、今もこうやって取っているわけだ。
人生何事も前向きが肝心。ここの住人は前向き過ぎるが。
「せめて、どこからどこまでが嘘なのか書いてあればいいんだがな……」
「実は私もですね、書いているうちにどこからどこまでが嘘かわからなくなったんですよ」
「嘘を書く自体新聞記者として駄目だと思うんだが」
「いやー、それほどでも」
「誉めてない誉めてない」
俺は今後の新聞情勢と日本経済の危機を考えながらも貰った新聞に目を通す。
なになに……。
俺が見た記事はこんな見出しから始まっていた。
『魔女ついに逆襲!?』
多少興味があったので、下のほうを見てみると、こんな内容が書かれていた。
+先日昼頃、魔女のP・K氏が魔法使いK氏に危害を加えたもよう。
P・K氏は、日ごろからK氏から本の盗難に合っていたらしく、
先日も本人の前で堂々と盗もうとしたところを見て、ついに堪忍袋の尾が切れてしまったらしい。
それについてK氏に詳細を尋ねてみたところ「まさか本気で来るとは思わなかった」とのこと。
さらにK氏は「あいつはなんかいつもと違っていた」と続けて答えていた。
実際にP・K氏のところに行ってみると、いつもは紫色だが今回は赤い服に仮面と角らしきものをつけていた。
さらに三日月の髪飾りと思われる物が、なぜか筒状の物に変わっていた事までわかった。
もう少し情報を得るために助手をしている悪魔に聞いてみたが、何かを拒むようにただ首を振るだけだった。
唯一喋った事が「本当に早くなるとは思わなかったんです……」だけだった。
P・K氏は何かの実験の最中に誤作動があり、あのような格好になってしまったと思われるが、真偽は不明である。
なお、当前の事だが図書館では本を盗んで良いというわけではない。
その事に気をつけて、図書館を利用してほしい+
……相変わらず嘘か本当かわからない記事だな。
特に、魔女はなんてありえそうでありえないな。いや、まさか服装まで変わるとは。
「あ、そうだ」
と突然、文が思い出したように言ってきた。
「御届物があったんですよ。たしかここに……」
「おや、新聞のほかに郵便の仕事でも始めたのか?」
「違いますよ、頼まれたんです。 ……あ、あった。これです」
俺の皮肉を軽く流した文はあるものを差し出してきた。
差し出されたのを受け取って見てみると、適当に二つに折畳んである紙の表面に『○○へ』と書かれてあった。
誰からと思いつつ裏を見てみるも、何も書いておらず届元は解らなかった。
「誰からだ?」
「中を見ればすぐわかりますよ」
「……中、見たのか?」
「安心してください、中は見てませんよ」
「見てたら文の人間性を問うところだが」
「私は人間じゃないですから」
「じゃあハイエナか」
「天狗です」
「そういえば今年は狗年だな」
「なんで突然そんな話が出てくるんですか」
「漢字で書くと天狗は天の狗だからな。天の狗っていうと、神の下僕か」
「家、吹き飛ばされたいんですか?」
「吹き飛ばしたら閻魔に裁かれるぞ」
「その程度の事、無問題です。それより、むしろそっちの人間性を聞いたらどうですか?」
「閻魔も人間じゃないからな。人間性なんて求めちゃイカンよ」
「じゃあ何なんですか」
「神だろ。いわゆるゴッド」
「あれは神じゃないでしょう。神なんて魔界の神だけでいいです」
「あんな神じゃ不充分だ。もう少し居てもいいと思うぞ」
なんて会話をしてながらも開いてみると、中にはこんなのが書かれていた。
『
今日の夜、神社で宴会やることになったが、
勿論お前も来るよな? 否、来い。
わかっているだろうとは思うが、
もし来なかったら明日、家が無くなるぜ?
霧雨 魔理沙より』
「また宴会か……」
これで何回目だろう?
俺がこの幻想郷に来てから、もう二桁を超すと思うのだが……。
それよりも、気になる事が一つある。
「なんで、いつもいつも突然なんだ?」
そう言いながら文のほうを向くと、なぜかお茶を飲んでいた。
当たり前……ではないが、俺の。
「……何やってんだ?」
「いや、こんな朝の寒い中配達してきたんですから、これぐらいはと思いまして」
「せめて許可取れ、許可を」
「いいじゃないですか宴会。楽しいですし」
「話しを逸らすな」
「○○さんは宴会嫌いなんですか?」
どうやらどう言っても無駄らしい、毎度毎度の事だがムカツク。
俺は怒りをため息と共に吐き出して文の質問に答えた。
「……そういう訳じゃないけどさ、今日の夜に宴会で、その朝に届くって突然過ぎないか?
普通は一週間とか。悪くても三日前に届くだろ?」
「私は五日前に届きましたよ」
そこで一旦会話が止まり、しばらくの間御茶の啜る音だけが聞こえた。
時折、外から鳥の囀りが聞こえて、なんとも趣のある感じだった。
しかしその間、俺の脳内は疑問と疑問がぶつかり合い混沌と破滅の境界線を……。
いやいやいやいや、なんでそんなおぞましい空間を作る必要がある。
普通の自問自答だ。
しかし結局わからないままなので、文に聞く事にした。
「……なんで俺は当日なんだ?」
「当日でも別に良かったからなんじゃないですか?」
この天狗、即答しやがった。
確かに毎回当日に呼ばれて来ているが、それは脅しが入ってるためなのだが……。
魔理沙はやる時は本当にやる。
一回宴会を休んだだけで家が無くなっちゃ堪らないから、仕方なく来ているのだ。
……っていうわけでもないが、少なくとも拒否権は無い。
なんだ結局当日でもいいじゃないか。魔理沙の選択は間違っておりませんでした。
それでも早く教えてくれる事に超した事は無いが。
そう思い、未だにお茶を飲んでいやがる天狗に向かって話しかけた。
「文。お前今日魔理沙と会う可能性はあるか?」
「夜の宴会なら必ず会いますよ」
「それじゃ意味無い。……まぁ、宴会前に会ったのなら伝えてくれ。
せめて三日前に手紙を届けろ、ってな」
「面倒なので会わないようにしておきますね」
「……新聞を取らなくても良いんだぞ」
「今ここで家とあなたを吹き飛ばしてもいいんですよ?」
「むぅ…………」
文とは毎回こう言うやり取りをよくする。
そして毎回このように負けるが。
幻想郷に来てからの仲なので、ある程度相手のほうを知っているつもりだ。
そう、今回のように
「して、文よ」
「なんですか?」
「それで記録更新か?」
「そうですよ」
人の家で平然と十四杯もお茶を飲むことなど、当たり前。
良い子も悪い子も少年も青年もその他の年代の人も真似しちゃいかん。
@ @ @ @ @ @ @ @
昼。
まだ居ようとした文を場外にホームランし、俺は一足早く神社に向かっていた。
妖怪に襲われないためが主な理由だが、神社の手伝いも要求されていたためである。
別に断る理由も無いため、毎回やっているのだ。断る理由がほしい。
俺は、あの長い長い石段をゆっくりと歩いていき神社に着いた。
そこでは、神社の巫女『博麗 霊夢』がのんびりとお茶を飲んでいた。
それを見た俺は毎回の事だが呆れた。
「おいおい……、掃除くらいしてろって。夜から宴会なんだろ……」
「良いじゃない別に。○○さんが掃除してくれるんだろうし」
「……まぁ、そうなんだけどさ」
そう言いながら近くにあった箒を手に取る。
そして手馴れた手つきで掃除をしていく。
毎回毎回やっているので神社の掃除はお手のものだ。
何故か巫女さんよりも上手いが、何故かは聞いちゃ駄目だ。死人が出るぞ。
「そうだ、いっその事神社に住んだら? 衣住は保証するわよ」
後ろから見ていた霊夢がそう声をかけてきたので、俺はとりあえず掃除をしながら答えることにした。
神社に住む、かぁ……妖怪からはとりあえず安全そうだが。
「食は?」
「時の運、ね。まぁ無かったら霖之助さんの所とかに行けばいいだけだけど」
「俺は犯罪をしてまで生きたくないんだが」
「犯罪って考えるからいけないのよ。生きるためって考えれば」
「それを聞くと自分で犯罪行為を認知済みのように聞こえるのだが」
「対策を取らない霖之助さんがいけないのよ」
「……本当に巫女なのk」
「ん? 何か言った?」
そう言って霊夢は見た感じ普通の表情で聞いてきた(気配がした)。
しかしながら、その気は殺気に満ち溢れそうになっていた。……拙い。
「いえなんでも別にははははは」
危うく禁忌に触れそうになった。触れたら夢想封印だけじゃ済まないとおもう。
そこが会話が途切れ、二人とも黙った。
静寂。
神社では、箒の掃く音と時折お茶を飲む音と鳥が鳴く声がなるだけ。
そんな空間も、この神社なら簡単に崩れる事を俺は知っている。
「どけぇぇぇ! 今の私を止めるものは何も無いぜっ!!」
物凄いスピードでこちらに向かってくる、箒に乗った自称普通の魔法使い『霧雨 魔理沙』だ。
しかし、こちらから見ればどうみてもトラブルメーカーです。本当にありがとうございました。
それはともかく、その魔理沙が俺に向かって突撃してくるのだ。
勿論このような事は始めてだが、何度も似たものを経験した俺は素直に退く筈も無い。
普通は退くかもしれないが、退いたら男じゃないので阻止することにした。
俺は箒の持ち手を下にして上に上げ、足を肩幅開いて肩越しに向かってくる魔理沙を見た。
「さぁバッターは前の打席で文を場外にホームランを放った○○!
この弾丸のような魔理沙も地平線の彼方へと飛ばすのか!?」
「甘い、甘すぎる! 茶柱を立てようとして前もって茶葉を入れておくぐらい甘いぜ!
そのような箒、廃棄処理行きだっ!」
そう言うと魔理沙はさらにスピードを上げて迫ってきた。
それに合わせて俺も魔理沙側の方の足を軽く上げる。
昔見た一本足打法だ。これ、最強。
その後、意識を魔理沙へと集中させる。
…………今だ!!
「もらったぁぁぁぁぁ!!」
俺の全身全霊をかけた振りに魔理沙も避ける事ほどの反応は出来なかった。
元から避ける気なんて無かったのかもしれないが、それはそれで。
「っ……!」
かろうじて跨っている箒を縦にして、直撃は避けようとした。
さらに魔理沙はその箒に魔力を流しこみ、箒の強度を極限まで上げた。
うーん、用意周到。
このままでは、俺の振った箒は魔理沙の魔力を流して硬くなった箒と衝突して文字通り廃棄処理行きに。
しかもこれは霊夢のなので俺もついでに廃棄処理逝き。
確かにこのままでは俺と箒は閻魔に裁かれ火に焼かれることだろう。
だが、俺はその程度の事は予測済みだった。
「奥義―――」
箒が魔理沙の箒に迫る。
その衝突の瞬間。
「―――『イリュージョン ~hand power~』」
ガキンッ!!
乾いた衝突音。
その真っ只中の俺と魔理沙は、寸分違わぬ場所で睨み合っていた。
目の前に魔理沙の若干驚いた顔が見える。
勿論箒と箒はそのまま真ん中でぶつかったまま。
「……お前、何時の間に」
「この前藍さんに教えてもらったものを、中国人らしき人の行動をヒントに改良したんだよ。そして……」
そこで一旦区切る。すると魔理沙は驚きの声が疑問の声に変わった。
「そして……だと?」
「今の状況で魔理沙が勝てる可能性は、ゼロッ!!」
「!」
その声と共に渾身の力で箒を振りきろうとする。
そう、この状況は一人の男とか弱い(?)少女と同じ。
つまり、
魔理沙は押し返せない。
「これが気の極みだ!!」
ホームランは無理だろう、そう思った俺は俺は箒の打つ方向を水平にかえ、そのまま振り切った。
なかなかの速度だったので、そのまま後ろへと結構なスピードで吹き飛ばされる魔理沙。
「ちいっ!」
だが、彼女が日ごろの弾幕ごっこで鍛えた反射力でさっと体制を整えた。
流石黒白魔法使い、動きの速さなら誰にも負けないぜ。
「……まさか、この私が負けるとはな」
「俺はこの程度で勝ったとは思ってないが?」
「当たり前だぜ……戦いはこれからだ」
しばらくの睨み合い。
その睨み合いを止めたのは、俺。
ではなく、魔理沙。
でもなくて、一人の腋が卑怯な巫女だった。
「あんたら神社を壊す気かー!!!」
「はぁ、なんで幹事の私が神社の掃除なんかを……」
「幹事なら宴会場の掃除ぐらいしとけ」
「私は宴会場の事なんて知らないぜ」
「鬼だな」
「人間だぜ」
結局霊夢に怒られた俺と魔理沙は、衝突時に出来た衝撃波で色々とボロボロになった神社の庭を掃除していた。
ちなみに、あの勝負は乱入による引き分け。
もとい勝者霊夢。やっぱり巫女は強かった。
「そういえば魔理沙はなんで来たんだ?」
「いや、なんとなく神社に一番乗りしたかった気分だったんだ」
なんともくだらない理由である。
そのせいで俺の仕事が増えてしまった。
まぁ、あそこで退かなかった俺のせいでもあるが。
「そういえば霊夢はどこ行った?」
「奥からいつものテーブル持って来るらしい」
いつものテーブルとは、Uの字で向かい合った奴と何時喧嘩が起きてもおかしくないテーブルのこと。
「ああ、家にそんなのがあるぜ」
「本当か? ってそれより、人の心を読むんじゃない」
ではなくて、普通のちょっと足が長い卓袱台のようなものや、やや縦に長い机のことである。
まぁ霊夢は腋でも出してなさいってこった。
なんてわけのわからない事を考えながら箒を動かしていると、奥から霊夢の声がした。
「○○さーん。ちょっと手伝ってー」
「やっぱりか……」
案の定、霊夢一人にはきつかった。
何時もなら魔理沙か誰かと一緒に運ぶか俺に運ばせているかであったため、一人じゃ無理だろうと思っていた。
俺は、やっぱりここの人達は変だな。と思いながら魔理沙を一人残して霊夢のほうへと向かっていった。
霊夢からテーブル運びを頼まれ、逆に俺は霊夢に箒を渡した。
そして全部運び終えた頃にはもう夕日が沈みかけている頃で、一足先に着いた従者達は料理室で大忙しの状態。
別にやることが無いので俺は縁側でのんびりと空を見ていた。
「はぁ……」
「何ため息なんかついてるんだ? 幸せが逃げるぜ」
後ろから声がしたので振り向いてみると、魔理沙がいた。
まぁ口調でわかるが、念のため。
「勝手に出るもんだよ。で魔理沙、またお前はつまみ食いをしようとしたな?」
「うーん……、なんで解るんだ?」
そりゃ誰でもわかる。魔理沙の服から微かに料理の匂いがしたからだ。
それよりも、魔理沙の服が若干破けていたりしているのが一番の理由だ。
「まぁ、軽く食べようとしたんだよ。それでメイド長がナイフ投げてきたり、剣士が切ってきたり。
狐がクナイ弾飛ばしてきたりしてきてな」
「誰だってそうだよ」
「そうとも限らないぜ」
そう言うと魔理沙は俺の隣に腰掛けた。
魔理沙の白い部分の服は夕日の光に反射して普段より白さを増して見えた。
反対に、黒い部分はより一層濃くなって、いつもよりも色分かれした黒白になっていた。
「……なぁ魔理沙」
「ん?」
「なんで俺も呼んでるんだ?」
この際、聞く事は聞いておこうと思った。
だが、俺の予想に反して魔理沙は即答してきた。
「呼ぶのに理由が必要か?」
「……いや」
「呼びたいから呼んだ、別に理由はないぜ。
……しいて上げるなら、楽しみは一人で取っておいてもいいが皆で楽しんでもいいから……だな」
なんとも魔理沙らしい理由だ。
「…………迷惑か?」
と今度は、魔理沙は不安そうに聞いてきた。
「いや、結構楽しいぞ?」
「な、ならいいんだがな」
そう言うと同時に魔理沙はそっぽを向いてしまった。
不思議に思って顔を見ようとしても、どうしてか逸らされてしまう。
「○○さーん、手伝ってー」
またまた奥から霊夢の声が聞こえた。
毎回毎回こうなのだが、やっぱり大変だな。
「じゃ、手伝ってくる」
そうそっぽを向く魔理沙に声をかけて俺は奥に向かった。
立った時にちょっとだけ魔理沙の顔が見えた気がするが、夕日の赤い色で良くわからなかった。
向かった先にあった料理の数は、山が出来るぐらい多いものだった。
一体誰が食べるのかと聞くと、全員口をそろえて。
「「「「幽々子」」様」だな」
と、言う事で処理は幽々子さんに任せっきり。
なんとも無責任だが、なぜか反論が出来ない。なぜだろう。
とりあえず俺は全部の料理を頑張って運ぶ事にした。
運びながら、幽霊はどうやって消化するというのを考えてみたが、やっぱりわからない。
……当たり前か。
最終的に、亡霊と幽霊は格が違う。という微妙な結論で終わった。
@ @ @ @ @ @ @ @
全て運び終えた頃にはもう宴会が始まりそうだった。
な、なんだってー!!(AA略
あちらこちらでどんちゃん騒ぎの前兆。
これは拙いと誰かと呑もうとしても、人間2人からは、
「レミリアがこっち来いって五月蝿いのよ。○○さん、一回襲われかけたんでしょ?」
「あー、悪い。パチュリーとアリスから呼ばれていて……な?
お前からの誘いは嬉しいが…………え、いや、な、なにも言ってないぜ?」
して残りの1.5人からは、
「お誘いは嬉しいのですが……、前も言ったように幽々子様が人間を食べてみたいと言ってまして、
危険性が伴うのでご一緒は無理です。それに……、あ、いや、なんでもないです。すみません」
「私を誘うという時点で、お嬢様に吸われる危険性があるわよ。
もう一度言うけど、お嬢様のお気に召しても召さなくても餌か死ぬかどっちかになるの。
しかも処理するのは私。只の人間を殺す事に抵抗が無いわけじゃないのよ」
と言う感じで主人がヤバイので近づけない状況。
かと言って他の妖怪とも呑めないので、仕方なく余った机で一人淋しく飲んでいた。
「そういえば、毎回誰かに誘われて呑んでたからなぁ……。これじゃあ宴会とも言えないのかも」
それにしても、いつもは毎回誘ってくれた人間の方々から無理と言われたのは始めてだった。
まぁそりゃ事情はあるものだし、強制なんて出来るもんじゃないがなんか変だった気がする。
結局一人なのだが。
宴会で一人自棄酒もあれかと思い、ゆっくりペースで周りの情景を眺めながら飲んでいた。
そうそう、ある一部に特別Uの字テーブルを置いてみたところ。
ものの見事に図書館に住んでいる魔女と、森の中の人形遣いが向かい合った。
ああ、ありゃ喧嘩が起こるな。
そう言えば魔女は赤くないな。やっぱりガセだったか。
向こう側では鬼と天狗がどれだけ飲めるか勝負している。
……良く飲めるな。
ある部分ではレミリアが霊夢に襲いかかってるし。
……あ、夢想封印された。
まるで向こう側とこちら側では全く別の空間のようだ。
独りぼっちの人間を外から見たらきっとこのような感じだろう。
……所詮、俺は外の人間だと言うことだろうか。
やっぱりここに混じってはいけないのだろうか、そう思えてきた。
……縁側でお茶でも飲んでよう。
そう思い、立ちあがろうとしたとき、
「あ、姉さん。ここ空いてるよ」
現れたのは赤い服を着た人と白い服を着た人、そして黒い服を着た人。
三人とも別々の楽器を持っていた。
赤い人はキーボード。白い人はトランペット。黒い人はバイオリン。
たしか、この三人はプリズムリバー三姉妹だった気がする。
っていうか三人で似た服着たら三姉妹っぽいし、幻想郷に三姉妹は一組しか居ないし。
それはともかく、どうやら三人は座る場所を探していたようだ。
「でも、先客がいるみたいだけど?」
「あ、別に使ってもらって良いよ。別の場所に行くし……」
そう言って立ちあがろうとしたが、赤い服の人に止められた。
「まぁまぁ、別に動かなくてもいいじゃん? 四人分席があるし」
「それはそうだが……」
「宴会だしいいじゃん。たまには違う人と飲んでみようよ?」
そう言われたら動けない。とりあえず座ることにした。
三人は前に白い人、右に黒い人、左に赤い人が座った。
その後、全員でとりあえず自己紹介をしておいた。
言われてから思い出したが、この三姉妹は俗に言うちんどん屋だった。
赤い人は三女の『リリカ・プリズムリバー』
白い人は次女の『メルラン・プリズムリバー』
最後に黒い人は、長女の『ルナサ・プリズムリバー』
別に黒い人だから黒幕とかいうわけではない。黒幕は冬の妖怪だ。
俺も元々三姉妹については良く知らなかったので、この情報は重要……でもない。
最初は俺以外の三人がのんびり喋っていたが、その後俺も交えて喋る事になった。
ちなみに、さん付けはくすぐったいので止めろとのこと。
「そういえば、○○さんはどこに住んでるの?」
「人里よりちょっと離れた場所……かな」
「へぇ~」
「で、なんでメルランは枝豆を食べずに豆だけ一箇所に集めてるんだ?」
「楽しいからよー」
「メルランはそういうの好きだから……」
「この前なんかプチプチ君を一つずつ潰してたし」
「そうなのか……。それで、これは食べていいのか?」
「駄目」
「いや、それじゃあ食べられないじゃないか」
「全部やったらいいけど」
と、言うわけで俺は全部豆だけになるまで食べるのはお預けになってしまった。
仕方が無いので健康に良いらしいスルメを食べていた。
@ @ @ @ @ @ @ @
宴会も中盤~終盤に差し掛かったと思われる頃。
「う~ん……」
「あらあら、リリカがダウンしちゃったわね」
飲みすぎたのだろうかリリカが眠そうに机に突っ伏した。
やっぱり三女はお酒に弱いのだろうか?
しかしながら俺はリリカが酒を飲んでいるところは見ていないのだが……。
こっそり飲んでいたのか?
「じゃあ私はリリカと先に帰るわ」
そう言うとメルランは立ちあがった。
ちなみに枝豆はもうすでに豆だけになった。
「それじゃあ私も……」
「いいわよ、たまには姉さんにも休憩は必要だし。ね?」
つられてルナサも立ちあがろうとしたが、メルランに止められて渋々(?)座った。
「それじゃ姉さん、頑張って」
そう言ってメルランはトランペット吹き鳴らして行った。
いや、トランペット鳴らしながら行ってどうするんだ。
背中には寝ているリリカがいると言うのに。
嫌がらせか? 仕返しか?
「…………え~っと」
二人が居なくなったこの状況、俺とルナサは一瞬だけ顔を見合わせた。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
沈黙。
元々喋っていたのはリリカとメルランであって、俺とルナサはそれに合わせて喋っていたのだ。
話題を探そうとしても無く、黙るしかなかった。
つまり今の状況、電源無しでテレビをつけようと言うようなもの。
二人とも黙って豆だけの枝豆を食べていた。
「………………えっと」
やがて、沈黙に耐えられなくなったのかはわからないがルナサが口をあけた。
「私達の、k「○○さ~ん、飲んでますか~?」「なっ! あ、文!?」
突如見事に酔っ払った文が、後ろから抱き着いてきた。
突然の事に前のルナサは膠着している。たぶん俺も。
いや、感触がどうとかは別にいいわけで、よくないけど。
そんなことはともかく、この酔っ払いはどうすればいいのか?
そのまま一緒に騒いでも良いが、彼女は酒の強さが半端無いので下手すれば死んでしまう。
諸刃の剣。素人にはお勧めできない。
ちなみにこの文は宴会で(俺のところに)乱入率は、ダントツ1である。
と、いきなり後ろからの気配と感触が消えた。
これまた驚いて後ろを見るも、何も無くただ普通のどんちゃん騒ぎしか見えなかった。
しいていつもと違う部分を言うと、酔いつぶれた人が誰もいないと言う事か。
視線をルナサの方に向けると、やっぱり同様に驚いていた。
そして、
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
またまた沈黙。
何か言おうとしたような気がしたが、向こうが言わなければわからないわけで。
やっぱり二人とも豆だけの枝豆を食べていた。
「……………………えっと」
やがて、タイミングを計れたのか沈黙耐えられなくなったのかルナサが口をあけた。
「わたs「二人とも~飲んでるか~」「ま、また!?」
またまた突如見事に酔っ払った鬼、もとい『萃香』が俺とルナサの間になぜか芋焼酎を持って現れた。
「なんだ~? 二人とも元気無いz」
ドガッ!!!
凄まじい打撃音と共に俺の視界から萃香が消滅した。
驚いて反射的にルナサの方を見てみると、丁度居合切り後の形で手にはバイオリンを持っていた。
つまり、たぶん、おそらく、もしかしたら、可能性としては、ルナサが吹っ飛ばしたんだろう。バイオリンで。
次に、吹っ飛んだ方向だと思われる方を見た。
直線的に木々がなぎ倒されていた。
萃香の吹き飛んだ痕だろう。
まあそうだろう、俺は剣筋というかバイオリン筋なんて全然見えなかったのだから。
それよりも俺には気になる事があった。
「……そのバイオリン。折れないのか?」
あの速度でバイオリンを振れば普通に考えたら折れる。
見た感じ木だし。
そう思って、体制を戻していたルナサに聞いてみたところ、
「えっ?」
彼女は素っ頓狂な声を出した。
彼女はバイオリンのことになると良く話した。
バイオリンは何年前から云々、そもそも弦楽器は云々。
わかりやすく説明してくれるので、俺も聞いてきて楽しかった。
それ以前に沈黙から解き放たれて嬉しかったと言えばそうだ。
っていうかそちらメイン。
「それでね、…………ん?」
「? どうした?」
「なにかが……なんだろう?」
そう言ってルナサは立ちあがった。
そしてルナサから見て正面、俺から見て真後ろへと歩こうとして、
「きゃっ!」
こけた。盛大にこけた。それはもう芸能人が負けを認めるほど見事なこけっぷり。
ここで注意すべきはルナサの進行方向。
進行方向は俺の後ろなので、倒れてくる方向はつまり、
「うおっ!」
俺の方向です。
突然の事なので受身すら取れずにそのまま倒れましたよ。
勿論の事ながら、ルナサも一緒に。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
本日三回目の沈黙。
すぐ目の前には驚いていると言うか突然の事に訳のわからない状況と思われるルナサの顔が。
偶然とはいえ、この形は『ルナサが俺を押し倒した』になる。
上から下がっている金色の髪からは、微かにシャンプーかと思われるいい匂いがした。
そのまま数秒か数十分か数時間かわからないが、二人とも硬直したままだった。
「…………え、あ、……ご、ごめん」
やっとのことで我に返ったルナサは、真っ赤になって上からどいた。
「い、いやいいいいいよべ別に」
とりあえず起きあがった俺だが。
もしかしかしたら赤くなってるのかもしれない。
なってるな、言葉カミカミだったし。
誰も見ていないかなとちょっと辺りを見たところ、やっぱりどんちゃん騒いでいた。
やっぱり、この時間帯は終盤なのに誰も酔いつぶれていない。
皆、なにかあったのか?
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
あの事もあってか、また沈黙。多分四回目。
今度は何も食べる物が無いので、二人とも何もせずに下を向いて黙っていた。
両者とも顔が真っ赤だと推測しておこう。
そういえば、毎回宴会では酔いつぶれていたので、帰るときはどうするのだろう?
やっぱりメルランのように勝手に居なくなっていいのだろうか?
まあ、ここの住人は勝手気侭(←大変失礼)だしいいのだろう。
沈黙続きで酔いが冷めてしまった。それ以外もあることにはあるが……。
それに、元々あまり飲んでいなかったのもある。
「え、えーっと……。じゃあ俺、先に帰る……が?」
「えっ?」
そういう声を出して『もう?』って顔でこっち見ないでくれ、とっても帰りづらいから。
と言っても、俺はそろそろ帰りたいのである。
「そーだな、……一人じゃ不安だし途中まで一緒だと嬉しい、のだが」
「……そ、それなら私も一緒に行く、けど……」
ビバ我が機転!
まあ酔いが冷めたと言っても妖怪が怖くなくなるって言われるとそうでもないので、一人じゃ不安だった。
あの破壊力なら大丈夫だろう。きっと。
@ @ @ @ @ @ @ @
月の明かりがあっても夜の森は大層怖い。
魔法の森ほどじゃないにしても、根っこが縦横無尽に広がっていて足場は悪い。
その上妖怪が良く出る。
それでもこの道を通らなければならないわけ、いつもは昼に通っているのだが今回は夜だ。
まさにレッスン先は黄泉である。
「……一寸先は闇?」
「そうそれ」
そう言って俺は黙った。
心を読まれたのはキニシナイけど、これが仕来りってもんですよ。
「毎回この道を通ってるの?」
と、ルナサが周りを警戒しながらも聞いてきた。
「まあ。それでも毎回昼に通ってるからな。とりあえずは安全だ」
「…………大変?」
「そりゃ大変だな。……なんでそんなところに家構えたんだ俺は?」
疑問に思っても仕方が無いので、時折来る冷たい風に体を震わせながらも歩いていた。
ルナサの方を見てみると、寒そうにせずに普通に歩いていた。
「寒くないのか?」
「まあ、私達は騒霊だし……」
「騒霊?」
騒霊なんて聞いた事は無い。半人半霊とか、全部亡霊とかしか。
「簡単に言うと、ポルターガイスト……かしら」
「ええっ! あの同じ姿をしていて、それを見た人は死んでしまうって言う……」
「それはドッペルゲンガー。お皿とか物が勝手に浮くのがポルターガイスト」
呆れたのかはわからないが、微かに呆れたようだ。
「あ、そうか。どっちでもいいけど」
「驚かないの?」
ルナサが驚きと不思議の半々の声で聞いてきた。
「慣れたからな。天狗とか、普通の魔法使いとか、吸血鬼とか亡霊とか毎日とは言わずも見てるから」
俺はどこを見ても木か闇なので、月の明かりで微かに見えるルナサの方を見て言った。
「……そう」
それっきり俺とルナサは黙って、木の葉の間から微かに見える月を眺めていた。
途中までと言ったものの、そのまま成り行きで俺の家のまん前まで送ってもらった。
「あ、ここまででいいぞ。って言っても、家の目の前だけどな」
「…………ん」
しかしなぜか、ルナサは去ろうとしなかった。
良く見るとなにかを喋ろうとしているが、上手く言い出せないようだ。
俺も今の状況で悩んでいた。
確かに、これでプリズムリバー三姉妹とは知り合いと言う仲になったが、なんかこのままでは惜しい気がした。
知り合いと言っても宴会の仲でしかないため、実際に会うのは少ないだろう。
「えーっと、その、なんだ」
あーもう、ここでなぜ俺の機転が活躍しない!
良く見ると、ルナサは俺の言葉は耳を貸さずにどうしようかなと考えているようだった。
この状況のまままた数刻ばかり。
もういい加減言ってしまおう。断られても良いか。
でーもなぁ、断られると厳しくなるだろうな色々と。
でも、ここで言わなくては……。
よし言う。当たって砕けてバラバラになれ、だ。
そう思うと俺は覚悟を決めた。
「えっとだな」 「えっと、その」
何かが聞こえた気がしたがもうどうでも良い。気持ちを伝えなければ気分が悪い。
「バイオリンの事もっと教えてくれないかな~って……」「バイオリンの事もっと教えてあげようって……」
見事に同じ内容で同じタイミング。どうやら彼女も同じことを考えていたようだ。
そこで俺も彼女も一瞬硬直した。
両者共々内容が理解できたところで、
「「よろこんで」」
またまた同じタイミングで答えた。
@ @ @ @ @ @ @ @ @
「それで、その後どうなったんですか?」
「その後か? 両者共々普通に帰ったよ。以上終わり」
「なんだ……つまんないですねぇ」
ここはプリズムリバー邸。見た感じ古ぼけた洋館の家である。
見た感じじゃなくても古いのだが、なぜか崩れない不思議の館である。
まあ見た目以上に広かったり、何時の間にか真っ直ぐ飛んでいなかったりする廊下とかよりはましだと思うぞ?
そこのリビングだと思う部分で俺と文は話していた。
内容はというと、俺とルナサの始めての出会いについてだった。
「それより文。お前、そのとき宴会に居て、さらに乱入してきたよな。覚えてないのか?」
「いやー、それがですね。スピリタスを一気飲みしてから記憶が吹き飛んでまして……」
「人間だったら死ぬぞ……、それ」
「私は人間じゃありませんから」
「じゃあハイエナか」
「天狗です」
「そう言えば今年は狗年だな」
「なんで前と同じ事を言ってるんですか」
「いやなに、なんとなくだ」
そのまま続けても良かったが、なんとなく止めた。
「で、話しを変えますが。何時も人前に出るときはお二人ともいつも通りにしてますが、
やっぱり家ではラブラブですか?」
「さぁ、どうだろうな」
「なんで答えないんですか」
文はちょっとした憤りと興味の合わせ技の音量で聞いてきた。
「新聞記者はプライバシーの中まで突っ込んで良いのか?」
「……わかりましたよ」
おお、前よりも利口になったじゃないか。
「では次です。告白したのはどっちですか? また、どのような場面でどのように?」
「告白したのはルナサの方からだが……それ以上は言わん」
「またですかぁ?」
今度は呆れが入っていた。
「ルナサに聞いてみればどうだ?」
正直、俺は答えたくなかった。
理由は簡単。場面と状況がやばすぎたからである。
ルナサは何を間違えたのか、バレンタインの日は好きな人を殴り殺す日と勘違いし、
俺に対して『好きです』と言った直後、鬼神の如くバイオリンで殴りかかってきたのである。
正直、死ぬかと思った。
あの速度のバイオリンを避けたのは奇跡としか思わない。
その後必死でルナサの間違いを修正し、なんとか今まで生きていけたのである。
代償として森一つ程度、その付近の店他。
「……そうですね、あなたじゃ情報は少ししか得られそうになさそうですし……」
そう言うと文は標的をルナサへと変更し、去っていった。
「ふぅ……、文の記者魂も相変わらずだな」
それにしても時間の進み具合が半端じゃない。
まるで出会った頃が昨日のようである。
楽しい時間はあっという間に進んでいくものだ、こうしていても一秒一秒が着々と進んでいく。
俺はのんびり紅茶を飲んでいた。
ここに来るまで紅茶なんて飲んだことがなかったが、ここに来てから紅茶以外は殆ど飲まなくなってしまった。
「で、○○さんと家の中ではやっぱりラブラブなんですか?」
「……えっ?」
「ラブラブだよー。よほどの事が無いと離れないもんね。ルナ姉と○○」
遠くから文の質問の声と、ルナサの驚きの声。そしてリリカの声が聞こえた。
ちなみに、俺はリリカが居る事を知っていて無視をしていた。
「ちょ、ちょっとなんで勝手に言うの! それ以前になんで知ってるの!?」
「ほうほう二人っきりでやっとラブラブなんですね……」
「そうそう、入るに入れないって状況が何度あったか」
「本当、良い彼氏持ったわね姉さん」
「羨ましい限りだねー」
「い、いや……それほどでも……」
「それで、告白の場面と状況はどうなんですか!?」
やれやれ、二人がからかって一人が質問か。
あの様子じゃ多分真っ赤だろうな。
影で見てても面白いと思うが、後で何言われるかわからないので助けることにした。
そう思うと、俺は立ちあがって四人が居るところへと向かった。
俺は楽しい日々は短いと思わない。
思い出が俺の心に残るから。
後日談だが、俺達の話が一面を飾って大量に売たらしい。
見出しは『バカップル誕生』でこの件に対しリリカとメルランにからかられたのは言うまでも無い。
新聞と同時に、マスタースパーク注意報が出たらしいがくわしくはわからない。
~~~END~~~
~バイオリンの裏~
反省点、ルナサがルナサっぽくないってことですかね。
花映と妖々じゃ口調も性格もちょっと違うように見えるので、難しいものです。
実はこれ、バレンタイン直前まで忘れていて、あわてて最後にバレンタインネタを組み込んで完成しました。
本当の所
ル ナ サ に 押 し 倒 さ れ た か っ た 。
これがメインです、これがやりたかった。
それでは、最後に改造三つ下に書いて終わりにしたいと思います。
では、また投稿する日まで~。
~ヴァイオリンの裏~
改造、1
「…………眠い。……寝てようかなぁ」
別にやることが無いので寝ていても良いが、そうも言っていられない。
ガシャーン! ドサッ!!
「ちわーす!! 三河屋でーす!」
「そこ、ガラス割って中に入るな! それに三河屋はそうやって入らん!」
「えー、前なんかでこういうのやってましたけど……」
「それは絶対に三河屋じゃない! サブちゃんはそんなことしない!」
「じゃあ主人のほうで……」
「若本!? ってそっちもやるわけない!!」
改造、2
中にはこんなのが書かれていた。
『
明日、家が無くなるぜ?
霧雨 魔理沙より』
いや、流石に横暴すぎ。
改造、3
中にはこんなのが書かれていた。
『
宴
宴宴宴宴宴宴宴宴宴宴宴
宴 宴 宴 宴
宴宴宴宴宴
宴 宴
宴宴宴宴宴
宴
宴宴宴宴宴宴宴宴宴宴宴
宴 宴
宴宴宴宴
宴宴 宴
霧雨 魔理沙より』
絶対普通の魔法使いじゃないって……。
>>521
───────────────────────────────────────────────────────────
「ルナサぁぁぁ!君の体を俺と言う奏者によって弾かせてくれぇぇぇ!!」
「………」
バゴォッ!
「ぐはっ!まだだ、まだ終わらんよ!」
ゴスッ、メキッ
「くぅっ、やるな!だが俺の最終奥義を前にしても…」
─ ストラディバリカウンター ─
ぐちゃっ
どうみても拒絶されてます。本当に(ry
3スレ目 >>471
───────────────────────────────────────────────────────────
プリズムリバーの館で、僕はルナサさんの演奏を聞いていた。
窓から差し込む夕日が彼女が金色の髪を別の色に染める。
そんな姿に見惚れていると直に演奏は終わり、僕はそれに拍手を送った。
「どうだったかな?」
「上手だったよ、すごく」
「ありがとう。君にそう言ってもらえると、嬉しい」
ルナサさんは僕のちっぽけな言葉を、大切に受け取ってくれる。
そして小さいけれど綺麗な花がほころぶ様に、笑った。
その顔に胸が大きく跳ねる。
「ごめんね。気の利いたこと、言えなくて」
バイオリンを片付け終わって、同じソファの隣に座っているルナサさんにぽつりと呟く。
「どうして謝るの?」
僕は口下手だ。音楽にも詳しくない。
ルナサさんの演奏はとても心に響くのに、それをうまく形にできないのが歯がゆかった。
彼女にありきたりな賛辞しか送れない自分がとても嫌いでもある。
「本当は、もっとたくさん言葉を送りたいんだ。ルナサさんが喜んだり嬉しくなるような事をたくさん。
でも何か上手にまとめられなくて……」
こうして話している今もいっぱいいっぱいで、自分で言っている事がよく分からない。
そうしてしばらくの間、沈黙が場を支配した。
夕日はもう半分以上顔を隠していて、空には気の早い星達が数個昇っている。
重い空気に耐え切れず、今日はもう帰ろうと思い僕は立ち上がろうとした。
その時――
「いいの」
と、ルナサさんは言った。
「あなたが聞いてくれるだけで、私はいいの」
彼女の右手が僕の左手に重なる。
「だって私、あなたのこと好きだから」
そしてもう一度微笑む。今度は全て包み込むような笑顔。
「ルナサさん……」
「実はね、演奏してる時はあなたの顔を見てるの。とっても面白いのよ。
一楽章ごとに、ころころ顔が変わるんだもん。かわいい顔したり、難しい顔したり」
まさか自分がそんな百面相をしていたとは。気づいていなかったので恥ずかしい。
「だからね、言葉にしてくれなくても私には伝わってる」
ぽふ、っと肩に軽い感触。ルナサさんが寄りかかってきたからだ。僕もそれに頭を寄せる。
「ありがとう」
あぁ、本当に僕は馬鹿に違いない。こんなに短いお礼の言葉を返すのが限界だ。
「私、あなたの事を想ってる気持ちを込めていつも演奏してるの」
ルナサさんはサラリと物を言う。しかも驚くほどストレートに。
「ちゃんと伝わったかしら?」
僕はそんな彼女の言動にどぎまぎしっぱなしだし、そんな時は余計言葉が出てこなくなる。
だから、重ねたままの手をそのまま自分の胸に当てた。
普段の何倍も早い鼓動。ひょっとしたら体の外にまで聞こえてるんじゃないか、と思うぐらいうるさい鼓動。
それを感じたのか、ルサナさんは僕のほうを向いて言った。
「すごい、ドキドキしてる」
「うん」
「こんなに早いと寿命縮んでしまうかもしれないよ」
「それは困るかなぁ」
「どうして?」
僕と彼女の視線がすっと絡まる。
『ルナサさんと一緒にいることができる時間が短くなっちゃうから』
そんな事を思ったけど、口下手な僕はもちろん言う事ができなくて。
誤魔化すように曖昧に笑って、彼女にキスをするのが精一杯だった。
『僕』はルナサより年下なので、さん付けで呼んでいるということにしてくださいorz
これはただ単に年上好きな私の趣味です 文句あるかちくしょー
しかもこれって素直クールじゃないよね…… ごめんなさい
4スレ目 >>300