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―狙って狙って狙って狙って、はい、逃げられた。撃つと思ったら手早くね―


 イル・シャロム。
 そこはかつては政府の首都であり、いまはバンガードが拠点とする第九領域最大の都市。高層区が存在し、政府の圧政が解き放たれた今では……今では、さほど変わってなどいない。街を歩く者にはライフルを背負った警備兵が多いし、大きな集会をみつけるや、何度も許可を取っているのかと尋問を行う。治安自体はよくなったという意見もあれば、それは暴力での抑圧に過ぎないという者もいる。自由がなさ過ぎるという意見もあれば、多少でも治安が乱れる要因は排除するべきだというものもいる。だが、一番多いのは、昔より世の中が騒がしくなったなと言う者だろうか。



 と、舞台はその都市からずいぶんと離れたバンガードの基地である。彼方まで広がる荒野に、そこだけが1つの街のようにたたずんでいた。基地中に喧噪が響き渡っている。
 いくつもの整備庫がならんでいるが、それでも収納できなかったのか何機ものAC、MT、戦車、ヘリ、トレーラーが並んでいる。バンガードのものではないミグラントのそれらも基地の片隅にわずかながらだが置かれている。それらの間を兵士なり整備士が忙しそうに駆け回り、怒声が鳴り響く。基地が襲撃されるの報告も、襲撃にいくわけでもなく、これがこの基地の日常だった。日に日にあちこちの部隊が立ち寄っては補給を行って去っていく。毎日のように補給物資が運ばれてくる。
 慌ただしさの向こう側を見れば、そこも喧噪であふれていた。兵士のためにファーストフード店、レストラン、カジュアルショップ、ゲームセンター、バーが簡易的な建物ではあるが並んでいる。その間くらいのスペースでは、暇をもてあました兵士達が、ドラム缶でアームレスリングを行い、それを円を描くように囲んではやし立てている。



―弾薬早く積み込め! もう出発時間過ぎてるぞ! ―
―終わるのが明後日!? 作戦終わっちまうよ! ―
―ビリーいけー。おまけに全部賭けたんだ! ―
―べ、べ、レーコンベタスバーガーをひ、一つ。きの、き、君のスマイル付でテイクオフ―
―ベーコンレタスバーガーですね。一緒にポテトとお飲み物はいかがでしょうか。それと当店では離陸できません―
―この演習が終わったら、カミさんと娘に会えるんだ。誕生日に間に合いそうで良かったよ―
―俺、次の作戦がうまくいったら、食堂のあの娘に付き合ってくれって告白するんだ―
―またこのレーションかよ!? もっとうまいのがあっちにおいてあるだろ!? あっちくれよ! ―
―あれは別の部隊に用意したんだ。要らないなら積まないぞ―
―要らないなら全部くれ。食べられるものならなんでもいい。食べ物を粗末にするのは駄目だ―
―なんでも、カストリカガードにヘリがやられてな―
―他でも、ミグラントに輸送車両がやられたそうだ―
―弾薬の規格違うぞ! 何してんだ―



 十人十色のそれぞれの思惑が交差した喧噪は、分厚い鉄筋鉄骨コンクリートの防弾壁を通せば、ずいぶんと遠くで起きているように聞こえた。部屋にはパイプ椅子が三脚広げられて、折りたたみの机がど真ん中に置かれていた。部屋の端には折りたたまれたままのパイプ椅子が何脚か置かれ、壁の一面にはスチールラックに古めかしい分厚いファイルがちらほらと置かれている。並べられているのではなく、置かれていると表現したのは、まさに平積みを並べていったかのように置かれ、埃をかぶっているからだ。整理しているとは到底言えない。それだけで、部屋はずいぶんと狭苦しくなっていた。机と椅子はあるが、およそ、人が何かの作業をするのに向いているとは思えない。だが、彼女は、短髪で筋肉質で無骨な軍人に、こちらがミーティングルーム(小)ですと案内されてしまっていた。どう考えても倉庫だったが、何も言わなかった。
 他の部屋はと訊けばありませんと即答された。今日一日しか使わないのだし、それでもいいかと思って彼女が煙草を吸い出せば、兵士はカッと目を見開いて、これだけ世界中が汚染させているのにさらに汚染させるとは何事か、信じられないという表情をし、何処においていたのか、部屋の広さにそぐわない巨大で古ぼけた空気清浄機をドスンと彼女のド真ん前に置いて出力をフルに設定し、挙げ句に水がなみなみに注がれ、消火用と書かれたスチール製のバケツを置いて出て行った。ブーンとやけに五月蠅く、新製品(若造)に後進を譲るはまだ早いととばかりに勢いよく紫煙を吸い込んでいく。これがおよそ三時間ほどで起きた出来事だ

「今はどこでも煙草吸いは形見が狭いー。エチケットは大事とな」

 つまらないし気にくわない内容が羅列された分厚いファイルから顔を上げた。冷房はいまいち効いてないし、おまけに老兵が勢いよく有害物質を吸いこんでいっている。集中するには、もう少し気の利いたところは無かったものかと抗議するように天井に向かってふっと蒸気機関車のように白煙を振りまいた。煙は短い自由を謳歌して、老兵に吸い込まれていった。
 彼女、クロード・デュバル大尉は、バンガード軍人である。クーデター時は政府側、現旧政府側についていたため、現在の立場は微妙ではある。それでも、この仕打ちはないだろうと愚痴りたくなる。どうせ、同じ階級でも大佐についていった側は、こんな倉庫ではなくちゃんとしたミーティングルーム(中)あたりにいて、冷房がしっかりと効いていて、冷たいミネラルウォーターを飲みながらソファに座り新品の空気清浄機(新兵)が空気を吸い込んでいく優雅な軍人生活を満喫しているに違いないと邪推する。実際、どうなのかは知らないのだけど。
 ガチャとドアが開く。さらには、ノックすらもしないとは自分の階級が本当に大尉なのか、本当はもっと堕とされているのではないかと不安に襲われそうになった。だが、入ってきた人物を確認し、階級は間違いないなく大尉だと再確認はできた。

「HEY! 少佐、暇?」

 ずいぶんと砕けた挨拶だった。砕けすぎである。
 現れたのは黒髪を無造作に伸ばし、真四角のフレームの派手なサングラスを額にかけた男だ。顔は剃られたのは随分と前だろうと思わせる髭で隠れている。口元は何がおかしいのかニヤリと歪んでいるが、目元は髪で隠れがちだが、眼力だけで人を斬れるのではないかと言うほど鋭かった。折りたたんだ軍服の上着を右手に挟みこんでいて、足下はあろうことか安そうなサンダルだ。雰囲気だけなら、最前線にしか送り込まれない不良軍人の類だ。

「今は大尉だっつーの。クーデターから5年以上経ってるのに間違えるな。暇でもなし、そのまま回れ右だ」

 ふっと煙を、来訪者に吹き付けるように吐き出す。かかる前に老兵に吸い込まれていった。ずいぶんと懐かしく、見知った顔だった。だから、風紀を乱す塊のような男をとがめないわけではない。自身も不良将校なので、説得力が無い。

「相変わらずバカみたいに死んだバカ魚を見たような目をしてるぜ。そこが素敵だ☆ 世辞じゃないぜ。皮肉だ」

 再会して、一瞬で、ノスタルジアなど感じさせない態度だった。
 男はデュバル大尉の鋭すぎる視線を受け止めながら、左足を引きずって……左手には金属製で脚が四つに分かれた医療用の杖が握られている。パイプ椅子をさっと見たが、勝手に轟音を鳴らす空気清浄機の上へとドサッと座り込む。老兵に対する気遣いなど欠片一つもない。それでも空気清浄機は負けじと轟音を鳴らしたままである。

「それじゃあ、あんたがバカみたいに死んだバカ魚だぞーっと。あぁ、なんで現れたんだ。撃破されたと小耳に挟んで、祝杯代わりに、とっておきの上物の煙草を吸っちまった。もったいねぇ。畜生、生きていやがった。こんな不審者通すなんて、憲兵の目は節穴だ。この基地の警備体制の不備についての意見書を書いてやる」

 デュバルはファイル乱暴に閉じて机の上にドスンと置きながら、頭を抱える。まず間違いなくファイルを読む暇もない上に、目の前にいるのは、こういった機密情報を無造作に見ようとする好奇心の持ち主、大した理由もなくそういったことをする上官泣かせの愚か者なので、さらにファイルを机の片隅へと追いやる。

「少佐の意見書なんざ握りつぶされるのがオチだ。そんなことよりもだ。ハムなんちゃらなんとかが」
「誰のことだ? それ。誰のことかさっぱり判らんぞ」
公主嶺中佐なんて覚えられんし、読めるわけないだろ? 無理言うなよ」

 バンガードに所属する中佐の名が出てくる。自分と同じく窓際にいる軍人だ。特徴的な名前で、確かに、簡単に読める字ではないし、覚えづらいという点には、デュバルも同意である。だが。

「……あんた、覚えている上に読めるだろ? 」

 確認するまでもないだろう。つっかえることもなくさらりと名前を出してきた上に、あっているのかは判らないが発音もそれっぽかった。この男の判っていて間違えるのは何が理由なのかはわからない。出会った当初はバカなので覚えられずに間違えていると思っていたが、所々のエピソードを思い起こすと態とではないかと疑ってもいる。

「その、ハム主嶺と少しばかり話をしたが、あんたがセクハラしていると聞いた。名誉を持ち誇り高い軍人がなんたる破廉恥な真似をしている。俺のハートが完全武装して、怒りで燃え上がってな。それが部下を持つ立場の人間のすることかバカヤロウ。俺様にもしろ! 」
「マジで、帰ってくれね」

 上官の名前を判っていてまた間違えた上に、自分のような中身がおっさんの三十路越えにセクハラを敢行する愚者に付ける薬は持ち合わせていない。それに目の前の男は何か勘違いしているようだが、自分がセクハラしたいのは、その衝動がわき上がる人物に対してである。が、いちいち言うほどのことでもないとデュバルは口を閉ざす。心もいっそのこと、全て閉ざしてしまってもいい。貝になってしまいたい。

「ま、そんなことよりもだ。少佐、バカヤロウとワンゲーム、相手してくれ」

 と男は軍服と一緒に挟んで持っていた箱を掲げる。箱は長方形で、白と黒の市松模様となっている。男は箱を広げると真下に駒が散らばっていく。折りたたみ式のチェスセットだった。駒は白と黒だが、ガラス製であり、デュバルには見覚えのあるものだった。

「チェスね。あんたがうちに勝てると思ってるのかい」
「そうこないとな。あんたは強いから面白い」

 二人が駒を並べ、デュバルがトスをし、デュバル先攻から始まった。版をじっと見つめ、最初の一手はまだ動かされない。それを男は苛立った様子もなく悠然と眺め、元上官がどう動くのか、どう考えているのかを見ていることも面白そうだった。

「ふーむ、そんな少佐は、やっぱり相変わらずのグテングテンツルンルンドドンドドンパランパランキョミキョミキュリキュリキャミキャミしているな」
「およそ、人を形容する言葉じゃねーし。世辞も言えないのか」

 版から目を離すこともなく、応える。

「ワンモアチャンスプリーズ」

 男が人差し指をたてるがデュバルは視界の端にだけ捕らえた。初めてであって数秒から、何処まで本気なのかわからない巫山戯た愚か者であり、出会って数年はたっているが、彼女の来訪者に対する評価は下降線をたどるばかりである。マイナス領域には、とうの昔に入っている。

「止めてもやるだろうから、止めないぜ」

 デュバルはまだ最初の一手を指すこともなく、新しい煙草に火をつける。何を言おうと止まるわけがないのであきらめていた。

「全く、そのピシッとしたズボンの下は実はノーパンとは。布一枚先にピンクの密林が広がっているなんてな、軍服の背徳感でエロティズムが際だつぜ。このレジェンドオブエロティッククイーン! 」
「そりゃ、あんたの願望だぜ」

 新たなチャンスを何故かセクハラに使う来訪者の頭の構造はどうなっているのか。軍も様々な連中がいるが、デュバル大尉にセクハラをする奴はそうそう滅多にいない。デュバルのセクハラに対して抗議、抵抗、苦言は山ほどあるが。ましてや、上官に対してこんなに砕けている愚者もいない。いないはずであるから、さらに存在ごと忘れようと、この元部下を厄介者の巣窟である、ぴったりの部隊に送り込んだのだというのに、何の因果かこんな場所でチェスしているのか。

「ワンモアチャンスプリーズ! 」
「まだやるんか」

 もう何を言っても驚きはしないと心に誓うデュバル大尉だ。あれもこれも相手を攪乱し悪手をうたせようとする作戦ですらないので、なおさら面倒だ。

「そんな年して、にゃんこバックプリントのプリティーパンティ履いてるなんて誰も思いもしないぜ。キャラとのギャップが超☆キュート!ノーパンかつバックプリントプリティ履いてるなんて、誰にも真似できない! 不可能を達成した喫煙する神秘! スーパーハイブリットファンタスティックエロス女神がここにいるぜ。そこにあこがれる! しびれる! 」

 非常に生き生きとした、直視できないほどのまっすぐな笑っていない目だった。言動は腐りきっているが。

「願望どころか妄想だぜ。撃破のPTSDからドラッグの静脈注射に走るとは見損なったぜ。パラノイアに蝕まれていやがる」

 とデュバルがポーンを動かし、ゲームが回り出す。

「バカヤロウ、何言ってんだ。ドラッグになんてもんに頼らずとも、日頃からあっちこっちのねぇちゃんで妄想して脳内麻薬その他諸々をドピュドピュ出しているぜ。疑いを晴らすためなら見るか? とくと拝見するが良い」

 デュバルと同じようにポーンを動かして挑戦的な表情を崩さない愚か者だった。発言と一緒にベルトに手をかけているが。

「いい加減にしないと節穴の憲兵呼ぶぞー。見たくないから流石に止めるぜ」
「俺の服が乱れていれば、どう考えても襲ったのは少佐ということになるぞ」

 男はベルトから手を離し、座り直す。

「……うちがどれだけ要求不満だと判断されてるんだよ。―惜しいかな 目の前のバカ 死んで無いどころかナチュラルボーンハイ― デュバル大尉心の一句」

 苛立ちを押さえよとした詠んだが、字余りどころの騒ぎではなかった。ともかくと、さらに駒を動かすと、考えているのかどうかも判らないが、男はさっと駒を動かしてくる。

「つーか。少佐、少佐、って間違えんな。こっちは、あんたと違ってクーデターに不参加だから、降格くらって派遣の大尉なんだよ。なんだよ、勝ち馬に乗っかっただけだーつのに」

 デュバルが一手動かす。

「余所に移したのは、少佐じゃねーか」

 相変わらず間髪入れずに、男が駒を動かす。相変わらず、少佐と間違えている。

「そりゃ、そうだけどよ。隊列組んでいるのに乱しまくって、まともな軍事行動とれん馬鹿は厄介払いするしかないだろ。ったく、なんで陽動役を任せたら、逆に本隊を囮に使って大勝首を取りに行くかね」
「そんなこともあったな-、うわぁ、すげぇ懐かしい。あのときのまるで聖母のような心優しい視線にときめいた」
「記憶に間違いなければ、あれは殺意に満ちた視線で射殺すつもりだったんだぜー。都合の良い記憶回路してるぜ」
「しかし、俺はクーデターに参加しているにもかかわらず、階級も給料も上がらないのは何故だ? どうして軍曹のままなんだ? 何処のバカヤロウの陰謀だ? 」
「命令に粛々と従っているうちが降格されてんのに、規律破りのバカが出世する道理が通るかい」

 おまけにクーデター時には色々と苦い思い出付きだ。もし余所に送っていなければ……なにか別の方向の、別のトラウマで不眠症にでも陥っていたかも知れない。そう、目の前の来訪者はそういう厄介者だ。トラブルを回避しようとすれば、何故か別のトラブルを持ち込む厄介者だ。戦争が好きと言うよりは、如何にして戦果を挙げるかと言うことに固執していた。かといって、出世したいというタイプにもあまり見えない。戦争を目の前で繰り広げているチェスのように一つのゲームとして捕らえていた節があるように思える。他者の評価など気にせず、ただ自身の満足のために戦う。
 男が、初めて迷った様だったが、あいも変わらずにさっと駒を動かしていく。

「全く、強いな。ライスフィールドの親父はもとより、あちこちで勝負して鍛えたつもりりなんだがな」

 ライスフィールド、かつて独立機動部隊に所属していた人間だ。過去形なのは、数年前に戦死したからだ。というか、誰でもいいので誰かよこしてくれないかと要請され、二つ返事で手に余る厄介者を送り込んだので良く覚えている。目の前の男にとっては直属の上官である人物のはずで。クーデターの際には、大佐側について戦果を挙げたと聞いている。目の前の愚か者も、自分が政府側についたというのに、その上官に付いていってクーデターに参加しやがっている。畜生め。

「ふーん。ただ、強いと思うなら、もう少し考えたらどうだよ? 」

 先ほどから、全く間髪入れずに駒を動かす愚か者に一つばかりの忠告だ。次の手が読みづらいが、全く読めないというわけでもない。だが、時間制限も何も無いのだから考えても良いのではないかと思ってのことだ。

「あんた相手じゃ、考えても駄目だと判断した。一瞬の閃きで突き進んでみようと思ってね」

 愚か者は挑戦的な笑みだが、挑戦者はこのぐらいがちょうど良いとも思えた。

「まぁ、だろうね」

 確かに、決して悪手をうつほどの愚か者でもない。悪手に見えたとしても、随分と後々になって生きてくる手を乱発してくる。かといって、また来るかと思わせると肩すかしに定石をうってくる。徹底的に対戦者のリズムを崩しにかかり、狙い澄まして皮肉の効いた一撃をたたき込む。ACでの戦闘でも正にその通りだったので、これが目の前の男の本性なのだろう。
 また、デュバルのターンだが駒は動かしていない。だが、男は催促もせず、同じように盤を睨み付けている。

「しっかし、強いな。チェスなんざ実際の戦争に当てはめるなんざバカヤロウだが、こうも強いのに、クーデターじゃ三発も蹴られて退場とはな」
「二発だ! 二発! 勝手に増やすな! 」

 この部屋に来て、デュバルの初めての大声だった。素敵だのどうこう言いながら、あっさりと人のトラウマに毒塗りナイフを突き立てに来るとは、次の一手の催促の方が断然にましだ。

「そうだったか? 」

 愚か者が盤から目を離して、10度ほど首をかしげる。

「二発だ二発。ただ、二度も蹴った二度も蹴った二度も蹴った二度も蹴った二度も蹴った」

 ブツブツブツブツブツと恨みがましく呟いていく。目線は盤上に向いているが、駒を見てはいないように思えた。変なスイッチが入ってしまったようだ。愚か者さえも、予想外だったのか若干退いていた。

「ふむ。二度も蹴ったな。親父にもブーストチャージされたことないのにってことか? 」
「どういう家庭環境だい」とデュバルが訊くが、愚か者はそのまま続ける。
「俺が、六つの時、ACごっとと称してろくでなしの親父がブーストチャージ! と叫びながら飛び膝蹴りを食らわせてきた」
「そういうアレなところは間違いなく、あんたの親父だ」
「その後、ガラスに突っ込んで外で血まみれになって倒れていたが、発見したお袋によってマウントポジションを取られて、たこ殴りにされていた」
「治療してやれよ」
「後で処置したぞ? 窓の次に」

 一度処置してから殴るよりも効率的だと言いたいのだろうか、いや、常識から言えばそう言う問題ではない。それよりも、お前の家のは、母>窓>父のカースト制が成立しているのかと。

「そういう容赦ないところも、あんたのお袋だな」
「そうか? 」

 それが日常茶飯事であったのか、エピソードのどこに問題のあるのかがいまいちしっくりと判っていないようだ。
 デュバルがさらに次の手を打ち、また愚か者が、次、そして次と小さなフィールドで戦争ごっこが続く。
 愚か者が、一手差したところで、そういえばと口にした。

「蹴られた話で、鎭月おっぱい中佐で思い出したが、中佐の勝負下着当てトトカルチョをしていてよ」
「あんた、最初から最後まで問題発言だらけじゃねーか。ったく……相変わらず馬鹿で命知らずのバカかよ。そんな破廉恥な真似を中佐が知ったらどれだけ激怒をするものやらね。いいぞもっとやれ」
「ちなみに、一番人気は男物のワイシャツだ。……ん? なんで応援しているんだ? 」

 愚か者がデュバルの発言を聞き逃しかけたが、一応は疑問に思う。

「それよりも」

 デュバルが、盤から目を離して、釣られて愚か者も目線を挙げる。

「スゲー。のっけから下着ですないつーね」

 どうやらバンガードには、目の前以外にも馬鹿が大勢いるらしい。本当に、この組織は大丈夫だろうかと不安に駆られる。目の前の男が消え去れば、大丈夫になる気もする。

「有識者が、女が着れば下着だそうだ」
「有識者と書いて変態と読む? 馬鹿じゃねーの? 判らんでも無いが」

 ワイシャツ一枚だけ着て、ベッドの上でアヒル座りしている中佐を思い浮かべると、確かにけしからん。思わず押し倒して、触る、嗅ぐ、舐める等のセクハラしても自分に非はないと正当化したくなるほどだ。そんな格好をしている中佐が悪いんだと叫びたくなる。いや、自分で自分の思考の馬鹿さ加減には気がついているが、目の前のバカのバカが移ってきているのか。

「続いては絆創膏だった」
「あんたら下着に賭けろよ」

 デュバルの右肩が少し下がる。この男は、何故、下着の話ばかりしているのだろうか。

「その次はシュークリームだぞ? 」
「だから、下着に賭けろよ。あんたら、誰一人として勝つ気ないだろ。つーか、シュークリームでどうすんだい? 」

 さらに右肩が下がり、既に理解を超えだしてきている。この先を理解できて良い物か、いや、立ち止まっておくべきか。

「そうだな。映画風に例えると、17歳ほどの身長がほどほど、体重は傍目から見れば普通だが、本人は重いのではないかと気にしている程度の小娘がいるとしよう。顔も悪くはないと言った程度だ。見る人が見れば、磨けば化けるかもしれん。親は共働きで、夫婦仲は悪くない。弟がいるが、色気づいてきたのか最近は生意気になってきている。彼女自身は昼間はハイスクールに通い、放課後と休日はドーナツ屋でバイトをしている。シナモンがかかっただけのシンプルなドーナツが一番人気なドーナツ屋だ。少し年上の先輩は強気で自分は押され気味だが、頼れる姉貴分だ。流行の音楽だのファッションだので盛り上がれ、テストがあれば友人と集まってそれなりの点数で乗り切っている、美しくかけがえのない友情をはぐくんでいる悪くはない日常を過ごしている。ある日、アーケードで友人達との待ち合わせをしているとして、突然血まみれになった男が空から降ってきたとする。正確にはビルから落ちてきただ。真っ黒なスーツに真っ黒なコートを羽織り、険しい表情をしている。当然だ、血まみれで、止血もしていそうにないからな。どういうわけか、お人好しなのか世話好きなのか野次馬根性があるのか、声をかけようとすれば、男は手で近づくなと制しながら、人混みから現れた二人組を似た見つけているわけだ。見た目からして怪しそうな黒服の野郎どもだ。事態が飲み込めないまま眺めていると、両者ともにハンドガンを取りだして撃ち合いを始める。彼女自身も流れ弾が肩をかすめていった。血まみれの男が、弾切れを起こすと、小娘を一瞥してから、はっと驚く顔をするわけだ。錯乱している小娘はそれには気がつかないが、男は躊躇もなく小娘を抱き上げて、意味不明な逃走劇が始まる。喚こうにも男に一括され、黙って、肩の痛みを我慢しているわけだ。男の体温どころか、血の温度が染みて伝わってくるのが、男は大丈夫だろうかと心配になっていく。こういうときに、待ち合わせしている友人はどうだろうとか、夕方のバイトはどうしようと、どうでもいいような日常への心配が重なってくるが、ただの現実逃避に過ぎない。とりあえずと行き着いた先は、閉店してしまったテナントだ。男に事情を聞けども、まずは落ち着こうと言われ、別々の部屋に行き、事態に対して文句を言いつつも手頃な服を探して、脱いでから着替えようとした矢先に、再度襲撃されるってわけだ。その襲撃者は、バイト先の先輩が奇妙な体術を使ってきて、自分が知っている先輩とはまるで別人みたいな様子で『あなたも、そうだったの』と意味深なことを言われるが、迎撃している男に促されて、ほとんど裸の状態で路地を通って逃げていく。目的地もなく、ただ離れようとした結果、今度行き着いた先は、港の倉庫だ。埃だの泥だの、途中降り出した雨で汚れきって、疲れ切っている。まずは汚れをどうにかして、またもや服を探す。小娘だ、人前でストリップなんて高度なことはできないだろう。服を探し、探して、映画みたいに上手く見つからず、代わりに見つかったのがシュークリームだとする。何の変哲もなく、カスタードと生クリームが使われ、パイの上の部分が一度カットされているタイプだ。何故、倉庫からこんなものが見つかったのかは、誰にも判らんが、とりあえず、喰うだろ? 喰って考えるだろ? 」
「着ねーじゃねーか、喰うんじゃねーか」

 前振りが何のために必要だったのかも判らない、例えられていない例え話に、さらに左肩も下がる。

「つーか、そんなもんに賭けるとか、バカだろ」
「俺に責任はねーよ。トトカルチョの親役やっているからな。責めるなら、賭けに来たバカヤロウどもだ」
「やっぱり、あんたがバカの元締めかい」

 道理でイカレたものに賭けているわけだと納得がいく。訊く気はないが、果たして下着に賭けられているのだろうか。

「で、何しにきたっつー話だよ。昔話なんてしないで、先に訊いてきえてもらえりゃー良かった」

 デュバル大尉が、煙草7本を消費して、ようやく本題に入り、チェスのほうも一手動かす。

「軍をやめるんで、少佐に最後の挨拶をな」

 ずいぶんとあっさりとした回答だった。その回答を聞くのにどれだけ遠回りしなければならないのかと。煙草7本の浪費を請求したくなるが、さすがにみみっちすぎる。

「復帰は無理ってことか。その足じゃなー。事務できる奴でもないしよ」

 デュバルは、男の脚を見る。ズボンをはいているので傷口などは見えない。だが、先ほどから脚を引きずり、杖をついているのなら、兵士というものは難しいだろう。

「そうそう。っで、バカヤロウな傭兵にでもなろうかと」
「あー、そう。どう考えても天職? じゃねーの」
「そうか? こんな真面目1つの戦うしかない堅物模範兵が傭兵なんて。明日から不安で夜も眠れない。添い寝してくれ。絶対に、絶対に、何もしない。天国の親父に誓う。あのろくでなしの親父がくたばるところは撮影して3D映像永久保存版にし、ネットでアップしたいぐらいだがな。ただし、寝相が非常に、非常に、非常に、激しいのは気にしないで欲しい」

 やましさが半分以上のうさんくささである。残り半分程度は軽薄さであろうか。

「自己評価が酷すぎるぜ。演習でテロリスト役やらせたら、あんた以上の適役はいなかったぜ」
「新兵の時に、ハートマン鬼軍曹にも似たようなことで褒められた。みんなの目の前で首を絞めながらよ、キスするんじゃないか巫山戯るなバカヤロウって至近距離から、この糞虫はテロをやる糞虫以上に糞虫だ。糞虫じゃない、糞だ。こいつのパパがママのケツでファックして、ママのケツからひねり出された糞だって具合に」
「そりゃ、完全にブチぎれてるだけだ。上から気合いを入れるのがいいが、本物のテロリストまで雇うなってあらぬ疑いをかけられたぜ」
「いやぁ、愛する少佐のために張り切りすぎて。てへ☆」

 その態とらしい可愛さを真似たポーズは二丁拳銃を乱射してオーバーキルしたくなるが、銃を取り出す気力も無くなってきていた。本当に愛しているのなら、セクハラをするな、命令に従え、視界から消えろ、そもそも軍に入ってくるな。

「だから大尉だつーの。本当にテロリストじゃないかどうかを三度も調べられて、信じられないことに三度とも白だったのはあんたぐらいだ。畜生、テロリストってことに偽造して処分しちまえば良かったんだ。そのためなら協力は惜しまないのによ」

 そして、デュバルは火のついた吸い殻を灰皿へと押しつける。目の前の男が、軍を辞め、傭兵となる。そのことは別に止める気はない。いっそ、縁が切れるのなら清々しい。
 いつか、バンガードと戦うようなことにもなり、自分も敵対することもあるかもしれないが、それも構わない。お互いに殺し合いをすることになるが、この男の場合は、そういうものだろうと不思議と納得する。
 目の前の男は、元々は軍にいるのが不思議な人材だ。バカそうだから、適当に敵に突っ込ませる消耗品として採用したのなら、採用した軍人の目は節穴だ。それ以上のバカであり相当数の将校に頭痛の種を植え込ませてグングンと成長させていったのだから。撃破された連絡を受けて、複数の将校連中に死んだか? と希望に満ちた顔で聞き返されるほどのひねくれ者だ。残念ながら死んでいないと返されて肩を落とされる厄介者だ。

「全く、バンガードからミグラントになるとか。生き様も根性も性格もひねくれているどころか、ジグザグに折れ曲がってるぜ。明日から、ミスタージグザグ野郎って名乗りやがれ」
「サー、イエスサー」
「なんでこういうときだけ、良い返事するだろうかね」

 おまけに敬礼付きだ。ハートマン軍曹の教育のたまものなのか、完璧な敬礼だが、この男ほど似合わない軍人も珍しい。

「で、チェックメイトだよ」
「だよな。あーあ、やっぱり、勝てないな」

 と愚か者は、投了の意志としての自分のキングを倒すこともなく、デュバルのナイトを掴むと自分のキングを討ち取らせた。

「蹴られても降格しても、あんたに負けるほどは落ちぶれていねーよ」

 勝利の美酒ならぬ美煙を吸い込んで、ふーっとはき出す。相変わらず煙は、愚か者が座る空気清浄機へと吸い込まれていった。

「こんな使いもしない資料庫に押し込められて、冷房も省エネのために適温プラス2度に設定されて、出生の望みが皆無の派遣の明日も危うい不安定な身になって、三度も蹴られた上に降格されても、やっぱ、強いな。つーか、負けたら、何の役に立つかも判らないバカヤロウだもんな」

 愚か者が一人、納得した様子で頷く。

「そろそろ怒って良いか? あと、二度だ、二度! 」

 怒るだけ無駄、相手にするだけ無駄、無視しても目障りだが、蹴られた回数だけはしっかりと訂正しておく。

「ただよ」と言いながら、愚か者が杖をつき立ち上がる。勝負がついた盤上へ手を伸ばし、自らのクイーンを手にしたかと思えば、デュバル側のキングを討ち取らせた。カランともう一つのキングが盤上に転がり、止まらないまま盤の外へと落ちていった。盤の上から支配者が消えて、数機ずつの駒だけが残る。

「もしも、もしもだ。戦争で大将を討った後に、もう一つの大将がとられたら、ドローなのか終わらない泥沼になるのか、どっちだろうな? 」
「キングを討つために、キングを囮にしたって、ゲームじゃ負けだぜ」
「いや、負け惜しみじゃなくて、病院のベッドの上で考えていたら、答えが出なくてな。全く、怪我なんてするもんじゃない。余計なことばっかりが頭に浮かんでくる」

 と人に訊いているのか訊いていないのか、どことなく上の空で、髪に隠れて眼が見えなかった。

「ま、そんなところで、行くか。街に行く車が出ちまう」

 と男は杖をついて立ち上がる。そして、出て行くどころか先ほど押しやったファイルに目をつけて、自然とさっと手を伸ばす。デュバル大尉がさっとファイルを上から押さえる。話している最中も、チラチラと見ていたので警戒はしていたが、矢張り見に来た。

「今から軍やめるやるが、本当の意味での首チョンパ級のマル秘情報読もうとするな。読まれたら、うちは中尉にされてもおかしくねぇのに。そもそも、権限ないでしょうがよ」
「少佐から2階級も落とされるなんてどんな素敵な秘密かなっと。いいじゃねーか、ちょっとぐらい。なんだ? オーバードウェポン関係か? 」
「だから大尉だ。あんたは私を少尉にまで突き落とす気か。そして、それ以上読むな」

 ぐっとファイルを捲る力を上げる。デュバルは、立ち上がって、体重をファイルにかけて、それを阻止する。こんなところで、機密保持の攻防が行われていた。男女の差はあれど、片方は杖をついて片手、片方は全体重をかけた我らがデュバル大尉。勝負の差は歴然である。いや、決して、晩酌をしてついついもう一本と二三本は空けるような不摂生を長年続けてはいるが、デュバル大尉が重いわけではない。デュバル大尉の名誉のためにこの補足は不可欠であろう。

「なんだよ。ケチくさいな。あんたのところのトップの大佐なんて、ロリコンで好き放題しているつーのに」
「五月蠅いな。あんたの雲の上の大佐もロリコンだぞ」
「そんな噂が立つ、ロリコン大佐が悪いんだよ。そんな奴がトップとは嘆かわしいな! 」
「あんたのところの大佐もハゲちまえ! 」
「ペド大佐」
「ハゲ大佐」
「絶倫大佐」
「絶技大佐」
「無制限発射大佐」
「ビッグマグナム大佐」
「変態の階級もまんま大佐な大佐」
「十代じゃねーと勃たない大佐」

 ファイルを巡る攻防と低レベルな言い争いが続く。だが、本当に言い争いだろうか。今、この場に居ないのは常識人である。いれば、『お前ら、言い争っているように見せかけて、大佐の悪口を言いたいだけだろ』と言ってくれるに違いない。

「そうかい。そんじゃあ、もう会うことも無いだろう。本当に寂しくて名残惜しいが、最後に会えて良かったぜ」

 と男があきらて、ファイルから手を離し、クルリと回って部屋から出て行こうとする。

「あんたが言うと、何故かまた会いそうだぜ。糞、なんて嫌なフラグだ」

 杖をつく、男の背に向かってデュバルが呟く。

「少佐。お元気で。これが本当に、本当に、本当に、最後の挨拶だ」
「だから、何度も言うけど大尉だっつーの」

 扉が閉められた。再び、部屋には彼女一人だ。老兵がブーンと五月蠅いままだ。最後の最後まで少佐を訂正しなかったのは、バカだからなのか、それとも彼なりのかつての上官に対する歪んだ敬意の表し方なのか。敬意なら、いくらでも直さなければならない態度がいくらでもあるので、そちらにまわせば良いのにと。

「はー。あいつ絶対、近日中に出没するな……。トラップでも貼っとくか。さてぇ、馬鹿もいなくなったし、窓際軍人はボチボチ仕事するかとしますかねぇ」

 とファイルを再び開きかけて、いや誰が窓際軍人だと一人呟く。
 ファイルの中身は、読んでいて面白いものでもないし、先ほどの元部下が訊いてきたようにオーバードウェポン関係ではあるが、あまりに得体の知れない兵器に対してはできるだけけ距離を置いておきたい。が、仕事なので、これ以上降格されるのも癪に障るので、読み出す。
 男が出て行ったが、チェス盤はそのまま机の上に置かれたままだ。忘れていったのか置いていったのかは知らないが、今更追いかけて渡す気も沸かない。キングの居ない盤上を眺めて。

「大将を討つよりも、こっからどうやって戦争を起こすかのほうが……」

 キングが居なくなったら解散、終戦では自分にとっては面白くない。キングを討った駒をキングにでも祭り上げて、戦争を終わらせないことが自分にとっては重要だ。世の中もそんな風に進んでいけばと想像すると、ゆっくりと頬がゆるんでいき、数分間、盤を見続け、ふと我に返り、再び無愛想な顔に戻る。片付けようと駒をどけて、盤をひっくり返したそのとき、あるものが目に飛び込んできて、すぐさまに駒も入れずに力強く折りたたむ。机の横を向き、口に手を当て喉まであがってきている吐き気を抑える。
 数分後、ようやく落ち着いた顔色の悪いデュバルが

「あのやろう……最後の最後に仕掛けて来やがった」

 と呟く。
 デュバルにはかつて、ある部下がいた。理性へ行くべき栄養が全て筋肉に回ってしまって、まるで駄目なおっさん例として博物館に飾っても良いような筋肉だるまがいた。その筋肉だるまが体中にオイルを塗って全裸で自信満々にポージングした高解像度の写真が、折りたたみのチェス盤の中に入っていたのだった。その無駄なほどのおぞましさは吐き気さえ催す。生身で見ていたならば、昼に食べたエビフライとパスタとは変わり果てた姿で再会することになっていただろう。
 あの愚か者が、あの筋肉だるまを慕っていることはないだろう。となると、デュバルへのサービスという名の嫌がらせか。本当に、自分が何をしたというのだろうか。
 随分と深くて不快なため息の後に、デュバルは座り直す。つまならくても、仕事をする方が気が紛れる。

「……しっかし、クーデターの後に、これだけ出回っているのは明らかにおかしいつー話でさ。まだまだ、厄介なことになっちまうかいな」

 新しい煙草に火を付けかけて、手を止める。そういえば、外には厄介者の古巣がきていたような気がする。ちらっと見ただけなので、記憶はあまり確かではないが。あの厄介者は一番長くいた古巣へは会いに行っているだろうか。隊員同士ではあまり、交流が無いとは聞いているが。

「んー? 」

 今から確認をしに行く気もなく、そもそも自分が心配する必然自体が存在しない。むしろ、気力が許せば殴りに行きたいぐらいだ。
 ライターが火をともし、薄い白煙が部屋へと広がった。



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最終更新:2012年09月30日 22:13