The Joker ◆wKs3a28q6Q
私はずっと独りだった。
それでいいと思っていた。
一人で気ままに生き、死と隣り合わせの生活を経て、誰にも看取られずひっそりと死んでいく。
そんな人生を憂いたことなんてなかったし、自分にふさわしい人生だと思っていた。
それでいいと思っていた。
一人で気ままに生き、死と隣り合わせの生活を経て、誰にも看取られずひっそりと死んでいく。
そんな人生を憂いたことなんてなかったし、自分にふさわしい人生だと思っていた。
――あの娘に、愛しい人に出会うまでは。
私も女だ、人を愛する事はある。
それでも、その恋は実らなくてもいいと思った。
恋人なんかにならなくとも、今のような距離間で付き合っていければ十分だった。
そんな私と彼との距離の間に、あの娘は突然現れた。
正直、最初は彼女がよく分からなかった。
だけど、二人の時を重ねるにつれ、私は彼女を愛していった。
それは、“彼”に対して抱いていた想いとは違う、もっと別の何かだった。
三人で会い、三人で出かけ、そして三人で笑い合う内に分かっていった。
これは、家族に対する愛なのだと。
これがきっと、この世の何よりも強固な家族間の絆なのだと。
それでも、その恋は実らなくてもいいと思った。
恋人なんかにならなくとも、今のような距離間で付き合っていければ十分だった。
そんな私と彼との距離の間に、あの娘は突然現れた。
正直、最初は彼女がよく分からなかった。
だけど、二人の時を重ねるにつれ、私は彼女を愛していった。
それは、“彼”に対して抱いていた想いとは違う、もっと別の何かだった。
三人で会い、三人で出かけ、そして三人で笑い合う内に分かっていった。
これは、家族に対する愛なのだと。
これがきっと、この世の何よりも強固な家族間の絆なのだと。
だから私はあの街を去った。
私がいたら、あの娘は幸せにはなれないから。
私がいたら、あの娘はいつか壊れるから。
だから、去った。
辛くなかったわけじゃない。
本心を言うなら、あの居心地のいい暖かな輪から身を引くことなどしたくなかった。
私がいたら、あの娘は幸せにはなれないから。
私がいたら、あの娘はいつか壊れるから。
だから、去った。
辛くなかったわけじゃない。
本心を言うなら、あの居心地のいい暖かな輪から身を引くことなどしたくなかった。
……私は弱くなった。
家族を知り、私は明らかに弱くなった。
かつては何でもなかった『孤独』の二文字を、寂しいと思うようになってしまった。
だけど――いや、だからこそ、私は黙って家から去った。
弱いから、家族の前では泣きたくないから、ちっぽけな見栄を守りたくて笑顔で去った。
“彼”には何も告げず、“彼”ならば私の意志を分かってくれると一方的な信頼を寄せて。
家族を知り、私は明らかに弱くなった。
かつては何でもなかった『孤独』の二文字を、寂しいと思うようになってしまった。
だけど――いや、だからこそ、私は黙って家から去った。
弱いから、家族の前では泣きたくないから、ちっぽけな見栄を守りたくて笑顔で去った。
“彼”には何も告げず、“彼”ならば私の意志を分かってくれると一方的な信頼を寄せて。
(……貴女は幸せになれたの、茜?)
敢えて何も調べていない、今は遠くにいるはずの妹を思う。
彼女は結局、涙を取り戻すことができたのだろうか?
……分からない。分からないが、信じてみよう。
自分の愛した男と、心から大切な妹を。
二人なら幸せを掴める。
そう信じたから、私はあの街を去ったのだ。
だから、何も調べない。
敢えて何も調べていない、今は遠くにいるはずの妹を思う。
彼女は結局、涙を取り戻すことができたのだろうか?
……分からない。分からないが、信じてみよう。
自分の愛した男と、心から大切な妹を。
二人なら幸せを掴める。
そう信じたから、私はあの街を去ったのだ。
だから、何も調べない。
故に、彼を見たのも本当に久しぶりだった。
(遠かったけど、間違いない……あの顔は、紛れもなく八神君)
依頼完了の報告を行った直後に飛ばされた真っ暗闇の謎の空間。
最初は私を用済みと見なし、消しにかかったのかと思った。
だがしかし、おかしな眼鏡の登場により、それは違うという事に気付く。
そして、おかしな格好の男が焼き殺されるのを見て、そんなこと頭から吹き飛んでしまう物を目撃した。
(……安心しなさい、茜。彼も貴女も、私が絶対に守ってみせるわ。
今まで何もしてあげることができなかった情けない姉だけど、貴女に何かをしてあげられる八神君を生かす事はできる)
本当に久々に再会した懐かしい顔。
長年の腐れ縁なのだ、見間違いということはないだろう。
彼はCCRのエージェントだ、裏組織主催の悪趣味な殺し合いに巻き込まれていても不思議ではない。
私は彼らの元を去ったけれど、嫌いになったわけではないのだ。
この殺し合いの場で、彼を死なせたくなどない。茜のためにも、何としてでも彼は生き残らせて見せる。
(遠かったけど、間違いない……あの顔は、紛れもなく八神君)
依頼完了の報告を行った直後に飛ばされた真っ暗闇の謎の空間。
最初は私を用済みと見なし、消しにかかったのかと思った。
だがしかし、おかしな眼鏡の登場により、それは違うという事に気付く。
そして、おかしな格好の男が焼き殺されるのを見て、そんなこと頭から吹き飛んでしまう物を目撃した。
(……安心しなさい、茜。彼も貴女も、私が絶対に守ってみせるわ。
今まで何もしてあげることができなかった情けない姉だけど、貴女に何かをしてあげられる八神君を生かす事はできる)
本当に久々に再会した懐かしい顔。
長年の腐れ縁なのだ、見間違いということはないだろう。
彼はCCRのエージェントだ、裏組織主催の悪趣味な殺し合いに巻き込まれていても不思議ではない。
私は彼らの元を去ったけれど、嫌いになったわけではないのだ。
この殺し合いの場で、彼を死なせたくなどない。茜のためにも、何としてでも彼は生き残らせて見せる。
さて、ここで一つ問題が生じる。
彼と私の煽りを受けて、茜が参加しているのか否かだ。
私が彼に近寄らなかったのは、下手な動きはしない方がいいと判断したからだ。
彼の側に茜の姿がなかったのも、彼が同じように考えていたからだろうか?
だが、彼の性格なら茜を発見し次第駆け寄っていてもおかしくはない。
ということは、茜はここにはいないということになる。
そして、それは同時に彼が我威亜党を潰すための潜入捜査でここにいる可能性をも示唆している。
その場合、彼は殺し合いを止めさせるための策なり道具なりを所有している事になる。
だとしたら彼の障害になりそうな参加者を排除しながら合流を図るのが賢明だ。
彼と私の煽りを受けて、茜が参加しているのか否かだ。
私が彼に近寄らなかったのは、下手な動きはしない方がいいと判断したからだ。
彼の側に茜の姿がなかったのも、彼が同じように考えていたからだろうか?
だが、彼の性格なら茜を発見し次第駆け寄っていてもおかしくはない。
ということは、茜はここにはいないということになる。
そして、それは同時に彼が我威亜党を潰すための潜入捜査でここにいる可能性をも示唆している。
その場合、彼は殺し合いを止めさせるための策なり道具なりを所有している事になる。
だとしたら彼の障害になりそうな参加者を排除しながら合流を図るのが賢明だ。
だが――本当にそれでいいのだろうか?
本当に、彼だけを頼りにして無策のままに合流を図っていいのだろうか?
彼が潜入のために来ているのでない場合、亀田達にはCCRのエージェントを拉致監禁する力とCCRに尻尾を掴ませないだけの情報操作力を有している事になる。
そんな相手を打ち破り、みんな仲良くハイ脱出などといくだろうか?
本当に、彼だけを頼りにして無策のままに合流を図っていいのだろうか?
彼が潜入のために来ているのでない場合、亀田達にはCCRのエージェントを拉致監禁する力とCCRに尻尾を掴ませないだけの情報操作力を有している事になる。
そんな相手を打ち破り、みんな仲良くハイ脱出などといくだろうか?
結論から言わせてもらうと、そんな事はまず不可能だ。
理由として、情報不足があげられる。
――ところで、情報屋が常に心がけている事は何か分かるだろうか?
答えは、生還すること。
筆談にしろ口頭にしろ、情報は本人に直接渡さねばいけないものだ。郵送では何かトラブルが起こるかもしれないし、伝言は頼んだ相手が裏切らないとは限らない。
だから、情報は依頼者に直接伝える。
そんな当然の事を為すために、私達は無様に地面を這ってでも生き延びなくてはならないのだ。
要するに、情報屋とは常に安全を確保しながら危険地帯に突っ込むスペシャリスト。
石橋を叩くわけでも古びた吊り橋を駆け抜けるでもなく、万が一橋が崩れても命が助かるような方法を見つけてから吊り橋を行くことが求められる。
しかし、今の状況はどうだろうか?
下準備は基本中の基本だというのにそれすらままならないまま事態は進み、既に後手に回っている。
身を守るための道具も取り上げられ、今いる場所すら分からない。
プロの情報屋として言わせてもらう。こんな状況で情報収集に精を出すなど愚の骨頂だ。持ち帰れない情報に価値など無い。
脱出のための情報を掻き集めても、実行に移す前に殺されるのがオチだろう。
拳銃が支給されはしたが、最初に殺された妙な格好のサイボーグクラスの実力者が混ざっているとなると、無事に八神君と合流できるかどうかも怪しい。
それでも、私は亀田に立ち向かおうと言うのだろうか。私のプロとしての本能が止めておけと言っているのに。
理由として、情報不足があげられる。
――ところで、情報屋が常に心がけている事は何か分かるだろうか?
答えは、生還すること。
筆談にしろ口頭にしろ、情報は本人に直接渡さねばいけないものだ。郵送では何かトラブルが起こるかもしれないし、伝言は頼んだ相手が裏切らないとは限らない。
だから、情報は依頼者に直接伝える。
そんな当然の事を為すために、私達は無様に地面を這ってでも生き延びなくてはならないのだ。
要するに、情報屋とは常に安全を確保しながら危険地帯に突っ込むスペシャリスト。
石橋を叩くわけでも古びた吊り橋を駆け抜けるでもなく、万が一橋が崩れても命が助かるような方法を見つけてから吊り橋を行くことが求められる。
しかし、今の状況はどうだろうか?
下準備は基本中の基本だというのにそれすらままならないまま事態は進み、既に後手に回っている。
身を守るための道具も取り上げられ、今いる場所すら分からない。
プロの情報屋として言わせてもらう。こんな状況で情報収集に精を出すなど愚の骨頂だ。持ち帰れない情報に価値など無い。
脱出のための情報を掻き集めても、実行に移す前に殺されるのがオチだろう。
拳銃が支給されはしたが、最初に殺された妙な格好のサイボーグクラスの実力者が混ざっているとなると、無事に八神君と合流できるかどうかも怪しい。
それでも、私は亀田に立ち向かおうと言うのだろうか。私のプロとしての本能が止めておけと言っているのに。
じゃあ、参加者を殺して回ろうか?
勿論、その場合私が生き残るという選択肢はなしだ。
報告直後に拉致されたため、現在途中の依頼はない。死ぬには丁度いい日だろう。
それに私には義務があるのだ。茜の姉として、茜を幸せに出来る唯一の人間である八神君を家まで帰すという義務が。
だがこの選択を選んだ場合、茜がいる場合困ることになる。
修羅の道を選んだ以上、途中で道を変えることはできない。一度手を染めたら、自分が殺し合いに乗った事実は広まると見て間違いないだろう。
襲った相手を確実に仕留められる自信はないし、隠れた相手に目撃されるという可能性だってある。
一度殺し合いに乗ったなら、最後まで殺人者として在り続けなくてはいけない。
とはいえ、茜を殺すことなんて出来ない。
八神君なら、私と一緒に茜を生き残らせようとするだろうか……? 茜のために、他の大勢の命を犠牲にすることに賛成してくれるだろうか?
……その可能性は低いだろう。そんなことをするよりも、に茜と共に亀田を倒そうとする可能性が高い。
そうなった場合、人を殺していると彼らのサポートがしづらくなる。せいぜい、足手纏いとなりそうな参加者の間引きぐらいしか出来ないだろう。
勿論、その場合私が生き残るという選択肢はなしだ。
報告直後に拉致されたため、現在途中の依頼はない。死ぬには丁度いい日だろう。
それに私には義務があるのだ。茜の姉として、茜を幸せに出来る唯一の人間である八神君を家まで帰すという義務が。
だがこの選択を選んだ場合、茜がいる場合困ることになる。
修羅の道を選んだ以上、途中で道を変えることはできない。一度手を染めたら、自分が殺し合いに乗った事実は広まると見て間違いないだろう。
襲った相手を確実に仕留められる自信はないし、隠れた相手に目撃されるという可能性だってある。
一度殺し合いに乗ったなら、最後まで殺人者として在り続けなくてはいけない。
とはいえ、茜を殺すことなんて出来ない。
八神君なら、私と一緒に茜を生き残らせようとするだろうか……? 茜のために、他の大勢の命を犠牲にすることに賛成してくれるだろうか?
……その可能性は低いだろう。そんなことをするよりも、に茜と共に亀田を倒そうとする可能性が高い。
そうなった場合、人を殺していると彼らのサポートがしづらくなる。せいぜい、足手纏いとなりそうな参加者の間引きぐらいしか出来ないだろう。
……要するに、さっきも言ったように今は情報不足なのだ。自分がどう立ちまわればいいのか決めかねるほどに、情報が少ない。
亀田に関して言えば、テレポーテーションなど私達の理解を超えた技術を有していることしか分かっていないのだ。
倒せるかなんて分からないし、最後の一人になれば本当に帰してくれるのかも分からない。
亀田に関して言えば、テレポーテーションなど私達の理解を超えた技術を有していることしか分かっていないのだ。
倒せるかなんて分からないし、最後の一人になれば本当に帰してくれるのかも分からない。
まったく、私も弱くなったものだ。
茜に出会うまでの私ならば、情報が無いなら無いでどう動くかはさっさと決めてしまってただろう。
今となっては、あの頃の自分ならどちらを選んだのかすら分からない(あの頃の自分も自分の意思では決めずに、コイントスで決めていた可能性はあるのだが)
それほどまでに私は変わってしまったのだ。
「……無様ね」
弱く、そして情けない。今の自分にはそんな言葉がピッタリなように思える。
どうすべきかも自分一人では決められず、他人に答えを求めてしまう。答えを与えてほしいと信じてもいない神に願ってしまう。
実に無様だ。昔の私が見ていたら間違いなく失望することだろう。
他の情報屋に指を指されて笑われても、甘んじて受けるしかなさそうである。
茜に出会うまでの私ならば、情報が無いなら無いでどう動くかはさっさと決めてしまってただろう。
今となっては、あの頃の自分ならどちらを選んだのかすら分からない(あの頃の自分も自分の意思では決めずに、コイントスで決めていた可能性はあるのだが)
それほどまでに私は変わってしまったのだ。
「……無様ね」
弱く、そして情けない。今の自分にはそんな言葉がピッタリなように思える。
どうすべきかも自分一人では決められず、他人に答えを求めてしまう。答えを与えてほしいと信じてもいない神に願ってしまう。
実に無様だ。昔の私が見ていたら間違いなく失望することだろう。
他の情報屋に指を指されて笑われても、甘んじて受けるしかなさそうである。
だが、それがどうした。
確かに私は弱くなった。無様になった。
だけど、同時にかけがえのないものを手に入れたのだ。考えるだけで胸の奥が暖かくなる、とても素敵なものを手に入れたのだ。
それを守るためならば、何だってやってやる。
例え誰から罵られようと構わない。
だって私は、あの娘のお姉さんなんだから。
確かに私は弱くなった。無様になった。
だけど、同時にかけがえのないものを手に入れたのだ。考えるだけで胸の奥が暖かくなる、とても素敵なものを手に入れたのだ。
それを守るためならば、何だってやってやる。
例え誰から罵られようと構わない。
だって私は、あの娘のお姉さんなんだから。
☆ ★ ☆ ★ ☆
私はずっと独りだった。
それでいいと思っていた。
周りの望む自分を演じ、己すらも欺いた生活を経て、誰にも看取られずひっそりと死んでいく。
そんな人生を憂いたことなんてなかったし、自分にはその人生しかないと思っていた。
それでいいと思っていた。
周りの望む自分を演じ、己すらも欺いた生活を経て、誰にも看取られずひっそりと死んでいく。
そんな人生を憂いたことなんてなかったし、自分にはその人生しかないと思っていた。
――あの男に、愛しい人に出会うまでは。
アイツに出会ってしまったせいで、私のメッキは剥がれ落ちた。
生まれて初めて、演技でない素の自分を曝け出してしまった。
それはきっと、あの男を愛していたから。心から愛していたから、そうなってしまったのだと思う。
いつかアイツに言ったように、愛というものは実在する。私がアイツを愛したとしても、何らおかしなことではない。
ただ、愛とは尊くないだけだ。愛は、その一言で全てを解決できるような魔法の呪文ではない。
だから、私はアイツと袂を分つた。アイツとだけじゃない。親友だったカズとも、あの日あの場所で別離した。
二人とは、おそらくもう一生会う事もないだろう。
そんな事を想いながら、私は“演じられた神条紫杏”をとはいえ自分を必要としてくれたジャジメントの元へと向かった。
生まれて初めて、演技でない素の自分を曝け出してしまった。
それはきっと、あの男を愛していたから。心から愛していたから、そうなってしまったのだと思う。
いつかアイツに言ったように、愛というものは実在する。私がアイツを愛したとしても、何らおかしなことではない。
ただ、愛とは尊くないだけだ。愛は、その一言で全てを解決できるような魔法の呪文ではない。
だから、私はアイツと袂を分つた。アイツとだけじゃない。親友だったカズとも、あの日あの場所で別離した。
二人とは、おそらくもう一生会う事もないだろう。
そんな事を想いながら、私は“演じられた神条紫杏”をとはいえ自分を必要としてくれたジャジメントの元へと向かった。
――そう、確かに向かったはずだのだ。
だと言うのに、これは一体何なのだろうか?
気が付いたらおかしな場所に連れて来られ、そして殺し合いを命じられた。
十波に別れを告げた後、ずっとヘリコプターに乗っていたはずなのに。
なのにそれが何故、いきなりこんな所に連れてこられたんだ?
「……カズ……」
呟くのは、もう一生会わぬだろうと思っていた友人の名前。
本人は気にしているようだったが、彼女は背が高いので人ごみでも見つけやすい。そう、見つけやすいのだ。
「何故、お前が……」
それはこんな状況とて例外ではない。
少年が首から上を吹き飛ばされた時、吹き飛んだ顔を無意識の内に目で追ってしまっていた。
そして見たのだ。少年の死に怯える人々の中に、頭一つ分大きな少女がいるのを。
見間違えようはずがない。あれはカズだ。
更に、それだけではない。彼女の姿を見てから、ざっとその場を見渡してみた。
本来ならば目覚めて最初にやるべきだったのかもしれない。亀田の説明を聞きながらだったのでしっかりと探す事は出来なかった。
それでも、更に二人も見つけてしまった。朱里と十波。大切な友人と、愛しい人。彼らの姿を見つけてしまった。
吐き気を催した気がした。見ず知らずの少年の死体では吐き気など催さなかったのに、十波達が少年と同じような憐れな亡骸になることを思うと今にも吐き出しそうだった。
「十波……」
膝を抱える。修羅の道を往く覚悟は出来てた。
私の事を教育すると言っていたし、いずれは私もあの亀田のような非情な人間になるであろうことも理解している。
でも、私はまだ極々普通の少女なのだ。心の強い女の皮を被った、ただの小心者なのだ。
そんな私に、一体何をしろという言うのだ!?
だと言うのに、これは一体何なのだろうか?
気が付いたらおかしな場所に連れて来られ、そして殺し合いを命じられた。
十波に別れを告げた後、ずっとヘリコプターに乗っていたはずなのに。
なのにそれが何故、いきなりこんな所に連れてこられたんだ?
「……カズ……」
呟くのは、もう一生会わぬだろうと思っていた友人の名前。
本人は気にしているようだったが、彼女は背が高いので人ごみでも見つけやすい。そう、見つけやすいのだ。
「何故、お前が……」
それはこんな状況とて例外ではない。
少年が首から上を吹き飛ばされた時、吹き飛んだ顔を無意識の内に目で追ってしまっていた。
そして見たのだ。少年の死に怯える人々の中に、頭一つ分大きな少女がいるのを。
見間違えようはずがない。あれはカズだ。
更に、それだけではない。彼女の姿を見てから、ざっとその場を見渡してみた。
本来ならば目覚めて最初にやるべきだったのかもしれない。亀田の説明を聞きながらだったのでしっかりと探す事は出来なかった。
それでも、更に二人も見つけてしまった。朱里と十波。大切な友人と、愛しい人。彼らの姿を見つけてしまった。
吐き気を催した気がした。見ず知らずの少年の死体では吐き気など催さなかったのに、十波達が少年と同じような憐れな亡骸になることを思うと今にも吐き出しそうだった。
「十波……」
膝を抱える。修羅の道を往く覚悟は出来てた。
私の事を教育すると言っていたし、いずれは私もあの亀田のような非情な人間になるであろうことも理解している。
でも、私はまだ極々普通の少女なのだ。心の強い女の皮を被った、ただの小心者なのだ。
そんな私に、一体何をしろという言うのだ!?
「……武器、確認しないと」
正直、このままずっと膝を抱えて嘆いていたい。いっそのこと泣いてしまいたい。
だけど、心の強い自治会長・神条紫杏としての自分が告げている。そんなことでは数時間で命を落とすと。
だからデイパックを開け中身を見る。はっきり言って、死にたくなどない。
「……何だこれは」
まず取り出したのはホッチキスで留められただけの小冊子。
表紙には大きなゴシック体で『支給品一覧表』と書かれている。
中を開くと、まず最初に目次があった。やたらと瞳の大きな女のイラストが添えられている。
次のページには『銃器』とでかでかと書いてあり、その次のページには銃器の名前と弾数、そして簡単な使い方が記されていた。
「なるほどな、なかなか使えそうだ」
この状況は情報が命である。ましてや武器の情報だ、重宝しないわけがない。これさえあれば、奪ったり拾ったりした武器に説明書が付いていなくても使うことができるようになる。
それに、写真も付いている。目次によればモデルガンなんてものもあるようだし、全てのページを熟読するべきだろう。
「ほう……これは……」
とはいえ、まずはデイパックの中身を調べつくす事だ。
熟読している間に誰が来ないとも限らない。
広く薄暗い中でしゃがみ込んでいるためすぐに気付かれる事はないだろうが、ここは映画館だ。
出口も多いし、立て篭もろうとする人間がいてもおかしくはない。
もっとも、獲物を探す殺人者や仲間を探すお人好しなどはここではなく商店街まで行くと思われるし、ここに来るのは消極的な者ぐらいだろうが。
「コルトガバメント、か……重たいな」
拳銃。はっきり言って当たりの武器と言えるだろう。
自分にこれが扱いきれるのかという不安は残るが、接近すれば問題なく当たるのだろうし、扱いやすさの点では刃物の類と大差ない。
むしろ威嚇に使える分だけこちらの方が優れていると言えるだろう。
「さすがにもう何もない、か」
デイパックの中身を一つ一つ椅子に並べる。水に食糧、地図にコンパス。どう見ても共通で配られる支給品だ。
どうやら私に配られたのは銃と小冊子の二つのようだ。
と言っても、二つとも当たりも当たり、大当たりだ。
勿論、当たり武器二つというのが最上級の当たり品とは思わない。
小冊子によればマシンガンの類も支給されており、これがおそらく一番の当たりアイテムだろう。
だが、やはりこれは異質とも言える。小冊子によると、ここにはモデルガンや黒い板、さらには人形のパーツまで配られているのだ。
そのページを開き解説文を読んだわけではないが、おそらくはロクでもない、いわゆるハズレの武器だろう。
そんなものがある中、私にはそれらハズレの支給品が配られずに、拳銃と小冊子が配られた。
皆も使える物ばかり配られているのならともかく、これは些か不平等というものではないだろうか?
勿論、平等じゃないといけないだなんて綺麗事を言うつもりはない。
大事なのは、何故私が優遇されているのかだ。
正直、このままずっと膝を抱えて嘆いていたい。いっそのこと泣いてしまいたい。
だけど、心の強い自治会長・神条紫杏としての自分が告げている。そんなことでは数時間で命を落とすと。
だからデイパックを開け中身を見る。はっきり言って、死にたくなどない。
「……何だこれは」
まず取り出したのはホッチキスで留められただけの小冊子。
表紙には大きなゴシック体で『支給品一覧表』と書かれている。
中を開くと、まず最初に目次があった。やたらと瞳の大きな女のイラストが添えられている。
次のページには『銃器』とでかでかと書いてあり、その次のページには銃器の名前と弾数、そして簡単な使い方が記されていた。
「なるほどな、なかなか使えそうだ」
この状況は情報が命である。ましてや武器の情報だ、重宝しないわけがない。これさえあれば、奪ったり拾ったりした武器に説明書が付いていなくても使うことができるようになる。
それに、写真も付いている。目次によればモデルガンなんてものもあるようだし、全てのページを熟読するべきだろう。
「ほう……これは……」
とはいえ、まずはデイパックの中身を調べつくす事だ。
熟読している間に誰が来ないとも限らない。
広く薄暗い中でしゃがみ込んでいるためすぐに気付かれる事はないだろうが、ここは映画館だ。
出口も多いし、立て篭もろうとする人間がいてもおかしくはない。
もっとも、獲物を探す殺人者や仲間を探すお人好しなどはここではなく商店街まで行くと思われるし、ここに来るのは消極的な者ぐらいだろうが。
「コルトガバメント、か……重たいな」
拳銃。はっきり言って当たりの武器と言えるだろう。
自分にこれが扱いきれるのかという不安は残るが、接近すれば問題なく当たるのだろうし、扱いやすさの点では刃物の類と大差ない。
むしろ威嚇に使える分だけこちらの方が優れていると言えるだろう。
「さすがにもう何もない、か」
デイパックの中身を一つ一つ椅子に並べる。水に食糧、地図にコンパス。どう見ても共通で配られる支給品だ。
どうやら私に配られたのは銃と小冊子の二つのようだ。
と言っても、二つとも当たりも当たり、大当たりだ。
勿論、当たり武器二つというのが最上級の当たり品とは思わない。
小冊子によればマシンガンの類も支給されており、これがおそらく一番の当たりアイテムだろう。
だが、やはりこれは異質とも言える。小冊子によると、ここにはモデルガンや黒い板、さらには人形のパーツまで配られているのだ。
そのページを開き解説文を読んだわけではないが、おそらくはロクでもない、いわゆるハズレの武器だろう。
そんなものがある中、私にはそれらハズレの支給品が配られずに、拳銃と小冊子が配られた。
皆も使える物ばかり配られているのならともかく、これは些か不平等というものではないだろうか?
勿論、平等じゃないといけないだなんて綺麗事を言うつもりはない。
大事なのは、何故私が優遇されているのかだ。
「……私を教育する、か」
心当たりがないわけではない。むしろある。考えれば考えるほどに、これしかないと思えるような心当たりが。
勿論、偶然この荷物が配られた可能性もあるのだが、私はそうは考えない。
『ジャジメントによる、私の教育』
ジャジメントの言うには、私を未来の指揮官として招きたいとの事だった。
そして、その時が来るまで無償で教育をしてくれるとも言っていた。
もしもこれがジャジメントの課した最初の課題だとしたら辻褄が合う。すぐに死なれては困るのだから、それなりの物を渡してくるのは当然だ。
ヘリコプターに乗っていたはずが気付いたら殺し合いの場にいたことも、ジャジメントが薬か何かで私を眠らせてから拉致したと考えれば納得がいく。
朱里やカズ、十波を巻き込むことだって、ジャジメントにかかれば簡単な事だろう。
だが、ここでひとつ問題が生じる。ジャジメントは私に何を求めているのか、だ。
心当たりがないわけではない。むしろある。考えれば考えるほどに、これしかないと思えるような心当たりが。
勿論、偶然この荷物が配られた可能性もあるのだが、私はそうは考えない。
『ジャジメントによる、私の教育』
ジャジメントの言うには、私を未来の指揮官として招きたいとの事だった。
そして、その時が来るまで無償で教育をしてくれるとも言っていた。
もしもこれがジャジメントの課した最初の課題だとしたら辻褄が合う。すぐに死なれては困るのだから、それなりの物を渡してくるのは当然だ。
ヘリコプターに乗っていたはずが気付いたら殺し合いの場にいたことも、ジャジメントが薬か何かで私を眠らせてから拉致したと考えれば納得がいく。
朱里やカズ、十波を巻き込むことだって、ジャジメントにかかれば簡単な事だろう。
だが、ここでひとつ問題が生じる。ジャジメントは私に何を求めているのか、だ。
仮説1。頭脳を使い、戦略を練り、最後の一人になるよう上手く立ち回る事を期待している。
この可能性は多いにある。
朱里から聞いた事のあるジャジメントが過去に行った非道な実験の数々を思えば、このぐらいのことはしてもおかしくない。
殺し合いぐらい生き延びて見せろ。そう言ってきても何ら不思議ではない。
この場合、カズや十波は私が非情になるための踏み台として用意された事になる。
おそらくは私の近くに配置されたか、私と会うまで死なないように強力な武器を与えられたかのどちらかだろう。
はっきり言って腹立たしい。十波やカズは、もう関係がないはずなのに。こんな事をせずとも、時が経てば今抱いている想いなど忘れるというのに。
それなのにわざわざ十波達を殺し合いに巻き込んだことが腹立たしくて仕方がない。
十波には未来があるのに。私と違って表舞台で輝ける才能を持っていると言うのに。甲子園が迫っているというのに。
カズだってそうだ。十波のおかげでようやく男にも慣れてきて、自身の能力とも向き合ってこれたというのに。
なのに何故、彼らが巻き込まれなければいけないのだろう。
はっきり言って、ジャジメントに対し嫌悪感を抱かざるを得ない。
この可能性は多いにある。
朱里から聞いた事のあるジャジメントが過去に行った非道な実験の数々を思えば、このぐらいのことはしてもおかしくない。
殺し合いぐらい生き延びて見せろ。そう言ってきても何ら不思議ではない。
この場合、カズや十波は私が非情になるための踏み台として用意された事になる。
おそらくは私の近くに配置されたか、私と会うまで死なないように強力な武器を与えられたかのどちらかだろう。
はっきり言って腹立たしい。十波やカズは、もう関係がないはずなのに。こんな事をせずとも、時が経てば今抱いている想いなど忘れるというのに。
それなのにわざわざ十波達を殺し合いに巻き込んだことが腹立たしくて仕方がない。
十波には未来があるのに。私と違って表舞台で輝ける才能を持っていると言うのに。甲子園が迫っているというのに。
カズだってそうだ。十波のおかげでようやく男にも慣れてきて、自身の能力とも向き合ってこれたというのに。
なのに何故、彼らが巻き込まれなければいけないのだろう。
はっきり言って、ジャジメントに対し嫌悪感を抱かざるを得ない。
そして仮説2。逆に、力無き者を纏め上げて、首輪解除という一見困難な偉業を成し遂げる事を期待している。
この可能性も否定はできない。
指揮者・指導者としての私の資質を伸ばしたいと言う事なら、この状況は持って来いだ。
誰を信じていいのか分からず、かつ生存も絶望的なこの状況。
そんな状況下でバラバラの考えを持つ人間を纏め上げ、絶望的な状況を打破する。
そういうシナリオの場合、十波やカズはある種のタイマーの役割を果たすものだと思われる。
『彼らを死なせたくなければ、出来るだけ早くこの状況を打破してみろ』ということだ。
最悪、一定時間が経つと十波とカズの首輪は順次爆破されると考えてもよい。
彼らが生き残れる可能性がある分だけ仮説1より遥かにマシだが、それでもやはりジャジメントには腹が立つ。
この可能性も否定はできない。
指揮者・指導者としての私の資質を伸ばしたいと言う事なら、この状況は持って来いだ。
誰を信じていいのか分からず、かつ生存も絶望的なこの状況。
そんな状況下でバラバラの考えを持つ人間を纏め上げ、絶望的な状況を打破する。
そういうシナリオの場合、十波やカズはある種のタイマーの役割を果たすものだと思われる。
『彼らを死なせたくなければ、出来るだけ早くこの状況を打破してみろ』ということだ。
最悪、一定時間が経つと十波とカズの首輪は順次爆破されると考えてもよい。
彼らが生き残れる可能性がある分だけ仮説1より遥かにマシだが、それでもやはりジャジメントには腹が立つ。
だが、腹が立つと同時に「確かに効果的な策ではある」と認めてしまう自分がいる。
彼らが存在したせいで、私の心は迷っている。
自分で答えを探さねばいけないのに、つい公平性を欠いて仮説2を取ろうとしてしまう。
冷静に考えて、保険を掛けるのならば仮説1を取るべきなのだ。
仮説1が真実なのに仮説2を選択してしまった場合、最悪ジャジメントとの縁は途絶えてしまう。
だが、逆に仮説2が真実なのに仮説1を選んでしまった場合は、『殺し合いに生き残る程度のスキルはある』と箔付けをすることが可能だ。
しかも、この場合ジャジメントの課題をクリアできなかっただけであって課題に反抗したわけではないので、縁が切れる可能性は少ない。
だからと言って、素直に「オーケイ全員ブチ殺す」と思えるほど私の心は強くない。
人の命を単なる数値で割り切れるほど、まだ心は非情になりきれていない。
私はまだ、ただの小心者のままなのだ。惨めで、無様で、情けない。そんなただの女子高生なのだ。
彼らが存在したせいで、私の心は迷っている。
自分で答えを探さねばいけないのに、つい公平性を欠いて仮説2を取ろうとしてしまう。
冷静に考えて、保険を掛けるのならば仮説1を取るべきなのだ。
仮説1が真実なのに仮説2を選択してしまった場合、最悪ジャジメントとの縁は途絶えてしまう。
だが、逆に仮説2が真実なのに仮説1を選んでしまった場合は、『殺し合いに生き残る程度のスキルはある』と箔付けをすることが可能だ。
しかも、この場合ジャジメントの課題をクリアできなかっただけであって課題に反抗したわけではないので、縁が切れる可能性は少ない。
だからと言って、素直に「オーケイ全員ブチ殺す」と思えるほど私の心は強くない。
人の命を単なる数値で割り切れるほど、まだ心は非情になりきれていない。
私はまだ、ただの小心者のままなのだ。惨めで、無様で、情けない。そんなただの女子高生なのだ。
考えごとに夢中になっていたからだろうか。
不意に銃声が耳に入る。
反射的に身を竦め、ワンテンポ遅れて襲撃者に銃を向ける。
「動かないで」
ビクリと体が固まってしまう。
不意打ちの銃声に焦り勢いのままに撃っていたら、今頃命はなかっただろう。
そう思わせるほど冷たい声で、黒衣に身を包んだ襲撃者は警告を下した。
「下手な動きをしたら、そのペットボトルみたいになるわよ」
「…………ッ!」
背筋が凍る。静かな映画館の中で、ピチャピチャという水音が聞こえている。
襲撃をしてきた黒衣の女は、狙って私のペットボトルを撃ち抜いたとでも言うのだろうか?
本当にペットボトルに穴があいているのか確かめようにも、あの女から目を逸らすわけにもいかない。
あの女の声は、ジャジメントの連中のそれと同じ冷たさがある。
おそらく、私を撃ち殺す事に何の躊躇も持たないだろう。
不意に銃声が耳に入る。
反射的に身を竦め、ワンテンポ遅れて襲撃者に銃を向ける。
「動かないで」
ビクリと体が固まってしまう。
不意打ちの銃声に焦り勢いのままに撃っていたら、今頃命はなかっただろう。
そう思わせるほど冷たい声で、黒衣に身を包んだ襲撃者は警告を下した。
「下手な動きをしたら、そのペットボトルみたいになるわよ」
「…………ッ!」
背筋が凍る。静かな映画館の中で、ピチャピチャという水音が聞こえている。
襲撃をしてきた黒衣の女は、狙って私のペットボトルを撃ち抜いたとでも言うのだろうか?
本当にペットボトルに穴があいているのか確かめようにも、あの女から目を逸らすわけにもいかない。
あの女の声は、ジャジメントの連中のそれと同じ冷たさがある。
おそらく、私を撃ち殺す事に何の躊躇も持たないだろう。
「なるほど……ふふ、大した腕だ」
だから、笑う。だからこそ私は笑う。
小心者の少女としてでなく、強い女の仮面を被って。
あの女が、ジャジメントが私に差し向けた最初の試練なのかは分からない。
だが、あの女が“全く話の通じない人物”でないことは確かだ。そうでないならとっくに私は殺されている。
ただし、だからと言ってあの女が殺し合いをする気がないと決まったわけではない。そんな簡単に他人を信じると、この場所では痛い目に遭うだろう。
殺す前に情報を引き出そうとしている可能性も大いにある。
しかし、それは同時に『ある程度の頭脳がある人間』であることも示している。
頭の悪い者なら、情報を引き出そうともせずにさっさと殺しにかかっているはずだ。
そしてこの殺し合いのゲームでは、誰にとっても仲間というのは必要である。
休息を取る時の見張りにしても、戦闘においてでも、一人と二人では生存率は段違いだ。
情報を引き出そうとする程度の頭があれば、そのくらいは思い付くだろう。
だから、女が殺し合いに乗っているのなら同盟を結ぶ。ラスト10人になるまで共同戦線を張ろうと持ちかける。
勿論互いに助け合おうなどとは言わない。互いに利用し合うのだ。
積極的に殺し回ることに賛同してくれる者で話の通じる者は少ないだろうし、おそらくは同盟を結んでもらえる。
小心者の少女としてでなく、強い女の仮面を被って。
あの女が、ジャジメントが私に差し向けた最初の試練なのかは分からない。
だが、あの女が“全く話の通じない人物”でないことは確かだ。そうでないならとっくに私は殺されている。
ただし、だからと言ってあの女が殺し合いをする気がないと決まったわけではない。そんな簡単に他人を信じると、この場所では痛い目に遭うだろう。
殺す前に情報を引き出そうとしている可能性も大いにある。
しかし、それは同時に『ある程度の頭脳がある人間』であることも示している。
頭の悪い者なら、情報を引き出そうともせずにさっさと殺しにかかっているはずだ。
そしてこの殺し合いのゲームでは、誰にとっても仲間というのは必要である。
休息を取る時の見張りにしても、戦闘においてでも、一人と二人では生存率は段違いだ。
情報を引き出そうとする程度の頭があれば、そのくらいは思い付くだろう。
だから、女が殺し合いに乗っているのなら同盟を結ぶ。ラスト10人になるまで共同戦線を張ろうと持ちかける。
勿論互いに助け合おうなどとは言わない。互いに利用し合うのだ。
積極的に殺し回ることに賛同してくれる者で話の通じる者は少ないだろうし、おそらくは同盟を結んでもらえる。
だが、これは同時に問題がある。同盟を申し出た後で、女が殺し合いに反対していると分かった場合だ。
予想の段階でしかないが、あの女が脱出を目指している場合、殺人者は容赦なく殺していくだろう。
銃器の扱いに長けていることからも、命のやり取りが当たり前の世界で生きていたことが窺える。
そしてこの場合は、殺し合いに乗っていない無力な女子高生を演じているのがベストという事になる。
勿論精神的な部分まで無力という事を悟られてはいけない。それだと足手纏いとして始末される恐れがある。
あくまで戦闘方面での無力さを装い、指揮官や頭脳労働者としては優秀であることをアピールしていく必要がある。
予想の段階でしかないが、あの女が脱出を目指している場合、殺人者は容赦なく殺していくだろう。
銃器の扱いに長けていることからも、命のやり取りが当たり前の世界で生きていたことが窺える。
そしてこの場合は、殺し合いに乗っていない無力な女子高生を演じているのがベストという事になる。
勿論精神的な部分まで無力という事を悟られてはいけない。それだと足手纏いとして始末される恐れがある。
あくまで戦闘方面での無力さを装い、指揮官や頭脳労働者としては優秀であることをアピールしていく必要がある。
「貴女はこの殺し合いに巻き込まれる前、銃に慣れ親しんだ職業に就いておられたのですか?」
要するに、この状況は命がけの二択問題なのだ。
相手の女は殺し合いに乗っているのかいないのか。真逆を選べば私は死に、正解すれば仲間を得る。
そこに私の意思など介入しない。冷静に状況を分析して、正解を選ぶだけだ。
(……卑怯者だな、私は)
カズに十波、そして朱里。心から大切に思っている友人達と戦うのかどうかすら、自分で決めることを放棄した。
十波が試験で鉛筆を転がすように、私は大事な選択の主体を第三者に委ねたのだ。
だが、それでいい。私は弱い。まだまだ非情に徹しきれない程に弱い。
だから私は“あたし”に対して言い訳をする。『あの女に合わせた結果こうなったのだ』と。
『あの女が望む私を演じた結果がこれなのだ』と。
私は再び、“あたし”の意思を押しこめる。十波と別れたあの時のように、二度と“あたし”が蘇らないように。
要するに、この状況は命がけの二択問題なのだ。
相手の女は殺し合いに乗っているのかいないのか。真逆を選べば私は死に、正解すれば仲間を得る。
そこに私の意思など介入しない。冷静に状況を分析して、正解を選ぶだけだ。
(……卑怯者だな、私は)
カズに十波、そして朱里。心から大切に思っている友人達と戦うのかどうかすら、自分で決めることを放棄した。
十波が試験で鉛筆を転がすように、私は大事な選択の主体を第三者に委ねたのだ。
だが、それでいい。私は弱い。まだまだ非情に徹しきれない程に弱い。
だから私は“あたし”に対して言い訳をする。『あの女に合わせた結果こうなったのだ』と。
『あの女が望む私を演じた結果がこれなのだ』と。
私は再び、“あたし”の意思を押しこめる。十波と別れたあの時のように、二度と“あたし”が蘇らないように。
☆ ★ ☆ ★ ☆
情報を引き出すためのコツは、会話の主導権を握ることだ。
当たり前のことではあるが、先手を取ることに失敗すると主導権を奪い取るのに苦労する。
この殺し合いの場においてもそれは変わらない。何度も言うが、どう立ちまわるにしても情報は必要なのだ。
話の通じる相手から色々と聞き出しておきたい。
そして、更に言うのならば同盟も結んでおきたいところだ。
参加者を殺して回るにしろ首輪の解除を目指すにしろ、協力者が必要である。
ただしここでも問題は出てくる。同盟を結んでしまったら、それ以後スタンスを変えることはほぼ不可能という事だ。
仲間集めを進めてから一人裏切って殺して回るのは無理があるし、逆に協力者と散々殺して回っておいて脱出を目指すグループには入れないだろう。
当たり前のことではあるが、先手を取ることに失敗すると主導権を奪い取るのに苦労する。
この殺し合いの場においてもそれは変わらない。何度も言うが、どう立ちまわるにしても情報は必要なのだ。
話の通じる相手から色々と聞き出しておきたい。
そして、更に言うのならば同盟も結んでおきたいところだ。
参加者を殺して回るにしろ首輪の解除を目指すにしろ、協力者が必要である。
ただしここでも問題は出てくる。同盟を結んでしまったら、それ以後スタンスを変えることはほぼ不可能という事だ。
仲間集めを進めてから一人裏切って殺して回るのは無理があるし、逆に協力者と散々殺して回っておいて脱出を目指すグループには入れないだろう。
とはいえ、最初に遭遇した人間を逃がすつもりは更々ない。
亀田の目的が殺し合いな以上、スタート直後に孤立するような配置にはしないだろう。
それはつまり、この機会を逃すと単独行動を取っていて尚且つ話し合いに応じる相手とはまず会えないということだ。
勿論可能性は0ではないが、そんな意味のない博打をするほど馬鹿ではない。
仲間を作ることを最優先にすると、スタンスを自分で決められなくなる? 上等じゃないか。
むしろ願ったり叶ったりだ。どうせ自分一人ではどうすべきか見つからなさそうだった所だ、私がどう動くかは今から出会う人間に決めてもらおうじゃないか。
亀田の目的が殺し合いな以上、スタート直後に孤立するような配置にはしないだろう。
それはつまり、この機会を逃すと単独行動を取っていて尚且つ話し合いに応じる相手とはまず会えないということだ。
勿論可能性は0ではないが、そんな意味のない博打をするほど馬鹿ではない。
仲間を作ることを最優先にすると、スタンスを自分で決められなくなる? 上等じゃないか。
むしろ願ったり叶ったりだ。どうせ自分一人ではどうすべきか見つからなさそうだった所だ、私がどう動くかは今から出会う人間に決めてもらおうじゃないか。
(……まったく。こんな無様な状態じゃ、八神君に会わせる顔がないわね)
支給された小型の機械を手に、思わず苦笑を浮かべてしまう。
認めたくないものね、己の弱さ故に犯すであろう過ちというものは。
正直この島で八神君や茜とは会いたくないと思ってしまう。こんな無様な私は見せたくない。
彼らが私の存在に気付かない内に、二人のために出来ることを済ませておきたい。
「……映画館、か」
支給されたのは劣化版探知機。
劣化版と名が付けられているということは、劣化していない探知機が誰かに配られているということだろうか?
それとも、探知機の存在は強力すぎるから劣化したものしかないということだろうか?
もしも前者ならば、通常の探知機を手に入れたいところだ。
現在所持している劣化版探知機は、一番近い参加者のいる方角とその距離を文字で表示する機能しかない。
要するに、仲間が出来たらそいつにしか反応しなくなるため、もう間もなく不要な道具になってしまうのだ。
更に方角しか出てこないため定期的にコンパスで方角を確認しなくてはいけないうえに、木や建物で直進できなくともお構いなしで最短距離を示してくる。
支給された小型の機械を手に、思わず苦笑を浮かべてしまう。
認めたくないものね、己の弱さ故に犯すであろう過ちというものは。
正直この島で八神君や茜とは会いたくないと思ってしまう。こんな無様な私は見せたくない。
彼らが私の存在に気付かない内に、二人のために出来ることを済ませておきたい。
「……映画館、か」
支給されたのは劣化版探知機。
劣化版と名が付けられているということは、劣化していない探知機が誰かに配られているということだろうか?
それとも、探知機の存在は強力すぎるから劣化したものしかないということだろうか?
もしも前者ならば、通常の探知機を手に入れたいところだ。
現在所持している劣化版探知機は、一番近い参加者のいる方角とその距離を文字で表示する機能しかない。
要するに、仲間が出来たらそいつにしか反応しなくなるため、もう間もなく不要な道具になってしまうのだ。
更に方角しか出てこないため定期的にコンパスで方角を確認しなくてはいけないうえに、木や建物で直進できなくともお構いなしで最短距離を示してくる。
そんな不便な探知機が示しているのは目の前の建物。
どうやら今回反応している人間は映画館に潜んでいるようだ。
表示された距離が一定速度でしか減らない事を見るに、相手は動いていないらしい。
状況を整理しているのか、怯えて立て篭もっているのか……
後者の場合は、快楽殺人犯と同じく「話の通じない相手」として人が来る前に速やかに『処理』した方がいいかもしれない。
そして考えたくないが、今反応しているのが死体だった場合、今後の方針を見直す必要が出てきてしまう。
序盤から仲間を得るのに失敗しただけでなく、この探知機は死体にも反応するため仲間を探すことが困難になる。
孤立したままで八神君の生還のために出来ることを考えねばならない。
どうやら今回反応している人間は映画館に潜んでいるようだ。
表示された距離が一定速度でしか減らない事を見るに、相手は動いていないらしい。
状況を整理しているのか、怯えて立て篭もっているのか……
後者の場合は、快楽殺人犯と同じく「話の通じない相手」として人が来る前に速やかに『処理』した方がいいかもしれない。
そして考えたくないが、今反応しているのが死体だった場合、今後の方針を見直す必要が出てきてしまう。
序盤から仲間を得るのに失敗しただけでなく、この探知機は死体にも反応するため仲間を探すことが困難になる。
孤立したままで八神君の生還のために出来ることを考えねばならない。
だが、それらは要らぬ心配に終わった。
「動かないで」
映画館にいたのは、どこかの制服を着た見知らぬ少女。
素人の射撃では当たらないだろう位置まで姿勢を低くし近づいてから、椅子に並べられた支給品の内で一番狙いやすかったペットボトルを撃ち抜く。
八神君やその同僚と比べれば大したことは無いのだろうが、少なくとも一般人の少女よりは銃の扱いに長けているという自信があった。
「下手な動きをしたら、そのペットボトルみたいになるわよ」
少なくとも先手は取れた。会話の主導権はこちらが握っていると言えるだろう。
問題は少女が怯えるだけの存在であった場合だ。
有益な情報もなく、ただ漠然と殺し合いをしたくないというだけの存在なら、せいぜい弾避けくらいにしか使えない。
だが、先程も言ったとおり先述の内容は全て要らぬ心配だった。少女が怯えていたら、という仮定も含めて完全に要らぬ心配だったのだ。
むしろ、彼女を侮っていたことを反省しなくてはいけない。
「なるほど……ふふ、大した腕だ」
少女は、笑った。拳銃を突きつけられた状況で笑ったのだ。
相手も未だに拳銃を向けている。もしや、彼女は拳銃の腕前に自信でもあるのだろうか?
それ故に、この余裕が出るのだろうか?
「貴女はこの殺し合いに巻き込まれる前、銃に慣れ親しんだ職業に就いておられたのですか?」
「動かないで」
映画館にいたのは、どこかの制服を着た見知らぬ少女。
素人の射撃では当たらないだろう位置まで姿勢を低くし近づいてから、椅子に並べられた支給品の内で一番狙いやすかったペットボトルを撃ち抜く。
八神君やその同僚と比べれば大したことは無いのだろうが、少なくとも一般人の少女よりは銃の扱いに長けているという自信があった。
「下手な動きをしたら、そのペットボトルみたいになるわよ」
少なくとも先手は取れた。会話の主導権はこちらが握っていると言えるだろう。
問題は少女が怯えるだけの存在であった場合だ。
有益な情報もなく、ただ漠然と殺し合いをしたくないというだけの存在なら、せいぜい弾避けくらいにしか使えない。
だが、先程も言ったとおり先述の内容は全て要らぬ心配だった。少女が怯えていたら、という仮定も含めて完全に要らぬ心配だったのだ。
むしろ、彼女を侮っていたことを反省しなくてはいけない。
「なるほど……ふふ、大した腕だ」
少女は、笑った。拳銃を突きつけられた状況で笑ったのだ。
相手も未だに拳銃を向けている。もしや、彼女は拳銃の腕前に自信でもあるのだろうか?
それ故に、この余裕が出るのだろうか?
「貴女はこの殺し合いに巻き込まれる前、銃に慣れ親しんだ職業に就いておられたのですか?」
「……………ッ!」
やられた。それが最初に思った事だった。
彼女が余裕を見せた原因を考えたりなどせず、さっさと質問に移ればよかったのだ。
どんな些細な事からでも情報を引き出そうとする情報屋の性が仇となった。
先に拳銃を突きつけたのはこちらなのに、気が付けば向こうが質問する側に立っている。
(なるほど……どうやらただの女子高生じゃないみたいね)
だが、完全敗北というわけではない。おかげで相手の少女が同盟を結ぶのに申し分ない人間であることを理解できた。
その代償は決して安くないが、この情報を得られたのは大きい。
私が引き出さねばならない情報が、『彼女がこの殺し合いでどう動くつもりなのか』だけになったのだから。
これさえ分かれば、私も彼女と同じスタンスを取り同盟を結ぶ事が出来る。
他の情報を引き出すのはそれからでも惜しくない。いや、むしろ距離感を縮めた方が情報は引き出しやすい。
彼女が余裕を見せた原因を考えたりなどせず、さっさと質問に移ればよかったのだ。
どんな些細な事からでも情報を引き出そうとする情報屋の性が仇となった。
先に拳銃を突きつけたのはこちらなのに、気が付けば向こうが質問する側に立っている。
(なるほど……どうやらただの女子高生じゃないみたいね)
だが、完全敗北というわけではない。おかげで相手の少女が同盟を結ぶのに申し分ない人間であることを理解できた。
その代償は決して安くないが、この情報を得られたのは大きい。
私が引き出さねばならない情報が、『彼女がこの殺し合いでどう動くつもりなのか』だけになったのだから。
これさえ分かれば、私も彼女と同じスタンスを取り同盟を結ぶ事が出来る。
他の情報を引き出すのはそれからでも惜しくない。いや、むしろ距離感を縮めた方が情報は引き出しやすい。
「ええ、そうよ。物騒な国に行ったりもするからね」
嘘は吐かない。嘘は後々面倒な事になりかねない。『嘘ではないが、核心には迫らない内容』を口にすることが大事だ。
この少女の口振りからして、何かを探っている事は間違いない。
探っているのは十中八九『こちらが殺し合いに乗っているか否か』だ。
直接その事を聞かなかったのは、会話の中でこちらのスタンスを探り、自分と違うスタンスだと分かり次第発砲する気だからといったところか。
相手が銃の腕前に自信があったとしても、こちらもそれなりに銃の扱いに慣れている事は分かっている。
とすれば、発砲するであろうタイミングをわざわざ読まれるような質問は避ける筈だ。
嘘は吐かない。嘘は後々面倒な事になりかねない。『嘘ではないが、核心には迫らない内容』を口にすることが大事だ。
この少女の口振りからして、何かを探っている事は間違いない。
探っているのは十中八九『こちらが殺し合いに乗っているか否か』だ。
直接その事を聞かなかったのは、会話の中でこちらのスタンスを探り、自分と違うスタンスだと分かり次第発砲する気だからといったところか。
相手が銃の腕前に自信があったとしても、こちらもそれなりに銃の扱いに慣れている事は分かっている。
とすれば、発砲するであろうタイミングをわざわざ読まれるような質問は避ける筈だ。
相手のスタンスを読み間違えれば私に待つのは目の前の少女との殺し合い。少女の腕にもよるが、まず無事では済まないだろう。
だが、すぐさま撃たないということは同じスタンスならば同盟を結びたいと考えている筈だ。
「そういう貴女はどうなの? どこかの学生みたいだけど」
再び会話の主導権を握ろうと、こちらから質問を切り返す。
何としてでも情報を集め、相手のスタンスを見極める。そして彼女と同盟を結び、八神君と茜のためにやれることを何でもする。
それが私の出した答え。
「そういえば学生服の子が何人かいたけど、貴女の知り合いもいるのかしら?」
腹の探り合いならば、負ける気はしない――!
だが、すぐさま撃たないということは同じスタンスならば同盟を結びたいと考えている筈だ。
「そういう貴女はどうなの? どこかの学生みたいだけど」
再び会話の主導権を握ろうと、こちらから質問を切り返す。
何としてでも情報を集め、相手のスタンスを見極める。そして彼女と同盟を結び、八神君と茜のためにやれることを何でもする。
それが私の出した答え。
「そういえば学生服の子が何人かいたけど、貴女の知り合いもいるのかしら?」
腹の探り合いならば、負ける気はしない――!
☆ ★ ☆ ★ ☆
二人の女がそこにいた。
二人の女はとても強い。片方は情報収集のプロフェッショナルで、もう片方は指導者としてのカリスマを持つ。
彼女達ならば、その優れた能力で首輪の解除に大きく貢献するかもしれない。
だが同時に、彼女達だからこそ、それがどれほど無謀な事かをよく分かっていた。
二人の女はとても強い。片方は情報収集のプロフェッショナルで、もう片方は指導者としてのカリスマを持つ。
彼女達ならば、その優れた能力で首輪の解除に大きく貢献するかもしれない。
だが同時に、彼女達だからこそ、それがどれほど無謀な事かをよく分かっていた。
二人の女は、とても強い。だけど、強さの裏にどうしようもなく弱い自分を抱えている。
一人は、手に入れたばかりの家族のせいで。
一人は、手放したばかりの恋人のせいで。
彼女達は、生き残る可能性が高い手段を取りかねている。彼女達は、どうすべきか迷っている。
一人は、手に入れたばかりの家族のせいで。
一人は、手放したばかりの恋人のせいで。
彼女達は、生き残る可能性が高い手段を取りかねている。彼女達は、どうすべきか迷っている。
そして、二人の弱者は同じ結論に行き当たった。
どう転ぶにせよ、仲間の存在は貴重である。そして目の前の人物は、すぐに攻撃に移らなかった点から見て、話の通じぬ相手ではない。
ならばいっそ自分のスタンスを相手に合わせてしまおうと、そう考えた。
選択の主体を他者に委ねるという逃げでしかないことくらい、二人とも自覚している。
そして、そうでもしないと決断するのは難しいであろう程に己が弱いことも自覚している。
どう転ぶにせよ、仲間の存在は貴重である。そして目の前の人物は、すぐに攻撃に移らなかった点から見て、話の通じぬ相手ではない。
ならばいっそ自分のスタンスを相手に合わせてしまおうと、そう考えた。
選択の主体を他者に委ねるという逃げでしかないことくらい、二人とも自覚している。
そして、そうでもしないと決断するのは難しいであろう程に己が弱いことも自覚している。
故に二人は考える。
如何にして相手のスタンスを見極めるかを。
如何にして自分のスタンスを悟られぬようにするのかを。
如何にして相手の情報を引き出すのかを。
彼女達は、言うならばジョーカー。ポーカーにおけるジョーカーなのだ。
ジョーカーが圧倒的な強さを誇る理由は、変幻自在な所にある。
状況と相手によって、その姿を自由に変える。それこそがジョーカーの強みなのだ。
そして、今の状況での最善の手は、まさしくジョーカーになることなのだ。
相手と状況に合わせ、自分の身の振り方を変えることなのだ。
如何にして相手のスタンスを見極めるかを。
如何にして自分のスタンスを悟られぬようにするのかを。
如何にして相手の情報を引き出すのかを。
彼女達は、言うならばジョーカー。ポーカーにおけるジョーカーなのだ。
ジョーカーが圧倒的な強さを誇る理由は、変幻自在な所にある。
状況と相手によって、その姿を自由に変える。それこそがジョーカーの強みなのだ。
そして、今の状況での最善の手は、まさしくジョーカーになることなのだ。
相手と状況に合わせ、自分の身の振り方を変えることなのだ。
二人の女が睨み合う。強くもあり弱くもある、二枚のジョーカーが睨み合う。
彼女達は知らない。目の前にいるのも、自分と同じくスタンスを持たないジョーカーであるということを。
求める答えが存在しないと知らぬままに、ジョーカー二枚の腹の探り合いが今、始まる。
彼女達は知らない。目の前にいるのも、自分と同じくスタンスを持たないジョーカーであるということを。
求める答えが存在しないと知らぬままに、ジョーカー二枚の腹の探り合いが今、始まる。
【G-02/映画館/一日目深夜】
【リン@パワプロクンポケット8】
[参戦時期]:茜の前から姿を消した数年後、EDよりも前
[状態]:健康
[装備]:グロッグ19(14/15)
[道具]:劣化版探知機、支給品一式
[思考・状況]
1:紫杏とのやり取りで紫杏のスタンスを見極め、自分のスタンスもそれに合わせる。そして紫杏と同盟を結ぶ
2:八神と茜は何としてでも生き残らせる
3:探知機が存在するのなら入手しておきたい
【リン@パワプロクンポケット8】
[参戦時期]:茜の前から姿を消した数年後、EDよりも前
[状態]:健康
[装備]:グロッグ19(14/15)
[道具]:劣化版探知機、支給品一式
[思考・状況]
1:紫杏とのやり取りで紫杏のスタンスを見極め、自分のスタンスもそれに合わせる。そして紫杏と同盟を結ぶ
2:八神と茜は何としてでも生き残らせる
3:探知機が存在するのなら入手しておきたい
【神条紫杏@パワプロクンポケット10】
[参戦時期]:紫杏ルート最終イベントで主人公が「それでも愛してる」を選んだ後、EDよりも前
[状態]:健康
[装備]:コルトガバメント(7/7)
[道具]:支給品一覧表、支給品一式
[思考・状況]
1:リンとのやり取りでリンのスタンスを見極め、自分のスタンスもそれに合わせる。そしてリンと同盟を結ぶ
2:出来ることならカズと朱里、十波は死んでほしくない。が、必要とあらば……
3:出来れば安全な場所で支給品一覧の小冊子を読破したい
[備考]
1:この殺し合いはジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています
[参戦時期]:紫杏ルート最終イベントで主人公が「それでも愛してる」を選んだ後、EDよりも前
[状態]:健康
[装備]:コルトガバメント(7/7)
[道具]:支給品一覧表、支給品一式
[思考・状況]
1:リンとのやり取りでリンのスタンスを見極め、自分のスタンスもそれに合わせる。そしてリンと同盟を結ぶ
2:出来ることならカズと朱里、十波は死んでほしくない。が、必要とあらば……
3:出来れば安全な場所で支給品一覧の小冊子を読破したい
[備考]
1:この殺し合いはジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています
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| GAME START | リン | 022:良きも悪きも思い出だ |
| GAME START | 神条紫杏 | 022:良きも悪きも思い出だ |