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日中歴史研究 認識の溝埋める一歩に(2月4日)

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日中歴史研究 認識の溝埋める一歩に(2月4日)



 日中の有識者でつくる歴史共同研究委員会が報告書を公表した。

 公表時期が予定より1年以上も遅れるなど作業には曲折があった。

 だが過去の日本による侵略が中国側にわだかまりの感情を残す中で、その不幸な時期も対象にして専門的な議論を積み重ねたことは意義深い。取り組みを評価したい。

 きっかけとなったのは小泉純一郎元首相の靖国神社参拝だ。

 中国側の猛反発で日中関係は冷え込み、首脳会談も途絶えた。打開策として日本側が提案し、2006年に当時の安倍晋三首相と胡錦濤国家主席が合意した。

 歴史問題が両国関係発展の妨げとならぬよう歴史認識の共有を目指し、少しでも溝を狭めていく-。目的はそこにあったと言える。

 双方から10人ずつ委員が選ばれ、「古代・中近世史」と「近現代史」の2分科会で研究を続けてきた。

 報告書は約550ページ。各時代について日本側と中国側の論文が掲載された。事実認識をめぐって見解が分かれたテーマも少なくない。

 たとえば「南京大虐殺」の犠牲者数について中国側が「30万人以上」としたのに対し、日本側は「20万人を上限として4万人、2万人などの推計がある」と指摘した。

 こうした問題で認識の隔たりを埋めていくのは容易ではあるまい。だが歴史問題の克服には、ともに歴史を直視して、一歩ずつ事実に迫っていく作業が欠かせないだろう。

 その意味で天安門事件などが含まれる戦後史の部分が公表されなかったのは極めて残念だ。

 国内世論への影響を懸念した中国側が強く非公表を求めた結果だというが、国民レベルで歴史的事実に向き合う姿勢が大切ではないか。

 当初は日中平和友好条約締結30周年の08年中に行われる予定だった報告書自体の公表も、中国側の要請で度々延期され大幅遅れとなった。

 大事なことは政治と距離を置いて学術的な論議を尽くし、得た知見は公にすることだ。そうでなくては両国の信頼関係は深まらず、共同研究の目的も損なわれかねない。

 中国側にはこうした基本に立って共同作業に当たってもらいたい。両国は第2期の研究を続けることで合意している。ぜひ継続して戦後史部分の公表を実現するよう望みたい。

 日本は02年から韓国とも共同研究を行っている。地道な取り組みを重ねて未来志向の関係を強化することなしに、鳩山由紀夫首相が掲げる東アジア共同体構想の前進もない。

 成果を国民と共有していくため、議論の場を設けるなど環境整備を進めるのも政府の仕事である。



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