PARについての所見
"PAR"とは、"Pokemon Attribute Reconstruction-system"、すなわち「ポケモン
質性再構築システム」の頭文字を取った略称である。
"PAR"とは、広義には様々な形態が存在し、一概にその内容を語りつくすことは
出来ないが、最も一般的な形態は、ポケモンの神経系と接続できるチューブと、
制御用コンピュータという組み合わせである。
このチューブをポケモンの肉体に取り付け、コンピュータでポケモンのデータの
処理を行う、と言うのがPARの使い方であるらしいが、具体的使用法は後述するWII
条約や紙面の都合上、割愛する。
本来PARとは、ポケモンのDNAを読み取り、それをコンピュータ上にフィードバックし
仮想的に操作することにより、ポケモンの様々な成長の可能性をシミュレートする
学術研究用に開発された装置であった、と言われるがその出自は定かではない。
「ミラージュ・システム」というシステムを基盤としてシルフカンパニーが極秘裏に
開発したという説が最も有力とされている。
中には、PARはロケット団のような非合法組織が、組織の子飼いのプログラマーに
開発させたツールであり、それが何者かを介して学会に知られ、そこから学術研究に
転用されるようになった、とする説さえ存在する。
無論、これだけではPARは害悪とは成りえないが、ポケモンセンターなどにおける
パソコンを見れば分かる通り、IT技術の発達と共に、ポケモンは電子データとの
親和性が極めて高い。
これが、現状のPAR問題の唯一にして最大の根源である。
(なお、ポケモンの電子データ化についてのより深い知見については、最近シンオウ
地方で刊行された論文「
フワンテの習性に見るバンアレン帯とポケモンの電子化の
関連性」を参照のこと)
また余談ではあるが、モンスターボールはこのポケモンの電子データ化技術に
より、成立していると言う噂もある。
確かにポケモンを電子データ化し、それをモンスターボール内に記録するという
仮説が正しければ、
カビゴンや
ハガネールのような巨大かつ重量級のポケモンを
難なく持ち運び出来るようになることも説明できる。
しかしモンスターボールの製法は特許問題などが複雑に絡み、また
シルフカンパニーも情報公開に消極的であるため、これらの仮説は憶測の域を出ない。
本題に戻ると、PARはこのポケモンに対し、電子的干渉が可能な仕様となっている
ことが問題視されている。
パソコンなどに収納されている状態のポケモンは、電子データとしてコンピュータ
のメモリ上に存在するが、これはつまり電子データに還元されたポケモンのDNAを、
直接コンピュータによる電子的操作で、操作者が恣意的に書き換えることが可能
であるという事実に結び付く。
すなわち、PARを用いればポケモンの姿形はもちろん、技や個体の身体能力さえも
自在に操作出来るという結論が導き出されるわけである。
ポケモンの遺伝子の恣意的操作による問題は、各地の研究所で報告されている。
タマムシ大学携帯獣学部携帯獣生態学科が、セキチクシティのサファリパークの
一区画を貸与してもらい行った実験では(論文「PARによる遺伝子改変を受けた
ポケモンの生態学的動向の報告」を参照のこと)、PARによる遺伝子改変を受けた
ポケモンの異常な動向が数多く見られた。
PARによる遺伝子改変を受けたポケモンはまた、自然のままのポケモンの生態系への
影響も甚大である。
上記のセキチクシティでの実験の際、オドシシと
グラエナをそれぞれ一定数放った
状態で安定していた生態系に、PARによる遺伝子改変を施した一匹の
ゲンガーを
放っただけで、数ヵ月後にはオドシシもグラエナもほとんどが絶滅するという、
極めて凄まじい影響が見られた。
なお、このゲンガーは通常の個体を超える能力及び凶暴性をおびていたため、通常の
ポケモンでの捕獲は困難であり、同じくPARを施したフーディンを用いてようやく
捕獲出来たことを付記しておく。
これら二体のポケモンは現在タマムシ大学の保管庫に存在するが、特別な許可なくして
取り出すことはおろか、保管庫に近付くことさえも許されない。
更に二体の使用にはポケモンリーグの発行する認可証が必要であり、幸か不幸か死蔵
も同然となっている。
またPARの副作用である、ポケモンの病気にも触れないわけにはいかない。
PARによりポケモンに起こる病気の症状は様々であり、最も有名なものが「アネデパミ
症候群」である。これら以外にもPARにより引き起こされる病状は存在するが、現在
学会ではPARにより引き起こされる諸般の病気を、「バグ」と総称している。
この「バグ」の中でも、特に重篤な症状のものは影響も凄まじく、中にはあらゆる生物
を冒す、空気感染する超即効性致死ウイルスを周囲に撒き散らすという、信じられない
ほど重大なものもある。
しばしばアメリカなどでは、ポケモンを用いた特殊部隊や、場合によっては戦術級核弾頭
により、町一つを灰にせねばならないほどの大規模バイオハザードがまれに起こるが、
その中の何割かはこの致死ウイルスが原因となったであろうことは想像に難くない。
再び余談ではあるが、このようにしてアメリカ軍が灰にした町について、インターネット
上では様々な噂話が飛び交っている。
その町はネット上では「ラクーンシティ」などと通称され、そこで「ゾンビポケモン」
なる新種のポケモンが発見された、などと言う噂がまことしやかに伝わっているが、
現状ではこれはただの流言飛語のようである。
さて、このような様々な危険性を秘めたPARであるが、PARの存在が明るみに出るや
否や、当局は様々な対策を打ち出した。
その先鋒となったのが、有名なWII条約である。
WII条約とは、すなわち"World Irregular Item treaty"の頭文字を
取った略号で、日本語では「世界不法品目条約」の意である。
これは
ドンファンの象牙や
カモネギの肉などの貴重品や、ポケモンリーグで使用を
禁じられている薬物などのポケモン関連の不法品を取り締まり、ポケモンの生態や
健康を過度に脅かす危険を排除するを目的に作成された条約である。
その条項には様々な既製品の品目が挙げられており、無論我が国もこの条約を批准
している。
このWII条約の下、現在ポケモンリーグではPARの使用が発覚した場合、そのトレーナー
のポケモンリーグ出場権および、ジムリーダーへの挑戦権を永久剥奪することを決定
している。
またPARの使用は国内法の「PAR取締法」によっても禁止されており、同法に違反した
場合、原則30年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金を科される。
もしこれが故意…すなわちPARの悪影響を知りながらも用いた場合は、50年以上もの
懲役や、場合によっては極刑が求刑されることもある。
ポケモンリーグの科している罰則は、トレーナーにあるまじき卑劣な戦法を用いた
罰則という色合いが強いが、国内法による罰則はPARの危険性に起因しているがゆえ
のものと言えよう。
たかがポケモンの遺伝子改変と侮ることは出来ない。
PARの乱用が進めば、いつか「ラクーンシティ」の噂話に出てきたアメリカの某都市の
ように、政府の判断で灰燼に帰す羽目になる町が我が国で出ないと断言は出来ないのだ。
「バグ」にかかったポケモンの撒き散らす致死性ウイルスが、この国に蔓延したなら
どれほどの惨事になるか、筆舌に尽くし難いものとなるであろう。
現在のところ「バグ」の致死性ウイルスの軍事転用は不可能であるということだけが、
不幸中の幸いと言えよう(少しでもサンプルが容器から漏れれば、取り扱う研究員が
次々死ぬのだから危険過ぎて研究できない、という言い方が正しいのだが)。
ポケモントレーナーとして恥じるべき行為でもあり、また最悪の場合上記のような大惨事
を引き起こすPARは、しかしながら根絶は出来ず裏市場での売買も未だに盛んであると聞く。
ロケット団やギンガ団などと言った非合法組織が、組織の資金源としてPARを取り扱うケース
も散見され、そしてそれを非合法と知りながらも、購入する者も後を絶たない。
当局もこの現状を重く見ており、PARによる遺伝子改変を行ったポケモンを検知する装置の
開発も急ピッチで進んでいる。
現在ポケモンリーグや、場合によってはジムリーダーとの戦いの前には、使用ポケモン全て
に遺伝子チェックが行われている。
しかしながら次々に生み出される新型のPARは、遺伝子読み取り装置にも検知できない高度
な偽装を施せるものも次々発表されており、現在PARと遺伝子読み取り装置の開発状況は
いたちごっこの様相を呈しているのもまた事実である。
スポーツマンシップに反し、大惨事の引き金を引きかねない上、買えば非合法組織に塩を
送るような品物であるPARは、決して一般人が購入してよい代物ではないのである。
この報告を見る者が、PARの使用を強く自制し、健全かつ安全なポケモンとの暮らしを
送ることを願いながら、筆を置く事とする。
最終更新:2006年11月03日 23:44