地上

第二部最終話にて、ソナード島が嵐の結界に包まれて空を飛ぶ浮遊島であることが判明した。
そのソナードから見下ろす眼下の地表は、その大半が焼き尽くされた灰白の大地である。

最後の大戦

ただ「最後の大戦」と呼ばれた過去の戦乱により、世界は焼き尽くされた。
何が起こったか正確に知り得るものは、この世界に生きる人類にはいない。
研究者たちによれば、使われるべきではない「抑止力の兵器」が使われて、地上からエーテルの大半を吹き飛ばしたのだという。

地上の環境

エーテルの喪失により自然環境は極端に悪化し、大地は白く灰じみた砂に覆われている。
灰白の砂漠は人類の生存に適さず、生き残った者たちは狭小な生存可能域を巡って争いを繰り返した。
暗黙の了解として、生存可能域を戦場にすることは極力避け、砂漠を主戦場としていたようだ。
数百年をかけて復興した一部地域には森と言える域まで回復した自然もあるが、見下ろす限りでは地表に染みついたコケ程度のものだ。

帝国

グラヴァド帝国は焼き尽くされたエンガ大陸を支配しており、現存する諸大陸すべてに侵攻している。
「最後の大戦」から百年以内に成立したこの侵略国家は、ヒューマンを枢軸とし、異種族に対し団結して戦い、勝利してきた。
地上のヒューマンは内包エーテルを外に出す能力が低下しており*1、魔法適正が低い。
エルフやユアンティのように内包エーテル量が元々多い種族、生存域を確保しエーテル量を多く保ったゴブリノイドやオーク、生存性が高い変身種族に対し、彼らは団結と数の力で立ち向かい、ついにはその大半を打ち倒した。

帝国のヒューマン

地上のヒューマンは低い魔法適正を補うため、あらゆる手段を使う。
武術と技術が彼らの精髄であり、また団結と統制、そして信仰が彼らの武器である。
彼らの思想が現れる制度の一つが「異種族恩赦」制度である。
ヒューマン以外の種族*2は、帝国人にとっては大敵であり、帝国の国教である聖ソーマ教会が異端に認定している。
故に排除すべき存在であり、戦場において鏖殺されることも珍しくない。
だが、生き延びた異種には「恩赦」が下される。
すなわち「ヒューマンのために戦争の尖兵となり、そこで死ぬことを赦す」のである。
帝国に於いて、異種族は戦場あるいは軍務の中にのみ生きることを許される。適正はあれど、例外はない。

聖ソーマ教会

帝国の国教は帝国の初代皇帝にして現人神と呼ばれた“神人”ソーマを崇めるものである。
ソーマは実在すら怪しまれる英雄だが、帝国においては何よりも偉大な神として崇拝されている。
また、クレリックやパラディンは焼き尽くされた地上においても代わらず発現し、彼らは時にソーマの声を聞くという。
故に帝国においては信仰の力は他の何にも増して信頼されている。

差別

異種族はヒューマンに比してエーテル量が多く、魔法適正に優れることは上に述べた。
故にヒューマンは彼らを恐れ、迫害する。帝国に生きる異種族にとって、帝国の社会は苛烈である。
また、あらゆる苦難を越えてヒューマンが生きる帝国を築いたソーマを心の支えとする信仰は、同時に異種族を排斥する思考にも繋がっている。
聖ソーマ教会において、異種族はすべて怨敵である。異種族恩赦は聖ソーマ教会が認めた制度だが、信仰者にとって憎悪が消えるわけではない。
また、異種族の豊富な内包エーテルによる魔法能力も帝国臣民の潜在的な恐怖心を煽り、差別意識を強くさせている。

魔力炉

近代において、帝国は物質からエーテルを取り出す「魔力炉」を発明・発展させた。
当初は大地の地脈そのものからエーテルを湧出する大規模なものしか存在しなかったが、後に物質そのものをエーテル変換する小型炉が開発された。
そして『アルケミア重合物質群』の発見により携帯サイズの超小型炉まで縮小し、帝国人にも外的魔力供給による呪文の発動が可能になったのである。
だが、燃料となるアルケミア重合物質の生産には困難があり、一般化には至っていない。

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最終更新:2021年07月21日 22:08

*1 持ち合わせが少ないので放出すると枯渇して最悪死ぬ。

*2 帝国社会においては「異種族(ゼノ)」と表現されることが多い。