アイテム番号:PTCO-196

収容レベル:1
伝播レベル:1
変異レベル:4
解決レベル:3
収容手順
PTCO-196は、第一保管庫の小型通常物品保管庫に保管されています。
PTCO-196の持ち出し及び実験は、フェーズⅡまでの変異という条件であればレベル3クリアランス以上の職員の監督許可で認められます。
フェーズⅢ以降に変異させる実験は現在認められていません。
PTCO-196の持ち出し及び実験は、フェーズⅡまでの変異という条件であればレベル3クリアランス以上の職員の監督許可で認められます。
フェーズⅢ以降に変異させる実験は現在認められていません。
変異体保護手順
PTCO-196の影響を受けた変異体のうち、フェーズⅡまでのものをPTCO-196-A、フェーズⅢ以降のものをPTCO-196-Bと分類します。
PTCO-196-Aは、影響過程で失われた記憶を除きおよそ半日で人間の姿に戻ることが確認されているため、戻り次第一般的な回復処置を行ってください。
PTCO-196-Bは、PTCO-196の影響を取り除く手段が確立されるまで、変異レベル4向け保護エリア・水棲哺乳類区域にて標準保護手順に従って飼育してください。
説明
PTCO-196はカワウソの尻尾を模ったアクセサリーです。長さは35cm程度で、使用されている毛皮を分析した結果、ニホンカワウソのものと断定されました。
PTCO-196の異常性は、人間がこれを自身の頭に触れさせたときに発揮されます。また、使用回数に応じて以下のフェーズが進行します。
進行度 | 回数 | 効果 | 変異 |
---|---|---|---|
フェーズⅠ | 5回以下 | 使用者は自身の1~2週間前までの忘れたい記憶を忘れます。 | 人間を逸脱する変異は確認されません。 |
フェーズⅡ | 6回~35回 | 使用者は自身の1~2年前の忘れたい記憶を忘れます。 | 使用回数に応じて歯と爪が発達し、16回を超えた辺りからは頭部が変形し、 耳が移動して丸くなっていきカワウソの鼻とヒゲも発現します。 |
フェーズⅢ | 36回~■■回 | 使用者は自身の記憶を区別なく忘れます。 | 使用回数に応じてカワウソの毛皮が広がります。また■6回から手に水かきが発生します。 |
フェーズⅣ | ■■回以降 | 使用者は自身が人間であったことを忘れ、 完全にニホンカワウソとして振る舞うようになります。 |
体型及び性質が完全にニホンカワウソのものとなります。 |
PTCO-196-A及びPTCO-196-Bは1度でもPTCO-196の異常性を発揮させた場合、第三者が止めない限りPTCO-196を使用し続けることに注意してください。
PTCO-196は20■■年5月■■日に、「絶滅したはずのニホンカワウソを発見した」という通報がPTC機関に伝わり、それを元に調査を開始したところ、機関のエージェントが■■県■■町にてPTCO-196-Bと共に発見、回収しました。
またその際にPTCO-196-Bの持ち物の中にPTCO-196に関するものと思われる文書も回収されました。
人の心を嗅ぎつけて 記憶を喰らうは水獣 苦き記より口をつけ 甘き憶まで平らげる 人の心はがらんどう 頭蓋に住み着く水獣
以下は回収後に、保護エリアにて1ヶ月飼育され精神が安定したのを確認した後に実施されたPTCO-196-Bのインタビュー記録の一部です。
インタビュー記録
【記録196-1】
PTCO-196-B「要するに……俺の記憶を食べていたんだよ」
空凪研究員「PTCO-196がですか?」
PTCO-196-B「違う、カワウソだよ。頭の上にこの尻尾を乗せたら、中に住んでいるカワウソが俺の頭の中に入り込むんだ。それから中に溜まった嫌な記憶……例えば仕事でミスして上司に怒鳴られたみたいなやつを食べていくんだ。その時はなんというか、胸がスッと楽になるんだ」
(PTCO-196-Bが鼻を鳴らす音)
空凪研究員「続けてください」
PTCO-196-B「ああ。そしたらもうこいつが手放せなくなった。一度心が軽いという感覚を味わったら、僅かな重みにも耐えられない。どんどんカワウソに食わせていった」
空凪研究員「それから?」
PTCO-196-B「そんな生活を続けていたある日、俺は誰だろうという疑問が急に生まれたんだ。……思えばそれがカワウソが俺の忘れたくない記憶に口をつけた瞬間だろうな。そこからはえーっと……」
空凪研究員「分かる範囲で結構です」
PTCO-196-B「たぶん……良かった記憶もどんどん食べていったんだ。一番取って褒められて嬉しかったり、家族旅行で美味い飯を食べて満たされたり、そんなやつもだ。そして何より……」
空凪研究員「何より?」
PTCO-196-B「嫌な記憶がなくなったのと同じくらいスッとしたんだ。ずっと持っていたものなのに下ろしていくことだけがただただ気持ちいい。それから俺は……俺は……」
(PTCO-196-Bの断続的なカワウソの鳴き声)
空凪研究員「PTCO-196-B、話せますか?」
PTCO-196-B「とうとう頭の中にカワウソが住み着いちまったんだ。なあ研究員さん教えてくれよ! 頭の中がカワウソになっちまった俺は人間なのか? それともカワウソなのか? なあ! なあ!」
(興奮したPTCO-196-Bが鳴きながら暴れまわる音)
空凪研究員「……PTCO-196-Bに鎮静剤をお願いします。インタビューは以上です」
PTCO-196-B「要するに……俺の記憶を食べていたんだよ」
空凪研究員「PTCO-196がですか?」
PTCO-196-B「違う、カワウソだよ。頭の上にこの尻尾を乗せたら、中に住んでいるカワウソが俺の頭の中に入り込むんだ。それから中に溜まった嫌な記憶……例えば仕事でミスして上司に怒鳴られたみたいなやつを食べていくんだ。その時はなんというか、胸がスッと楽になるんだ」
(PTCO-196-Bが鼻を鳴らす音)
空凪研究員「続けてください」
PTCO-196-B「ああ。そしたらもうこいつが手放せなくなった。一度心が軽いという感覚を味わったら、僅かな重みにも耐えられない。どんどんカワウソに食わせていった」
空凪研究員「それから?」
PTCO-196-B「そんな生活を続けていたある日、俺は誰だろうという疑問が急に生まれたんだ。……思えばそれがカワウソが俺の忘れたくない記憶に口をつけた瞬間だろうな。そこからはえーっと……」
空凪研究員「分かる範囲で結構です」
PTCO-196-B「たぶん……良かった記憶もどんどん食べていったんだ。一番取って褒められて嬉しかったり、家族旅行で美味い飯を食べて満たされたり、そんなやつもだ。そして何より……」
空凪研究員「何より?」
PTCO-196-B「嫌な記憶がなくなったのと同じくらいスッとしたんだ。ずっと持っていたものなのに下ろしていくことだけがただただ気持ちいい。それから俺は……俺は……」
(PTCO-196-Bの断続的なカワウソの鳴き声)
空凪研究員「PTCO-196-B、話せますか?」
PTCO-196-B「とうとう頭の中にカワウソが住み着いちまったんだ。なあ研究員さん教えてくれよ! 頭の中がカワウソになっちまった俺は人間なのか? それともカワウソなのか? なあ! なあ!」
(興奮したPTCO-196-Bが鳴きながら暴れまわる音)
空凪研究員「……PTCO-196-Bに鎮静剤をお願いします。インタビューは以上です」
後記 やはりPTCO-196を記憶処理に応用は出来ないですね。誰だってやがて区別なく記憶を獲り尽くす獣を頭に入れたくないですから。 ――空凪研究員