私があの方に拾われたのはずっと昔のこと。一面の白、眩しいほどの雪の中でだった。

 気候の寒い小国『リスタフィリア』は豊かではないが、特別貧しくもなく普通の穏やかなところだった。
 だが、それでも治安の悪い町は存在する。
 リッテラという小さな町で生まれたシュリンは類稀なる素質を持つ少女だった。 二歳にしてもう数々の学を独学で学び周囲の人間を驚かせた。
 そんなシュリンは、三歳になると貧しい家の為、とある施設に捨てられた。 正確には、売られたのだった。

 その施設では悲鳴と怒鳴り声が絶えない。 たくさんの子供、たくさんの大人がたくさんある部屋のどれかに押し込められている。
 大人は白衣を纏い、注射を子供にする。 子供はやつれ、細くなり、喚く。
 そこはこの世の地獄と呼ばれるところだと、シュリンはおさなながらに思った。
 飯は一日によくて二回。悪くて水だけ。 実験、投薬等は一日に数回に渡って行われていた。
 子供達は次々と命を落としていった。 シュリンは、堪えるものもあったがその並なやぬ精神によって克服して生き延びた。
 5歳になると同時に施設を脱け出した私は、行く宛も金銭も何もなく途方に暮れていた。
 捕まることの恐ろしさから、盗みはしたくないと思いつつも、脱け出してから二日目には我慢出来ずにパンに手を出してしまった。

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最終更新:2012年10月27日 02:26