女の元へ、また届け物が届いた。
彼女はアパート暮らしである。今年から独り立ちを始めた。
そこへ、毎週、水曜日にいつも送られてくるのだ。
夏の終わりから送られ続け、既に4回目。
1ヶ月が経過しようとしていた。
送られてくる物は毎回同じ。
差出人不明。
消印不明。
広辞苑程度の小さな段ボールには毎回同じ物が入っている。
段ボールに入れるには小さすぎる代物。
それは小さなビニル袋に入っている。
周りには氷であったのか、溶けた水が入ったビニル袋。
親指。
誰の物かはわからない。
毎週、親指が速達で送られてくるのだ。
1ヶ月も経つと我慢も限界に達する。
彼女は弁護士に相談することを決めた。
弁護士は、実際に送られてきた親指を持っていくと早急に対応してくれた。
まず、警察へと届け出た。
これが本物の指であれば、事件として扱われているかもしれない。
そんなある種の希望を持って警察署に向かったのだが、残念ながら親指が消失した遺体などは見つかっておらず、親指が切られた通り魔なども起きてはいなかった。
そして、警察が親指の差出場所を見ると、全国至るところから送られてくることがわかったのだ。
至るところから送られてきているのでは誰の指なのかわからない。
腐敗により指紋は殆どわからなかったが、DNA鑑定をすることに決めた。
弁護士に相談してから2週間が過ぎようとしていた。
その間にも親指は毎週、全国の違う場所から送られてきていた。
弁護士も、犯人が見つからないので、とりあえず引っ越しを進めてみた。
引っ越ししてから初めての水曜日。
果たして彼女に親指は送られることはなかった。
しかし、彼女が前に住んでいたアパートには、変わらず送り付けられていたようだ。
その週の週末、彼女は聞いた。
その親指は、全く同じDNAであったことを。
彼女が引っ越しした時点で親指は合計7本。
アパートへは、今も毎週、届け物が届いている。
同じ人の右手の親指であった。
それから数十年が経ち、その女の人が死んだ時、彼女の指は……。
最終更新:2013年01月14日 00:35