路上の赤く染められた石畳の上、鋭利なナイフの切っ先は見えない。
僕の周りだけ弾けたように赤黒い。
遠巻きに見ている人々は何も言わない。
野次馬はとめもしないくせにずっと周りに居座り続ける。
手元のナイフを引き抜く。
抵抗があるように最初は抜けないが、ゆっくりと赤く染まった刀身が姿を現す。
誰か、女性の絶叫が聞こえた。
五月蠅いものだ。
あんたには関係ないだろうに。
夕食が肉料理じゃないことを祈ってるよ。
赤い液体が再び広がり始める。
僕は立ち上がる気力もない。
まるでトマトを投げ合ったみたいだ。
途方もない思考の中、意識が薄れる。
ああ、もうすぐだ。
もうすぐ君のいる場所に行ける。
僕はもう、駄目だ。
だけど、それでも構わないんだ。
遠くのサイレンを聞きながら、僕の意識は途切れた。
最終更新:2013年03月13日 02:04