チャットでなんか色々話してたら樹華寿命ルート書きたかったなぁてきな話になって「よしじゃあ俺書くわ」ってなって大作絵(笑)の息抜きに書きました。
小説が意味不でよくわからんくてしかも挿絵が超絶クソでしかも誰こいつってかんじですがご勘弁を。
では、我らの姉上、樹華の死ねたが許容できる方のみお読みください。
禁呪による負担で肉体及び魂が擦り減り、彼女はとうとう腕も動かせなくなった。
狭い病院の個室には彼女と親しい者たち、そうでない者も見舞いにくる。
その中でも、今日来た見舞い人は珍しい人種であった。
樹華「あ、きてくれたんだ」
彼女の視線の先にあるのは、かつて彼女の人生を終わらせようとした悪魔。
終点は仮の名であり、彼女を指す固有名詞でしかない。ただ単に、それは悪魔の能力を指すものでもあったのだから。
終点「…名無しが行けと言ったからきたのでございます。」
悪魔、終点は語尾に必ず「~ございます。」をつける。癖の様なものだろう、それが悪魔の特徴だった。
「そうなんだ あ、花はその窓のとこの机に置いておいて。 あとで他の人が活けてくれるはずだから」
余計な皮肉は口にせず、樹華は見舞いの品の置き場所を示した。その後しばしの間、沈黙が二人の間を満たす。
「…もう、腕も動かせないのでございますか。」
視線はどこか遠くへ、そうしながら終点は樹華に訊ねた。
「まあね。……こうなることは禁呪を習得したその日から覚悟してたし、僕はそれでも使うことを躊躇しなかったけど…いざこうなると不便だなぁ」
下ろした髪は頭の下敷きになり、あの頃より少し艶をなくしている 腕に巻かれた包帯は毎日清潔なものに取り換えられるが、その労力に応えず樹華の腕は一向に動く事はない 現世、いや、地上に限れば幻想郷ですら頂点といえた素早さを持つ脚さえも、最後に禁呪を使ったあの日から駆動することはなくなった…全てが石のようだった。 彼女は動かない身体を見渡して言った。
「…仕方のない事でございます。 力を求めた代償、結果がこれでございますので、どう思おうと現実は変わらないのでございますよ。」
「わかってる でも…そうだな、手が動くくらいには回復してほしいんだけどねー…」
「手、でございますか」
はて?と終点は首をかしげる。ただし表情は冷たいままだ。
「うん 最期にあの子の頭を撫でたいんだ」
「あの子」とは、樹華が不特定多数の女性を愛するなかでも飛び抜けて大きな愛を受けている女の子、風咲燕だ。
生気に溢れたあの頃。彼女は女性への愛にも溢れていたが、燕には一層の愛を抱いていた。
どのくらいかというと普段決して涙を流さない彼女が、燕にフラれて枕を濡らす夜があったほどといえば分かるだろうか。分からないか。
「その、「あの子」は今はどうしているのでございますか。」
「僕が動かなくなった時は…泣きはしなかったけど、数日間は一緒にいてくれたね まぁ流石に長かったからストくんが引き取ってテンt…家に帰らせたけど」
「そうでございますか。」
「今は二日に一回は必ず来てくれてるけど、やっぱり悲しませちゃってるなー…」
「お姉ちゃんなのに」という彼女に終点はまたはて、とかしげる
「ん? いやね、僕は前にその子に激烈なアタックのすえフラれちゃったから諦めてはいないけど今は二番手、そしてあの子の姉になったのさ」
「ふむ…貴女がフラれたのでございますか。」
「そうだよ 結構な数、女の子には手を出してきたし虜にしてきたんだけど本命にはこの通りさ まったく、世知辛い世の中だね」
「…大勢に手を出している時点で同情の余地がないのでございます。」
「それが僕だから」
日も暮れ、夜。 病院が閉まる頃には悪魔も出て行くのだった。
しかし、気まぐれが連鎖し、悪魔は翌日もその次の日も見舞いにいった。
「よくきてくれるね…もしかして僕のこと好きになっちゃった?」
「それはないのでございます…。」
この間終点が持ってきた花は確かに活けられていた。しかし、悪魔は疑問に思った。
見舞いに来るとき、誰ともすれ違わないのだ。
「…静かでございますね。」
樹華「うん」
「……しりとりでもしようでございます。」
悪魔は暇つぶしによくやるしりとりを樹華に勧める。いつも終点は相方の煽動悪魔としかそれをやらないので、樹華は少し意外そうに終点を見るのだった。
「しりとり。」「リコリス」「水筒」「瓜」…
そのしりとりは長く続いた。 まるで息をするように二人は単語を連ねた。
「ココア」
「アルカナ。」
「ナッツ」
「燕。」
そこで単語が途切れる。
「最近、来てくれないんだ…」
何時もの様な調子でない、哀を帯びた声色で発声したのは樹華だった。
「…。」
終点も黙る。
「何かあったのかなぁ…他の子も来てくれない」
「…。」
終点の疑問は的中した。 あれだけ来ていた見舞い人は今はもう悪魔しかいなくなっていた。
「皆忙しいのかな…」
決して寂しい等は言っていないが、そんな表情で言う樹華に終点は皮肉でも言ってやろうとしたが、やめた。
樹華が、その日に喋った言葉はそれで最後だった。 同時に、それが彼女の声の最期になった。
「みんな、貴女がもうよくならないと分かった途端に来なくなったのでございます。」
「寂しいでございますか。 花ももう枯れてしまったのでございます。」
「最初無駄覚悟で手術に挑んだ藪医者、己の霊力を以てして回復させようとした閻魔、「手」を貸した少年、そして「あの子」…今はどこで何を想っているのでございましょうか。」
「貴女は、まだ生きたいのでございますか」
禁呪の副作用は肉体までとその刃を止めず、それは魂にまで及んだ。
悪魔は返事のない部屋で佇んでいた。
樹華の寿命も残り一週間…168時間となってしまった。
その頃にはまた、銅像のようなその患者に見舞い人が来るようになった。
「樹華…最近見舞いに来れなくてすまなかったな…」
一人の赤い閻魔が言う。自分はなんとか樹華を助けてやりたいと思っていたが、何をするも失敗で回復の兆しさえ与えてやれなかった申し訳なさに、面として会う事が出来なくなっていたのだと。金髪の医者も同じようなことを言う。
だが、そこにはある者が一人いない。 樹華が、彼女が最も会いたがっている「あの子」がそこにはいなかった。
樹華は何を思っているだろうか。もしかしたら彼女だってただ目が開けられない、声が出せないだけでこの場の会話全てを聞きとっているのかもしれないのだから。皆の会話に混ざりたいと思っているはずなのだから。
「じゃあ、また明日来るよ」
そう言って皆は病室を、病院を後にする。 残るのはそこに大勢がいたという褪せたぬくもりだけだった。
「今日も、あの子は来なかったのでございます。」
メンバーがいなくなったあとでぽつり、と報告の様に言いに来る悪魔は何を思っていたのだろうか。
三日、五日…あの子は来ない。樹華が待つ病室に、燕は来なかった。
報告が終わり次第、悪魔はとあるところへ足を運んだ。使い古されたテントの張る、あの子の元へ。
「燕?…あー、いるけど今機嫌が悪いみたいでさ…;」
何故か申し訳なさそうにテントから出て言う少年に悪魔は強引だった。
「良いから出して欲しいのでございます。 出ないのなら、我が力づくでだすのでございます。」
「…;」
少年は汗を流す。 どうすればいいんだと考えていると、テントから氷の様な表情をした可愛らしい少女が出てきた。
「……誰…」
少女は悪魔を見るとその一言だけを発し俯いた。
「終点でございます。…以前、貴女のお姉ちゃんである樹華の人生を終わらせようとしましたが名無しに復活させられ失敗に終わった悪魔でございます。」
「………何の用…」
燕と言う少女はかなりの無口なようだ。 不要な言葉は一切喋らない。
「貴女に、樹華の待つ病室に来てほしいのでございます。」
「……嫌だ…」
一瞬、そのつぶらな瞳を少しだけ見開いてから燕は言った。
「何故でございますか。」
ザッ…
続く言葉を言う前に、燕が武器とする愛用の鎌で終点の口を閉ざした。
「……嫌だって…言ってる…」
「分からないでございますね。理由が正当だとしても、我は力づくでも貴女を病室へお連れしますでございますよ。」
「……不毛…」
燕が踏み出そうとしたその時…。
「おいやめろよ!」
それまで空気になっていたストライクが二人の間に割り入った。
「……主…」
「…。」
「やめようぜ…なあ、こんなことしても無駄だよ」
「…」
ストライクの言葉に燕は体制を鎌を戻す。
「終点さん…だっけ?; えっとさ、風咲も色々思う事があって…見舞いに行けてないんだ」
自分の頭をかきながら告げる少年にしかし悪魔は引く事もせずに言った。
「樹華は寂しいのでございますよ。」
「うん…そうだよな…」
自分の目を真っ直ぐに、だが落ちついた表情で見る悪魔にストはそれだけしか言えなかった。
「………治らない……行く意味がない…」
ぼつぼつと喋る燕に終点は溜息をついた。
「治らないから、もう見捨てるのでございますね。」
「!……違う…捨てられたのはこっち………」
俯きがちな終点の静かな瞳の先には低い位置にある燕の手と地面しか映らない。その手は土色を背景にして震えていた。
「…死にゆく者も、残される者も皆等しく寂しいのでございます。」
「…!…あなたに何が………」
「分かる分からないは関係ないでございますよ。それとも…我が理解できれば、貴女は来てくれるのでございましょうか?。」
「………もういい…」
燕は問答をそのままにしテントへと戻っていった。
「明日、必ず来るのでございますよ。 明日しかないのでございますから…。」
「…明日こそ、「あの子」は来るかもしれないのでございます…いいえ、来るのでございます、ですから…明日だけでも、一瞬だけでもその目を、口を、手を動かしてくださいでございますよ……樹華。」
翌日、彼女は危篤状態に陥る。これまでを一緒に過ごした仲間が見守る中、彼女は目を覚まさない。
そして、「あの子」もまだ来なかった。
「…来ないね」
「…ああ」
誰かが言い、それに誰かが答える。
今日が樹華の最期…リアやリズ、そして天王寺情報局の者たちは泣いていた。
「うぅ…うそでしょ、あんなに元気だったじゃない 早く目を覚ましてよ…」
「…」
アーロンは泣いている部下の肩に手を置き、樹華を見守った。
「ちょっと怖い人でしたけど…またお話ししたかった…」
過去に天界にて彼女の力を借り、彼女の言葉に暖かみをもらった天使、セリネルは涙目で残念そうにつぶやいた。
「樹華さんに貰ったまんじゅう美味しかったです…」
「女の子の為に戦う樹華はかっこよかったよ」
彼女の最期。これまでを振り返り、皆は贈る言葉を告げていく。
「…来ないので、ございます。」
病院の屋上にてぽつりと、あと一人足りない者を待つ悪魔がいた。
場面変わってテント。
「……」
燕はこれまでの樹華との思い出を一つずつ思いだしていった。 出会いは少女の想い人であるストライクが通り魔にあったとき、一時的に預かってくれたのが天王寺家だった。
会館にて、媚薬を盛られたり無理矢理襲われそうになったりしたこともあった。 けれど、一緒に過ごす日常…それらの時を経た先、彼女たちは本物の姉妹のようになった。
危ないけれど、たくさんの愛情を優しさをくれる樹華を、燕は好きになった。
「……」
ぎゅうっとワンピースを握る。
『明日、必ず来るのでございますよ。 明日しかないのでございますから…。』
少女は意を決し、問題なく動く脚で立ちあがった。
「あと10分。 それで彼女は終わり」
開始と奇跡の悪魔が告げる終了までのタイムリミット。 それまでこらえてきた涙が滝のように流れていった。
刻一刻と終了が近付いていく…その時、
「待って」
ドアが開かれると同時に聞き覚えのある声が涙ばかりの部屋に響く。
「おま…燕じゃねえか……」
皆驚きを隠せない。 燕はそれらを無視し、一直線に樹華の元へと歩を進めた。
「………お姉ちゃん…ごめん…………私、お姉ちゃんの弱ってる所…見たくなかった…」
紅白の花束を両手に持ち、燕はしゃがみ込む。
俯いているので表情は見えない。…が、声が震えていた。
「……元気な姿…で、お別れ……したかった…」
途切れ途切れに言葉を繋ぐ少女。
一瞬の時、奇跡が起こった…。
手は動かない、燕の頭をなでてはくれない
足は動かない、皆の元へ歩けない
だが、樹華は確かに 最期の最後に燕に笑顔を見せたのだ。
それは微かでも、大きな奇跡だった……。
「樹華、今日あの子は、やっと来てくれたでございますね」
霊安室にて、悪魔は眠りについたあの人に、最後の報告をしたのだった。
「花束、綺麗でございました。」
病室の荷物を運ぶ際に終点が燕に言った。
「……」
「あれは、リコリスの花でございますね。」
「……」
燕は答えずに窓から空を見上げた。
リコリス 別名:彼岸花、曼珠沙華
異名が多く、死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)、幽霊花(ゆうれいばな)、剃刀花(かみそりばな)、狐花(きつねばな)、捨子花(すてごばな)、はっかけばばあと呼んで、日本では不吉であると忌み嫌われることもあるが、反対に「赤い花・天上の花」の意味で、めでたい兆しとされることもある。
毒を抜いて非常食としている事もあるので、悲願の花と言う意味もあるが一般的には危険である。
花言葉は「情熱」「独立」「再会」「あきらめ」。「悲しい思い出」「想うはあなた一人」
「また会う日を楽しみに」。
最終更新:2013年08月24日 21:52