「いらっしゃいませー」
店内に入るとその言葉が真っ先に聞こえてくる。
「ブレンド、お願いします」「かしこまりましたー」
様々な訓練や実践を終えた後、野乃七海、またの名をハリケンブルーはこの喫茶店「Gimmick Mansion」によっていくのだ。
ああ、今日も疲れた…と一人たたずんでいると、後ろからなにやら目線を感じる。
気にせずコーヒーを待っていると声をかけられた。
「お~い、七海~、こんなところにいたのか?」
それは、椎名鷹介、またの名を、ハリケンレッド。彼は私と同じ、ハリケンジャーなのだ。
「七海、隣いいか?」
「あ、うん。」
少し前、一鍬とデートしたばかりなのにな…見られたらどうしようという反面、なんだかうれしいような気もした。
「あっ、俺もブレンドでお願いします~」
彼は性格が私と同じような感じで、気が合う、それが理由なのか、あまり喧嘩はしたことがない。
「七海、今日もきつかったな~、大丈夫か?」
「え、あ、うん、大丈夫だよ。」
「俺さ~、ここに来る前にバイトがあってさ、急いできたから七海の二倍疲れてるよ(´・ω・`)」
「え、そ、そうなんだ…」
なんだか楽しいな…そう思うと同時に、なにか似たようで違う気持ちを感じた。
なんだろう……鷹介と一緒にいると…そんな感じだ。
「おい、おーい。」
「えっ!?」
「え!?じゃないよ、コーヒー来たよ?」
「あ、あはは…」
まあ、そんなに気にすることでもない。そう思った時だった。
「おれさ、七海といると…、なんか落ち着かないんだよね。なんか…その、ドキドキしてるんだ。」
鷹介の口からあまり出てこない言葉だった。思わず
「えっ…?」
と驚いたくらい。鷹介は、もしかして、私のことが…と思ってしまうくらいだ。
「えっ」ってなんだよ…今日、大丈夫か?」
と鷹介は私の額に手のひらをぴったりと付け、熱の確認をしだしたのだ。
「ちょっ…!何を…!」
「えっ、熱あるんじゃないのか?」
勿論私はあわてる。何をされてるかもそうだが、第一ここは喫茶店なのだ。お店の人やお客さんが観ているのに…
「よ、鷹介…」
「ん?なんだ?」
「は、恥ずかしいから…や、めて…」
「…ふふ、いいじゃないか、少しくらい……な?」
「え、よ、よくないって…」
「あはは、落ち着けって。」
落着けないよ、と思った。ただこれ以上言うと怒らせてしまうかもしれないと思った。私は静かに時が過ぎるのを待った。
暫くすると、鷹介は手を離した。私が胸をなでおろして一息つくと、今度は私の頬に小さくキスをしてきたのだ。
時が過ぎるのを待つ七海といえど、もう我慢はできない。怒ってやろうと鷹介の目に立つと、最後は抱き寄せ
「実はな、お前のことがさ…」
と囁いた。さっきも思ったが、鷹介がこんなことを言うはずがない。でも本気かもしれない。本気だったら…いろいろ考えていると、だんだん頬が赤くなってきて…
「俺…お前のことが…(電話着信音)…はい。ああ、一甲!…えっ!ホントか!?おっけ、すぐ行く。…ごめん、バイトの追加だって。じゃ、行ってくる!」
…半分恥ずかしい思いから解放された気持ちより、後の半分、鷹介と会話していたあの時間が強く印象深いな…
もしかしたら、私も鷹介のことが好きなのかも… いや、好きだ…。私、鷹介が好き。
七海はそんな気持ちを胸に、喫茶店を後にするのだった…
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最終更新:2014年09月11日 06:09