プロローグ【闇の綱渡り】
わたしは、暗闇の中に居た。
屋内なのか、野外なのか。
昼なのか、夜なのかも分からない。
自分の姿も朧でしか見えなく、
上も下も、右も左も闇に覆われていた。
この闇を作り出しているのは、
本当は私自身なのだと、いうことも知らずにいる
愚かなわたしがそこに居た。
暗闇の中、
分かることは自分が一本のロープ
の上に足を置いていること。
バランスを崩したら世界は終わってしまう。
―――怖い。
後ろからは重く低い声、それと叫び声や
こちらへと向かってくる無数の足跡が聞こえた。
奴らに捕まったら、足を掴れて崩され、
落とされてしまうだろう。
捕まってはならない。
わたしは、一歩、また一歩と進んでいく。
失敗は許されない。
慎重に、最後まで渡っていかなければならないのだ。
果たして、この綱渡りに最後があるかどうかさえ分からないが。
――――闇の綱渡りは始まったのだ。
最終更新:2012年08月05日 08:40