「本当なんだって!!信じてよ!」

と声を張るのはアミティ。そしてここは先日迷った森の入り口。そんなアミティの横には、相変わらずぼんやりしてるシグがいた。

「ね?そうだよねシグ!!」
「うん、なんか、クワッってなってひゅおーって吸い込まれて、気づいたらここにいた。」
「いきなりそんな話聞かされて、信じてと言う方が無茶ですわ。」

と反論を出すのは魔道学校のお嬢様、ピンクのロングヘアが自慢のラフィーナである。

「そうそう、今回ばかりはラフィーナと同意見だ。」

と嫌味な言い方をするメガネは自称天才魔導士の卵、クルークである。

「アミティ、頭がどうかしちゃったの?」

と追い討ちをかけるのは魔導界の魔導士、アルル・ナジャだ。

「まさに非科学的思考です…」

と更に言葉を足すのは、エコロ異変以来プリンプに住む面々と仲良くなった安藤りんごである。
この安藤りんご、エコロ異変に巻き込まれたプリンプとは別の世界の女子学生である。
何故プリンプにいるかというと、エコロ異変の影響が残った狭間がプリンプとりんごの世界を繋ぐ『穴』と化しているのだ。
さて、話を本題に戻そう。
ここは先日、アミティとシグが昆虫採集して迷って、そしてあの奇妙な体験をした森である。
あの体験をしたアミティとシグは、その怪奇現象らしき出来事を夏休みの自由研究の課題に変更しようと決めた。しかし自分達だけではこの現象を解明出来ないと判断し、色々詳しそうなクルークとりんご、そしていざという時の戦闘用員としてアルルとラフィーナを呼び寄せたのだ。

「とにかく、本当にそんな事があったの!!」
「だから、信憑性に欠けるんだよその発言は!!」
「信じてー。」
「断りますわ!!」

……こんな具合に呼び寄せたまでは良いが、当然ながら誰も信じてくれないのだ。

「ま、まあまあ…とにかく、何事も試してみるのが大事です。」

りんごがそう言った。

「試すって、どうやってだい!」
「私達が森の中で迷えば、再びそんな状況が生まれると思うんです。」
「何言ってるんだ!!そんな事言って、本当に帰れなくなったらどうするんだい!!」
「そんな事言われても…」
「もういい!!僕は帰る!!!」

クルークはプンスカしながらそう良い捨てて、プリンプタウンの方へ歩いて行ってしまった。

「行っちゃった。」

シグが心なしか寂しそうに言った。
アミティは…

「まあまあ、とにかく、あたし達だけでも行ってみようよ!何か分かるかもしれないし♪」
「そうですわね…適度な運動は美容には必須ですし。」
「ボクも賛成だよ♪」
「私も協力します。」
「じゃあ、しゅっぱーつ。」

こうして5人は森の中へ入っていった。

「…へぇー、怪奇現象、か。」

木の陰からその様子を見ていた「影」はそうつぶやいた。





さて、森に入ってかれこれ3時間はたったであろうか、一行は「いかにもそれが起こりそうだなー」というスポットを見つけて待ちぼうけしていた。

「……アミティさん?本当にここで起きるんですわよね?」

イライラしてるラフィーナが問う。

「必ずとは言えないけど、起こるよ!………多分」
「多分って言いました!?今、小声で多分って言いましたね!?」
「……多分。」
「言ったァァ!!確実に言った!!」
ラフィーナらしく無いツッコミを爆発させた。
「もし怪奇現象とやらが起こらなかったら、その時の覚悟はよろしいですわよね!?」
「ええええ!?」
「頑張ってー、アミティ。」
「シグさん?貴方も射程範囲内ですわよ?」
「うへー…。」

アミティはその時の気づいた。
あの時、助けを呼んだら、優しい声がして……

「だれか……誰か助けてくださァァァい!!!」

アミティは全力でシャウトした。

「アミティ!?本当にどうしたの!?」
「わたくしはまだ何もしてませんわ!!」

アルルが心配して駆け寄った。正にその時だった。

「あらあら?また私の出番かしら?」

聞こえた。女性の声が、確かに聞こえた。

「何ですか…今の声!?」
「アミティ、この声……」
「やっぱりシグにも聞こえてたんだね!間違いない、この声だよ!」
「本当ですの!?」

刹那、一行の正面の中空が裂け、中から女性が出てきた。

「あ…あわわ……」

アルルとラフィーナ、りんごが絶句している。

「こ、こんな魔法…魔導界でも見たことないよ……。」

「あらあら…そんなに驚いてくれて、嬉しいわ♪」

金髪の女性は嬉しそうに言った。

シグが問う。

「……誰ですか?」
「あらあら?名前を聞く時は自分から名乗るのが礼儀でしょう?」
「そうかー。僕、シグ。」
「………ほら、貴女達もよ♪」

アミティ達を見ながら言った。

「あ、えっと、あたし、アミティ!!」
「ああああ、ああ、安藤、りりりんごですううう!!」
「ら、ラフィーナですわ……」
「アルル・ナジャです……」

この現象に初対面の3人は半泣きで答えた。

「そう、良い名前ね。それじゃあ、私の自己紹介ね♪」

女性は「スキマ」を閉じた。

「私は八雲紫(やくもゆかり)、気軽にゆかりんって呼んでね。」

それが彼らの壮大な冒険の始まりであった。

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最終更新:2011年12月25日 19:24