「光くん。なにやってんの?」

校庭の隅の体育小屋、ただよっかかってる僕にクラスメートの田崎 真琴が声をかけてきた。

春、桜舞い吹雪く光村高等学校の入学式の日。僕はずっと行きたかった志望校に合格することができた。
そこで僕に最初に話しかけたのは真琴だった。
最初はなんのつもりだと思っていたけどね…。


「ん~…なに?ただよっかかってるだけだよ」
「つまんないの?そんなことして」
あのなー…僕になんで近づくんだ。話しかけてくるのはいいが夕方目立たないとこでそうするのはやめてくれ。恋人同士とか思われるのはゴメンだ。

「…別にいいだろ?僕の勝手だろ」
「…ま、そうね。じゃあまた、明日学校で会おうね!」

真琴はそう言うと先に校庭を離れ、校門の方に去ってしまった。

「…ハァ。毎度毎度彼女の行動には呆れるなぁ」
僕はそうつぶやいて体育小屋を離れようとしたその時…

ビュオォォ…

突然、一瞬だけだが自分の影が揺らめいたような気がした。
それと同時に冷たい風が肌を啜る。

「…………」

僕は何だか嫌な予感…というより胸騒ぎがした。
今までのない…初めての感覚。

僕は少し怖くなって学校を出た。男が怖がるなんておかしいよね。
夕日は紅く染まり、冷たい笑いがこぼれていた気がした。



~光の家~

ぐつぐつ…
ジャガイモを煮る音が聞こえる…今日は肉じゃがかな。
「姉さん」
「どうしたの?お腹でもすいたの?」
彼女は僕の姉の「月花 香織」
母親のような存在で、いつもおいしい料理を作ってくれる。

「いや…今日は肉じゃがかなー…なんて」
「よく分かったわね。今日は肉じゃがよ。」
当たったみたいだ…。

「もしかして、嫌いだったり?」
「いや、音でなんとなく」
「そう…。もう少しでできるからね」
香織はまた料理にとりかかる。


~光の部屋~

僕は立って窓を見ていた
沈もうとする太陽が光を差し、僕を温めようとしてるのか。

「…余計なお世話だ」
すると…

「余計なお世話なんて失礼なもんじゃないのか?」

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最終更新:2012年01月05日 23:42