「おやまぁお客さんかねぇ…」
頭の中で女性らしき声が聞こえた。
「にしてはなんでここに寝てるのかしら」
ん?寝てる……?



「……うぅー」
目を開けると、見覚えのない天井が見えた。
ここは……自分の部屋じゃないのか……!?


「気がついたかえ」
台所らしき方を見ると、いかにも昭和的な母親らしき女性がいた。

「あのー…ここは」
「あなた庭で寝てたじゃない」
「え……?」
おかしい。
確かあの時咳を出して寝転んだのが自分の部屋のはずなのに…

「名前は?」
「穂波…佐月」
「佐月ちゃんね」
「いえ、ボクのことは呼び捨てにしていいですよ」





「先輩また立たされたってヤンスねー…」
「いいじゃねーか別に」
「何言ってんだよ!ひろしには根性と言うのがたらねぇんだい!」
「うるせぃやい平面ガエル!」
進むと十字路が見えた。
「分かれ道でヤンス。先輩また明日でヤンスー」
「おぉ!五郎」




ガラガラ…
「ただいまーー!」
「ひろし、お客さんがいるから静かにしなさい」
あぁ、帰ってきたのはあの女性の子供みたいだ。

ひろしはお客さん…ボクの顔見て息をついた。
「なんでぃ。オレと同い年みたいじゃないか」
「これ!お客さんに失礼だよ!」
ひろしの言葉に母親らしき女性は叱る。

「ひろしって言うのか?」
ボクはそう尋ねた。
「オレ、ひろし。このシャツのカエルはピョン吉って言うんだ」
「ふーん……」
ボクはじっとシャツに張り付いてる黄色いカエルを見た。
「ところでよ、オマエどこから来たんだ?」
ひろしにそう訊かれ、どう答えればいいか戸惑った。
目が覚めたらここにいたなんて言えるわけがない。
とりあえずここは……

「覚えてない」

そう答えるしかなかった。

「おいひろし、この男のことどう思うんだ?」
ピョン吉はひろしに訊いた。
しかも男と勘違いしてるらしい。別にいいけど。
ここで佐月は驚かなかった。
もし驚いたら女と言われるかもしれないと思ったからだ。

「どう思うって言われてもなー…お前、名前は?」
「穂波佐月」
「女っぽい名前だなー」
「……」
女っぽいと言われ、少し目を細めたが気付いていないようだ。


「じゃあ思いだすまでここにお泊まりなさい」
「母ちゃん……!!」
「いいんですか…?それで」
「分からないんじゃ仕方ないじゃない。もう遅いから、ひろし達と銭湯に行きなさい」
「(この家には風呂場はないみたいだ……。ということは本当に昭和に来たってことか……!?)」
そう思う佐月であった。



~銭湯~
「んじゃ。着替えるか……ってヤベっ!」
かごを置いたひろしは急に声をあげる。
「どうしたんだ?」
「……タオル持ってくんの忘れちまった」
この言葉にピョン吉は、
「ま…またボクをタオル代わりにするの……?」
「仕方ねーだろ。今いってもどうかと思うし」
と、男湯に入るひろし。
佐月は女湯に行こうとすると、

「あれ?お前……女なの?」
とひろしに呼びとめられる。
本気(マジ)で佐月のことを男と間違えたらしい。

「…そうだよ。女がこんな口調で言っちゃいけない?」
「いや…/その……//」
「ひろしー佐月ちゃんのことー…」
目を反らすひろしにピョン吉は


「まさか浮気ってわけじゃないよなー?」


とニヤニヤしながら言い、それにひろしは、
「この平面ガエル!別に好きなわけじゃねぇよ!オレには京子ちゃんというガールフレンドが…」
「京子ちゃん?」
名前に首をかしげる佐月にひろしは慌てて
「と、友達だよ!」
と答える。
「別に友達でもガールフレンドでもいいけどね。もしボクがキミの学校に行けるなら会ってみたいなぁ」
「え?お前、何歳?」
「14」
「ひろしと同い年くらいじゃねぇか?」
「だからうるせーよこのクソガエル!
ピョン吉を叩こうとしたが逆に…
ガブッ!
「イッデェーーーーー!!」
指を噛みつかれてしまう。
「とりあえず、はいろうか…^^;」



数十分後……
「いやースッキリしたぁー!」
「ボクも。銭湯行ったことなかったんだ」
「あれ?佐月ちゃん銭湯初めてだったの?」
ピョン吉はそう訊く。
「ボクにちゃん付けはしなくていいよ。早く帰ろう」
「お、おぉ……」



~ひろしの家~
「ではしばらくよろしくお願いします」
「こちらこそ、ろくなお構いもしませんで……」
「いえ、大丈夫ですよ」
「じゃぁゆっくり寝なさい」
「改めて……よろしくお願いします。そしてお休みなさい」
「はいよ」

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最終更新:2012年02月07日 16:56