何処までも透き通るような青空の底。初夏の日差し……
影は一番短くなるときを迎えようとしていた。
今日は、昼頃に萌黄と遊ぶ。別段変わった話でもないが、やはり藍にとっては楽しみで仕方がない。
何時もならばカラオケに行くが、親が長期旅行で居ない今、むやみに家を空ける訳にもいかないので今回は自宅で井戸端会議をする事になっている。
待ち合わせの少し前、藍は萌黄を待つついでに日向ぼっこをしようと庭へ出て、木の傍に座る。
こういう時は毎回、草木の囁きを聞いているうちについ転寝をして、萌黄に叩き起こされる。
……しかし今回は違った。
ふと藍が顔を上げると、目の前に黒くて大きな物体が横たわっている。
近づいてみれば、それは物ではなく、人のようだ。
「あの……大丈夫ですか……!?」
その男の身体に触れて、背筋が寒くなる。ドライアイスの如く、男の身体が冷たかったからだ。
しかし、脈は流れているので、死んではいないだろう。(ただ、非常に奇怪な脈ではあったが。)
さて、どうしようか……藍がそう思案していた時、後ろから藍を呼ぶ声がした。
「やあ藍ちゃん。……その人は一体誰だい?」
「わあっ!……しゃ、しゃとるーずさんですか……」
急に声を掛けられた為、思わず藍は飛びあがってしまった。
最終更新:2012年05月01日 05:15