「お、お父さん!駄目、行っちゃっ…」
「大丈夫だ、俺は戦士だ。」
お父さんの背中は威圧、それも殺気と言う狂気のような、物しかなかった。お父さんはいつも優しく、『殺気』なんて野蛮な物、少なくともあいつが来るまで無かった。勝てない、と分かっていても、私はただ血と炎の臭いで、むせかえった町を走って行く、お父さんの姿を呆然とみるだけであった。
肩までの黒髪、剣を携える彼女の名前は目黒りん。当時17歳。彼女は剣の神童とすら、うたわれていた。
樹海の深い奥、彼女はそうっと、樹齢1万年といわれる樹に手を当てると、空を見上げて、ふうっとため息をついた。(お父さん、私は必ず…)10年前の思いに更けながら、りんはお父さんに誓った。『必ず王国に平和を与える』と。りんは樹を背にし、ゆっくりと樹海を後にした。
最終更新:2012年08月05日 08:32