此処は一階の和室。いつも遊びに来た時は此処でとり止めの無い話をしているけど、今は珍しく話し相手が居ない状態である。
因みに時刻は昼を過ぎた頃。南側の障子の輝きは未だ弱まる気配を見せない。
だけど、ボクの心境は曇っていた。
藍ちゃんはやっぱり否定するだろうけど、ボクには、あの男はやはり吸血鬼に見える。
……けれど、
何故こんな日当たりの良い所で倒れていたのだろう。
日光に弱いから倒れていたのだろうけど、それなら夜に出歩くなどすれば良い筈。
よりによって、昼間にこんな日当たりの良い場所に来るなんて……
それを考えると、ますます分からなくなってくる。
まあ、吸血鬼じゃないとしても、不審者には変わりないんだけどね。
それにしても、藍ちゃんはまだあの男と口論しているのだろうか……
そんな事を考えながら天井を見上げた時、藍ちゃんが部屋に戻ってきた。
襖を閉めたタイミングで、ボクはすかさず
「あの人どうするのさ?」
と尋ねた。
藍ちゃんの事だ、きっとこの後何も考えてないに違いない。
「どーするって……先ず自己紹介をしてもらおうかなーって。名前とか色々聞くつもりだよー」
……何とも気が抜ける答えが返ってきてしまった。
「それならば、何でさっき聞いて来なかったんだい?」
「そりゃあ、しゃとるーずさんの事もさらっと紹介しないといけないかなと思って」
だから紹介は自分でやって、と続くのだろう。
藍ちゃんが何を考えているか、あの男が何者なのか、分からないけれども。
……どうやら、ボクは途轍もない出来事に巻き込まれたらしい。
最終更新:2013年01月20日 00:34