「ただいま戻ったぜ、マスター。」
聖杯戦争に選ばれた
ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが住む屋敷。
二階に有るは、密閉された様な作りになっている応接間。
今日の偵察を終えたランサーのサーヴァント、
クー・フーリンは其処で実体化し、ソファに腰掛けて考え事をしているケイネスに声を掛ける。
「戻ったか、それで、マスターは何人程見つかった?」
やや険しげな表情で、ケイネスはランサーに問う。
聖杯戦争の本戦が始まって間も立っていない頃。
対聖杯を目指すケイネスが序盤に行うのは、まずは同盟相手を見つけること。
現状においてこのSE.RA.PHに残る主従を把握しておく偵察も兼ねて、交渉相手を探す、と言う魂胆だ。
眉間に皺を寄せ不機嫌そうな表情を見せるケイネスに対し、ランサーは相も変わらず軽い態度で、ケイネスの問いに答える。
「今夜発見できたのは5組程だな。」
ランサーは更に詳しく説明する。
何処にでもいそうな平凡な少年と、蒼い甲冑を身に纏って戦うセイバー。
まるで男のように凛々しい少女と、真紅の巨人を操るライダー。
無数の剣を召喚し操るバーサーカー。
漆黒の剣を振るい戦う、かのサンタクロースを模した格好をしたキャスター。
曲刀を振るって戦う、幻想種に近い匂いのする端正な顔立ちを持ったキャスター。
これら五組の特徴を、ランサーは己のマスターに話せる限り話す。
「この内バーサーカーは同盟を拒否した、残りの四組は考えておくと言っはくれたけどな。
残りの四人の内、二組のキャスターは学校に、セイバーとライダーのマスターには彼処のビルに集合するように伝えてある。
集めるのは面倒だが、ま、この方が秘匿するには丁度良いだろう。」
「そうか、良くやった、ランサー。」
己のサーヴァントの報告に、ケイネスはうむ、と頷く。
これで同盟を組めそうな主従は、必要な数は揃った。
パラメータこそは分からないが、それでも興味深い能力を持ったサーヴァントかと思われる。
剣を使うキャスターと言うのは、些か変だとは思うが。
勿論、今後も同盟者を集めていく方針には有る。
だが、数を成すには最低限の主従は揃った。
此処で一息つき、ケイネスは別のことに思考を移す。
(しかし、あの使い魔…一体どの様な仕組みに有ると言うのだ……)
それよりもケイネスが気がかりなのは、先程ランサーが拾った謎の使い魔。
仕組みとしてはゴーレムに近いが、問題は其処ではない。
まず、この使い魔を形作る素材が不明なのだ。
(解剖してみた所幻想種の骸を使ったようでは有るが、しかし私の知るものではない素材だ……)
降霊科の人間とは言え、ケイネスは名の轟いた魔術師だ。
幻想種の種類の一つや二つぐらいなら分かる。
だが、幻想種の骸等、天下の時計塔でさえ持っている数が少なすぎる代物だ。
それを、一体どの様に調達しているというのか。
(或いは、キャスターのサーヴァントか……)
しかし、ケイネスには一つの疑念が浮かぶ。
確かに、「並の」魔術師「でなら」、幻想種を扱った使い魔の作成は困難を極めるかもしれない。
だがしかし、サーヴァントでなら、可能ではないのか。
キャスターにはクラススキル「道具作成」が有る。
魔術師としての逸話によって、英霊の座に昇ったサーヴァントには、必然的に現代では作成が難しい礼装や使い魔の作成が容易に出来る者も時折存在する。
例えば、かの迷宮ラビリンスを生み出したギリシャ最大の建築者ダイダロスの様に。
それにこのランサー、クー・フーリンも、ルーン魔術を扱ったキャスターとしての適性が有るとされている。
(構造自体はゴーレムに近いが、根本的には全くの別物だな)
ゴーレムに関してはある程度齧った程度の知識では有るが、ケイネスにも分からないことはない。
少なくとも、羊皮紙に刻まれたコマンドで動き出す、カバラ系統の魔術で創られた使い魔であるという程度の事ぐらいは。
(しかし、この魔術系統は……)
ケイネスが解析してみた所、この使い魔の素材は、どうやら「生きている」事が判明している。
いや、生きていると一口に言っても、動物を扱った使い魔のように骸をそのまま操っている訳ではない。
この使い魔に使っている素材その物が「生きている」のだ。
(だが、生物を操ると言うのは、とてもカバラでは難しい芸当だ……いや、だがまさか……)
ケイネスは思考する。
確かに、ゴーレムを操る魔術であるカバラには、生きた生物の身体を扱うと言う芸当は難しい。
ネクロマンサーにしてみても、そんなことが出来るとは聞いていない。
(しかし呪術ならば、その様な芸当が出来ると聞いているが…)
ヨーロッパの魔術師であるケイネスにとって、呪術と言うのはあまり馴染みの無い魔術系統だ。
関わった魔術師も、内知っているのは冬木の聖杯戦争の運営者にして参加者であるマキリ。
もう一つは、ケイネスの偽りの記憶に有る時計塔の魔術師。
「柊」と言う日本の名門呪術師だが、其処の若者が、ケイネスの「偽られた」記憶の中で、時計塔の学部で威張り散らしていた記憶を垣間見る。
所詮フェイクの記憶であるため、顔も実力も定かに覚えてはいないが。
(だが、私の知る中でヒイラギと言った魔術師は時計塔には存在しない……まさか聖杯戦争に参加している……等という事は……)
虚構世界、SE.RA.PH。
其処には、ケイネスの知らぬ人間が腐るほど住み着いている。
もしそのヒイラギと言う若い魔術師が、其処にいたとしたら。
(何れは、決闘を申し込むことも、有り得るかもしれんな……)
此処で、思考をその使い魔の件に移す。
更に調べてみた所、この使い魔には、コマンドを打ち込むための「コネクタ」の様な式が組み込まれていたのだ。
ゴーレムで言う所の、コマンドを書き込む為の羊皮紙の様な物だ。
何かしらの礼装を媒介にしてコマンドを打ち込み、操るための物だそうだ。
穴を開けられ機能が停止している以上、動かしようは無いが。
(解析の余地はある、今後も続けるとしよう……)
そう考え、ケイネスはすくっと席を立ち、使い魔の待つ魔術工房の有る部屋に行こうと、部屋のドアノブに足を向かわせる。
窓の外から見える景色を眺めていたランサーは、それに感づき、彼のいる方向に振り向く。
「おい、マスター、戻るのか。」
「工房で調べておきたい物がある、貴様は偵察に戻るが良い。」
冷たい表情で顔を振り返らせたケイネスの答えに、ランサーは、ははん、と納得する。
「まさか、昼間の使い魔の件かい?」
「然り、アレには解析の余地が山程有る、それに他の主従の手先を読む一手にも成りうる可能性が有るからな。
良いかランサー、この件は絶対に漏らすなよ。」
「良いのか?」
「敵に情報が漏れる恐れがある、何より、魔術のいろはも知らぬ者達に何故、それを教える必要がある。」
不機嫌さを顔に浮きぼらせたケイネスの表情にランサーは、おう、と頷いた。
「んじゃ、またサーヴァントが見つかったら声を掛ける、何かあったら令呪で喚べよ。」
「ああ、分かっている。」
そう言った会話を交わした後、ランサーは窓から飛び降り、外から見える屋根と屋根を足場にして飛び去る。
ケイネスはそれを確認し、窓を閉じ、再び魔術工房へと向かう。
本戦が始まって1日目が終わろうとしている。
戦いは、まだまだこれから。
【D-7/高級住宅街/1日目 夜(23:50)】
【ケイネス・エルメロイ・アーチボルト@Fate/Zero】
[状態] 健康
[令呪]残り3画
[装備] 月霊髄液(ウォールメン・ハイドラグラム)
[道具]
[所持金] かなり裕福
[思考・状況]
基本行動方針:他の主従と同盟を結び、この聖杯戦争に誅伐を下す。
1. 同盟相手は可能な限り増やす。
2. 自身の手の内は可能な限り秘匿する。
3.何なんだ、この使い魔は
4.昼間になったら、夜になるまで仮眠をとっておく予定に有る。
[備考]
- キャスター(布道レオ)の組み立てた号竜の仕組みを解析しました。
- 偽られた記憶においても時計塔にいたそうですが、その時柊暮人と言う生徒が在籍していた、と言う記憶を朧気に持っている。
【ランサー(クー・フーリン)@Fate/stay night】
[状態] 健康
[装備] 刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)、現在はケイネスが用意した宝具の正体を隠すための呪符が巻かれておりそれを外さなければ真名解放は不可能である。
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従う。強者と死力を尽くして戦う。
1. 他の主従を捜す
[備考]
1.同盟を申し立てた相手には、それぞれ出会ってから24時間後に出会った場所に集合するよう伝える。
2.セイバー(
剣崎一真)、ライダー(
フル・フロンタル)、バーサーカー(黙示録の獣)、キャスター(
ラゼィル・ラファルガ―)、キャスター(ナーサリーライム)のステータスをケイネスに報告しました。
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最終更新:2017年01月16日 18:21