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フィフィタ(SC53~SC113)

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邪推SS/フィフィタ(SC53~SC113)


フィフィタ(sc53~sc113)
 ロゴ王朝は元々ラエの四つの有力豪族による寄り合い所帯の国である。若く気力に満ちたロ家の当主が
新王朝の王に選ばれたが、その地位は甚だ不安定であった。その王に四名家の一つ、フィ家の娘が嫁いだ。
娘の名をフィフィタと言う。四名家間の権力闘争に由来した明らかな政略結婚であったが、四歳年下のロゴに
初めて会ったフィフィタの頭に浮かんだのは、自らの境遇に対する嘆きでもなければ、道具としての役割を
全うしようという責任感でもなかった。高らかに理想を謳いあげる婚約者の青さに対する不安だったのだ。
(この人は遠くを見ていて、足元の剣に気付かない人だ。汚い政争には無頓着で、だからこのままでは潰されてしまうだろう)
 家に対する義務でもなく、ましてや愛情でもなく、ただただ目の前のか弱い灯火を守らなければならないと
そう思ってしまったから、彼女はその為に己を捧げる事にした。
 王妃となったフィフィタは陰謀を図る諸勢力を互いに対立させ、時にはアメを時にはムチを駆使しながら、
傀儡として即位した夫を名実ともに覇王にする事に尽力した。政治闘争におけるフィフィタの布石は、
狡猾にして果断、時として非情であったと伝えられている。彼女の父であるフィ家の当主も隠居を余儀なくされた程だ。彼女は既にフィ家の娘ではなく覇王の庇護者だったのである。
 権力闘争や外交判断のリアリズムとは裏腹に、内政においては彼女は慈愛の人であった。
罪に問われた臣下の処置を寛大に取り計らい、民には施しを与えた。アダムスと同盟を結んだ後のサウス星系は
軍事的にも安定しており、戦乱を逃れた知識人が多くこの地を訪れた。フィフィタの博愛主義によってロゴ王朝は
彼らの受け皿となり、文化的にも経済的にも繁栄したのだった。
 そして、王朝が繁栄すればするほどロゴ王の基盤は安定したものとなり、王は自らの精力を理想の実現に傾ける事が出来た。そういう夫の姿を見るのがフィフィタにとっては無上の幸福だった。そう、これはまぎれもなく幸福な時代の話である。
 敵は思わぬ所からやって来る。フィフィタの敵は王の褥にいた。家庭内に波風を立てることが王の地位を
脅かすと考えていたので、彼女は夫の女性関係には極めて寛大であった。それゆえ、言いようのない不安を
感じながらも夫の新しい愛人パメラを放置していたのだが、これが彼女を破滅へと追い込んでしまう。
 パメラが望んだのは王の寵妃ではなく、王の位であった。その野心は夫を喰らいつくしてしまうだろう。
このままではいけない。その事に気付いた時には手遅れだった。既に王は妖女の虜であった。フィフィタが遅かったのではなく、パメラの篭絡が早すぎたのだ。
 ロゴが王妃の廃位を断行しても、フィフィタはそれに対して抗う事をしなかった。その為の権力がないわけでは無い。フィフィタは決してそういう事が出来ない女性だった。全てを夫に捧げる事に決めたのだから。
 国民の恩赦嘆願の中で、彼女は従容として縄についた。パメラの非情さを思えば自分が早急に消されるだろう事は予想できたが、それでも彼女の顔は晴れ晴れとしていた。
やっと解放されたのだから。もう肩の荷を下ろしてもいいのだから。
しかし、自らが背負っていた責務を一つ一つ数え上げていった時、まだ捨てていないものが一つある事に
彼女は気付いた。それは最初は持っていなかったもので、持っていた事にも気付かなかったものだった。それが捨てきれないものだと気付いた時、彼女は生まれて初めて涙した。
 それはロゴへの愛情だった。

 ロゴ王朝がただの歴史上の記録になってしまった今でも、ラエの民衆はフィフィタを偲んでいる。
彼女が公式に「病死」した命日に、彼女が唯一の趣味として蒐集していた工芸品を飾る事によって。
それは地球の、東洋の島国の、東北部に伝わる木製の人形だったと言われている。


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