邪心王の登場は闇の支配者によって大きな障害となるものだった。
この次元と異世界を繋ぐ穴が開いてしまったのだ。
この穴を閉ざす方法はただ一つ。
時間だけだ。
□
冴島鋼牙は世界の異変にいち早く気付いていた。
鋼牙の指にはめられたザルバが、「妙な邪気を感じる」と忠告してくれたからだ。
ホラーではない。だが、それと同等の恐ろしさを持つ、言ったとおり妙な邪気だという。
そして鋼牙は現地にやって来た。
そこには不気味な七色をした不思議な穴──まるで違う世界に吸い込まれてしまいそうな不思議な穴があった。
「ザルバ。これが何かわかるか?」
「いや、俺にもわからない。ただ一ついえるのは……この先には行かないほうがいい。命がないぜ」
「俺は行く」
「なんとなくお前がそういう人間だってことがわかってきたぜ」
ザルバは鋼牙の指の中でため息をついた。
「いくぜ、鋼牙」
鋼牙が吸い込まれるようにしてその穴に入っていった。
□
「う~ん、やっぱりこうした方がいいかな……?」
御月カオルは何度もやり直しながら手紙を書いていた。
ドラマに登場する小説家の部屋のように、丸められた紙が散らばっている。
「あ~! もう、この手紙は出さない!」
最終的にはキレて、出来上がりかけの手紙にsどういった。
しかしカオルは出さない、と言っているにも関わらず熱心に続きを書いている。
「飛んでけ~!」
だが出来上がった手紙で紙飛行機を作り、結局は雲に向かって飛んでいった。
□
「……? カオル……?」
不意に鋼牙の耳にカオルの声が聞こえた。
「どうした、鋼牙?」
「いや、なんでもない。ただの空耳だ」
口ではそう言っているが、鋼牙はそうは聞こえなかった。
確かに鋼牙の耳にははっきりと聞こえたのだ。
カオルが書いた手紙の最も重要な部分──その最後の一文が──。
□
「シルヴァ。ここでいいんだな?」
涼邑零は鋼牙も来た不思議な穴の前でそれを見上げていた。
「ええ……でも、ここは北の管轄ね」
「これはホラーじゃない……もっと強大な力みたいだ。彼らだけじゃ勝てないよ」
「それもそうだけど……あなたも死ぬわよ」
「大丈夫。ザルバ(友)もシルヴァ(家族)もいる」
シルヴァはやれやれ、という顔をしながら零とともに穴の中に突っ込んだ。
□
「閉ざされる前に来てしまったか……」
闇の支配者は鋼牙の登場にため息をついた。
この予期せぬ客人が歴史を大きく狂わせてしまうかもしれない。
「この穴は一体なんだ?」
鋼牙は問うた。
しかし闇の支配者は答えない。
「答えろ!」
「……その事に関しては知らない。だがお前の存在が邪魔になる可能性は高い」
邪神が咆哮をあげた。
「鋼牙。アレが強力な邪気を発している。気をつけろ!」
「わかった。アレを倒せばいいんだな」
ホラーにも似たその巨大かつ不気味に蠢くその姿に鋼牙も少し恐怖を感じる。
だがすぐにそれを押し殺し、鋼牙は剣を抜いた。
「いくぞ」
触手が鋼牙に向かってムチのように振り下ろされる。
触手の数は戦闘中に数えられるほど少なくない。
同時に振り下ろされる事もある。
だが鋼牙はそれを綺麗にかわす。
そして触手は剣によって斬られる。
「鋼牙。これじゃあキリがないぜ」
「ああ。どこかに急所があるはずだ」
鋼牙は触手の上を走り、本体に近づいていく。
だが他の触手が鋼牙を叩き落とした。
「グァッ!」
強い力で地面に叩きつけられた足は強烈な痛みで立つ事すらも辛くさせる。
「大丈夫か鋼牙」
もう一人の魔戒騎士が触手の上を鋼牙のように走ってきた。
──零だ。
「鎧を召還した方がいいな、鋼牙」
「言われなくてもわかっている」
二人の魔戒騎士は同時に鎧を召還した。
金と銀。二つの光が燦然と輝いた。
最終更新:2008年11月27日 16:18