「やあ、元気だったかい?…と、聞くほど時間も立ってないな…」
ジェスさんの言う通り、別れてから、まだ一週間しか立っていない。
でも、私にはまるで何年も立ったような気がします。
そこはジェスさんの泊まっているホテルのロビーでした。
笑いながら、ジェスさんは続けます。
「ほんと、オーブって、いいとこだよなぁ。飯はうまいし、ホテルはただ。ずっとここにいてもいいな」
…あの、ホテルがただなのは、ジェスさんが私を助けた功績で、カガリ様が手配してくれたから、なんですが…。ついでにいうと、ここはオーブで一番高いホテルで、ご飯がおいしいのは当たり前です。
「あの…」
でも、そんな突っ込みより、私はジェスさんに聞いてもらいたいことがある。オーブに着いてから、知ったこと、なにより、親友の2人に起こったこと。
「まあまあ、慌てない、慌てない。取りあえず、俺の部屋で、ルームサービスでも取って、食べながら話そう」
確かに、お昼時だし、お腹は空いてきたような気がします。って、そんな場合じゃない。私はジェスさんに…。
「まあまあ、ここじゃ、オマケが沢山いるしね」
そう言って、ジェスさんはウィンクした。
ーオマケ?なんのオマケ?
ジェスさんの言う通り、別れてから、まだ一週間しか立っていない。
でも、私にはまるで何年も立ったような気がします。
そこはジェスさんの泊まっているホテルのロビーでした。
笑いながら、ジェスさんは続けます。
「ほんと、オーブって、いいとこだよなぁ。飯はうまいし、ホテルはただ。ずっとここにいてもいいな」
…あの、ホテルがただなのは、ジェスさんが私を助けた功績で、カガリ様が手配してくれたから、なんですが…。ついでにいうと、ここはオーブで一番高いホテルで、ご飯がおいしいのは当たり前です。
「あの…」
でも、そんな突っ込みより、私はジェスさんに聞いてもらいたいことがある。オーブに着いてから、知ったこと、なにより、親友の2人に起こったこと。
「まあまあ、慌てない、慌てない。取りあえず、俺の部屋で、ルームサービスでも取って、食べながら話そう」
確かに、お昼時だし、お腹は空いてきたような気がします。って、そんな場合じゃない。私はジェスさんに…。
「まあまあ、ここじゃ、オマケが沢山いるしね」
そう言って、ジェスさんはウィンクした。
ーオマケ?なんのオマケ?
要領を得ないいまま、私はジェスさんに従いました。
部屋に着くなり、いきなり、ラジオをフルボリュームにする、ジェスさん。
ーう、うるさーい。慌てて、耳を塞ぐ。と、目の前にベッドフォンのようなものが。
見ると、ジェスさんが差し出している。ジェスの耳にも、同じ物が。
取りあえず、急いでつけると、途端にラジオの音が聞こえなくなった。
ーふー。
『聞こえるかい?』
思わず、溜め息を吐いた、私の耳元から、ジェスさんの声がした。
よく見ると、ヘッドフォンは線で繋がっていて、マイクもついていた。
『まあ、あんまり、意味はないけど、盗聴防止にね』
苦笑する、ジェスさん。
『…盗聴されてるんですか?』
『ほぼ、間違いなくね。ついでに言うと、君も俺もずっと監視されてる』
『ー!?じゃ、さっきも?』
頷くジェスさん。
…全然気が付かなかった。
というか、夢にも思わなかった、尾行されてるなんて。
『テロリストに接触した者は、テロリスト、そういう考えなんだ、奴らは』
ーでも、でもカガリ様は、本気で謝ってくれた。…あれも、嘘?
『…主席の意志なんか関係ない。奴らは、奴らの仕事をする、ただそれだけさ』
『…奴ら?』
『…治安警察』
部屋に着くなり、いきなり、ラジオをフルボリュームにする、ジェスさん。
ーう、うるさーい。慌てて、耳を塞ぐ。と、目の前にベッドフォンのようなものが。
見ると、ジェスさんが差し出している。ジェスの耳にも、同じ物が。
取りあえず、急いでつけると、途端にラジオの音が聞こえなくなった。
ーふー。
『聞こえるかい?』
思わず、溜め息を吐いた、私の耳元から、ジェスさんの声がした。
よく見ると、ヘッドフォンは線で繋がっていて、マイクもついていた。
『まあ、あんまり、意味はないけど、盗聴防止にね』
苦笑する、ジェスさん。
『…盗聴されてるんですか?』
『ほぼ、間違いなくね。ついでに言うと、君も俺もずっと監視されてる』
『ー!?じゃ、さっきも?』
頷くジェスさん。
…全然気が付かなかった。
というか、夢にも思わなかった、尾行されてるなんて。
『テロリストに接触した者は、テロリスト、そういう考えなんだ、奴らは』
ーでも、でもカガリ様は、本気で謝ってくれた。…あれも、嘘?
『…主席の意志なんか関係ない。奴らは、奴らの仕事をする、ただそれだけさ』
『…奴ら?』
『…治安警察』
『で、俺に話したいことって?』
唖然としている、私に、ジェスさんの声が掛かる。そうだ、私は…。
それから、私は話しました。私の親友に起こったこと、私がかの地で見たことがまるで知らされていないこと。
ジェスさんは時々、相づちをしながら、聞いてくれた。
『…それで?』
全部、話終わった時のジェスさんの言葉。
『…それでっ、て?…』
『…ソラちゃん、そんなことは、世界では日常茶飯事なんだ』
ー!!
『…だれかがテロリストにされ、あったことがなかったことにされる、今はそんな世の中さ』
悲しそうに、悔しそうに、ジェスさんは言う。
もし、私がシンさんに連れて行かれなければ、チーちゃんとハーちゃんがあんな目に有っていなければ、ジェスさんの言葉に、なにも思わなかったろう。いや、それどころか、警察に通報したかも知れない。
でも、私は見てしまった、気付いてしまった。この平和な世界の、綻びに。
…でも、本当にそうなの?
もしかしたら、もしかしたら、チーちゃんのお父さんは、本当にテロリストだったのかも知れない。私のいたあの地だけ、特別だったのかも知れない。目の前のこの人は嘘を吐いているかも知れない。
私の頭の中に疑念が渦巻きました。
唖然としている、私に、ジェスさんの声が掛かる。そうだ、私は…。
それから、私は話しました。私の親友に起こったこと、私がかの地で見たことがまるで知らされていないこと。
ジェスさんは時々、相づちをしながら、聞いてくれた。
『…それで?』
全部、話終わった時のジェスさんの言葉。
『…それでっ、て?…』
『…ソラちゃん、そんなことは、世界では日常茶飯事なんだ』
ー!!
『…だれかがテロリストにされ、あったことがなかったことにされる、今はそんな世の中さ』
悲しそうに、悔しそうに、ジェスさんは言う。
もし、私がシンさんに連れて行かれなければ、チーちゃんとハーちゃんがあんな目に有っていなければ、ジェスさんの言葉に、なにも思わなかったろう。いや、それどころか、警察に通報したかも知れない。
でも、私は見てしまった、気付いてしまった。この平和な世界の、綻びに。
…でも、本当にそうなの?
もしかしたら、もしかしたら、チーちゃんのお父さんは、本当にテロリストだったのかも知れない。私のいたあの地だけ、特別だったのかも知れない。目の前のこの人は嘘を吐いているかも知れない。
私の頭の中に疑念が渦巻きました。
ー知りたい。
私は、痛烈に思いました。この世界の真実を、知りたい。なにが正しくて、なにが悪いのか。
私が言うと、ジェスさんは真剣な顔で訊いてきました。
『本当に、知りたいのかい?…もしかしたら、そのために、命を落とすかも知れない…。それでも?』
一瞬、躊躇しました。…でも。
私は、チーちゃんとハーちゃんを思いました。連れ去られてしまった、チーちゃん。泣いていた、ハーちゃん。
もしかしたら、もしかしたら私が原因なのかも知れない。私が、テロリストにされたから…。
『はい』
私は力を込めて頷きました。
―私は真実が、知りたい。
『…真実は教えられるものじゃない、自分の目で見て、耳で聞いて、判断するもの、少なくとも、俺は、そう思う』
ジェスさんは、遠くを見つめるようにして、言いました。
そして、私に向き直り尋ねました。
『…このまま、オーブにいても真実は見えないだろうな。それで君はどうしたい?』
『…リバイブに、戻りたいと思います』
『レジスタンスか、でも、どうして、リバイブなんだい?』
少し、楽しそうな顔をして、ジェスさんは訊いてきます。きっと、私がなんと応えるか、分かっている、そんな顔をしています。
私は、痛烈に思いました。この世界の真実を、知りたい。なにが正しくて、なにが悪いのか。
私が言うと、ジェスさんは真剣な顔で訊いてきました。
『本当に、知りたいのかい?…もしかしたら、そのために、命を落とすかも知れない…。それでも?』
一瞬、躊躇しました。…でも。
私は、チーちゃんとハーちゃんを思いました。連れ去られてしまった、チーちゃん。泣いていた、ハーちゃん。
もしかしたら、もしかしたら私が原因なのかも知れない。私が、テロリストにされたから…。
『はい』
私は力を込めて頷きました。
―私は真実が、知りたい。
『…真実は教えられるものじゃない、自分の目で見て、耳で聞いて、判断するもの、少なくとも、俺は、そう思う』
ジェスさんは、遠くを見つめるようにして、言いました。
そして、私に向き直り尋ねました。
『…このまま、オーブにいても真実は見えないだろうな。それで君はどうしたい?』
『…リバイブに、戻りたいと思います』
『レジスタンスか、でも、どうして、リバイブなんだい?』
少し、楽しそうな顔をして、ジェスさんは訊いてきます。きっと、私がなんと応えるか、分かっている、そんな顔をしています。
『…ジェスさんは言っていましたよね。
大抵のレジスタンスはただのテロリストでしかない、ラクス・クラインは悪で、だから、自分たちは正義だと、それだけしか、言わないって』
ジェスさんは軽く頷く。
『そう、だから、自分たちは、なにをしてもいいと思っている奴もいる。
もっとも、俺が会ったのは組織のトップがほとんどで、下の人間がどう思っているかは知らない。
ま、上がそれでは、下も推して計るべしだけどね』
『…でも、あの仮面さんは、ちょっと違った…』
『…そう、あの変態仮面は言ったさ。
ラクス・クラインの正義は認める、ただ、彼等の正義だけが、正義でないことを、彼等の正義が悪になってしまっているところもあることを、教えたい、て。
もっとも、聞いてくれないから、結局、武力行使になる、て笑ってたけどな』
『…うまく、説明できないかも知れないけど。自分が正義、相手が悪、と決めてしまったら、もうおしまいだと思うんです。
もし、変態仮面さんが本当にそう考えているのなら、なにが良くて、なにが悪いのか、あの人なりに考えているんだと、思うんです。
だから、あそこに行けば私も少しは真実に近づける、そんな気がするんです』
大抵のレジスタンスはただのテロリストでしかない、ラクス・クラインは悪で、だから、自分たちは正義だと、それだけしか、言わないって』
ジェスさんは軽く頷く。
『そう、だから、自分たちは、なにをしてもいいと思っている奴もいる。
もっとも、俺が会ったのは組織のトップがほとんどで、下の人間がどう思っているかは知らない。
ま、上がそれでは、下も推して計るべしだけどね』
『…でも、あの仮面さんは、ちょっと違った…』
『…そう、あの変態仮面は言ったさ。
ラクス・クラインの正義は認める、ただ、彼等の正義だけが、正義でないことを、彼等の正義が悪になってしまっているところもあることを、教えたい、て。
もっとも、聞いてくれないから、結局、武力行使になる、て笑ってたけどな』
『…うまく、説明できないかも知れないけど。自分が正義、相手が悪、と決めてしまったら、もうおしまいだと思うんです。
もし、変態仮面さんが本当にそう考えているのなら、なにが良くて、なにが悪いのか、あの人なりに考えているんだと、思うんです。
だから、あそこに行けば私も少しは真実に近づける、そんな気がするんです』
『…でも、私にはどうやって、あすこに行けるか、分からないんです』
どんな決意をしたところで、結局のところ、私はたった15の無力な小娘にしか過ぎない。私は首をうなだれました。
『だいじょうぶ、それはなんとかできる』
ジェスさんは笑って答えました。
『ほんとですか?』
『ああ、まかしとけ』
ジェスさんは胸を叩きました。
それを見ながら、私は少し不思議に思いました。
『どうして、ジェスさんはこんなわたしに力を貸してくれるんですか?』
『ん?』
一瞬、ジェスさんは怪訝そうな顔をしました。
『…なんでだろ?面白そうだから、かな?』
…って、おい。
『…と、いうのは半分冗談。…君と俺は似ているのかも知れない』
『似ている?』
ジェスさんは真剣な顔をして言います。
『俺も君も真実を求めてる。きっと、人はその想いを分かってくれない。でも、俺は知りたい、君もそうなんだろう?』
私は頷いた、力強く。
『その想いに、歳も性別も関係ない。だから、俺は君に協力する。…君が君の探す真実にたどり着くことを願って』
そう言うと、ジェスさんは私に手を差し出しました。
私はなにも言わずにジェスさんの手を強く握りました。
どんな決意をしたところで、結局のところ、私はたった15の無力な小娘にしか過ぎない。私は首をうなだれました。
『だいじょうぶ、それはなんとかできる』
ジェスさんは笑って答えました。
『ほんとですか?』
『ああ、まかしとけ』
ジェスさんは胸を叩きました。
それを見ながら、私は少し不思議に思いました。
『どうして、ジェスさんはこんなわたしに力を貸してくれるんですか?』
『ん?』
一瞬、ジェスさんは怪訝そうな顔をしました。
『…なんでだろ?面白そうだから、かな?』
…って、おい。
『…と、いうのは半分冗談。…君と俺は似ているのかも知れない』
『似ている?』
ジェスさんは真剣な顔をして言います。
『俺も君も真実を求めてる。きっと、人はその想いを分かってくれない。でも、俺は知りたい、君もそうなんだろう?』
私は頷いた、力強く。
『その想いに、歳も性別も関係ない。だから、俺は君に協力する。…君が君の探す真実にたどり着くことを願って』
そう言うと、ジェスさんは私に手を差し出しました。
私はなにも言わずにジェスさんの手を強く握りました。