「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

いつか、その時が

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
「……ルナ……ステラ……」
苦しそうな青年の声でまどろみから目を覚ます。またか、と心の中でつぶやく。
自分と向かい合うシートで仮眠を取っている青年は、この数年間生死や苦楽を共にしてきたパートナーだ。
そのパートナーが、自分の知らない女性の名をうわ言で口にするのに、少し胸が痛む。
青年とは、恋人でも、将来を誓い合った仲でもないが。
そんな仲ではないが――だからと言ってそのうわ言に少し胸が痛むのは、パートナーに対してかつての恩義だけではないものが自分の内にあるからだ。
とは言えこれまで青年は苦しげな寝言で、両親の事や男性名も口にしている。
恐らくは、失った家族やかつての仲間達、恋人の事であろう。
そして、それらの事が今のこの青年の原動力である事は理解している。
辛い過去は簡単に癒せない。そんな彼の辛い記憶に嫉妬するのは情けない。
そう思ったら、小さな嫉妬心は霧散していく。
それに――


青年がうなされるのは、仮眠時に自分が近くにいる時のみの様だ。
「もしかして、少しは自惚れてもいいのかな?」
少なくとも自分と青年だけでなく、3人以上居る時は彼はうなされていない。
青年が一人で寝ている時は知りようもないが。
「……この馬鹿」
言いながら、青年の毛布を掛け直す。
「……辛いんだったら愚痴の一つや二つ、起きている時に言ってくれても構わないんだからね」
優しく青年の寝顔を見つめてながらつぶやく。
先程頭によぎった事を反芻する。
この青年とは、恋人でも将来を誓い合った仲ではない。そんな仲ではない――でも、いつかは。
そう、いつかその時が来る、と思いたい。そんなことを考えながら、自分も毛布を掛けなおし、眠りにつく事にし た。


              (了)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー