「シンさん」
デスティニー・ブラストに乗り込もうとする俺の元へ向かうためにソラが壁を蹴り、
懸命に手を伸ばす。
懸命に手を伸ばす。
俺は自分に向かって伸ばされたその手を引き寄せ、抱きしめた。
俺の顔を覗き込んでくる彼女はどこか心細そうな瞳で俺を見つめている。
いつも明るい笑顔で皆を和ませているのに、最近は沈んだ顔ばかりで。
俺の顔を覗き込んでくる彼女はどこか心細そうな瞳で俺を見つめている。
いつも明るい笑顔で皆を和ませているのに、最近は沈んだ顔ばかりで。
「帰って、きますよね?」
「当たり前だろ」
ソラを抱きしめる腕に力を込めた。
ソラを抱きしめる腕に力を込めた。
あの日俺が捕まってから、ソラは変わった。表面上は穏やかだが、
俺が出撃する度に同じことを繰り返し聞いてくる。ソラの「シン・アスカの消失」という不安は
俺がいくら「大丈夫」といっても、決して拭いされない類のものとなってしまったのだ。
俺が出撃する度に同じことを繰り返し聞いてくる。ソラの「シン・アスカの消失」という不安は
俺がいくら「大丈夫」といっても、決して拭いされない類のものとなってしまったのだ。
「もう出るから‥」
「―――はい」
体を離すとソラは何を考えたのか、静かに顔を上げ、眼を閉じた。
―――はぁ?
見てるやつには俺は面白いくらいとんでもなく赤い顔をしているんだろう。
見てるやつには俺は面白いくらいとんでもなく赤い顔をしているんだろう。
キスしなくちゃいけないのか?ここで?皆が見てるのに?
抱きしめあってる時から感じてはいたが、ソラのこの姿勢に更に集まる視線が痛い。
針のムシロという言葉を実践体験している俺とは裏腹に、ソラの方は平然と俺を待っている。
針のムシロという言葉を実践体験している俺とは裏腹に、ソラの方は平然と俺を待っている。
周囲を見渡せば、機体にに乗り込もうとしている大尉と眼が合った。
やっちまえ、とジェスチャーされた。
他の整備士たちも「お構いなく!」という顔で笑っている。
おいお前ら、それならこっちを見てないで機体の中に入るなり準備なり何なりしてくれ。
ナラ、お前ソラが好きなら抗議しろ。何でサイに猿轡されてんだ。
おいお前ら、それならこっちを見てないで機体の中に入るなり準備なり何なりしてくれ。
ナラ、お前ソラが好きなら抗議しろ。何でサイに猿轡されてんだ。
「…………」
やはり自分には人前でキスはできない、と結論付けてソラの額に唇を落とすと、
周囲からは歓声とブーイング。
ソラからは「普通おでこにキスなんてします?」
とすねた口調で返事が帰ってきた。
周囲からは歓声とブーイング。
ソラからは「普通おでこにキスなんてします?」
とすねた口調で返事が帰ってきた。
「人前でそんな恥ずかしい真似が出来るわけないだろっ!」
む~と、ソラは頬を膨らませていたが、何か思いついたらしく俺に顔を寄せ、
「じゃあ帰ってきたら、今度はここに。キスして下さいね?」
「じゃあ帰ってきたら、今度はここに。キスして下さいね?」
人差し指を唇にあてて、いたずら好きの子どもの様に屈託のない笑顔を見せる。
本人に一生言うつもりはないが、年齢以上に幼く見える、ソラのこの笑顔が俺は一番好きだ。
本人に一生言うつもりはないが、年齢以上に幼く見える、ソラのこの笑顔が俺は一番好きだ。
ああ、やっぱりソラは俺の事で悩んで沈んでるよりも、笑ってる方がいい。
俺はソラにああ、と約束しコックピットに乗り込んだ。
俺はソラにああ、と約束しコックピットに乗り込んだ。