「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

激突

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 虚空の戦場を、アスランの操るトゥルージャスティスはひたすらに翔る。背部にミーティアを接続したその姿は、戦車(チャリオット)を駆る古代の戦士のようにも見えた。

 直率する5機のストライクブレードを従者の如く従え、目指すのはアメノミハシラ防衛軍の中枢である軍事ステーション<イワト>。

「いまだイワトから降伏の申し入れは無いのだな」

 旗艦で指揮を代行しているアマギ准将にアスランはもう一度、確認の通信を入れる。

『は、何も』

 敵味方双方が行っている電子戦のためひどく乱れた音声と映像だったが、内容は明瞭だった。

「そうか」

 小さく呟き、アスランはイワトを睨みつけた。

 いまだ頑強な抵抗を続けるアメノミハシラ防衛軍も、指導者であるロンド・ミナ・サハクを失えば手を上げるだろう。そうすれば、無益な戦闘は終わる。

 何を躊躇う――不意にアスラン自身の一部が哄笑した。メイリンの命を、誰が奪ったか忘れた訳ではあるまい? お前には正当な権利と力がある。さあ、存分に復讐を――

「くっ」

 頭を振り、あまりにも蠱惑的な思いを振り切る。俺が戦うのは、そんな理由なんかじゃない。

 その時だった。ジャスティスの高性能なレーダーが、Y軸方向から急接近する反応を捕らえたのは。

「各機、散開!」

 咄嗟の判断で、アスランは命じる。一瞬遅れて、強烈なビームが虚空を薙ぎ払った。




「ち、さすがに反応がいい」

 新たなる愛機――デスティニーブラストのコクピットで、シンは小さく舌打ちした。

 接敵と同時に有効射程ギリギリから、最大出力のタスラムで先制攻撃をかけたのだが、戦果は2機のストライクブレードを巻き込めたのみ。本命のジャスティスにはかすりもしなかったようだ。

 一直線にイワトへと向かうジャスティスを残し、3機のストライクブレードがこちらに向けて転進する。アサルト、レイダー、バスターが各一機づつ。バスターの援護射撃の下、突撃を図るアサルトブレードとレイダーブレイド。

「邪魔だ」

 両手で左右の肩からアンサラーを抜き放ち、前方の2機に向け投擲する。

 鋭利かつ不規則な軌道に幻惑されたのか、アサルトブレードが直撃を受けて腰斬される。レイダーブレードはさすがに高機動機らしく巧みなロールで回避するが、その動きはシンの予想範囲内だった。

 腰にマウントしていたビームライフルを構え、三点射で追い討ちをかける。一発目がかわされ、二発目がシールドに防がれたものの、最後の三発目が見事に機体を撃ち抜いた。

 瞬時に僚機を失ってもなお、バスターブレードのパイロットは勇敢だった。急加速するデスティニーの姿に接近戦の不利を悟ったのか、思い切り良くストライカーパックを切り離すと、ビームサーベルを抜いて斬りかかる。

 だが、無謀だった。デスティニーはライフルを腰に戻すと、両手で戻ってきたアンサラーをキャッチ、そのままサーベルとして起動する。

 振り下ろされるバスターのサーベルを左の一刀で手首ごと斬り飛ばし、そのまま右の一刀を容赦なくコクピットに突き立てる。

「いくぞ、アスラン!」

 僅か57秒――1分足らずで掃討したストライクブレードの残骸には目もくれず、シンとデスティニーはひたすらに雄敵を目指した。




 アスランは軽く混乱していた。突如現れ、手塩にかけた部下を瞬殺したMS、アメノミハシラの切り札であろうその機体に、見覚えがあったのだ。

 禍々しいまでに鋭角的な、力強いシルエットは未見の物だ。だが基本的な意匠――GATシリーズやセカンドシリーズの流れを汲む特徴的な頭部、翼を思わせるメインスラスター、背の対艦刀と大型ランチャーは――

「あれは、デスティニー!?」

 100mに達する巨体を軽やかに反転させ、ジャスティスが敵機に向き直る。アスランの脳裏で、パイロットとしての本能が警告する。アレは容易ならぬ敵だ、全力で討て、と。

「おおおっ!!」

 ミーティアの全兵装が火を噴いた。主砲、副砲、無数のミサイルに加え、ジャスティス本体のフォルテスビーム砲も唸りを上げた。

 全門斉射(フルバースト)。だが、艦隊一つを鏖殺して余りある超火力の中に、そのMSは恐れる色も無く飛び込んだ。

 ありとあらゆる戦闘機動を駆使して濃密な火線を避け、かい潜り、あるいは両手のビームシールドで捌く。

 無謀なまでに大胆な、だが見事なマニューバ。あのMSを操っているのは、やはり――

「シン、お前なのか!?」




 不意に、空間を飽和させていたエネルギーの奔流が終息した。つかの間の静寂を取り戻した宇宙で、だがシンはかすかに身震いする。

 砲撃が止んだ理由は一つしか考えられない。アスランが、あのMS近接戦闘の鬼が、いよいよ本領を発揮するのだ。

 シンの読みは正しかった。ミーティアから左右に伸びた、馬上槍を思わせる長大な砲身。その先端に、巨大なビームサーベルが形成されたのだ。

 左右の大型ビームサーベルを振りかざし、高速で迫り来るジャスティス。デスティニーもまた背のフラガラッハを抜き放ち、腰溜めに構えて加速する。

 ジャスティスが左右のサーベルを繰り出す。右のサーベルはデスティニーを粉砕せんと正面から振り下ろされ、左のサーベルは一拍置いて緩やかに弧を描く。

 巨体からは信じられないほど、巧緻かつ精妙な連撃。だが、シンもまた5年前の彼ではなかった。

 慣性を無視したかのような急制動と急加速で右の斬撃に空を切らせ、左からの一撃に合わせてフラガラッハを跳ね上げる。

 大剣と巨剣が交叉する。渡り合う事ただ一合。ミーティアの左砲身は、半ばから断ち切られた。

「もらったあ!!」

 高速ですれ違いざま、デスティニーはブリューナクを起動させた左掌をミーティアに押し付ける。シンがトリガーを引くと同時に、零距離で放たれた大出力のビームがミーティアを貫通、内部から焼き尽くした。

 急速離脱したデスティニーの背後で、ミーティアの巨体が火球と化す。

「やったか!?」

 だが次の瞬間、爆光を裂いて真紅の影が躍り出した。言わずと知れたトゥルージャスティスだ。至近距離で爆発に巻き込まれたにも関わらず、その機体に目立った損傷は無い。

 全身に装備された十を超える光刃が、怒りに震えるが如く明滅する。

「アァァァスラン・ザラァァァッ!!」

 そうだ、そうこなくては――湧き上がる闘争心を押さえもせず、シンは激情のままに吼えた。デスティニーの右手に構えられたフラガラッハが、真っ直ぐジャスティスに突き付けられる。

「見たか、これがデスティニーブラストだ!! これが俺たちの力だ!! お前たちの世界を、運命を運命を打ち砕くための剣だ!! かかって来い、アスラン!!」

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