「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

馬鹿と魔女

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だれでも歓迎! 編集
ーーー本当は、みんな助けたかったんだーーー


 「・・・はっ!!」
 ーーー動悸が荒い。
 「夢・・・か・・・。」
 生々しい、妙にリアルな夢。・・・それでいて、その光景は見た事もない。
 まるで、これから起こる事の様な・・・。
 「・・・馬鹿馬鹿しい。」
 アスラン=ザラは頭を振ってシャワーへ向かう。熱いお湯を浴びて、頭を
スッキリさせたかった。

 アスランがカガリ付きの護衛兼オーブ教導大隊の指揮官に就任して既に1年
が経過、多忙な毎日を送っていた。何しろ、
 「・・・この案件は、私自身が見ておきたい。」
 「今回の慰問については、私も同席する。」
 等という突発的な思いつきで行動するカガリに振り回されまくるからである。
 アスランは一応とはいえ護衛長官も兼ねているので(人手不足の折、何でも
やらなくてはならない。)神経の休まる暇も無い。
 (・・・胃が痛い・・・。)
 護衛たる者、有事があってはならない。完全主義者たるアスランに、手を抜く
謂われは無い。もっとも、カガリが「動物園に挨拶に行った」時にまでSPを
大動員させる事は無いとは思うが・・・。
 (最近、メイリンとも逢ってないな・・・。)
 メイリンとお揃いのロケットを開くと、そこには仲睦まじい自分とメイリンの
結婚直後の写真があった。嬉しそうに微笑むメイリン、それを見てやはり微笑む
自分。あの日、あの時自分達がもっとも幸せだと思えた瞬間。


 ・・・それが変わり始めたのは、いつからだろう。
 何気なくアスランがメイリンに「今日の仕事」の話をしていた時・・・突然、
破局が訪れた。
 「・・・もうイヤ!!!」
 ばあんと、メイリンがテーブルを叩いた。豪華な料理がひっくり返り、高級
品のワインが床に落ちて転がる。
 「・・・何をするんだ!?」
 アスランも、語気が荒くなる。
 「いっつも、いつも・・・カガリ、カガリ、カガリ!!何なの、ソレ!?今日
はやっと久しぶりに逢えたのよ!?一生懸命カガリ様のために働いて、やっと取
れた休みなのよ!?なのに・・・なのに、何なのよ!?」
 「何を誤解して居るんだ!?俺は仕事の愚痴をしてただけ・・・!」
 「嘘!じゃあ何でそんなに楽しそうにしてるのよ!?私と居る時より嬉しそう
にして・・・!」
 メイリンは何時しか泣き出していた。狼狽えるアスラン。
 「私を見てよ!私と居る時ぐらい・・・!」
 そう言って、メイリンは駆け出す。
 「メイリン!」
 慌ててアスランも追うが、メイリンが自室に飛び込む方が早かった。

 どんどんどん、とドアを叩き続ける音がする。
 「メイリン、開けてくれ!誤解だ、誤解なんだ!」
 アスランの必死な弁明。だが、メイリンには届かない。
 「何よ・・・何よ!カガリ・・・みんな、持ってる癖に!私にないもの、みんな
持ってる癖に!!私には、何もないのよ!?誰も居ないのよ!?アスランくらい・・・
良いじゃない・・・・・・。」
 メイリンはシーツに丸まり、何かに怯えるかの様に震えていた。

 「メイリン、開けてくれ!メイリン・・・!」
 アスランは、まだ叩き続けていた。爪が割れ、血が滲む。それでも構わず。
 「俺には、君が必要なんだ!・・・君だけなんだ、もう!」
 ーーー君ダケナンダ?
 「俺は・・・俺は、ミネルバの皆は好きだった。皆、元気があって、若さがあって・・・好きだったんだよ。俺にとって、皆大事だったんだ・・・。」
 ーーーミネルバ?
 「ヴィーノも、ヨウランも、ルナ・・・君のお姉さんも助けたかったんだ。・・・
俺が、殺した様なもんだ。・・・何がザフトレッドだ。何が前大戦の英雄だ!
俺が、何を守れたっていうんだ!!??」
 ーーールナ姉サン・・・。

 ーーーこの人は、馬鹿だ。
 目に映る人全てを助けようとしてる。そんな事、出来るわけ無いのに。
 それでも努力して、努力して、努力して・・・報われない事、知ってるのに。
 ・・・それでも諦めきれないんだ、この人は。
 その思いは、何故かーーーメイリンには心地よく、理解出来るものだった。

 ーーーこの人の事は、私が一番理解出来るーーー。


 ・・・何時間、経ったろうか。
 不意に、メイリンとアスランを隔てていた扉が開く。
 アスランは、がばっと身を起こした。疲れ切って、しゃがみ込んでいたのだ。
 メイリンは、アスランのそばにより、両手を伸ばす。
 「アスラン・・・。」
 「メイリン・・・。」
 二人とも、しばし無言でーーー自然にキスをした。
 ややあって、メイリンが口を開く。
 「・・・ねえ、アスラン。私、貴方のために平和な世の中を創ってみせる。誰も
泣かないで住む世界を創ってみせる。・・・そのためなら私、何でもするわ。カガ
リ様のやり方じゃ、平和な世の中は創れない。・・・時間が掛かりすぎるのよ。
 ・・・見ててね、アスラン。貴方のために平和な世の中を創ってみせるわ・・・。」
 メイリンの瞳は、何処かアスランと違うものを見ていた。だが、アスランにもこれだ
けは理解出来た。理解出来てしまった。
 (・・・この子は、ああ、この子は・・・俺の歪みを・・・。)
 この瞬間、ようやくこの二人は『夫婦』になった。だがそれは同時に、男女として
永遠の別れを表していた・・・。

 ーーーこの日、『治安警察の魔女』と呼ばれる女性が生まれたーーー

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