「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

ラクスとソラ

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 ……それは、ある秋の日の事だった。
 キラとラクスは立て込んだ式典を終え、ようやく二人の時間を持つ事が出来た。取り敢えず侍従の持ってきてくれた紅茶とケーキで、少し遅めの午後の茶会にする。
 「……参ったね。元ブルーコスモスと言われたレントス候が、僕に握手を求めてくるとはね…。」
 キラは、まるで不思議なものを見たかのような反応だ。
 「仕方がありませんわ。彼らは今、私達を頼るしか生きる術が無いのですから……。」
 ラクスは困ったように言ってみせる。……最も、今のラクスにはどうでも良い話なのだが。
 「彼らの主義・主張って何のためのものだったのかな…。」
 ぼんやりと、キラ。………本当に政治には無頓着なのだ。そんなキラをラクスは少し窘める様に、しかし諭すように言う。
 「……政治とは、理想のぶつけ合いに見えても、実際は『経済の綱引き』という事ですわね。政治家とは理想家に見えても、思考はあくまでも現実的。…ブルコスに旨味が無くなったから私達の所に流れてきただけですわ。」
 「手厳しいね。」
 「“優しさ”と“甘さ“は政治の世界では天地ほどの隔たりがあります。……あら、このケーキは甘いですわね……。」
 キラが政治に興味が無いのは、ラクスには解りきっていた。なので、早々に政治の話は打ち切るとケーキに集中する。キラも興味を失ったように、ケーキを食べ始めた。

 「…キラは、この世界の『根本的な問題』に気が付いていらっしゃいます?」
 唐突にラクスが口を開いた。
 「……藪から棒だね。食糧危機?」
 紅茶を片手に、キラ。にべもなく、ラクスは首を振る。
 「違います。」
 「………エネルギー問題?確かに、ニュートロンジャマーは問題だと……。」
 「その二つは、ほとんど同じ問題ですわ。………数年での解決は難しいですが、10年もあれば解決の目処は立ちます。」
 キラは、頭をぽりぽりとかいて、ラクスに頭を垂れた。
 「………先生、解りません。」
 ………とても最強のコーディネイターには見えない。
 ラクスはしばらくクスクス笑っていたが、ふと真面目な顔になってキラにこう言った。
 「私達、コーディネイターの存在………それが、この世界の本当の問題なのですわ………。」

 コーディネイター。なんと人のエゴに満ちた存在である事か。
 『人の革新』として生まれたコーディネイター。だが、それは新たな権力闘争の火種となっていっただけの事だった。
 集団の中に生まれた、生まれながらのエリート。努力を知らず、環境に適応出来る者達。それは、宇宙空間という厳しい生活空間のために生まれざるを得なかった鬼子でもある。だが、その者達は出生からして問題を山積させるに至っていった。
 ―――優秀な人材は、金がかかる。
 もはやこの事実だけで、限り無い差別。人類が行った初めての『進化』は、人という存在に問題を提起するだけに飽きたらず、只でさえ広がっていた貧富の格差に止めを指すかのようであった。
 加えて、コーディネイターを種族として存続させるためには『理想的な交配』が必要であった。コーディネイターの国家であるプラントに厳然と存在する『婚姻統制制度』は紛れもなく時代を逆行させる制度で、強制力こそ無かったが『婚姻統制制度に参加しなければ満足な出産が見込めない』となれば、是非も無かった。
 要するに、種族としてコーディネイターは極めて不完全な存在だった。彼らを支えたのは『ナチュラルよりも優秀な人材』という事実に裏付けられたプライドによるものであり、それはナチュラルとの自発的な決別を意味していた。ナチュラルとコーディネイターが相争うのは自明であり、必然であったのだ。

 「…この問題が解決されない限り、私達が居なくなったとしても戦争は決して終わりません。得られるのは『次の戦争のための小休止』という平和のみで、心から怨嗟が取り除かれる事は無いでしょう………。」
 ラクスは、悲しそうにそう締めくくった。キラは黙ってそれを聞いていた。・・・が、ややあって口を開いた。
 「………でも、君は解決策を見つけたんだね………。」
 ハッとして、ラクスはキラを見た。………普段通り、優しく微笑むキラ。
 揺るぎの無い、絶対の信頼。―――キラは、静かに頷く。それで、ラクスも決意した。
 「私達は、これから『世界の敵』になるのです。コーディネイターですら疑問を抱く、徹底した管理社会を作り、そこで人々を囲っていくのです。誰もが、世界に疑問を持てるように………。」
 キラは、少し顔を曇らせたが―――頷いた。ラクスは続ける。
 「人々は立ち上がるでしょう。『自由』を声高に。……私達に対抗するために。自らの存在意義をかけて、一握りのコーディネイターとナチュラルが手を取り合い、私達に対抗するでしょう。その者達が、私達を打ち破った時―――初めて、コーディネイターとナチュラルは垣根を越え、新たなる一歩を歩めると思うのです。」
 「………管理社会に対抗するコーディネイターは、既にコーディネイターじゃない、か………。」
 キラは、ラクスをじっと見据えていた。ラクスもまた。
 ややあって、キラはふっと力を抜いて微笑んだ。
 「どうせ、君と僕の子供は産まれない。………未来に残せるものは、何も無い。それなら、この世界の有るべき姿を模索するのも、悪くないね。………良いよ、僕の命で良ければ賭けてみよう。」
 「私達、ですわ………。」
 二人はいつしか絡み合い、一つになった。温もりだけが、彼らの拠り所だったから。

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