魔女の死 - 「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

その時、シンさんが向かった廊下の奥から、くぐもった音が響いてきました。
（銃声？）
そう気付くと同時に、わたしは持ち場を離れて駆け出しました。
「ちょっと、あんた！」
すぐ隣で退路の確保をしていたコニールさんが叫びましたが、わたしの足は止まりません。
シンさんの強さは良く知っています。でも相手は『あの』メイリン＝ザラ――治安局の魔女なのです。
どんな姦計を巡らしているか分かりません。

扉を開けたわたしの目に映ったのは、巌のように厳然と立つシンさんと、その足元に倒れた小柄な赤毛の女性の姿でした。
女性――メイリン＝ザラはお腹を撃たれていて、その顔にはわたしから見ても明らかな死相が浮かんでいました。
シンさんが、右手の拳銃をゆっくりとメイリン＝ザラに向けます。
そして彼女がすがるような目で頷くのを見た時、わたしは思わず両目をつぶってしまいました。
もう一度、銃声が響き、わたしがおそるおそる目を開けた時には、もうメイリン＝ザラは事切れていました。
『魔女』と呼ばれた女性とは思えない、穏やかな表情を浮かべたまま。

それまで無言だったシンさんが、ようやく私の方を振り向きました。
「撤退する。急げ」
命令違反を咎めるでもなく、ただそれだけを言って部屋を出るシンさん。慌ててその後を追いながら、私は思いました。
いつもと同じ大きくて逞しい背中なのに、なんでこんなに弱々しく見えるんだろう――