「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

第13話「狂戦士の明日」アバン

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シンやシホが交戦している頃、スレイプニールはコニールの案内によりリヴァイブ本部に到着していた。

「ローエングリンゲート跡地に作るとは……灯台下暗しってやつだな」

《外は残骸がそのままになってる上に入り口もカモフラージュが上手いからな、案内が無ければ見つけられなかっただろう》

作戦中だから、と作戦室から追い払われたジェスはハチを伴いリヴァイブ本部をうろついていた。慌ただしく動き回るメンバーを引き止めるわけにもいかず、かといって手伝える事も無かったからだ。

「差し支えのない範囲で良ければ、案内しようか?」

後から急に声をかけられ驚いたジェスは危うくハチを落しそうになる。

「あ、あんたは……?」

ジェスに声をかけてきた男は奇妙な風体をしていた。

少しだけ高級そうな真っ白なスーツ。これは別に問題は無い……正直自分が着ろと言われたら丁重にお断りさせてもらいたいが。

問題は彼の顔だった。顔の美醜などで驚くジェスではないが、流石に仮面を被った人間は予想していなかったのだ。

「ああ、すまない。自己紹介がまだだったね。僕はロマ=ギリアム。一応リヴァイブの代表をやらせてもらってる」

今、一番ここに居てはいけないであろう人物に声をかけられた事に驚きのあまり声が出ない。

「何で僕がここに居るのか分からないって顔してるね。単純な話さ、僕が打てる手は全て打ったからね、居ても邪魔になるだけなのさ。昔から言うだろ?『船頭多くして船山登る』って。……専門家を差し置いて門外漢が口を挟んだりしたら上手く行くものも行かなくなる」

ジェスには仮面の下の表情はわからなかったが何となくロマが一瞬悲しそうな表情をしたように思えた。……格好良い事を言っているがつまりは自分と同じように追い出されたのが悲しいのだろうか。

(こんなナリでも一応リーダーだもんなぁ、やっぱ除け者にされてる事気にしてるんだろうな)

《なんだかとても失礼なことを考えてやしないか、ジェス。ギリアム氏もお前と一緒で除け者されたんじゃないか、とか》

ハチの的確なツッコミが入る。あわてて誤魔化すジェス。ロマは聞こえてないのか、こちらのやり取りを面白そうに見ている。

「君がハチ君か、噂には聞いていたけど、確かにレイと似てるなぁ。いや、レイが『君に』似てるのかな?」

《何の話だ?》

「ああ、いやこちらの話さ。実は僕がここに来たのは君に用があったからなんだ。……別に除け者にされて寂しかったからってわけじゃないよ?」

バレバレだった。




「女の子を一人、オーブまで送ってあげて欲しいんだよ」

ロマの頼みは意外なものだった。『オーブの女の子』と『レジスタンス』。あまり関係無さそうな組み合わせだったが、ジェスは一つだけ該当する事柄を思い出した。

「女の子?そういえばあんた達、記念式典襲撃事件の時に……」

「そう、その時ちょっとした手違いでね。帰してあげたくて色々試してみたんだけど、僕達じゃうまくいかなくてね」

「……別に連れて帰るのは構わないが、正直今の情勢じゃ元の生活に戻してやれるかは難しいところだな。……最悪、治安警察に拘束されるかもしれないぜ」

デモの記事を書いただけでちょっかいをかけてくるような連中だ、レジスタンスと共に行動していた少女を連れて行くなど飢えた狼の前に生肉を置くようなものだ。素直に解放されるとはジェスには思えなかった。

「なぁに、悪党に捕らわれていたお姫様を君が必死の潜入活動で救出!……とでもすれば治安警察も世間体というものがあるし、無下にはできないよ。なんせ野次馬のジェスには『前科』が山ほどあるからね」

一瞬否定しかけたが、思い当たる節が多すぎて何も言えなくなった。

《否定したいが思い当たる節が多すぎて何も言えない。そんな顔をしているな、ジェス》

……付き合いが長いというのも考え物である。

「やかましい!……でもギリアムさん、俺がいくら主張してもその子が尋問されたら隠し通すのは難しいんじゃないか?」

「大丈夫。彼女にはリヴァイブの重要な情報は何も見せてないし、外出もさせてないから尋問しても無駄だよ。君にはここに似た作りの隠れ家の一つを教えるからそっちで救出した、って事にしてくれればいい。君は特ダネが取れて彼女は平穏な生活に戻れる。一石二鳥だと思うけど」

言動こそ軽いが真剣にその娘を帰そうと考えている姿にジェスは『ロマは信用に値する人物』だと感じていた。だがそれだけに彼が取る行動はリヴァイブにとって不利益を生み出すものでしかない。心配のあまり我知らずこんな言葉が出る。

「いいのか?そんなことしたらアンタらは……その……」

「ま、今更悪評の一つや二つ増えたところでどうって事は無いよ。なんせ僕らは『悪逆非道の反政府武装集団』だからね」

むしろニュースになるのが楽しみだと言わんばかりにロマは言った。

「折角、取材に来てくれた君達には申し訳ないけど、ね」

「その為に俺達を呼んだんだろ?それに……」

《『彼女』がただで仕事をさせてくれるわけがないからな。何かしら無理難題を吹っかけられるのは覚悟していた。気にすることは無い》

「お前が言うな!!」

「……噂以上に面白いね、キミタチ」




「また後で」そういい残して迎えに来た翡翠色の髪の女性と共にロマは去っていった。

《なんだかんだ言っていたが、リーダーというのはやはり忙しいものだな……お前と違って》

「余計なお世話だ!まったく、厄介事が次から次と……」

《口ではそう言ってるが顔が笑ってるぞ、ジェス。……お前は本当に『野次馬』だな》


ハチの言葉を適当に聞き流してジェスは外を見た。空は青く透き通り、山は白く輝いている。平和そのものの風景。だがその向こうでは今戦闘が行われているという。

――平和ってなんなんだろうな。どこまでも続く青空を窓から見上げながらジェスはそんな事を考えていた。

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