オラクルを~中に乗っていたセシル諸共に~アスランが仕留めた後、オスロは大混乱に陥っていた。
情報の確認の為に政府関係者やらジャーナリストやらが押し寄せ、その上、危機は去ったと報道に踏み切った途端、最早危険性は無いにも関わらず疎開しようとする市民が後を断たなかったからだ。
特に、後に「オラクル症候群」とまで揶揄された市民のアレルギー反応は凄まじく、一部り市民が暴徒と化したほどであった。
情報の確認の為に政府関係者やらジャーナリストやらが押し寄せ、その上、危機は去ったと報道に踏み切った途端、最早危険性は無いにも関わらず疎開しようとする市民が後を断たなかったからだ。
特に、後に「オラクル症候群」とまで揶揄された市民のアレルギー反応は凄まじく、一部り市民が暴徒と化したほどであった。
そんな喧騒の最中、アスランはメイリンとようやっと接触に成功すると、シノの遺体のオーブへの移送を手配しさせた。
そして、もう一つも。
そして、もう一つも。
トゥルージャスティスから降りたアスランへ、ソラが掛けた第一声が
「どうしてセシルを殺したんですか?」
だった。
非難や懇願の類では無く、純然たる確認。
「…死に場所が必要な人間は居る。それだけだ」
一瞬の逡巡の後、アスランは言い切る。
「そうでしょうか?」
アスランの眼を見据えてソラが答える。
「守るべきもの全てと、自分のした行為自体に意味を失ったんだ」
「どうしてセシルを殺したんですか?」
だった。
非難や懇願の類では無く、純然たる確認。
「…死に場所が必要な人間は居る。それだけだ」
一瞬の逡巡の後、アスランは言い切る。
「そうでしょうか?」
アスランの眼を見据えてソラが答える。
「守るべきもの全てと、自分のした行為自体に意味を失ったんだ」
- ソレでもなお『生きろ』と言うのは、そうでは無い者の傲慢だ。
言外にそう匂わせる。
「私は、それでもセシルに生きていて欲しかったです。シノと、カシムの分まで」
それでもなお、ソラの視線は揺るがなかった。
「私は、それでもセシルに生きていて欲しかったです。シノと、カシムの分まで」
それでもなお、ソラの視線は揺るがなかった。
その後、アスランは事後処理に忙殺される事と成るが、正直、アスランにとってそのほうが有難かった。
ソラとの間に漂う奇妙な空気は、余り良い気分では無かったからだ。
ソラとの間に漂う奇妙な空気は、余り良い気分では無かったからだ。
「ちょっと、良いかしら?」
メイリンがホテルのソラの部屋を訪れたのは、シノの遺体の移送手続きを済ませてからだった。
「シノさん、明日にはオーブへ帰れると思うから…貴方も一緒についてあげて欲しいの」
そうメイリンへ言われるが、ソラは何も答えず考え込んだままだ。
「何か…都合が悪いのかしら?」
答えの無いソラに、メイリンが問いかける。
「なんで、セシルは死ななくちゃならなかったんでしょうか?」
「え?」
「テロリストの、レジスタンスのメンバーで、大きなMAでたくさんの人達を傷付けたからですか?どのみち、罪に問われたら死刑になるからですか?」
「ちょっと、ソラさん…」
「もう先が無いから、本人の死にたいように殺したんですか?違う道を選ぶ機会は与えられないって言うんですか?」
メイリンに思いの丈をぶつける。
「…判ったわ。ちょっと見せたいものがあるの」
メイリンがホテルのソラの部屋を訪れたのは、シノの遺体の移送手続きを済ませてからだった。
「シノさん、明日にはオーブへ帰れると思うから…貴方も一緒についてあげて欲しいの」
そうメイリンへ言われるが、ソラは何も答えず考え込んだままだ。
「何か…都合が悪いのかしら?」
答えの無いソラに、メイリンが問いかける。
「なんで、セシルは死ななくちゃならなかったんでしょうか?」
「え?」
「テロリストの、レジスタンスのメンバーで、大きなMAでたくさんの人達を傷付けたからですか?どのみち、罪に問われたら死刑になるからですか?」
「ちょっと、ソラさん…」
「もう先が無いから、本人の死にたいように殺したんですか?違う道を選ぶ機会は与えられないって言うんですか?」
メイリンに思いの丈をぶつける。
「…判ったわ。ちょっと見せたいものがあるの」
メイリンは仮のオフィスとしているホテルの部屋にソラを連れて来た。
「セシルの家で見つけた証拠品の一つだけど、コレがなんだか判る?」
「アンプル…?」
証拠品としてラッピングされたと思しき壜をソラに見せる。
「中身は何だかわかる?」
「いえ…」
「エクステンデッドに必須の薬物。セシルは…生身の身体じゃないのよ」
「そんな!」
「エクステンデッドはね、サポートを打ち切られると、後に待つのは死、だけなの。地獄の苦しみの後でね」
「…だから、あそこでアスランさんに倒されなかったとしたら、もっと酷い死に方をした、って言うんですか?」
「正直、判らないわ。『もしも』はどこまで行っても『もしも』のままだし」
あっさりとメイリンは答える。
「ただね、コレだけは伝えておきたいの。セシルはね、出来るだけ被害を出さないようにしていたのよ」
どういう意味かとソラが訝しがる。
「エクステンデッドに求められるのは只一つ、『命令を正確に遂行する優秀な兵士』よ。いいえ、はっきり言えば安価且つ優秀なMS制御用コンピュータね。作戦行動中の人間性は一切否定されている」
動揺するソラにメイリンは告げる。
「なのに、彼は、進路上での破壊工作を殆ど行っていないの。寧ろ、どんな小さな村でも迂回している。たとえ遠回りになったとしても」
「それって…」
「彼は、エクステンデッドとしての『本能』に、ほんの僅かだけど抗っていたのよ。凄い事だわ。よほど強い想いが有ったんでしょうね。私は、ほんのちょっとだけど、救われた気がしたわ」
「セシルの家で見つけた証拠品の一つだけど、コレがなんだか判る?」
「アンプル…?」
証拠品としてラッピングされたと思しき壜をソラに見せる。
「中身は何だかわかる?」
「いえ…」
「エクステンデッドに必須の薬物。セシルは…生身の身体じゃないのよ」
「そんな!」
「エクステンデッドはね、サポートを打ち切られると、後に待つのは死、だけなの。地獄の苦しみの後でね」
「…だから、あそこでアスランさんに倒されなかったとしたら、もっと酷い死に方をした、って言うんですか?」
「正直、判らないわ。『もしも』はどこまで行っても『もしも』のままだし」
あっさりとメイリンは答える。
「ただね、コレだけは伝えておきたいの。セシルはね、出来るだけ被害を出さないようにしていたのよ」
どういう意味かとソラが訝しがる。
「エクステンデッドに求められるのは只一つ、『命令を正確に遂行する優秀な兵士』よ。いいえ、はっきり言えば安価且つ優秀なMS制御用コンピュータね。作戦行動中の人間性は一切否定されている」
動揺するソラにメイリンは告げる。
「なのに、彼は、進路上での破壊工作を殆ど行っていないの。寧ろ、どんな小さな村でも迂回している。たとえ遠回りになったとしても」
「それって…」
「彼は、エクステンデッドとしての『本能』に、ほんの僅かだけど抗っていたのよ。凄い事だわ。よほど強い想いが有ったんでしょうね。私は、ほんのちょっとだけど、救われた気がしたわ」