ShortStory第四期2

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ネ申土奇 ◆GOD/v/26uQ 氏作:2010/01/19(火)

 木々が生い茂り、鬱蒼とした森の中。そんな不釣合いな場所に神埼はいた。
「どうかな。君の力を貸してもらえるかな」
「俺はアンタみたいなデリカシーのない人間は嫌いなんだ」
 神埼と対峙する青年は華美な衣装に身を包んでいる。全体を取ってもその様は異様とも言えたが、
その中でも動物の毛皮と思しき羽織が一際目立っていた。
「そうか。残念だよ」
 神埼は少しも残念そうな顔を見せずに背を向ける。
「待ちな」
 それまで切り立った石に腰掛けていた青年が立ち上がる。
「だけど、アンタの言う理想の世界ってのも悪くはない。全部を信用したわけじゃないが、手を貸してやらなくもない」
 青年の言葉に神埼が妖しく微笑んだ。底の見えない、暗闇に眠る魔物のように。
「用心棒、だったか。引き受けてやるよ、ギャランティは多めでな」
「歓迎するよ、カブキ君」

 カブキを自身の世界へ送り届けた後。神埼は大振りの携帯電話を取り出していた。
「ああ、もしもし。私です。はい。そろそろ貴方にも出向いてもらう頃合と思いましてね。
ええ、これも人類の為。よろしくお願いしますよ」
 神埼は電話を懐にしまうと右手を宙に翳した。
空間が波打ち、灰色のカーテンが出現する。その輝きは人を誘うように揺らめいていた。
「さぁ、もう一仕事終らせなければな」

 一面の砂景色。その中心に彼はいた。
さびしさなどと言う感情はとうに捨てた。あるのは行き場のない怒りと憎しみだけ。
「やぁ。君に話があるのだがね」
 少年は振り返る。自分を真っ直ぐな眼差しで射抜く男の方へと。
男は語る。理想を、世界を。その中に、自分の居場所はあった。
少年は笑う。不敵に笑う。そこに喜びという感情は微塵も感じられない。
「今俺、楽しそうって顔してるよな?」


――3rdステージ 『父と子と精霊と』



ギャレン ◆8TSpr9OMOw 氏作:2010/01/24(日)

「ハァ……ハァ…」

―――熱い
―――灼ける様に

俺の眼前に炎が広がり、瞬く間に辺りを呑み込んでいく

―――燃える

大切なデータが、俺たちの研究成果が

―――崩れる

思い出や愛着のこもったこの施設が、そして苦楽を共にした……

「ハァァ…! ウェアッ!!」

―――それなのに

「何故見てるんです!!」


―――動かない

奴らと戦うために鍛えてきた腕も
仲間と共に今日まで歩んできたこの脚も
沼底に沈められ藻に絡め取られたように、
底なしに冷たくぬめっとした感触に囚われて、嗚咽すら出ない

「アンタと俺は!仲間じゃなかったんじゃ……ッ!!」

―――『無理をしなければ……』
―――『護れない』

炎の中から現れたもう一人の青いライダー
地に伏しのたうつ青い仮面ライダーに、無慈悲な銃撃を浴びせていく
激しさを増す炎の中、2人のライダーは激しく火花を散らして傷つけあう

―――何とかしなければ

『どうします?僕を攻撃してもかまいませんが』
ガトリング砲を構える青いライダーが振り向き、物陰に立ち尽くす俺に銃口を向けた
それでも俺の体は石膏で固められたように重く、銃を握った手を僅かに動かすこともままならない

「橘さん……橘さん!!」

やめてくれ
言わないでくれ
それだけは
あの言葉だけは

「 本 当 に 裏 切 っ た ん で す か ! ! 」

「……!!」

気が付くとそこは瓦礫に埋もれかけた粗末な小屋の中。

「……夢か。恐怖心などとっくに捨てたつもりだったが……」

そう呟きながら、橘は傍にあったタオルを掴み寝汗を拭おうとした。
いつの間にか傷には包帯が巻かれ、丁寧に手当てが施されている。

「おーおー、気がついたか。大した生命力じゃな」
白衣を着た怪しげな初老の男が扉を開けて入ってきた。

「どうやって闘ったのか知らんがオルフェノクを相手にして生きて帰ってくるとは大したもんじゃのぅ。
お前さんみたいな男がおればもう草加や水原みたいなガキにでかい面されんでも……っと、そうそう」
初老の男は小声で誰かの悪口をぶつぶつ呟きながら、トランクを取り出した。

大ショッカーから逃げ出したあの日以来、ずっと手放さずに守り通してきたもの。

「命ある限り闘う、それが仮面ライダーだろ…!」
その言葉と共にあの男が俺を信じて託した「希望」。

「義手の男が気絶したお前さんをこの村に運び込んで来た時も、ずっとお前さんはこれにしがみついておったな…
よっぽど大事なもんらしいが、あのシステムはワシにはいまいち仕組みが分からん」

「義手の男だと!?いやそれより、あの中身を見たのか!?」

「ま、こう見えても科学者の端くれよ。あれがライダーシステムの一種だってことくらいはな……
最も、ワシの世界のものとは根本的に違うようじゃ」

「そうですか……」
あの銃の所持者が果たすべき役割、それは大体予想がついていた。
ディケイドが俺の目の前に現れた理由も、おそらくそれと密接な関係がある。
しかし、あの銃の本来の所有者とは未だに巡り会えず、今日まで戦いを繰り返してきた。

そしてディケイドは斃れ、あの銃が役割を果たす必要もなく全てが終わるはずだった。
しかし、未だに消されていったライダーたちの消息は知れない。

ふと喉の渇きを感じた橘は、傍らのテーブルに置いてあった栄養ドリンクに手を伸ばした。
「……これ、飲んでもいいかな」
言い終わるや否や答えも聞かずにドリンクの封を開ける橘。

「ああ、それか……栄養はないが別に毒でもない。何もしなけりゃ問題ないじゃろ」
ドリンクを飲みながら橘はトランクを開け、荷物ひとつひとつを確認する。
ほとんど灰色になったカードと古びた銃、
そしてクレインオルフェノク…長田結花の遺した純白の羽根。


その時、不思議なことが起こった。

橘が掌に載せた一枚の羽根がカードに変わったのだ。

「これは…!?」
同時に、灰色になったカードのうちの何枚かが僅かながら輝きを取り戻した。
いずれも、橘が長い旅の中で出会ったライダー達のカードである。

「まさか……」
恐る恐る古びた銃に手を伸ばす橘。
銃を握り締めた瞬間、電撃にも似た衝撃が橘の全身を駆け抜ける。
視界が何重にもブレて歪むビジョンが見えた次の瞬間、
その銃は新たな主の命令を催促するかのようにカードの装填口を開き、
そして橘の左手には新たに生まれたライダーのカードが握られていた。

「Dα……力を貸してくれるのか…?」
DαDRIVER……失われたディエンドライバーの後継機として大ショッカーが開発した対ディケイド用システム。
今、その銃口が見据えるものはディケイドでも大ショッカーでもなく……
「剣崎……、始……、それだけじゃない、名護君、南さん、あの青いライダー…それに…長田くん、嶋さんまで……」
再び燻りだした恐怖心はいつのまにか吹き飛んでいた。
橘が一度ならず失ったかけがえのない『仲間』。それは今新たな力と共に、彼の元に確かに在った。



ガート ◆IKup9Hv/8E 氏作:2010/01/09(土)

仮面ライダーガート―中井 龍―の闘いと並行し、もう一つの闘いが進行しつつあった。

それは、かつての破壊者が乗り越えなければならない大きな試練……


    ライダー大戦4期 3ndステージ 仮面ライダーガート『真実』


「信じてみたいんだよ…壊す以外の道が、あるって」
彼は真摯な面持ちで、そう口にした。

…強くなった。それが正直な感想だ。



俺が初めて彼と出会ったのは、いわゆる『クウガの世界』という場所だ。
幾多の運命に翻弄されつつも、辿り着いた異世界。
自ら動くすべを持たない俺は、誰からも見向きされることもなく、ただただそこにいるだけだった。

しかし、運命の歯車は動き出した。
何の因果か…現れる異形と終わらない殺戮…
これも俺の―破壊者―の仕業なのか。世界に破滅を齎す死神…それが運命。

そんなとき、俺を見つけてくれた一人の青年の目の前に何かが転がる…それは目覚めるはずのない古代の遺物。

―それを使え―

迷わず俺は彼の心に叫んだ。
これ以上、何かを破壊されたくない…したくない。俺はまだ…運命と闘える!

―ベルトを腰に着けろ…闘え…!―

俺の願いは確かに彼の心に届いた。そして生まれた…新たな戦士―ガート―



そうして、彼もまたライダー大戦という悪夢に飲み込まれた被害者となった。
もし、俺が彼に変身を促さなかったら…?
彼がこんな非情な闘いに巻き込まれることも、破壊者の神経にその身を侵されることもなかったのかもしれない……

結局のところ…俺は何も守れていない。
いつも誰かの犠牲の下、支えられ、そして何かを『破壊』している。

ライダー大戦の統制ネ申も、その前の統制者も、どちらも俺に言っていた。
俺には破壊しか出来ないと…それが運命だと。
そのためだろうか……俺が今回の大戦で行ったことを冷静に振り返る。
クウガの世界に眠る『破壊者』を目覚めさせ、闘いを促し、もう一人の『破壊者』―ディケイド―を倒させ、その力を奪った。

―正に完璧な『破壊者』ぶりだな―

自分で自分が滑稽に思える…結局、俺には何も守れない…
共に闘う青年の手助けなど、何の罪滅ぼしにもならないだろう…
だが……

『 …俺は知っている。異形の中にもやさしい心を持った者がいることを…
   破壊者の名を持ちながらも…誰かを守ろうとするやさしい奴がいることも… 』

『信じてみたいんだよ…壊す以外の道が、あるって』

龍…俺も信じてみたい。お前が望むその道を……
俺は力の限りお前を支える…

確証はないが…当てはある。かつて俺を救ってくれた心優しき英雄とほぼ同条件の力……
それが目覚めればきっと……

―今度こそ、きっと運命に勝つ。破壊者としての宿命を破る―



「…そろそろやばいかな?」
魔法陣を潜る青年、中井 龍の顔が歪む。
連続変身によるアマダムの侵食は予想以上に速く、深く、彼の身体を蝕んでいた。
(心の声の破壊者さん…万が一、俺が先に倒れたら…後の道のりは頼みますよ…)

彼の懐中、ディケイドライバーの傍らに入れられた一枚のカード―JOKER―

その運命の切札は、今度こそ何かを守ることが出来るのだろうか…?



ネ申土奇 ◆GOD/v/26uQ 氏作:2010/02/06(土)

「神埼さん、見せてもらいましたよ! あのメモリはなんです!」
 扉を蹴破り、ビショップが乱暴に室内へと入る。
「何、と言われてもね。私の為の物、としか言い様が無いな」
「とぼけて貰っては困る! 何故あのような物を作っている? 私には話せないと言うのですか!」
 ビショップの姿が深緑の怪人へと変化する。同時に肥大化した右腕で神埼を切り裂こうとする。
しかしその一撃は何か硬い音を立て阻まれた。ビショップが顔を上げる。
そこにいたのはか細い腕をしたマーテル。だが、彼女の腕がビショップの爪を防いでいるに他ならなかった。
「何者だ……貴様!」
 マーテルは返事を返さぬまま、ビショップを逆に捻じ伏せていた。
「彼女はね、私の為の駒。機械であり、女であるモノ」
 神埼がゆっくりと椅子から立ち上がる。その腰には、真紅に輝くバックルが装着されていた。
「私が、ネ申になる為のね」
 機械音が二度三度繰り返し響き、神埼の姿が何かに覆われていく。
現れたそれは机を飛び越すと、立ち上がりかけていたビショップの首根っこを掴んだ。
この世の物とは思えない怪力で宙吊りにされるビショップ。彼は、二度目の死を覚悟した。

「私はね、君の知恵を、力を高く評価しているのだよ。だから、むざむざ殺しはしない」
 息も絶え絶えの中、ビショップは言葉を捻り出していた。
「私に……何をさせたいのです」
「地下のドッグにある物が眠っている。それを使って残る参加者を殲滅したまえ。
情けなど必要ない。その程度で死ぬようならば、それまでの存在だったという事だ」
 そこまで言って初めて神埼の手が下ろされた。ふらつきながら壁にもたれかかるビショップ。
その姿は既に人間と同じ物に戻っていた。
「……いいでしょう、もはや私に未来など無い。だがもし生きて再びこの地を踏んだならば全てを話してもらう」
「期待しているよ。君の活躍をね」
 神埼の笑いを背に、ビショップは一人歩き出した。


――FINALステージ 『ヒトの創りしモノ』



ガート ◆IKup9Hv/8E 氏作:2010/03/10(水)

数多の魔法陣を潜り抜けた先…時空の狭間に彼はいた。
常人には耐え難い、その地が齎す大いなる力。
それこそが今の彼…いや、“彼ら”の進化には必要だった。

「何とかしなければ…機械仕掛けの神が目覚める前に……!!」

3rdステージ、FINALステージ…進む戦いをオーロラ越しに眺めつつ、彼らは変わっていく。
荘厳なオーラを纏った赤い眼の漆黒の異形…そして…………



改造実験体 ◆GJO87tR.62 氏作:2010/03/11(木)

――オルフェノク研究所跡地
「あんた……あんた一体、私の部下達に何をした!?」
先程まで自分の部下であった灰色の怪人達に拘束された南が叫ぶ
「フフフ、聡明な君のことだ。彼らの今の姿を見れば大体のことは分かるのではないかね?」
南を見つめる男――天王路が笑いながらそう口にした
「オルフェノク化……」
そう呟き、かつての部下達に視線を向ける
前日のファンガイア捕獲作戦で死亡した者を除く全ての隊員が――1人も欠ける事無く異形となってそこに存在していた
「全隊員の使徒再生に成功したとでも言うのか……そんな、そんな馬鹿な話が」
愕然としたその呟きに、天王路が楽しそうに答える
「簡単な話だ南君……私は、それを解決する術を手に入れたのだ」
「オルフェノク化失敗における灰化とは、つまるところ使徒再生の過程で体内に生成されるフォトンブラッドの力に被験者の体が耐えられないから起こる現象だ」
この世界のオルフェノクだけに該当することかも知れないがねと付け加え、天王路は話を続ける
「広瀬にさせていた異世界の研究がそれを解決してくれたのだ」
「こことは別の世界に存在するというアンデットという不死生命体……世界を繋ぐゲートによってもたらされたそれのサンプルは非常に興味深いものだったよ」
「そのサンプルの中に面白い力を持った者が居てね……『ウルフヴィールス』と呼ばれるモノを相手の体内に流し込み、対象を自らの眷属へと作り変える、という能力だ……フフフ、どことなくオルフェノクに通じる能力だとは思わないかね?」
「まあ、細かい話はこのくらいでいいだろう」
「その力と使徒再生を組み合わせることにより、対象を確実にオルフェノク化する術を私は完成させたのだ」

寿命の問題も解決してくれたのは嬉しい誤算だったが――そう続ける天王路に南が恐怖に歪んだ視線を向けながらも叫ぶ
「そんな力を得て……あんた、その力で一体何をするつもりなんだ!?」
「むろん、世界に平和をもたらすのだ」
「この力で眷属となった者は、王たる私に逆らうことは出来ない……」
「人類もオルフェノクも……この力で全てを作り変える……そして私が、新たな王として君臨するのだ」
恍惚とした表情で語る天王路を見て、南が恐怖に顔を歪ませる
「さて、私もさほど時間ある身ではないのでね……さあ、南君」
天王路の姿が異形へと変わり、拘束されている南へ歩み寄っていく
「――君の番だよ」
「なんッ……よ、よせっ、やめ、止めろ、やめろぉォーーーッ!!」
拘束を解こうと暴れる南に、天王路の――ケルベロスの爪が振り下ろされた
「君の二度目の誕生日だ、おめでとう、南君……フフフ、ははははははははは!!」



ガート ◆IKup9Hv/8E 氏作:2010/04/08(水)

相川始は静観していた。
己の生まれた世界を、これまでとは違う視点で。
「これからだな…」
橘の活躍により各世界に散らばったライダーの記憶や、龍がディケイドを倒したことで解放された記憶を軸とし、世界はやがて修復されるだろう。
その中には剣崎-仮面ライダー剣-もきっといるはず…
「剣崎が帰ってくる前に…俺にはやるべきことがある」
始が取り出したのは龍から譲り受けたディケイドライバー。
「…変身」
-KAMENRIDE DECADE-!
ジョーカーを思わせる深緑の肉体に漆黒のアーマーが纏われる。
おぞましき破壊者-ジョーカー-の素顔は同じく破壊者-ディケイド激情体-の仮面に隠される。

破壊者を超える破壊者-ディケイドアンデッド-

新たなアンデッドの誕生を感知してか、ディケイドアンデッドの目前にモノリスが出現する。
「紛い物のネ申ではない…今度の相手は正真正銘の神…!」
握り締めた拳をモノリスにたたき付け、ディケイドアンデッドは空を仰ぐ。
「運命を打ち破る…今度は俺の番だ。剣崎…」



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「始さん…?」
-クウガの世界-
バイクを停めて佇んでいた龍はふと空を見上げる。
澄み切った青空の向こうに龍は何かを感じた。
「こんなところに居る訳ないか…」
視線を戻した龍の目に映るのは現場へと向かうパトカーの数々。
「…未確認生命体か」
龍は再びバイクに跨がり、走り出す。

彼らの戦いは終わらない。
彼らを求める人々がいる限り…
そう、彼らの名前は仮面ライダー……



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最終更新:2010年04月25日 01:16