ShortStory第一期

◆DENO4CGlho氏作(本戦前)

良太郎「う、う~ん…僕は一体…」

目が覚めたそこはデンライナーの医療室だった
モモ「やっと起きたか!心配したんだぞ!」
ウラ「そうそう、先輩なんて良太郎が目を覚ますまでコーヒー飲まないって意地張って」
モモ「余計なことを言うな!」

そこへ侑斗とデネブが大急ぎで部屋に入ってくる
侑斗「野上!大丈夫か!?」
良太郎「僕は大丈夫、でももうちょっと休んだ方がいいってみんなが…」

ほっとする侑斗、少し時間がたった後に良太郎が言った
良太郎「ごめん、みんな、侑斗と二人にしてくれないかな。話があるんだ」
モモ「おいおい、俺に隠すのかよ?」
良太郎「そうじゃないんだ、後でみんなに話すから」
モモ「そうか?それなら別にいいけど…」

医療室から出て行くイマジン達

侑斗「で、話って何だ?」
良太郎「これを見て欲しいんだ」
招待状らしき紙を見せる良太郎
侑斗「何だこれは?」
良太郎「僕も良く分からない、何者かが殺し合いを始めようとしているみたいなんだ」
侑斗「そうじゃない!何で今までそのことを黙っていたんだ!水臭いことすんな!
   これまでだってそうだっただろ!俺はとにかく行くからな、これ借りるぞ!」
良太郎「侑斗!」

招待状を持って行く侑斗

侑斗「デネブ、行くぞ!」
デネブ「行くってどこへ?」
侑斗「これだ」
招待状の中に入っていたパスの一枚を見せる侑斗

良太郎「侑斗!僕も治ったらきっと助けに行くから!だから心配しないで!」
侑斗「ああ、無理すんなよ!」

ゼロライナーが去っていく

良太郎「ウラタロス、この前の怪物について何か分かったことある?」
ウラ「う~ん…ハッキリしたことは分からないけど、あれはイマジンじゃなさそうだね
   むしろ人間に近い感じがしたよ
   それに「神」がどうのこうの言ってたのが気になったかな」
良太郎「そう…」

デンライナーが走る

良太郎「今僕にできることを…」



限りなく近く、故に遠い・・・異なる九つの世界

九つの世界にはそれぞれ似た境遇の男がいた

人とは異なる力を偶然にも手にしてしまった男達・・・

彼らの世界には例外なく人ならざる者の脅威に晒されていた・・・

彼らは戦った。時に護るべき存在であるはずの人々に人外と罵られ、敵対されようとも、彼らは戦った・・・

ただひたすらに、護りたいものを護るために戦い抜いた・・・



――これから先に行なわれる彼らの戦いは今までと同じように、護るための戦いなのか。それとも・・・――



仮面ライダー大戦・幕間『五代雄介、津上翔一』


「うわぁぁっ!」

アギトの拳がクウガの仮面を砕き、戦意も砕いた。
緑の体から白色へ、そして人の姿へと戻っていくクウガ…五代雄介。

「すぐに、すぐに戻りますから…待っててください…」

クウガとの戦いを終えたアギトは変身を解かずにある一点へと走り出す。
この戦いを終らせるために、首謀者と思われる男を誘い出すために…クウガを倒した。
そしてその男が、自分をこの戦いの場へと巻き込んだ男がそこにいた。アギトの狙いはただ一つ。

「はぁっ!」

男の眼前まで走りより拳を突き出すが…その拳が届く前にアギトの腹部を黄金の剣が貫いた。
クウガとの激戦で限界直前だった身体ではその一撃に耐えることは叶わず、自らのミスを嘆きながらアギト…津上翔一は気を失った。

戦いが終れば無用とでも言うように二人の戦士を残したまま空間が崩れていく。


崩壊が始まった空間で再び立ち上がる男がいた。

皆の笑顔を護るために戦い抜いた…いや、これからも戦い続けるであろう男。

――――五代雄介――――

アマダムの力により奇跡的な回復力で意識を取り戻し、立ち上がった。

両手を広げ、ベルトを出現。右手を前方に突き出し気力を高めながらゆっくりとスライドさせ――

「変身!」

掛け声と共に人の姿から戦士の、クウガの姿へと変身する。
クウガとなった五代は倒れこんだままの津上の元へと駆け寄り、その身を抱え上げる。
視線を左右に振り津上がこの場へと乗り込んできたバイクを発見。祈るような気持ちでエンジンを掛ける。
崩壊寸前の空間の中でバイクの排気音が鳴り響いた。

「止めましょう、俺たちで…戦いを。護りましょう、俺たちで…皆の笑顔を、皆の居場所を!」

バイクを急発進させ隆起した地面を器用に走りぬけ、ゆらゆらとゆらめく時空のカーテンへと突入する。

「おりゃぁぁっ!」

気合と共にカーテンをくぐり抜けた――


※※※
まず最初に光が目に入った。光の眩しさに目を眩ませながら津上は
『あぁ、俺天国にきちゃったのかな…』
と一瞬思ったりもしたが光の正体が蛍光灯である事が解ると途端に頭の中が鮮明になってきた。
キョロキョロと辺りを見渡し、自分の現状を確認する。

(ベッド…ていうか病院?五代さんは…)
身をおこし、改めて部屋を見渡すが周りには誰もいなかった。
脇におかれたテーブルに何かの封筒、それにメモのような物…

(書置き?って奴かな)
津上は書置きを手に取り内容を確認する。
冒頭に五代より、と書かれておりこの書置きが五代が残した物である事を裏付けていた。

(五代さん、無事だったんだ…よかった)
安堵する津上。だが書置きを読み進めていくにつれ表情が強張っていく。

『五代です。この書置きが読めるという事は元気になった証拠ですね。よかった。
 あの後俺は津上さんを連れてどうにか逃げ切る事に成功し、津上さんの治療の為に病院に運びました。
 あ、懐に入っていた名前が津上翔一ってなっていたのでこう書いています、間違っていたらごめんなさい。
 ところで一緒に置いておいた封筒は開けましたか?中身は招待状になっています。
 内容は要するに俺たちみたいな戦士を集めて最強の戦士を決めよう、ということだそうです。

 ふざけてると思います。ですが、強くならなければ誰かを護る事なんて到底不可能だと俺は思います。
 だから、俺は戦います。この戦いを勝ち抜いて最強の存在になって皆を護ります。

 俺は一足先に他の戦士を探す事にします。モタモタしていたら遅れちゃいますから。
 津上さんは今回だけは見逃します。でも次に会った時は容赦しません。
 一度俺に勝ったからっていい気にならないでくださいね、それじゃ』

最後まで読み終わる前に津上は書置きをクシャリと握りつぶした。

「なんで…五代さん。俺、信じたのに!くそっ!」

握りつぶされた書置きをゴミ箱に捨て、涙目になりながら残された封筒を開く。
書置きにあったとおり招待状のような物が中にはあった。
内容を確認し、津上は決意する。

「間違ってる。五代さん、いや第四号!あんたは間違ってる!それじゃ他の未確認生命体と…同じじゃないか!
 もういい…俺は、俺だけでもこの戦いを止めてみせる!皆の居場所を護ってみせる!」

ベッドから抜け出し、仕舞いこまれていた自分の私服に着替え津上は病院を抜け出した。
止められていたバイクに飛び乗り、走り出す。

「招待状を貰った人は他にもいるなら…その人を探す必要があるな」

バイクを走らせながら津上は今後の事を考える。勿論最終的な目的は戦いを止めさせる為に首謀者を倒す事。
だがその為にはまず他の参加者を探し出し、説得しなければならない。そしてもう一つ…

「第四号は…俺が倒す!」

悲しみと怒りを胸に、津上は見知らぬ世界へと走り出した――


※※※

「~♪~♪」

鼻歌を歌いながら五代は病室の前まできていた。
津上の容態は驚異的な速度で回復しており、そろそろ目を覚ますかもしれないのだ。
目を覚ましたらとりあえず元気になって貰うために美味しい物を食べてもらおうと…五代は色々買い込んで来ていた。

「失礼しまーす、っと。津上さん起きてま…す?」

病室の扉を開け、津上が寝ているはずのベッドがもぬけの殻になっている事に気付いた。
目を覚ましてトイレにでも行ったのだろうか?とも考えたが律儀に畳まれた患者服から考えてそれはないだろう。
とすれば…?ベッド脇には白い封筒が置かれていた。買い物に出掛ける前には無かったはずの封筒。
不審に思いつつ五代は中身を確認し、それが招待状である事を悟った。
自分や津上だけではなく、もっと大規模に戦士が集められているのだ。その事実に愕然とする。

「あんれ五代さんでねぇか?」

扉が開けっ放しであった為通路から部屋の中を見ることができ、老人が顔を覗かせていた。
隣の病室に入院している老人でここ数日の生活で五代が仲良くなっていた患者の内の一人である。

「あ、どうも。…そうだ、ここで入院してた津上さんを知りませんか?」
「あー?あーそういえばちょっと前にみょーにドタバタしとったしその時に出かけたのかもしれんのぉ」
「そう、ですか…」

老人との会話を打ち切り再び招待状に目を通す。
もしかしたら津上はこの招待状を見て病室を飛び出したのかもしれない。戦いを止める為に…

(でもそれだったら俺と別行動を取る意味はないよなぁ…)
五代の頭に疑問が浮かび、そして気付く。自分が残しておいた書置きがないのだ。
万が一、五代がいない時に津上が目覚めた時の為に書置きを残しておいたのだが…
そして気付いた。ゴミ箱の中にクシャクシャに丸め込まれた存在に。


丸め込まれた紙を丁寧に広げ、内容を確認する。

(これ、俺が残した書置きだ…)
『五代です。この書置きが読めるという事は元気になった証拠ですね。よかった。
 あの後俺は津上さんを連れてどうにか逃げ切る事に成功し、津上さんの治療の為に病院に運びました。
 あ、懐に入っていた名前が津上翔一ってなっていたのでこう書いています、間違っていたらごめんなさい。
 俺は津上さんが目覚めるまで俺にできる範囲でこの世界を調べてみます。だから目覚めた時に俺がいなくても心配しないでください。
 必ず戻ってきます、安心して休んでいてください。そうだ、早く元気になるように美味しい物買ってきます。楽しみにしててくださいね。
 そして元気になったら、俺と一緒に護りましょう。皆の笑顔を、皆の居場所を。
 中途半端はしたくありませんから』

何故自分の書置きがゴミ箱に捨てられているのだろうか。それはまるで津上の拒否の気持ちを表しているかのようだった。

(まさか…そんな事は…)
五代の脳裏に嫌な言葉が浮かぶ。それは信じたくはない、だが有り得ない話ではない…

――津上翔一はこの戦いにのった――

それは最強を目指す為ではないだろう、そう信じたいが…五代が津上と接した時間はあまりに短い。
もしくは再び謎の人物に戦いを強要されたのかもしれない。どちらにせよこのまま放っておくのは危険だろう。

買い込んだ荷物を残し、病院を飛び出してバイクで走り出す。
バイクを走らせながら五代は今後の事を考える。最終的な目的は戦いを止めさせる為に首謀者を倒す事。
だがその為にはまず他の参加者を探し出し、説得しなければならない。しかしそれよりも優先すべき事が今はある。

「どこにいったんだ…津上さん」

探し人を求めて、五代は見知らぬ世界へと走り出した――


※※※

誰もいなくなった病室に…一人の老人が入り込む。
握り締められた拳の中にはクシャクシャに丸め込まれた紙…『津上が見た、五代の書置き』だ。
それを机の上に広げられたままの『五代が残した書置き』と共に、ビリビリと破り捨てた。

「契約、完了」

老人の身体が異形の姿へと変わり、そして闇へと姿を消した。
今度こそ本当に病室には誰もいなくなり、破り捨てられた『2枚』の書置きの破片がヒラヒラと舞うのみとなった。


――五代雄介と津上翔一の両名はこうしてライダー大戦の戦場へと飛び込んでいく――


以上がライダー大戦を効率よく行なわれるために実行されたほんの小さな主催者の介入である…



最近の作品とはいえ当方微妙にマイナーキャラなので自己紹介もかねてSS投下させていただきます。

 変奏曲 ~逃亡の終わり、全ての終わりの始まり~

その招待状の文面はあまりにも荒唐無稽極まるものであった。
普通の人間ならばこんなもの、たちの悪い悪戯と判断して破り捨ててしまうであろうことは想像に難くない。
そう、「普通の人間」だったならば―――

招待状を受け取った25名のうちの1名、竹下伸二と名乗り人間社会に紛れて生きてきたファンガイアは
その手紙から滲み出るあまりに禍々しい気配に思わず眉をしかめた。
頑なに閉ざしてきた闇の種族の本能が、仄かな黒煙を上げて燻りだしたような嫌な気分だった。
「悪魔を倒して世界に平和をもたらす戦士、か……。」
自分の中で昂ぶる何かを鎮めるように伸二は呟く。

「――ただ一人の女さえ、満足に護れない惨めな化け物が……」

伸二はファンガイアが嫌いだった。
人間に紛れて細々と生き永らえねばならぬ立場に身をやつしても尚、人間を家畜同様に見做し驕ることを止めず、
あまつさえ古臭い掟を振りかざし残り僅かな同族同士が殺し合いをする。
そんな現在のファンガイアの在り様を彼は滑稽と醜悪の極みと捉えていた。
そんな種族の一員として無為に永い刻を生き永らえてきた彼の半生は空虚なものであった。
涼子と出逢った22年前までは。

元々ファンガイアの掟を忌み嫌っていた伸二にとって禁忌などどうでもよかった。
涼子と共に過ごす慎ましい平凡な生活が彼の全てであり、生ある歓びを謳歌できる至福の刻だった。
このまま彼女と共に人間として老いて死んでゆきたいとさえ思っていた。

しかし運命は人間とファンガイアの間にある絶望的な隔たりを、彼に極めて残酷な形で突きつけてきた。


とある病院の一室。
花瓶の花を取替え、果物ナイフでグレープフルーツを切り分ける伸二の眼はどこか虚ろだった。
「あなた、少し痩せたんじゃないの?疲れているなら無理に来なくてもいいのに…」
伸二に問いかける涼子の顔は蒼白で、年月がもたらす衰え以上に、
死に至る病に冒された者の苦悩と疲労が隠し切れず滲んでいた。
「ははっ、俺が今まで『疲れた』なんて言った事があったか?大丈夫、俺は元気でやってるよ」
事実、高額な治療費を払う為伸二は昼も夜もなく働きづめの生活を続けてきた。
ファンガイアの強靭な肉体にとってそれは大した苦痛ではなかった。
だが心の疲労はそうはいかない。
刻々と迫る「終わり」を伸二は恐れ憔悴していた。
治療費を稼ぐ為なら、法に触れる行為に手を染めることさえ厭わなくなっていった。
涼子を喪うことは彼にとって世界の滅亡など比較にならない絶望だった。
(もうすぐ世界が終わるとしても、別に構わないんじゃないか)
そんな気持ちになりかけながら伸二はふと病室の窓に目をやった。
伸二の表情が凍りついたように強張った。


「……ごめん、やっぱり俺行くわ。来たばっかで悪いけど、絶対また帰ってくるから」
軽く微笑みながら涼子にそう告げる伸二。
しかし、伸二と長年連れ添った涼子は、それが単なる挨拶ではなく、
何か途轍もない決断と覚悟を伴った一言であることを無言のうちに感じていた。
その決断が他ならぬ涼子自身の為のものであろうことが却って悲しかった。
だが、それ程の決意を持った男を止められるどんな言葉があるだろうか。

「……いってらっしゃい……無理は…絶対に無理はしないでね……」
溢れる涙と嗚咽を堪えて、搾り出すように別れの言葉を返す。
「…なんて顔してんだよ。大丈夫、すぐに帰ってくる。病気もきっと良くなるさ。
そうしたらまた、あの木を見に行こうな」
踵を返し、振り向きたい思いを堪えて、伸二は病室のドアを開けた。
彼の決意に応えるように時空のカーテンが伸二の身を包み込み、歪んだ世界へと飲み込んでいった。




人であり、人であらざるものー人類の始祖、ヒューマンアンデットー
バトルファイトの破壊者ージョーカーーはその姿を借りていた。
「天音ちゃん…」
迷える人の心はどのような結論を導き出すのだろうか?

        ーライダー大戦ー
   仮面ライダーカリスVSケルベロスⅡ

「…ここか」
相川始は手紙で指示された場所に辿り着いていた。
そこは何の変哲もない廃工場。人気のない静けさに滴り落ちる水の音だけが響いていた。
「天音ちゃん! 天音ちゃん!」
始は彼女の名前を大声で叫び、廃工場を走り回った。

「無様だな…ジョーカー!」
不意に響いた何者かの声に始は振り向き、思わず顔をしかめた。
「…貴様、生きてたのか!?」
その男は天王寺。かつて偽りのバトルファイトを引き起こした人間だった。
「ジョーカー…君の役目もここまでです。仮面ライダーは全て滅びなければならない…」
天王寺の手には見覚えのあるカードが握られていた。
「新たな統制者が仰っている。全ての仮面ライダーを滅し、祝福を受け取れと…君にも聞こえているのだろう? ネ申の声が…?」
「確かに…統制ネ申ロードは言っている。俺に闘えと…ジョーカーとして闘えと…」
始の顔には苦しみが滲み出ていた。
抑えなければならないジョーカーの闘争本能が湧き上がってくるのを感じていた。
「分かっているなら話が早い…闘え、ジョーカー…変…身!」
天王寺はカードをリーダーに差し込むとおぞましき異形へと姿を変えた。
「…剣崎。すまん……許してくれ。俺は闘う…大切なものを守るために…!」
「 Change 」
ジョーカーラウザーに読み込まれたAの力で始もまた姿を変えた。
「さっさと終わりにしてやる…」
カリスが手にしたのはハートの3ー「 Chop Head 」ー攻撃用の肉体強化カードだ。
「無駄だ!」
ケルベロスⅡが手を翳すとカリスの手からハートの3が飛び出していき、ケルベロスの体に取り込まれていった。
「ケルベロスは全てのアンデットを吸収する最強のアンデット…忘れたのかな、ジョーカー?」
「くっ…」
カリスは反射的に飛び退き、ケルベロスから距離をとる。
接近戦ではカード、下手をすれば自分自身が吸収されてしまう。ならば…
「 Tornado 」
ーTornado Hawk ー、風を司るカードの力を借りてカリスラウザーに力を込める。
「ハァ!」
中遠距離からの射撃で体力を削り、コンボの一撃で仕留める。それが今回のカリスの戦術。
「…この距離なら勝てるとでも?」
ケルベロスⅡは負けじと火炎弾で迎撃した。
飛び交う風と炎の弾丸。
風と炎の激しい応酬の結果、先に倒れたのは…カリスだった。

「ジョーカー! 言った筈だ。私は最強のアンデット、ケルベロス! いくら君でも勝ち目はない…」
「くそ…」
力なく倒れているカリスに歩み寄るケルベロス。
(俺は負けるのか…剣崎…天音ちゃん…)
「ケルベロスと融合した私に勝とうというのが間違いなのだよ…」
(ケルベロスと融合した…?)
カリスはひたすらに考える。反撃の手段を。
「…そうだな。ケルベロスと融合したお前は最強のアンデットだ」
「 Spirit 」
ヒューマンアンデットの力を読み込んだカリスは落ち着きを取り戻して再び立ち上がった。
「やけにでもなったのかな…仮面ライダー?」
「やけ…違うな? …これが俺の切り札だ!」
「 Shuffle 」
鳴り響く音声とともに二人の間で激しいエネルギーが行き来する。
…そして、天王寺はケルベロスの変身が解け、人間の姿となっていた。
「馬鹿な!? どういうことだ!?」
狼狽える天王寺にカリスは先程使ったカードを見せつけた。
「 Shuffle Centipede …互いの能力を文字通りシャッフルするカードだ。これで貴様のケルベロスと俺のヒューマンアンデットを入れ替えた」
「何だと!?」
「今の貴様はヒューマンアンデットと融合した人間…つまり…人間だ」
カリスはラウザーに炎を溜めていく。
「そしてケルベロスアンデットの力は今、俺の中にある!」
「…そ…そんな…馬鹿な!」
「…とどめだ」
ラウザーから放たれた地獄の業火が天王寺を包み込んだ。

闘いが終わり、辺りに散らばったカードを始は回収していた。
天王寺も倒れていたが、ヒューマンアンデットと融合していたので命に別状はないだろう。
「ケルベロスのカードは貰っていく…これを失えばお前は脱落だ」
荷物をまとめた始はその場を立ち去った。
「…剣崎、俺は闘う。天音ちゃんを守るために…」
始は手に入れたケルベロスのカードを一瞥する。
「そのためには闘うしかない…ジョーカーとして他の参加者とな」
決意を固めた始は歩き始めた。闘うべき相手を求めて。
「だから剣崎…もし俺が完全に破壊者となってしまったら…そのときはお前が…」

人であり、人であらざるものー人類の始祖、ヒューマンアンデットー
バトルファイトの破壊者ージョーカーーはその姿を借りていた。
か弱き人の心を持った獣に待ち受ける未来はどのようなものなのだろうか?



◆KIVAlIrtk2 キバ氏作

「――いずれ重要な役目、か」

「……僕にはまだ、遣り残した事があるよ」
 渡の手には三枚の強化チケットが握られていた。
一枚は彼がロードより手渡された物。
一枚は龍騎が最後に"いた"所に落ちていた物。
残る一枚はデンライナーが去っていった場所に残されていた物。
 そして渡はもう片方の手である物を拾い上げていた。
ロードの遺したディケイドライバー。

「変身」

『-KAMEN RIDE- DECADE!』
 強化チケット全てをバックルが飲み込み、渡の姿は異形の者へと変化した。
ディケイドと呼ばれる者でもなく、それに離れた存在でもない。
ファンガイア族ロードクラス、ディケイドファンガイア。
それが数々の変身を遂げて来た渡の最後の姿の名だった。

 ディケイドファンガイアは備えたカードホルダーから一枚のカードを抜き出した。
緑の仮面ライダーが描かれたカメンライドカード。
彼はそれを迷うことなく装填する。

『-KAMEN RIDE- LEANGLE!』
音声と共にディケイドファンガイアの姿は仮面ライダーレンゲルへと変化した。
唯一その特徴的なベルトだけがそのままの形を保っている。

「やっぱり、思った通りだ」
 ディケイドロードのカメンライド能力は彼の力の欠片を持つライダー、
あるいは彼に仕える事を良しとしたライダーへの変身能力。
一方でディケイドファンガイアの能力はその能力から若干の変化を見せていた。
彼が戦闘を経験したライダー、その全てへの変身能力。
レンゲルは渡がキバとして最初に戦ったライダーだった。
「次狼さんの話が本当なら、このライダーの力で……!」
 紅 渡がラウズカードの知識を得たのは次狼、ガルルの存在あってこそだった。
渡の知らない何時の間にか彼は情報を集め、その全てを差し出した。
世界の崩壊を防ぎ、音也との約束を守る為、と本人は言っていたが
結局の所、どの様に知識を手に入れていたのかはわからずじまいだった。

『-ATTACK RIDE- REMOTE!』
 レンゲルの姿をしたディケイドファンガイアがカードホルダーとは別の場所から3枚のカードを取り出す。
2枚のジョーカー、そしてバニティのカード。
取り出したカード全てを虚空へと投げ、ディケイドファンガイアが手を翳す。
次の瞬間には封印処理が施された3枚のラウズカードを赤い光線が貫き、その封印を解き放っていた。
それと全く同時に時空のオーロラが出現する。
オーロラは解放された3つの人影を飲み込み、静かに消えていった。

 やるべき事は終わった。
後はただ、時が満ちるのを待つだけ。
ディケイドファンガイア――紅 渡は静かに目を閉じた。



――遠くない未来。
 一人のカメラマンの構えたカメラのレンズに一人の青年が写りこんでいた。
白い服に身を包んだ青年は、全てを悟った様子でその口を開いた。

「――ディケイド。今日貴方の世界が終ります」



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最終更新:2009年12月07日 20:22