作品の設定について


◆「ライジング」の時間軸について

「ライジング」は、作中詳しい日付までは明記されていないものの、監督の米たに氏が「TV版終了後の春が舞台である」と発言している。

――今作から、各キャラクターの私服姿が一新されました。このタイミングでの変更はどういった意図で行われたのでしょうか?

桂先生に「季節も春の設定ですし、同じ洋服を着たきりだとあまりにもアニメっぽいので、服を着替えさせてほしい」とお願いしたんです。

(「タイバニ」最新作で生まれた"進化"とは? - 米たにヨシトモ監督が語る『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』米たに氏のインタ記事より抜粋)
http://news.mynavi.jp/articles/2014/02/07/tbr/002.html

「タイバニ」の世界では、「HERO-TV」におけるランキング争いを10月~翌年の9月までを1シーズンとして行っている。(詳細は【TIGER&BUNNY】とは?を参照)
「ライジング」冒頭で二部ヒーローとして活動していたバーナビーの「あと半年、僕たちも更に厳しくいかないと」という台詞や、TV版最終話で虎徹とバーナビーがバディを再結成させた時期が【マーベリック事件】から1年後のクリスマスだった事等から、「ライジング」の時間軸はTV版最終話から約3ヶ月後の春である事が解る。

また、高橋悠也氏によるノベライズ版でも、ほぼ同じ内容が記述されている。
あの日から一年と数ヶ月が経過していた。それはヒーローたちを襲う歴史的大事件。七大企業の一つであるメディア系
企業アポロンメディアのCEOであり、ヒーロー業界の最高権威でもあったアルバート・マーベリックが、人の記憶に別の
記憶を上書きするNEXT能力を駆使して、自分が過去におかした殺人の罪を隠蔽。さらにヒーローたちを都合の良い
ように操り、自分の思い通りのヒーロー業界をシュテルンビルトに作り上げていたのだ。(p06)

「あと半年、僕達もさらに厳しくいかないと」と、バーナビーは呟く。(p35)

ノベライズ版「ライジング」より一部抜粋(数字は該当p)

◆爆誕、シュテルンビルト女神様伝説

今回のライジングでは、古の時代に欲を出し悪行を繰り返す人間達に女神様が罰を与え、それによって人々が心を入れ替えたという神話や伝説に基づいた事件が物語の鍵を握っている。
――TVシリーズを作られたとき、女神像に設定はなかったのですか?
西田:キャラクターもそうですけど、脚本を書きながら、「実はこういうことがあったりして」と思いついたことをストックしていたので、
今回、そのひとつを引っ張りだしました。(ライジング版KOW・西田氏インタビューより)
しかし、シュテルンビルトは長年頻発していた水害対策の末海上に建てられた新興都市で、街全体が巨大なタワー構造になっている。
故に、街の歴史も建築技術その他の面から比較的新しいのに、そこに土着の女神の伝説や神話があるのは少々考えにくい。
伝説なら、むしろ街に銅像も立っているMr.レジェンドではないか?
また、女神の与えるとする罰ならば、街の成り立ち的にも水害の方がしっくり来ると思われるのだが。

TV版最終話でヒーロー達に追い詰められたマーベリックが、「元々シュテルンビルトは荒廃した街だったが、そこにヒーローが治安を守るという安心を提供する事で今日(こんにち)のような発展を遂げた」という自らの行いを正当化するような発言をしている事から、TV版の設定との間に矛盾や齟齬が生じている。
「本当にそうか? 元々シュテルンビルトは荒廃した街だった。
そこにヒーローが治安を守るという安心を提供したからこそ、ここまで発展したのだ。
全て私の功績。私は間違っていない! 私に罪などない!!」
(TV版最終話よりマーベリックの台詞を抜粋)

◆女神様を巡るちぐはぐな宗教的概念

バーナビーが支援をしていた孤児院は、一見キリスト教関連の施設のようだが、そこでシスターがキリスト教にとっては異教扱いである土着の女神の逸話を子供達に話す事は、絶対にありえない。(モデル国に多いプロテスタントでは、イエス・キリスト以外に信仰の対象はないので、女神の絵本は存在しない

子供達に女神の絵本を読み聞かせるシスター。 wiki以外への転載禁止

カトリックのマリア信仰のように、仮にもしも本当に女神の言い伝えがあるほどシュテルンビルトに土着の民話や文化が根付いているならば、TV版放映の時点でそうした話題や描写がないのは不自然だし(海外では、宗教は日本以上に日常生活と密接な関係にある)、特殊能力を持つNEXT達はその女神に害を及ぼす者として、異端審問をはじめとした今より酷い差別や迫害を受けるか、逆に女神の恩恵により力を得た聖人扱いを受けると予想されるが、NEXTが誕生した歴史(半世紀足らず)を考えると、前者の可能性が高い。

特にカトリックは、過去に当時のローマ法王が魔法と魔法使いが主題の小説『ハリー・ポッター』に懸念を示していたほど、超常現象の類を認めない傾向が強い。

◆いつの間にか全世界に拡散、ヒーローシステム

ライジングでは、バーナビーよりもヒーローのキャリアを持つライアンの存在により、シュテルンビルト以外の街や国でもヒーローが存在する事が判明した。
だがシュテルンビルトのヒーローシステムは、いつコンチネンタルエリアに輸出されたのだろうか?または、両者とも同様のシステムに統一されているのか?
両都市の司法局やヒーローをNEXTを管理する機関との間で、まともな取り決めはなされているのか?
ライアンの移籍等諸々を考える上で重要、逆に言えばここをおざなりにすれば説得力の無くなる設定であるのだが、いくつもの疑問点が生じている。

まずこの件については、プロデューサーの田村一彦氏が2011年9月に発売されたムック(TIGER & BUNNY ロマンアルバム)で
「シュテルンビルトという街だけにHERO TVというものがあるけど、NEXTは世界中にいる」
と明言している。
これにより、もしヒーローが存在するとしてもHERO TVとは関係がない事が伺え、となればヒーローシステムにまつわる諸々がまともに取り決めされているかは怪しくなってくる。

そもそもヒーローシステムは、長年偏見などによる差別や迫害が続いていたNEXTの地位向上も兼ねて、自らもNEXTであるマーベリックが独自に創りだしたものである。
バーナビーを第2のMr.レジェンドとして仕立てあげようと目論んでいたマーベリックが、安易に他都市や諸外国へシステムの使用を認めたり、あまつさえバーナビーの地位を揺るがしかねないライアンを野放しにしておくだろうか?
ヒーローシステムの前に、まずは司法局によるNEXT管理の確立(シュテルンビルトでは、原則NEXT能力が確認された者は司法局に届けなければならない)の方が、優先されるべき案件ではないだろうか?

また、もし他国でも同一のシステムがあるのならば、パオリンがわざわざ親元や故郷を離れてシュテルンビルトに来る必要もなく、TV版第1話でTop MaGの事業撤退によりリストラの憂き目にあった虎徹に対しても、アポロンメディアへの移籍以外に他国や他都市でのヒーロー活動を勧めるような選択肢もあったのではないかと思われるが、TV版ではそうした「他国や他都市にもヒーローやHERO-TVがある」というような話題は、先述の「女神の伝説」同様全編通して一切出てこなかった。

◆人命よりも数字(視聴率)が大事なTVプロデューサーと、無能な街の行政

伝説になぞらえた事件により、「HERO-TV」のプロデューサーのアニエスとヒーロー達は、フェスティバルの当日に犯人が襲撃に来ると予測していた。
しかし、当日の会場ではヒーローがパトロールをするだけで、それ以外には特別警察やその他行政による対策は取られておらず、この事からアニエスとヒーロー達は警察や街の行政、フェスティバルの実行委員会等の機関には犯人の襲撃について一切知らせていない事が窺える。

知らせていれば、それこそかつてマーベリックに権力を牛耳られて良い所のなかった市長が、街を守るという大義名分の元、警察や軍隊の協力を仰いで警備の幅を広げたり、犯人に抑えられてしまった制御室などもどうにか死守できたかも知れないだろう(ただし、その場合はフェスティバルの中止や大幅な規模縮小の可能性もあるが)。

結果、超奇跡的に死者ゼロだったものの、多数の怪我人と建物が倒壊するという大惨事が起こったのだが、この事に関して司法局や街の行政に知らせなかったアニエス(とヒーロー達)は、下手をすれば不作為犯として罪に問われる可能性もあるのではないだろうか?

それ以前に、街の行政や司法局の人間もシュテルンビルト住民であり、当然街に伝わる女神の伝説を知っている筈なのだから、一連の事件からフェスティバルの当日に何か起こるのではないかと予想し、警戒を促す者が現れてもおかしくないと思われる。

◆学習しないアポロンメディアとヒーロー業界

ライジング冒頭でアポロンメディアの新オーナーのシュナイダーが、WTの解雇及び二部ヒーロー廃止を宣言。だが、元々二部ヒーローは一部(リーグ)のヒーローだけでは対処しきれない軽犯罪を担当するヒーローとして、HERO-TVのプロデューサーであるアニエスが提案したものである。
そこへ突如、新参者のシュナイダーが廃止を言い渡せるほど権限を持っていたというのだろうか?

前アポロンメディアオーナーのマーベリックは、かつて自身がHERO-TVのプロデューサーであった経緯からOBCの社長も同時に兼任していたが、果たしてシュナイダーもマーベリックと同じくOBCの社長まで兼任していたというのだろうか?
いくらシュナイダーが事業家として優秀であったとしても、普通は企業のイメージ回復としてマーベリックと同じ轍を踏まぬよう、OBCの社長までは兼任させないと思うのだが。

マーベリックの失脚により7大企業の最たるものだったアポロンメディアの権威が揺らいだ後、システムはどうなっていたのか?
そして、わずか2年足らずで立て続けにCEOが不祥事を起こしただけでなく、社員(それもオーナーの個人秘書)が、雇い主であるオーナー殺害を計画・その為だけにテロまがいの事件を起こして街を壊滅させたアポロンメディアは、企業として今後成り立っていけるのか?
他の6大企業や司法局その他からのクレームや行政指導等はなかったのだろうか?

ちなみに、ライジング以降の物語が連載されているミラクルジャンプ(MJ)版のコミックスでは、事件によって崩壊した街もいつの間にか元通りになっており、オーナーとその個人秘書という犯罪者を2名出したアポロンメディアも、何事もなかったように営業を続けている。
(詳細はMJ版についての項目を参照)

アポロンメディアは、ワイルドタイガーを解雇した際スポンサーや過去の冤罪についての賠償も含めた退職金、正体が発覚した(バーナビーと違って、虎徹は冤罪のせいで本人の意志に反して正体が露呈された)事による本人及び家族への補償等何も行わなかったのだろうか?
最終更新:2016年01月14日 12:32
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