ワイルドタイガー/鏑木・T・虎徹(かぶらぎ・T・こてつ)
◆TV版最終話終了時点との矛盾
いつの間にか正体がバレていた。
TV版では、冤罪を着せられた男に似ているとの声もあるが、あくまでワイルドタイガー(以下WT)の正体はうやむやのままどまりで、状況的に バレた・バレていないのどちらにも取れるような形で終了していたのだが、続編のライジングにあたっては、子供達に「コテツー」と囃し立てられたり、バーナビーの「もう正体バレてるからいいじゃないですか」という発言から、虎徹=WTである事が市民に明るみになっている設定のようである。
虎徹が正体バレする羽目になったのはマーベリックの策略によるもので、虎徹はTV版の頃から「ヒーローは正体を隠すもの」というこだわりを持っているのだが、上記のセリフにもあるようにバーナビーにとってはどうでもいい事らしく、ライジング本編を通して普段、出動時を問わず「虎徹さん」呼びである。
(TV版のバーナビーは、通常時は「虎徹さん」出動時は「タイガーさん」と使い分けていた)
TV版最終話ではヒーロー業界に復帰したベン・ジャクソンが企画書のようなものを携帯しており、1話にも登場していた子供(1話から外見が大きく成長したような感じには見えないのでそれほど時間がたっていないと推測される)がラストでTV版スーツのWTとバーナビーのヒーローカードを購入しているシーンから、ふたりは既に一部に復帰しているのではというのを匂わせている。しかしライジングは、ふたりが二部で活動しているところから始まり、設定に矛盾が生じている。
◆崖っぷちのベテランから、無能の中年に?
キャリア10年以上のベテランで、ヒーローとしては最盛期を過ぎて人気も乏しいが、地道に活動を続けている。市民を守る為なら器物破損もためらわない大胆な行動から、ついたアダ名は正義の壊し屋。
というのも、これはエンタメ性を重視する昨今の「HERO-TV」の方針や、番組を盛り上げるための煽りも含まれている。TV版BDの特典冊子によれば、10年の経歴の中で虎徹が実際に賠償金で裁判沙汰になったのは5回程度である。
また、カメラの前で上手くアピール、ポイントを稼ぐことが出来なくてランキングとしては下位に甘んじているが、TV版ではカメラの映っていない所では犯人の確保や市民の救出を行っており、ヒーローとして【無能】な訳ではない。
実際TV版でも「HERO-TV」のプロデューサーのアニエスや、初期のバーナビーに【旧い(人間)】とは言われるものの【無能】とは評されていないし、出動中アニエスから特別回線越しに重要な依頼が来たり、名指しで市長の息子のベビーシッターを頼まれた事があった。
ところが、ライジングではそうしたカメラには映らないが確固たる信念の元ヒーロー活動をする虎徹の姿は微塵もなく、犯人を取り逃がしたり等、ヒーローとしての威厳も何もない「ドジなおじさん」といった道化のような役割に甘んじている。
確かに減退により1分しか能力を使えなくなったが、TV版最終話でバーナビーと再会するまでは二部でひとりヒーロー活動を続けていたし、10年現場で培ってきた経験まで失った訳ではないと思うのだが。
◆いいか、ヒーローっていうのはな
存在が確認されて僅か半世紀、未だ根強い差別や偏見があるNEXTにとって最大の栄誉であり、大都市のシュテルンビルトに8人しかいないエリート的存在のヒーローだが、コンチネンタルエリアから来たライアンにより、その稀少価値と存在意義が揺らいでいる。
ライジングでは、ライアンがバーナビーのデビューするよりずっと前にコンチネンタルエリアでヒーロー活動をしており、それによって諸外国でもシュテルンビルトと同じヒーローシステムの元、ヒーロー達が活動してる事が判明している。
ならば、何故TV版第1話で虎徹の以前の所属会社Top MaGのベン達は、ヒーロー事業部売却による業界撤退の際、虎徹にアポロンメディアでの再雇用の他に、市外または国外でヒーローをするという選択肢を与えなかったのだろうか?
◆アポロンメディアはブラック企業?
【マーベリック事件】で殺人の冤罪を着せられ、さらにマーベリックに記憶を操られていたとはいえその相棒と他ヒーロー達による執拗な追跡及び攻撃を加えられた被害者であり、かつ記憶が戻ったヒーロー達と共にマーベリックの野望を打ち砕いた功労者でもあるのだが、バーナビーとコンビ再結成から約3ヶ月という短期間で新オーナーのシュナイダーにより「衰え始めた人間なんていらないんだよ」と解雇を言い渡される。
シュナイダー就任&ライアン移籍までどれほどの準備期間があったのかは不明だが、約3ヶ月で再解散させるようならば、スポンサーその他契約上の問題等から普通ははじめから再結成させず、特に虎徹には今後の身の振り方についてアポロンメディアは企業として説明や勧告をする必要がある。
それ以前に、過去に冤罪を着せ結果的に会社を救った人物を、依願退職や転属辞令もナシにいきなり解雇というのは、虎徹が余程の契約違反を犯すか法に背く真似でもしない限り、一企業としてありえない非道とも呼べる処置である。
司法局から一方的な処分についての警告をはじめ他の6大企業からヒーロー業界全体への弊害を懸念する声、更に虎徹の正体が発覚しているのであれば、WTの解雇を知った市民やマスコミがアポロンメディアに対して不信感や異を唱えるような事があってもおかしくないのだが、(マーベリックがシュテルンビルトを牛耳っていたTV版の頃ですら、超過勤務だった虎徹に対してロイズが有給休暇を取らせようとしていた位、マスコミからの突き上げなどを警戒している描写があった)彼らはこぞって新コンビの誕生を祝うだけで、一切こちらについては触れずじまいという異様とも呼ぶべき光景が見られた。
虎徹「有給休暇!?」
ロイズ「だいぶ溜まってるでしょう?いい機会だし明日から2、3日ゆっくりしなさい」
虎徹「でも、ヒーローが休む訳には……」
ロイズ「困るんだよねえ。労働法違反だってマスコミに叩かれでもしたら」
(TV版第10話より) |
◆正体がバレると性格も変質するのか?
ヒーローとしての再就職を目指しているのに、何故か関連業種とは完全に外れたタクシードライバーに転職。しかし、TV版では冤罪をかけられバーナビー以外のヒーロー達に追い回されていた時には下水道や抜け道など駆使して逃亡し続けていた(加えて劇場版「ビギニング」でも、アニエスの通信を聞きながら、現場までスムーズに車を走らせていた)のに、ライジングでは道一つ満足に解らないような設定にされていた。(車両に搭載されたナビを上手く扱えず、結局女性客に「もういいよ、オッサン」と下りられてしまう)
なお、公式監修のノベライズ版では、上記のシーンについて以下のような描写がされていた。
タクシー会社に採用された際、虎徹は簡単にカーナビの操作についてレクチャーを受けた。 はずだったのだが、元々説明書の類が苦手だった虎徹は軽く聞き流していたのだ。 ヒーローとして街の土地勘があった虎徹はカーナビなど使う必要がないと思っていたからだ。 ところが女性客が最近新しく出来たビルの名前を出してきたため、虎徹はカーナビを使わざるをえなかったのだ。
(高橋悠也著:小説版「ライジング」P89より抜粋) |
※余談だが、現実の日本やモデル国のタクシー車両は、運転手の安全確保や乗車拒否など不正防止の理由から、タクシー会社によって全てGPS管理されているので、運転の際に必ずしもナビを使用しなければいけないという事はない。
更に、モデル国では色々な店がひしめき合って住所が非常に複雑化しているのと、同じ名称のホテルやブランド店などが街のあちこちに複数チェーン展開されている事から誤解や混乱を招かぬよう、タクシー利用の際には余程メジャーな観光名所などを除いて「住所」や「名称」ではなく「通り」の名前を運転手に告げるのが一般的である。
これは、TV版ゴシップス内「ヒーローに100問100答(written by西田征史)」のWTの項目にあった「機械の類が苦手」というのに続いて、虎徹は機械の操作その他がまるでできないというのを印象づけているのではないかとも考えられる。
(「ライジング」公開中、来場者に配布されていた西田氏書き下ろしによるヒーロー達の特典コラムでも、虎徹の家電や機械をロクに扱えない・取説も読まないなどのエピソードが見られた。後にこれらは全て、ライジングBD及びDVDに収録された)
バーナビーとコンビを組んでよかったと思うエピソードはありますか?
バニーが細かいスーツの機能とか教えてくれるところかな。俺ああいう機械とか全然駄目だから。 でもバニーから「自分で説明書読んだらどうですか」って、いつも叱られてて・・・。
(TV版ゴシップス内「ヒーローに100問100答」より抜粋) |
しかしTV版序盤では、かつての所属先だったTop MaGに出社するまで自分の移籍を知らなかった虎徹が、移籍先のアポロンメディアでロイズに挨拶をしている最中事件発生、それまでの『クソスーツ』から新しいヒーロースーツで出動した際には、満足にスーツに関する説明やマニュアルを教わっていなかったにも関わらず、『クソスーツ』と明らかに異なるスーツの機能や装備などを普通に使いこなしている。
(その後、虎徹のワイヤーがバーナビーに絡まり2人でぐるぐる巻きになるというトラブルに見舞われるが、それは偶然にも互いの取ろうとした行動が一致した事によるもので、虎徹が操作ミスをしたからではない)
また、TV版における以下の行動からも、虎徹が機械の類について最低限の使用方法を把握している事が分かる。
- バーナビーとまだ打ち解けていなかった頃、僅かな隙をついて彼の携帯電話に自分の変顔を待ち受け画面にするイタズラをしていた
- NEXT犯罪者のジェイクに関する記録をPCで操作・確認している
- 自宅にある年代物のディスクプレイヤーを、今も愛用し続けている
更にその道中、事故現場に首を突っ込もうとするも「貴方はもうヒーローじゃない」と止められる(その際、正体がバレている筈なのに虎徹がアイパッチをつけるまでWTだと認識されなかった)。
だが、アポロンメディアを解雇されてはいるが、再就職活動している事から司法局から下りている【個人のヒーロー認可】までは剥奪されていない(TV版でマーベリックが「個人のヒーロー認可と、企業がヒーローを雇用する事は別物」と話している)ので、正確には「フリーが首を突っ込まないで下さい」なのだが、すごすご引き下がってしまう虎徹も虎徹である。
TV版では正体が露呈して犯罪者や関係者からの復讐や逆恨みを避ける為、娘の楓と離れて単身ブロンズステージに居住していた虎徹が、正体がバレているにも関わらず脳天気に家族で祭りを楽しむシーンが。そして、それを(生?)あたたかく見守る市民の姿も。
「虎徹は、素性がバレれば家族にも危険が及ぶということで単身赴任をしていますが、実は、僕がやりたかったのは【出稼ぎのお父さん】なんです。」 (TV版ヒーローゴシップスP93さとう氏コメントより) |
立て続けの受難に心が折れたのかはわからないが、TV版ではどんな時でも前を向いていた虎徹の性格が、ライジングではとことん後ろ向きになっている。
◆セキュリティ皆無の病院で消火器無双
ヒーローを辞めていたのに何故ネイサンの入院先が分かった&どうやって病室に入室できたのか?
カリーナの能力でも持て余していたネイサンの炎に向かって消火器噴射(それも何処から拝借してきたのか種類もバラバラである)というのも、一歩間違えば消火どころかネイサンに限らず、病室内の人間すべてが窒息するおそれがある。
ネイサンの病室に消火器を噴射する虎徹(ライジング本編より)※wiki以外への転載禁止 |
◆大人の事情のヒーロースーツ
あくまで一時的な限定復帰に過ぎないのだが、何故かstyle2バージョンのWTのスーツ(スポンサーロゴ付き)を渡される。
ただし、ライジングOPとTV版スーツを着用していた冒頭のシーンではついていた【1minute】【Power to the future】 のロゴが、style2スーツにはついていない。
冒頭のスーツと、style2版スーツ(いずれもライジング本編より)※wiki以外への転載禁止 |
特に後者の言葉は、TV版最終話の虎徹の決意と同時にTV版監督のさとう氏の想いが込められたメッセージでもあるのだが、TV版の【正統な続編】であるライジングには、何故採用されなかったのだろうか?
「未来に繋げる力」は例え一分、一秒になろうが前向きに考え、行動するコトで昨日迄の自分と違う自分になれる! 一歩前進!がタイバニのテーマの一つ。監督マンがアドリブで加えたメッセージです。 satokeiichiree/さとうけいいち 2011-09-25 00:53:54 |
予算削減を命題とされたはずのヒーロー事業部が、解雇されて今後ヒーロー活動できるか分からなかったWTの新スーツを用意していたのは何故なのか?
◆バディの関係性の変化
ラストで、解雇時やその後虎徹がHPを立ち上げた時には何一つコメントをしてこなかった市民からのいきなりのタイガーコールや、ライアンやマリオに促され、もう一度バーナビーとコンビを結成する事になったが、その時の虎徹の言動や表情から【対等なバディ】ではなく、あくまでバーナビーの顔色を伺いながらの完全に主導権を握られた【引き立て役】として拾って貰ったようにも見える。
◆最後の最後まで影の薄い、タイトルにもなっている主役のひとり
エピローグでは、事件後のおもにヒーローズ達のプライベートなシーンが流れる。
しかし、ヒーローズをはじめ相棒のバーナビーや娘の楓、更には悪役ポジションであるヴィルギル達にすら個別エピソードがあるのに対して、虎徹にはその描写が一切ない。
辛うじてアニエスの持つ書類内で『WT』の姿は確認できるものの、虎徹本人としてのエピローグは皆無である。
各キャラのエピローグ。虎徹はWTの企画書(中央)のみ登場(ライジング本編より)※wiki以外への転載禁止 |
『The Beginning』でやった描き方はしないように、特にラストは変えたいと思いました。『The Beginning』は虎徹とバーナビーのふたりの描写で終わったので、 『The Rising』は全員で終わらせよう、と。(ライジング版KOW 西田氏インタビューより一部抜粋) |
他にも西田氏はEDに関して以下の様な発言もしている。
ビギニングはバーナビーの「もしもし」 で終わった。ライジングは、みんなで終わりたかったから、全員でがれき撤去してる。 でも、二人も見たくて、全て終わってから「ダメです。」#TBスタッフ舞台挨拶レポ (暫定)2014.3.14スタッフ舞台挨拶まとめよりhttp://togetter.com/li/642211 |
シリーズ内でも一番の人気を誇り、仮にもタイトルロールにもなっている主役の存在を、「ライジング」全編を通してここまで徹底的に無視するかのような制作側の意図は何だったのだろうか?
◆派生企画における虎徹のライジング公開以降の扱い ~何もかもすべて、虎徹のせい~
▼COH…※2013年開始されたリレーCD企画。詳細はCOHについての項目を参照
COH Vol.7・8において、リレーソングの予定内容が突然ミニドラマへと変更に。そしてそのドラマ内で、作品の仕様変更理由を「Vol.7でスポンサーが虎徹の歌にダメ出しをし、それを受けてVol.8で虎徹が最後の歌を歌うのを嫌がった」という事にされた(あくまで設定上であり、実際のスポンサーがダメ出しをした訳でも虎徹の声を担当している平田氏が嫌がった訳でもない)。
▼MJ版…※ミラクルジャンプに連載中の公式コミカライズ作品。詳細はMJ版についての項目を参照
ライジング公開終了以降発売されたMJ版においても、パオリンが髪型を変えた原因にさせられた。パオリンが伸びた髪をファイヤーエンブレムに切って貰おうとした所に虎徹が「ホットドッグ食うか~」と登場。パオリンが返事をした際に頭を動かした為、髪に予定以上のハサミが入って前髪パッツン状態になり(最終的にバーナビー行きつけのヘアサロンで整えたと思われる)ベリーショートへという結果に。
「タイガーのせいだからね!」とカリーナになじられながら、虎徹がパオリンに「短いほうが似合うって」という台詞を発している。
こうしてライジングでのパオリンの髪型変更については虎徹のせいという理由付けがなされた(しかしパオリンの新衣装への変更理由については触れられていない)。
この回では他に、出動中で犯人を追うパオリンに2部で別の犯人を追っていた虎徹がぶつかり、パオリンの犯人確保の邪魔をするエピソードも挿入されている。
上記のエピソード以外にも、ライジング公開後のMJ版ではバーナビーの引き立て役に徹してでもいるのか、虎徹がピエロの立場に回る事が多いストーリーが、現在進行形で描かれ続けている(TV版放映時及び休載前のMJ版にはこのタイプのエピソードはほぼなかった)。
最終更新:2015年10月07日 12:04