ルナティック/ユーリ・ペトロフ


◆タナトスの名のもとに裁きを行うダークヒーロー

表の顔はシュテルンビルト司法局のヒーロー管理官兼裁判官だが、裏の顔は己の正義に基づき犯罪者達を粛清するダークヒーロー。
青い炎を操るNEXT能力を持つ。

シュテルンビルトの街に銅像も立つ伝説の英雄Mr.レジェンドの実の息子であり、少年時代、能力減退による苦悩の末酒に溺れ暴力を振るうようになった父親から母親を守るために、能力を使って父親を殺害してしまう。

「犯罪者を殺さない」虎徹達ヒーローとは相容れない存在だが、まったくの敵対関係という訳ではなく、TV版ではマーベリックの策略により冤罪を着せられた虎徹の窮地を救うなど、あくまで独自の正義と信条の下で行動している。

◆変容した正義

ところがライジングでは「復讐に理があるから」という訳の分からない理由で、復讐者でありテロまがいの犯罪を起こすヴィルギル達を援護するような行動を取っている。

シュナイダーへの私的な復讐のためだけに、マーベリック事件から1年ちょっとしか経っていないシュテルンビルトの街を壊滅せんと企むテロリストに肩入れをするのはどうなのだろうか?

「己の正義」という魔法の言葉を操りながら、実際にはワイルドタイガーをルナ急便で決戦地へ届けただけである。管理官としてもダークヒーローとしても貫く正義はブレブレであり、何一つ褒められる所がない。

そもそも曰くつきのシュナイダーを事前に詳しく調査していれば、「この男をアポロンメディアのCEOにするのはまずい」とすぐ分かりそうなものだったのだが、そうしなかったのは何故なのか?

エンドロール後の裁判シーンでは、シュナイダーに重刑を科し法廷を出た後で、無人の廊下で裁判資料や証拠物件らしき書類を己の炎で焼失させている。(ちなみに監督の米たに氏は、このシーンについてライジングのBD・DVDのオーディオコメンタリー(オーコメ)にて「証拠隠滅。これがユーリのRISING」と発言している)

幾らシュナイダーが悪徳経営者だとしても、すべての人間を公正な法の下に裁く立場の司法に属する人間がそんな事をするのは、越権行為どころの話ではない。
(本来裁判記録や資料等は、紙媒体の他にも裁判所や司法局内のデータベースで管理されているだろうが…)
素顔の状態で能力を使う事は、ユーリの正体が(例えば偶然通行人が通りかかったり、裁判所内に取り付けられた防犯カメラに写るなどして)露呈する危険性も出てくる。

さらに今回の事件に限って言えば、むしろシュナイダーは犯人達によって命を狙われた被害者の立場にある。(もしも、それとは別にシュナイダーがアポロンメディアにヒーロー業界として参入してきた事で不正などが発覚していたとしたら、シュナイダーによって連れて来られたライアンをはじめ、アポロンメディアのヒーロー事業部や彼によって一部に昇格したバーナビーは、参考人・証人扱いで出廷する必要が出てくる)

黒幕であるヴィルギルの父親絡みの事件やその他については、シュテルンビルトではなく以前の街の司法の管轄であり、ユーリがシュテルンビルトでシュナイダーを裁くのは、道理に合わないし権利も無い筈である。

◆ザルだったヒーロー管理

ライジングでは、コンチネンタルエリアから新ヒーローとしてライアンがやってくる。このように、他所の街からヒーローが移籍するなどという事態が起きた場合、ユーリのようなヒーロー管理や街の司法に携わる人間としては、普通は司法局やその他様々な機関ぐるみで色々調査するよう指示したり、コンチネンタルの司法局やライアンが在籍していた企業と綿密に話し合ったりなど、万全のチェックを行うものではないのだろうか?

ヒーロー経験者といえども他所から来る以上、シュテルンビルトで認可が下りるまでは一般のNEXTと変わらないのだ。
NEXTは、能力の使い方次第でいつでも善悪がひっくり返る存在だということを、彼自身が一番理解している筈なのだが。
最終更新:2015年06月14日 23:17