どんなに天才の、腕利きの、手練れの、至高の、上級の、努力家の、怠惰の魔術師であっても、『彼ら』の前では等しく平等だ。また、荒れ狂う霊魂や、怒りに任せ暴れる精霊達ですら比較にはならない。彼らを呼び出す者は等しく大きな危険に晒され、彼らを霊魂として、あるいは肉体に住み着かせ、あるいは炎や水、植物などに宿らせるにせよ、彼らはまず初めに自由の獲得を求め、それを手に入れれば大災害を引き起こすだろう。それ故に、彼らを呼び出す際には彼らを縛り付ける魔法陣の中によってのみ召喚されるべきである。

魔法陣は破断がなく、完全で恒久的でなくてはならない。線は安定した手によって握られたチョークと共に、しっかりと物を見据えることのできる眼球越しに描かれなければならない。(余談ではあるが、自ら、或いは他人の血によって描かれた魔法陣は『彼ら』をより強力な存在で召喚できる)

魔法陣は不注意、或いは何らかの間違いで一歩踏み出れば線は掠れてしまうため、何らかの形で保護しておくことが望ましい。一般的なやり方であれば、蝋燭の蝋を垂らしておくのが一番簡単な方法であろう。

こうして確りと手順を踏んで呼び出した『彼ら』の機嫌を損ねることもあってはならない。確かに、彼らは貴方の浅はかな願いなど見通し、其れを叶える事は容易ではあるが、其れと同じくらいに、終わることのない闇の中で地獄の業火に晒してしまう事も容易いのだ。

また、願いを叶える上で、恐らく彼方から交換条件、つまり契約を持ち掛けられるだろうが、決して出し抜こうとしたり破棄しようとしたりしてはいけない。どうせ、悲惨な末路を辿るのなら少しでもマシな方を選んだほうが良いだろう。


───黒魔術研究会
最終更新:2022年07月24日 21:26