「我々と-最後の欠片-」





「なんだ…ここ!?」
「何もかもボロボロねぇ…」


そこは都市部『だった』場所であった。
今ではもう跡形も無く荒れ果てていた。
幾多立ち並んでいたビルはほとんど崩れて
綺麗に舗装されていたアスファルトはヒビが入っていた。
等角に並んでいる街路樹もいくつか折れているものがあった。
その荒れ果てた土地には一人の人間と一体のドールがいた。


「音がしたから来てみたけど…」
「なんだったのかしらねぇ…」


その荒れ様は中心部に近づくつれにだんだんひどくなっていった。
大きな穴があいていたり、崩れたビルが更に壊し尽くされていたり、
街路樹が根っこから引きぬかれていたりされていた。

ふたりはそんな荒廃した街を歩いて行った。
中心部に行けばいくほど建物が無くなり、コンクリートが無くなり、樹が無くなっていった。
遂になにも無いただの土だけの場所に辿り着いた。
その何もない、ただの土だけの場所は円を描いていた。
それはまるで中心から衝撃が走り、なにもかも吹き飛ばされたような場所であった。

ふたりはその中心部に何かがあるのに気が付いた。


その中心には二人の人間が倒れていた。


そして、一人の男が立っていた。


「くくく…東方不敗・マスターアジア、だったかな?」
「命とは何とも儚い…」

その男は倒れていた二人の、身体が大きい老人を見ていた。
すかさず、ふたりは息を潜めた。

その男は何とも言い難いオーラを出していた。
男はその老人の手を組ませ、目を閉じてやっていた。


「おととい、お前と出会った時はあんなに元気でいたのにな…」
「この男に殺されたのか?いや、相打ちかな…?」


この声で天野銀次は彼が殺していないと判断した。
水銀燈はまだ疑っていたがふたりは彼に近づいた。


「えーっと……誰?」
「おや…名前を尋ねる時は自分の名前からだろ?」
「それもそうだよね、オレは天野銀次。そしてこっちが銀ちゃん!」
「……だからそれやめなさいって。紛らわしいのよ、お馬鹿さん。私は、水銀燈よぉ」
「随分と小さいな。人形だな?」

彼は水銀燈のことを言い当てた。
当てられた水銀燈は、彼を驚かすために飛んでみせた。
普通の人間なら驚くであろう。
しかし――――その男、食堂の男は微動だにしなかった。
そして天野銀次に向かって口を開いた。


「俺は食堂の男、と言ったら分かるかな?」
「食堂の男って、あ、マミさんが言ってた!」


食堂の男───それは巴マミからも聞いていた。
あの名簿には様々な参加者の詳細が載っていた。勿論食堂の男の事もだった。


が。


食堂の男。彼の詳細だけは異色を放っていた。
天野銀次は食堂の男の詳細の文は特に印象に残っていた。
なぜならそのページは『食堂の男』、顔写真。そして詳細文が──


◆◆

862 :('A`) :05/02/25 21:20:29
大学の食堂で国際情勢のニュースを見るたびに(主に戦争関連)
「それが世界の選択か・・・」と寂しそうに呟き、携帯で電話するフリをして
「俺だ、○○(大統領等の名前)はどうやら俺達とやる気らしい・・・」等とほざいて
「あぁ、わかってる。あいつなりの考えだな。ラ・ヨダソウ・スティアーナ(別れの合い言葉、意味はない)」
と電話を切り、寂しそうに飯を食う。というまわりの奴らに脅威を与えるのをやってた。

◆◆


これだけしか書かれていなかったからだ。
天野銀次や水銀燈の詳細文も、他の参加者の詳細文も最低でも『50行以上』はあった。
しかし彼だけは『1ページ』で、『6行』しかなかったのだ。
ひとページだけの真ん中にポツリとこれだけしか書いていなかったのだ。
他の人の詳細は何ページも使った上に隙間なく詳細が書かれていたが、
彼の詳細だけは空白があったのだ。名前も不明であった。(名称不明はもう一人いたが…)

「銀ちゃん、銀ちゃん、この人なんか怖いよ。赤屍さんみたい」
「でも、見た感じ普通の人よぉ?案外あっさり殺せるんじゃない?」
「ばか、そういうの人ほど油断ならないんだって! きっとすごく変わり者なんだよ!」

天野銀次は水銀燈に小声で注意した。
しかし、この場合正しかったのは水銀燈だった。
彼は極めて普通の人間であったから。
水銀燈が殺そうと思えばあっさり殺せる、普通の人間だ。

「えっとさ、あー、食ちゃんって呼んでいい? ほら、食堂の男だと呼びにくいしさ」
「なんだ」
「そのよかったらだけど、オレ達と来ない? いや来なくてもいいんだよ、うん!」

天野銀次は巴マミに対主催者を増やしてほしいと頼まれていた。
既に半分の参加者は対主催者のグループに入っていると言っていた。
水銀燈は思わず銀次に言った。
「ちょっとぉ、注意すべき男と一緒にいくのぉ?」
「オレだってつけまわされたりとかはもうごめんだけど、でも、だからって放っておいて蛮ちゃん達にもしものことがあったらやだし」
天野銀次は不安定要素は見逃せなかったのだ。
一人にさせていたら何をやらかされてしまうことやら。
この手の変な人を放っておいたらどうなるか、今までの経験から嫌なほど分かっていた。


しかし、実際彼は何もしない…相手を畏怖させるだけで何もしない男だった。


ゲームが開催されてから常に一人でいた食堂の男は、言った。

「まあ、いいだろう。俺もそろそろ一人でいるのに退屈していたところだ。」

食堂の男は、お前の後ろについて行くさ…と言いまた黙った。
天野銀次と水銀燈は、少し不安だったが後ろを気にしながら巴マミと合流の約束を取り決めていた食堂に向かって行った。
食堂の男は、二人について歩きながら、空を見ていた。


空は…少しずつ明けの明星となっていた。




ゲームも、もうすぐで終わる。







【B-2 街・3日目 朝】
【天野銀次@GetBackers-奪還屋-】
[状態]:睡眠不足
[道具]:黒鍵×10 万能ナイフ コンパス 地図 名簿 筆記用具 時計 ランタン
[思考・状況]1、対主催者を集める
      2、集合場所へ向かう
      3、食堂の男に対する不安


【B-2 街・3日目 朝】
【水銀燈@ローゼンメイデン】
[状態]:健康
[装備]:誘惑スル薔薇ノ雫
[道具]:ヘルパー コンパス 地図 名簿 筆記用具 時計 ランタン
[思考・状況]1、対主催者を集める
      2、集合場所へ向かう
      3、食堂の男に対する不安


【B-2 街・3日目 朝】
【食堂の男@ラ・ヨダソウ・スティアーナ(コピペ)】
[状態]:健康
[道具]:糸電話 コンパス 地図 名簿 筆記用具 時計 ランタン
[思考・状況]1、二人について行く

※糸電話は鞄にしまっています。



233:戦いを止めるのは 天野銀次 251:幕間劇「宴」
233:戦いを止めるのは 水銀燈 251:幕間劇「宴」
237:厨二病の概念はまやかしか 食堂の男 251:幕間劇「宴」

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最終更新:2013年07月24日 22:35