【名前】Ⅳ(本名:トーマス・アークライト)
【出展】遊戯王ZEXAL
【性別】男
【職業】プロデュエリスト
【名言】「ファンサービス」
【本ロワでの動向】
 極東エリアのデュエルチャンピオン(アジアチャンピオンとも)の座に輝くプロデュエリスト。ファンサービスをモットーにし、ファンの求めに気さくに応じる姿から『最も紳士的なデュエリスト』と言われている。
 ……が、それは表の顔。その本性はファンサービスと称して地獄人形を操り獲物を痛めつける、嗜虐的で冷酷なデュエリスト。しかしそれも父の豹変が引き金となって起こった変化だったらしく、父の精神が落ち着きを取り戻してからは、情を重んじる熱きデュエリストとなった。
 但しファンサービスについてはほぼ素だったらしく、希望を与えてから奪うことをやめた以外はあまり変化していない。
 このロワでは「真月零の正体」を知らない時期からの参戦で、それがⅣの命運を左右する結果となった。

 父トロンが元の姿に戻れずともかつての優しさと穏やかさを取り戻したことで家族仲は一気に改善したようで、ロワ開始直後には名簿を確認して父と兄弟の名が無いことに心から安堵していた。同時に2人の伝説の決闘者の名を目にして驚愕もしていた。
 最初に遭遇したのは、天才と紙一重のなんとかというか完全に向こう岸なアレ……もといドクター・ウェスト。あまりにも奇天烈で強烈な性格に辟易しながらも情報を交換し、ウェストが科学者ということで、試しに父や兄の研究内容を伝えたらそれをほぼ完璧に理解したことから同行を決意する。同行するだけで決意が必要なのはお察し下さい。
 暫くして、マスター・テリオンや覇王との連戦を潜りぬけて逃げ延びた立花響と真月零と出くわした。真月がⅣのファンという体で接触して来たことから友好的に合流できたのだが、何とも皮肉な話である。
 ここでウェストと響がそれぞれデュエルモンスターズを知らず、しかも響の支給品にはプロデュエリストのⅣさえも知らない未知のカード『チューナーモンスター』と『シンクロモンスター』が存在したことから、ウェストが並行世界や異世界の存在に気付く。響は随分と混乱していたが、Ⅳは異世界の存在については常人よりは詳しく知っていたので、理解は及ばずともすんなりと受け入れた。
 その後は響が一目で気に入ったカードを使ってみたいとせがんできたことで、Ⅳによる決闘教室が開かれ、主に響に対してファンサービスが行われた。
 しかしプロデュエリストだけあって基本編が終わった後の応用編は本格的で、プロデュエリストとして普段使っているデッキ【スキドレ墓守】を用いた初心者には難解な問題を幾つも出し、しかも間違えたら容赦なくファンサービス(物理)のスパルタな内容だった。
 以下はその時の様子の一部である。

Ⅳ「俺は今、永続罠スキルドレインを発動している。この状況下で、
  1.レスキューラビットやスターダストドラゴンの効果(除外して発動、リリースして発動)は使えるか
  2.トラファスフィアやワイルドマンの効果(罠カードの効果を受けない効果)はどうなるか
  3.神獣王バルバロスをリリース無しで召喚(元々の攻撃力が3000から1900に低下する)したらどうなるか
  それぞれ答えて見ろ。ウェスト、お前はとにかく黙ってろ」
響「えーっと……はい! 1は使えない! 2は無効になる! 3は特に変化なしです!」
Ⅳ「全問不正解だ! ファンサービス!」
響「きゃー!?」
Ⅳ「正解は、1.使える 2.スキルドレインの影響を受けない 3.攻撃力3000になる だ! 分かるか!?」
響「うぅ……どうしてそうなるのかちっともわかんないですぅ……」
Ⅳ「ちっ……しょうがねぇな。お前が大好きなジャンク・ウォリアーのパワー・オブ・フェローズの計算式は一発だったっつーのに。
  よし、いいだろう。俺がきっちり丁寧に分かり易くファンサービスしてやるよ!」
ウェスト「ふむふむ。場に影響を与える効果は墓地に影響を与えないのと同じで除外ゾーンにも影響を与えない。
     リクルーターの理屈と同じ、除外されてから発動するからお助けウサギはセーフと言う訳であるな」
Ⅳ「……良く分かってんじゃねぇか」

 決闘教室が終わるころには、このチームは一部から『よからぬキチ○イファンサービス』と呼ばれるようになっていた。
どうしてこんなチーム名にした!言え!何でだ!響が入ってないじゃないかッ!
 この時デュエルを理解したウェストにより、「デュエル禁止という制限がある以上、首輪はデュエルモンスターに干渉しており、逆にカードで干渉できるのでは?」ということに気付かされる。
 試しにデュエルとして認識されないよう単発で「はだかの王様」のカードを使用してみたところ手応えがあり、デュエルに関する制限だけだが無効にすることに成功する。
 幸先の良い出来事にそのまま一行は首輪解析の為に研究施設と思わしき会場内の施設を目指して移動し、途中で小規模な戦いもあったが無事に目当ての施設まで着く。
 研究所の設備について調べようとコンピューターにアクセスしていると、ウェストと真月がよかれと思ってやったマニュアル外の操作により飛行場の管制室へと回線が繋がる。
 そこでは海馬瀬人や早乙女アルト、グラハム・エーカーがブルーアイズジェットや可変式機動兵器のロックを解除しようとしているところであった。
 響の仲間である風鳴翼が海馬たちと同行していたこともあり、両チームは特に問題なく通信越しに情報交換と交友を開始。ウェストが海馬との考察を交えたやりとりを終え、ちゃっかり見つけていた秘密の地下格納庫で好き放題している間に、Ⅳは海馬にデュエルを申し込む。
 ちょうど向こうも翼へのデュエル教室を通してデュエル制限を解除していたこともあり「ふぅん、こいつらに本物のデュエルを見せてやろう。かかってこい、未来のデュエリストよ」と快諾される。
 Ⅳは海馬の知らないエクシーズモンスターを連続で召喚し序盤は優位に立つが、デュエルの中でエクシーズのなんたるかを理解した海馬に逆転される。
 最後はブルーアイズでとどめを刺されるも、伝説に紛うこと無きその腕前にⅣは感服し、次は勝つと再戦の約束を交わした。
 通信デュエル後、海馬の側はこれから戦力の収集と仲間の捜索の為に二手に分かれる予定の旨を伝えて来て、Ⅳもこれを承諾。機動力に差があるので三方にそれぞれ分かれることになった。響は翼と直接会えないことを残念がっていたが、みんなが一緒に揃う時まで頑張ろうとすぐに気持ちを切り替えた。
 最後に短く挨拶を交わして通信を終え、この時にⅣと響は地下に行ったウェストと探しに行った真月が未だに戻ってきていないことに気付く。
 またよからぬことでもやらかしているのではと心配になって覗いてみると、案の定鬼械神ロードビヤーキーを魔術師以外でも扱えるようにモーメントを搭載する魔改造を施していた。
ちょうどグラハムやアルトが欲していた機体性能に近く、オートパイロットで彼らのいる飛行場へと贈られることとなったのだが。
 そうして真月と共に戻って来たと思った矢先、響の身体検査を始めると言い出し、同時に首輪に衝撃を与え始めた。何事かと問い質すと……

西博士「つまり、これこれこういうことなのであーる!」
響「はい、さっぱりわかりません!」
Ⅳ「お前はもっと分かろうとする努力をしろ」
真月「つまり、よかれと思って首輪を爆破する実験をしようとした、ということですね!」
西博士「そのとーりー! 科学の発展による幸福には犠牲がつきものなのであーる!」
Ⅳ「ふざけるなてめぇら! 科学の為に、人を犠牲にしようだと……!?」
響「わわわわ……! お、落ち着いてくださーい!」

 家族に科学者を持つⅣは、これに激昂。あわや内部分裂かと思われたが、当の響によって仲裁されることでこの場は収まった。しかし、勝手に犠牲にされそうになったというのに全く気にした様子も見せず、寧ろ犠牲になるなら自分で良いと言わんばかりの物言いに、Ⅳは強い不安を持つことになる。
 その後、西博士が「今はまだ吾輩の動くべき時ではないのであーる」という意味不明……もとい謎めいた発言をして首輪の解析は中断となってしまい、既に先行した海馬達に続いて出発となった。
 雪音クリスと風鳴弦十郎(あとついでにたやマ)の捜索もビヤーキーを受け取り、DMカードで翼を得た戦闘機乗りとブルーアイズのジェットを得てご満悦の社長と防人も協力してくれるお陰で、順風満帆かと思われた。
 その時だった、突如として一行はフードを被った謎の男に襲われる。すると、どうしたことか、真月は態度を急変しフードの男に単身突貫し、響もそれを追って行ってはぐれてしまう。ウェストは放っておいて先に進もうとしたが、Ⅳは首根っこを掴んで無理矢理連れて行った。
 Ⅳが2人を探し当てた時、そこには鋭利な杖で響の腹を突き刺した真月の姿があった。

真月?「おかしくって腹痛いわぁ~。まさか、こんな三文芝居にも引っ掛かってくれるなんて……ヒィ~ッハッハッハッ……!」
響「真月、くん……何言ってるの……? けど、あれ、お腹痛いの、私……?」
真月?「本当に面白い奴だなぁ、お前。なら見せてやろうかぁ? もっと面白い物をよぉ! バリアルフォーゼ!!」

 呪文を唱えると同時に、真月の姿が変わった。その顔は先程の襲撃者と同じであり、体色や背中の翼などの特徴は、父から聞かされていた最も警戒すべき、そしてⅣにとって最も忌むべきバリアン。

Ⅳ「貴様……! 貴様、ベクターか!!」
ベクター「そのとおりぃ。大正解だぜ、ちびっこパパの三馬鹿息子の次男くんよぉ」

 ここから明かされた衝撃の真実に響は呆然自失となり、Ⅳはベクターが大量にばら撒いたノイズの対処に追われ、ベクターの響を嘲笑い罵る言葉の数々をただ聴いていることしかできなかった。ちなみに紋章の力によってノイズと接触するだけで即死することは免れていたが、ウェストはそうもいかないので無理の出来ない状況だった。

ベクター「Ⅳの紋章の力も長くは保たない。そうなればⅣとウェストは丸裸、ノイズにタッチされた瞬間昇天、灰しか残らねぇ。ほぉらぁ、精々足掻いて見せろや!」
     これもお前が、よかれと思ってぇ、正義感で突っ走ってくれた結果だよなぁ! 最高だぜ最高ぉ~!」

 どうしてこんなことをするのかと響が問い、ベクターが「お前のような正義の味方が苦しんでのた打ち回る姿を拝みたいだけ」と答えた、直後、最悪の事態が起きた。
 響の肉体と精神が深く傷ついたことでガングニールの力が暴走し、響がそれに呑まれてしまったのだ。ベクターはそれさえも嘲笑しつつも、瞬時に塞がれた腹の傷を見るやその力を警戒して足早にその場から立ち去り、ノイズの群れとⅣとウェストが響の前に取り残された。
 暴走した響の力は凄まじく、ノイズの群れは1分と経たない内に殲滅され、後にはⅣとウェストだけが残され、そのまま暴走する力の矛先になってしまった。
 Ⅳの呼び掛けにも暴走する響は何の反応も示さず、即座に力づくで取り押さえることに決める。その時、ウェストが響から預かっていた支給カードの一枚をⅣに投げ渡し、それを使えと言って来た。そのカードは不協和音、シンクロ召喚を阻害するカードであり、この状況で何の役に立つのだと思ったが、物は試しにと発動する。
 するとどうしたことか、響の動きが目に見えて悪くなったのだ。それでもその力は侮りがたく、Ⅳはエースカードの一枚ヘブンズ・ストリングスを召喚し、デステニーストリングスを装備し勝負に出る。
 デステニーストリングスの効果によりドローしたカードはレベル8モンスター。これによって8回連続攻撃を実行する。

Ⅳ「響、ちょいときついの行くが、覚悟できてるんだから平気へっちゃらだよなぁ!
  さぁ、俺のファンサービスだ! 8回連続で受け取れぇ!」
 (デステニーストリングスの効果による連続攻撃ではモンスターは破壊されない。問題は、響のライフが保つかどうかか……!)

 結果、耐え切った響によって予想外の反撃を受けたものの、ウェストが研究施設で何時の間にか作っていた光線銃によって気絶させることに成功し、なんとか事なきを得た。
 しかし、この戦いで響は重傷を負い、Ⅳも紋章の力の酷使と制限の影響で大きく消耗していた。以降は意気消沈している上にガングニールとの融合の進行による悪影響も判明した響を守る為に、Ⅳは野生の巨人やノイズ達をヘブンズ・ストリングスの効果で一掃するなど積極的に前に出て戦い、敢えてハイテンションにファンサービスを続けることで響を鼓舞し続けた。西博士? あの人はいいんだ……。車の運転で一応Ⅳたちの足になってくれていたし。Ⅳにせっつかれて響を助けられる人間を探す役には立ったし。
 やがて小学校に着き、保健室を拠点にしていた闇医者ブラック・ジャックと出会い、響の治療を依頼する。法外な医療費を吹っ掛けられたが、Ⅳは必ず払うと即答している。ヘリや潜水艦まで購入するほどの資金力がありますので。
 そこに強豪マーダーの1人フリーザが現れ、Ⅳが単身迎撃に向かう。制限を受けているとはいえ本気を出せば惑星すらも破壊するフリーザの力は凄まじく、Ⅳは全ての力を駆使しながらも追い詰められていく。本当の切り札、デステニー・レオを召喚できたもののその真の力を発揮するまで場に保てるかも怪しい。
 途中で騒動を聞き付けたアーチャーがやって来て加勢しウェストも援護を始めたが、劣勢は変わらず。最早これまでかと思われたその時、Ⅳがドローしたカードは、その時にはあるはずの無いカードだった。
 それはⅣにとって未だ研究開発中だった、バリアン世界からの侵略に対抗する人類の切り札であり――尊敬する兄が作っているカード。Ⅳはこの状況を打破する切り札を、迷うことなく発動する。

Ⅳ「RUM-アージェント・カオス・フォースを発動! 俺はこの効果を、No.88ギミックパペット-デステニー・レオ
  ……ではなく! 立花響を対象に発動する!」
西博士「なんですとぉ!?」
Ⅳ「よく見とけ! これが、俺の尊敬する科学者が作り上げた、人類の英知の結晶! 科学の力が生み出した希望の力だ!
  さぁ響、遠慮するな! 俺の全身全霊のファンサービスだ! 受け取れぇ!!」

 Ⅳの全てを懸けたファンサービスにより、響は融合症例としてランクアップを遂げ、お気に入りのジャンク・ウォリアーと似たデザインに変化したガングニールを纏って戦列に加わり、鏡のデュアル・イズムを熱唱。そこから始まった怒涛の反撃により、フリーザを撤退に追い込むことに成功する。
 勝利を喜び一緒にはしゃぐ響とウェストを見て、Ⅳはアーチャーやブラック・ジャックと共に苦笑を浮かべた。
 Ⅳの体はボロボロだった。先程のRUMもデステニー・レオに対して使わなかったのは、既にⅣにカオスナンバーズを制御するだけの力が残されていなかったから。加えてRUMも未完成だった為に反動が凄まじく、次に使えば命が無いと薄々感じていた。ブラック・ジャックもそれを見抜き、声を懸けて来たが、Ⅳは「スターはファンに全てを捧げるもの」と拒否し、ファンがいる限りスターとしてあり続けようと、アーチャーを新たに仲間に加えて響の仲間探しを続行した。
 アーチャーはウェストと違いとにかく出来た男で、特に響の面倒をよく見ていた。戦術眼にも秀で、それ以上に家事全般に優れていて、キ○ガイの扱いも上手いものでとにかく頼りになった。少なくともⅣの心労は激減した。
 ある時、響がアーチャーの背中を見て「まるでお兄ちゃんみたい」と呟いた時には、Ⅳもそれに頷き、間接的に自分と仲間達を救ってくれた冷厳な兄の姿と、大切な妹の為に必死に戦っていた友の姿を重ねて見ていた。
 そんな穏やかな時間は、ある男達との出会いで終わりを迎えた。
 ベクターとグリーン、そしてその2人を率いる男、“覇王”遊城十代
 因縁のベクターとの再会も束の間、Ⅳは敢えて1人で覇王と対峙する。Ⅳは遊城十代の名を海馬瀬人と同じく伝説のデュエリストの1人として知っており、表舞台には決して立たなかった無冠の帝王との決闘を、1人のデュエリストとして望んでいた。
 響の「君に歌を届けたい」という言葉を、覇王は無言の眼光とプレッシャーにより一蹴し、Ⅳとの決闘に応じる。残るベクターとグリーンのデュエルモンスターズ、ポケモン、ノイズ、悪魔の軍団と響達の戦いは激しかったが、Ⅳと覇王の決闘は壮絶を極めた。
 エクシーズキラーのジャイアントキラーも覇王の操る融合モンスターの前には無力に等しく、ヘブンズ・ストリングスさえも軽々とあしらわれた。しかしⅣも決して退かず、致命の一撃を交わし続け、必殺の一撃さえもギミック・ボックスを使って無力化し逆用する。
 そして、デステニー・レオの素材数を軽減してエクシーズ召喚する準備が整い一気に決着をつけようとした時、覇王は自分の場に融合モンスターかアドバンス召喚したモンスターがいる時に相手のシンクロまたはエクシーズを封殺する罠カード『グリザイユの牢獄』を発動。Ⅳのギミックパペットデッキはエクシーズ召喚に一点特化したデッキであり、個々のモンスターの能力は貧弱。エクシーズ召喚さえも封じられてしまっては手も足も出せず、そのターンは守備モンスターを並べるだけで精一杯だった。
 覇王のターン、覇王が決着をつけようとしたその時、衝撃の一撃が決闘に割って入った。騒ぎを聞き付けてやって来たチームロリコンが合流し、共に覇王軍を倒すべく共闘を申し込んで来たのだ。
 しかし、カズマの衝撃のファーストブリットによる奇襲を、何と覇王はデュエルディスクを盾に受け止めて、そのまま弾き返す荒技を披露。
 覇王は「貴様らは真の決闘者では無いな」とデュエルに無粋な横槍が入り中断したことに怒りを見せたが、全員を一瞥すると踵を返し、グリーンとベクターに手勢を預けてその場を去ってしまった。
 その後の戦いに消耗の激しいⅣは参加できなかったが、おにーさん大丈夫?と心配してくれたしんちゃんたちに、子供ウケしそうなギャラクシーデストロイヤーを召喚してファンサービスしながら、疲労に抗い戦いを見守り続けた。
 チャンピオンとしての矜持に執着するあまり自分を見失い、力に溺れてしまっているグリーンの姿には思う所があったからだ。
 ベクターが途中で姿を消したのを切っ掛けに戦線が押し戻され、やがて崩壊を初めても、グリーンの指示は的確で直接の手持ち達はよくマスターの指図に従っていた。それでもやがて追い込まれ、深手を負い、負けが明白となっても勝ち続けることに執着するチャンピオンに、Ⅳは歩み寄った。

Ⅳ「じゃあな、元チャンピオン。お前はもう負けたんだ。勝たなくてもいいんだよ」

 同じチャンピオンとして、Ⅳに言えるのはそれだけだった。
 激闘を終え、全員が安堵の息を吐いた、その瞬間。Ⅳの肉体を、手刀が貫いた。
 ゲンガーと共にその能力でⅣの影に潜んでいたベクターからの、文字通りの闇討ち。それまでの戦いで限界寸前だったⅣはこれが致命傷となった。それでも最後の力は残されており、ベクターに一矢報いることもできた。
 しかし、ベクターへの怒りと憎悪から再び暴走に陥ろうとした響を、Ⅳは最後の力を振り絞って引き止めた。

Ⅳ「なんだよ、響……なんて面してやがる。いつもの間抜け面の方が、似合ってるぜ?」
響「Ⅳさん……?」
Ⅳ「…………同調して、重ね合わせろ……。そして、お前の正義を信じて、拳を握って、それを奴に……叩き、こめ」

 響の返事を聞くことも叶わず、しかし、響の暴走は止められたという確信だけは得て、Ⅳは命を落とした。
 Ⅳが最期に遺した言葉は、恐らくは本人も予期していなかった形で反映されることになるが、それは別の話である。

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最終更新:2013年10月24日 22:55